イングランド対アイスランドの雑感

EURO2016

両チームのスタメンはこちら

myboard

結果は2-1でアイスランドの逆転勝利。勝利の儀式はとてもかっこいいアイスランド。勝利の儀式と認識していたが、試合中にも何度も繰り返していた。ベルギー、フランス、イングランドを選手のポテンシャルのわりによくわからないサッカーをする3兄弟と勝手に決めていた。しかし、前者の2チームは最適解を探しながら進んできたのに対して、イングランドは選手のネームバリューに自らが屈するような形で大会を去ることとなった。

4-4-2の肝

アトレチコ・マドリーやレスターの躍進を例に出すまでもなく、4-4-2を再考しようという雰囲気が欧州サッカーにはある。主に相手がボールを保持しているときの話だ。バルセロナの4-3-3やライン間でボールを受ける技術の発展によって、4-4-2で守備をすることは時代遅れとされてきた時代があった。欧州ではグアルディオラによって、4-4-2はほぼ崩壊に追い込まれ、コンテ式によって、セリエでは3バックが隆盛を迎えていた。しかし、選手のアスリート化によって、4-4-2が復活を迎える。きっかけはシメオネのアトレチコ・マドリーとクロップのドルトムントだろう。彼らの4-4-2はより狭く、より激しく、より走ることで、4-4-2の抱えていた問題を解決することに成功した。

多くのチームが4-4-2にチャレンジしていく中で、最大の懸念が1列目の守備にある。4-4-2を相手にボールを保持するチームは、2トップの脇のエリアからの攻略を試みるのは定跡だ。この位置に選手を送り込みやすくするために、3バックへの変化、アラバロール、セントラルハーフのサイドに流れる動きなどが考案されてきている。

一方で、2トップの脇のエリアを埋めるために多くの方法が考えられてきた。サイドハーフが前にでる。セントラルハーフが前にでる。3トップに変化する。5バックにして3セントラルにする。大きく分けると、ポジショニングを調整するか、走らせるかとなる。アイスランドの取った方法は、1列目に走らせるだった。シーズンを通じて走らせるに頼ると、どこかでコンディションの悪化問題に悩まされることとなるだろう。しかし、国際マッチというモチベーションのあがる環境&短期決戦ではやりきれてしまうことが多い。アイスランドは4-4-2を10人全体で行い、構造の上でどうしても空いてしまう2トップの脇のエリアを何とか埋める策も持っていた。さらに言えば、撤退守備の鬼門でもある相手がゴール前に迫ってくる回数が増える問題に対しても、空中戦の強さで帳尻をあわせている。

アイディアを出そう状態のイングランド

幸運なPKによる先制点も気がつけば一気に逆転されてしまっていたイングランド。同点ゴールは警戒しても足りないほどのアイスランドの必殺技であるロングスロー。逆転ゴールは中央をわられるが、ハートならどうにかしてくれ、、というものだった。

このような展開が意味するものは、アイスランドの守備をボール保持からの攻撃で崩せるのかイングランドとなる。ただし、アイスランドが4-4-2でがっつり守備を固めてくることはスカウティングをしなくてもわかっていることだ。よって、イングランドがどのようにアイスランドの4-4-2を攻略していくかが試合の鍵となった。それは試合前にどれだけの準備をしていたかが、試合の行方を決定すると言ってもいいだろう。

イングランドの攻撃を見ていると、約束事はあまり存在しないようだった。攻撃の起点はルーニー。ポジショニングを調整しながら、アイスランドの2トップの脇でボールを受ける場面が目立った。逆サイドのデレ・アリはゴール前に集中のようで、ルーニーがゲームメイクのすべてを担っているような立ち上がりとなった。

ルーニーのプランとしては、サイドバックが高い位置にいる。サイドハーフはライン間にいる。相手のサイドバックとサイドハーフを押しこむことはできる。よって、サイドハーフが守るべきエリアを攻略のポイントとしたかったのだろう。ルーニーか、ホジソンの計画かは不明だが、アイスランドのサイドハーフを自陣に押しこむことはできていた。ただし、このエリアにアイスランドは1列目が下がってくる。本来はなかなか下がってこない。守備の堅い証拠だ。よって、ルーニーのプランは崩れ、新しい策を探すこととなる。

