【レアル・マドリーは終わったのか?】ビジャレアル対レアル・マドリー

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

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ヨーロッパリーグの突破に成功したビジャレアル。今季はリーガでも首位にたつなど、好調を維持している。監督はマルセリーノ。レクレアティーボを率いて、過去に旋風を巻き起こした人物だ。ちなみに、ベニテス監督を尊敬しているらしい。具体的なエピソードを上げると、リバプールにベニテス参りをしていたらしい。今季でブレイクしている右サイドバックのマリオ、前線のレオが怪我のため欠場。しかし、今をときめくエリックバイアーと、ビジャレアルの心臓ことブルーノがいれば、問題は無いだろう。

クラシコ後は大量得点による試合を続けるレアル・マドリー。チャンピオンズ・リーグのマルメ戦は、まるでお祭りのようなスコアで、グループリーグの1位突破を決めている。パリ・サンジェルマンを押しのけての結果は、賞賛されるべきだろう。前線の怪我人の復活により、いわゆるBBC+ハメス・ロドリゲスで、どのように守備を固めるかでベニテス監督は苦労している。全員起用をやめれば問題解決なのだが、それが許されない状況なのだろう。怪我人が多かったときは献身的な若手を使って守備を安定させていたことを懐かし感じる。

■ビジャレアルの奇襲

エル・マドリガル。つまり、ビジャレアルのホームスタジアムで試合は行われた。

ホームのビジャレアルは、開始の笛と同時にレアル・マドリーに激しいプレッシングをかけた。序盤のレアル・マドリーは気持ちをどこかにおいてきたような立ち上がりを見せてしまう。4-4-2で高いエリアからプレッシングを行うビジャレアルの守備を前に、ビルドアップ隊は時間とスペースを奪われる展開となった。つまり、10分くらいまでのレアル・マドリーは、相手のプレッシングを正面から受け止める展開を受け入れるしかなった。

よって、最初の展開はレアル・マドリーがボールを奪われる、または手放すことで、ビジャレアルがボールを保持する、攻撃を積極的に仕掛ける形となった。

レアル・マドリーの守備は4-3-3。クリスチャーノ・ロナウドは基本的に守備に戻ってこない。ベイルはときどき戻ってくる。よって、サイドバックの前のエリアを相手に受け渡すか、モドリッチたちが気合でカバーリングをするかの2択になっていたレアル・マドリー。そんな現象が起きることは、ビジャレアルは予めわかっていたのだろう。

ボールを保持しているときのビジャレアルは、サイドバックを上げて、空いているスペース(レアル・マドリーのウイングとサイドバックの間)を利用するか、モドリッチやカゼミーロにそのエリアをカバーリングをさせる現象を引き起こすを狙いをプレーで示した。モドリッチたちがカバーリングに来なければ、そのままサイドから数的有利を利用して仕掛ける。モドリッチたちがカバーリングにきたら、モドリッチたちが空けたエリアを利用する狙いを見せた。モドリッチがサイドのカバーリングに行く→カゼミーロがモドリッチのスペースを埋める→カゼミーロの空けたスペースを埋めに来る選手はいなかった。

また、デニス・スアレスとジョナタンのバルサコンビは、サイドにはる&中央に侵入するをバランス良く行っていた。中央にポジショニングする意図は、相手のサイドバックを引きつけて、味方のサイドバックに時間とスペースを与えるために行われた。このビジャレアルのサイドバックにクリスチャーノ・ロナウドたちがついてくれば問題にならないのだが、あまりついてこなかった。攻守の狙いがはまったビジャレアルに対して、レアル・マドリーはショートカウンターをくらい、ソルダードに復讐を成功させてしまう。試合が始まってからわずか8分でのゴールだった。

■カゼミーロ落とし

10分過ぎから、レアル・マドリーはビルドアップの準備をするようになる。ビジャレアルのプレッシングを回避するために、カゼミーロをセンターバックの間に下げてきた。ソルダード、バカンプに対して数的有利を作ることによって、ビジャレアルのプレッシングは緩まることとなった。緩まった原因は他にも先制したこともあったと考えることができる。しかし、早すぎる先制点はビジャレアルに自分たちの方法論を正当化することも意味する。だから、ビジャレアルとしては同じ戦い方を継続したそうなプレーが多く見られた。そういった意志を邪魔したという意味で、カゼミーロを下げたことは地味にビジャレアルにダメージを与えることとなった。

ボールを保持することに成功したレアル・マドリーは、右サイドから左サイドへのサイドチェンジが多く見られた。ビジャレアルの守備は4-4-2。ゾーン・ディフェンスの弱点は逆サイドのスペースを捨てていることになる。だから、そのスペースに積極的にボールを供給するプレーを連続させるレアル・マドリーであった。左サイドでボールを受けるのはハメス・ロドリゲス、マルセロ、ときどきクリスチャーノ・ロナウド。しかし、対面のエリックバイアーが驚異的な強さを見せる。クリスチャーノ・ロナウドにも負けないデュエルを見せたエリックバイアーは近いうちに強豪チームに引きぬかれそうな予感。

レアル・マドリーの攻撃は、徐々にダニーロからのクロス一辺倒になっていった。各々のプレーも整理されているような感覚はなかった。悪い意味で自由にプレーしているようで。よって、ビジャレアルの守備の前に大苦戦。さらに、カウンターを受ける。バカンプのスピードにペペが置き去りにされるなど、ビジャレアルが試合をコントロールしている印象を受ける前半戦となった。もちろん、決定機がレアル・マドリーになかったわけではないが、エル・マドリガルを盛り上げる助演としての役割を果たしてしまったかのようなレアル・マドリーであった。

■再びのアンチェロッティ

後半になると、レアル・マドリーは各々の役割を整理することに成功する。その形がかつてのアンチェロッティの形に似ていたことは何の偶然だろうか。

カゼミーロを落とす形は同じ。3バックで相手のプレッシングを牽制する。そして、サイドバックの位置を上げる。だいたい相手のサイドハーフとサイドバックの間の大外。サイドバックの空けたスペース(または相手のツートップの脇)にインサイドハーフ、そして3トップは中央に密集で行われた。アンチェロッティ時代はウイングが相手の四角形の真ん中でプレーしていたが、この形でも、それは再現されることもあった。

ゾーン・ディフェンスの全体がボール保持者にプレッシングをかけること。しかし、レアル・マドリーのインサイドハーフのポジショニングにプレッシングをかけるビジャレアルの選手はいない。守備の基準点の喪失によって、レアル・マドリーは攻撃を加速させていく。猛攻は最初の10分間で終わるかと思ったが、最後の最後まで猛攻を続けていったのは底力の証明となったと言ってもいいだろう。

ビジャレアルの守備はどんどん押し込まれていく形となった。ボール保持者にプレッシングをかけようとすれば、レアル・マドリーは攻撃を逆サイドから展開する。ボール保持者にプレッシングをかけずに待ち構えていれば、ハメス・ロドリゲスとモドリッチが運ぶドリブルで迫ってくるという地獄が待っていた。

前半のレアル・マドリーのクロスは狙う目的地がはっきりしていなかった。しかし、後半のレアル・マドリーは前半に見せた大外へのサイドチェンジの形をクロスへと形を変えて何度も繰り返した。クロスが明後日の方向に飛んでいったと思ったら現れるダニーロやベイル。そしてその位置からのシュートや折り返しのクロスで決定機を量産していった。

守備面の問題は解決されなかった。ただし、もうマンマークでつぶしに行け作戦が機能することとなった。危険な賭けだったが、素早い出足のつぶしに寄って、ビジャレアルのカウンターはときどきしかみられなくなっていった。

こうして後半はまったく別の表情を見せたレアル・マドリー。チームが上手く機能しているので、交代も残り10分まで行わなかった。しかし、誤算があるとすれば、シュートが枠に飛ばなかったことだろう。これまでの試合だったら入ってもおかしくないような場面が何度も作ることに成功した。逆転していてもおかしくなかったと思う。それだけの圧力を見せたが、最終的にスコアは動かずに終了した。

■ひとりごと

前半は何だったのだ?というと、カゼミーロの動きがキーになってくると思う。3バックになるビルドアップを最初からする予定だったのか。それとも、ビジャレアルのプレッシングにあてられて行ったのか。

そして、後半に登場したまさかのアンチェロッティスタイル。今季のレアル・マドリーはベイルのトップ下、カゼミーロ、クロース、モドリッチの4-3-3と変化してきた。そして、とうとうアンチェロッティスタイルの再登場。安定しないといえばそれまでだが、どの形で迫ってくるか考えると地味にめんどくさいチームである。

ただし、相手がボールを保持しているときの問題はどのシステムでも共通して残っている。ベイルからすれば、逆サイドのクリロナは守備をサボって、俺はなぜ守備をしないといけないんだ状態。ある意味でディ・マリアと同じ損な役回りと言えるか。だったら、2人をツートップにすることも考えられるが、ベンゼマの復活で快速コンビのツートップは少しの時間で終わりをつげた。

プロは結果が全て!というのは間違っていない。ただし、結果を完全にコントロールすることはできない。サッカーは不確実性の高いスポーツだからだ。だからこそ、チームは万事を尽くして結果を待つしかない。よって、万事を尽くしたが鍵となる。この試合のレアル・マドリーは前半から万事を尽くせなかったことで批判されるべきだろう。しかし、準備不足からくる前半に比べて、後半にチームを一気に立て直せたことも評価されるべきだろう。そんな試合であった。あとはシュートを枠に飛ばすだけ。

後半も前半のようなプレーだったら、ベニテスのレアル・マドリーは終わっていたと思うが、後半のレアル・マドリーを見ていると、まだまだ終わっていないことを感じさせてくれるものだった。

コメント

  1. 匿名 より:

    分析記事ありがとうございます。

    後半は前半よりよかったですが、ビジャレアルの4-4ブロックが素晴らしくてよく守られたなと思いました。

    ロナウドとベイルの2トップって結構試してはいるんですけど本当に得点が入らないんですよね。

    一定以上のクオリティでしっかり守られる相手にはBBCは機能しませんね。それが分かっているけど、アンタッチャブルなのが問題かもしれません。

  2. 匿名 より:

    誰かが言ってましたけど、柔軟性のあるアンチェロッティと違いベニテスはプライドの高いレアルの選手とは相性が悪いのかもしれませんね。
    本心では我侭なスター選手を追い出して若手だけでチームを作りたいと思っているかもしれません。
    それやったらレアルじゃなくなっちゃいますけど。

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