サポートを欲しがるルーニーだが、デレ・アリは前、センターバックは繋げないとなると、非常に厳しい状況となった。ときどき運ぶドリブルを見せるイングランドのセンターバックだったが、攻撃方向を変化させることはできなかった。スターリング、スターリッジもどのように動くかが整理されていないようで、バラバラの動きでは出し手が困る状況が延々と続いた。スターリングはもう少しドリブルで何とかできそうな期待もあったが、最後に登場するラッシュフォードのほうがその迫力は十分だった。

後半になると、デレ・アリの裏に飛び出す動きを全員が注視するようになる。前半も繰り返された動きだが、ハーフタイムをへて意思統一がなされたのだろう。ケインとデレ・アリの縦のポジションチェンジで裏を狙う動きは、パスさえあえば何が起きても不思議ではなかった。後半の頭から登場したウィルシャーもダイアーよりはパスで何かを起こせそうな選手だ。個人的には、交代をする必要性をあまり感じなかったけれど。必要としいていたのはルーニーのように2トップの脇でプレーできる選手で、選手を交代しての精度アップを狙うことではなかった。

60分にスターリング→ヴァーディが登場する。デレ・アリが名目上は左サイドに配置され、縦のポジションチェンジは終わった。なぜ終わらせたかは不明。ホジソンの采配によって、イングランドの攻撃はより停滞するようになる。逆にアイスランドのセットプレー、カウンターから追加点を許してもおかしくない場面を作られてしまう。決定機の数ではアイスランドに分があり、この試合をやり直してもはっきりいって勝てる(PKは別)可能性が上がるかといえばあがらないだろうなという試合内容になっていった。

トレンドになりつつある大外への放り込みもない。アイスランドの空中戦の強さはプレミアリーグと比較しても遜色ないだろう。よって、ケイン、ヴァーディに放り込んでも何も起きそうにない。だったら、ルーニーがなんとかしてくれるとゴール前でプレーさせたいが、そういうチームでははないのだろう。最終的にルーニーはラッシュフォードと交代する。なお、ラッシュフォードのプレーは悪くなかったと思うので、交代の当たり外れを言うつもりはない。ただ、歳以後の最後にルーニーにすべてを託すという選択肢もあったのではないかと切に思う。

最後まで決定機らしい決定機を作れなかったイングランド。スコアを動かせずに1-2で終了する。ジャイアント・キリング感の漂う結果だが、大方の予想通りの試合内容でファイナルラウンドの最後の試合が終了した。

スパーズの躍進がイングランドの前評判を高くしたのは間違いないと思う。しかし、スパーズのコピーをするでもなく(していたらごめん)、中途半端になってしまったのが残念だった。スターリング、スターリッジの両翼もまるで機能しなかった。起用したい気持ちは痛いほどにわかるんだけど。イングランドらしい4-4-2でヴァーディ、ケインの2トップとか、彼らとルーニーを組ませる元祖プレミア式にアイスランドのような守備力を足すような形だったら、このような展開にならなかったのではないかと切に思う。たぶん、ラニエリ待望論が起きそう。

ひとりごと

ハンガリー、アイルランド、アイスランドの内容は良いぞ、結果がでるかは別だが!3兄弟の中で、アイスランドが生き残った。レスターに例えられる守備力は異常。ヴァーディはいないけれど、ロングスローでボールを運べるし、実は冷静に繋ぐとこは繋ぐ技術を持っている。そして、セットプレーのキッカーはスウォンジーのシグルズソンがいるし、工夫もされている。次の相手が神通力を持ち合わせつつある開催国のフランス。激戦必死だ。

コメント

  1. ととや より:

    現実的な戦術を組まず中途半端なポゼッションで大会を去ってしまう姿は
    コパのブラジルと重なりました。
    いずれのチームを夢を見過ぎたというか、傲慢だったというべきか。
    ブラジルに関しては五輪の方が期待出来そうです。
    その傍らでアルゼンチンは協会と監督の失態で黄金世代を失ってしまいそうな状況ですが。

  2. ととや より:

    期待以上でした。
    確かに組織としては未熟な印象でしたが、
    ユーロと合わせて代表戦の見納めにするには丁度いい大会でした。

タイトルとURLをコピーしました