【まとまったサンパオリ】セビージャ対レアル・マドリー【レアル・マドリーも3バック!】

マッチレポ1617×リーガエスパニョーラ

日本の表現を使えば、首位攻防戦となったセビージャ対レアル・マドリー。国王杯で対戦したばかりなので、この試合で3試合目となった。いわゆる、またお前らか!!状態の2チーム。なお、国王杯の結果はレアル・マドリーの勝ち抜けが決まっている。その国王杯の激闘によって感化されたのか、時代のトレンドに乗ってみようか、とジダンが考えたのかは不明だが、この試合でレアル・マドリーは3バックにチャレンジしている。なお、我らの清武はベンチ外。ヨヴェティッチが移籍してきたこともあって、いよいよ移籍をしないと試合に全く出られなそうな雰囲気だ。清武の決断にも注目していきたい。

レアル・マドリーが3バックを採用した理由を考えよう

最近は3バックがトレンドになりつつある。3バックを採用する理由は、チームによって様々だろう。大きく分けると、自分たちの都合と相手の都合による変化が考えられる。例えば、チェルシーのように、寝ても覚めても3-4-3で迫るチームもあれば、ホッフェンハイムのように、かつてのユベントスをカバーしたかのようなチームもある。これらのチームに共通することは、3バックシステムを利用して試合を操作したい、という狙いがあることだろう。一方で、相手の3バックスタイルにミラーゲームを申し込むでござる、相手のビルドアップを破壊するために前線に枚数をさきたい→3バックのほうが都合がいいではないかなどなどの、相手に合わせた形も存在している。

もちろん、本当のトレンドは3バックと4バックを使い分ける形になりつつある。ボールを保持しているときは3バック、相手がボールを保持しているときは4バック。相手のプレッシングの枚数に応じて、ビルドアップ隊の枚数を使い分けるなどなど、様々な状況に応じて、最適な形を作れるかどうかが鍵となってくる時代は、もうじき訪れるだろう。策士なのかそうでないのかはっきりしないジダン監督が、そのときに向けての準備始めたのだとしたら、やはり底が知れない監督となる。さりげなくバルセロナの無敗記録を追い抜いたレアル・マドリーとう偉大な結果にも関わらず、ジダン監督の評価はどこか定まらない印象を受ける。だからこそ、今回のチャレンジが何を意味するかは、ジダン監督を評価する上で、重要な事実となるだろう。

セビージャの攻撃の特徴を考えよう

セビージャの攻撃の特徴は、変幻自在のポジショニングにある。フリーマンのナスリを筆頭にトップ下適正のある選手が多く起用されていることが特徴だろう。前線にフランコ・バスケスを置いておる次点で、相手と肉弾戦という意味でのフィジカル勝負をする気はもうとうに無い。セビージャのフィジカル勝負は、ポジショニングと繰り返されるフリーランニングにある。大雑把に言うと、なんでお前がそこにいるの?サッカーで相手に解決しなければいけない状況を作ることを得意としている。

レアル・マドリーが2トップだったこともあって、エンゾンジを下ろしてボールを前進させていくセビージャ。イボーラとエンゾンジは縦のポジションチェンジをすることもある。日本の中学生年代でも普通に行われているポピュラーな形と言っていいだろう。アンカー落とし&サイドバックの高いポジショニング&サイドハーフのライン間狙いの変化だ。セビージャの場合は、これらの特徴に加えて、ナスリのフリーマンとフランコ・バスケスのゼロトップの要素が加えられている。つまり、セビージャのポジショニングを捕まえることは難しい。さらに、どんどん後ろから飛び出してくるおまけつきとなっている。

ライン間攻撃は撃退守備で対抗だ

3バックによるマンマークのような守備で、ライン間ポジショニングに対抗する策を始めてみたのはセリエAだったと記憶している。さすが守備の国。本当は他の地域で行われていたかもしれないけれど。セビージャの選手はライン間でプレーできる選手たちがピッチにたっている。よって、4-4-2のゾーン・ディフェンスで受けようとすると、なかなかめんどくさい。レアル・マドリーの伝統であるサイドハーフが守備をサボれば、後方の選手の負担はさらにえぐいことになる。だったら、最初からマークをはっきりさせたらどうなのよ、というのが、レアル・マドリーが3バックを採用した理由のひとつだろう。

どこまでも逃げていくナスリは仕方ないとしても、ヴァラン、ナチョ、そして、セルヒオ・ラモスの対人能力は異常。彼らに捕まれば、プレーをすることは難しい。このトリオの恐ろしさは、前を向かせたところでも、別に問題ないところにある。最終ラインに枚数を余らせておけばどうにかなるだろうという姿勢と撃退守備のミックスで、セビージャのゴールに迫ってくる攻撃に対抗した。言うまでもなく、このトリオの前にはカゼミーロもいるので、レアル・マドリーの守備力(組織でどうこうではなく)は、恐ろしいものがある。

冷徹なセビージャは、5-3-2の弱点であるウイングバックの前のエリアでヴィトロがフリーになる場面を何度も作ることに成功してた。カルバハルをエスクデロでピン止め。レアル・マドリーの守備の設計では3センターによる根性のスライド。しかし、3バックの前でプレーするイボーラ(ときどきエンゾンジ)を捕まえるタスクもあったので、どうしても時間とスペースを相手に与えてしまうレアル・マドリーであった。

一方で、ベニテス時代から続くルーカス・バスケスなどの若手にサイドハーフで守備を頑張ってもらう問題。ベンゼマとクリスチャーノ・ロナウドの2トップに後ろを5-3で構える形は4-4で守るよりも効率は良いかもしれない。攻守にバランスが取りにくいサイドハーフを起用するくらいならナチョを起用するのだという視点はなかなか興味深い。カゼミーロの起用も凄まじい結果で守備的だと騒いだレアル・マドリー周りのメディアを黙らせたジダンの次の手がさらなる守備の策だったというのもなかなか趣深いが。

マンマークがはまりにくいセビージャ

積極果敢なプレッシングで相手からボールを奪いに行くセビージャ。基本はナスリを前に出した4-4-2を相手がボールを保持しているときの基本形としている。しかし、レアル・マドリーのシステムは3-1-4-2となった。非常にはまりにくい。ゴールキックやスローインなどのプレーの再開ではポジショングを調整する時間がある。流れの中から相手の形に合わせるためには、どうしても時間がかかってしまっていた。

よって、レアル・マドリーは3バックをポゼッションの避難所、または運ぶドリブルによる攻撃の起点として、利用した。レアル・マドリーが2トップだったこともあって、セビージャのサイドバックは中央に絞る必要性があった。また、サイドハーフのヴィトロたちはヴァランまで寄せるのか、カルバハルについていくのかの判断を強いられ、プレーのたびに決断を迫られていた。セビージャのサイドハーフがレアル・マドリーのウイングバックにつかなければ、レアル・マドリーの最終ラインから正確なロングボールが飛んでいく仕組みになっていた。そういう意味では、相手とシステムを噛み合わせないことで、相手の守備の機能性を削ぐ狙いがあった3バックの採用だったのだとも考えられる。

肝心の試合内容へ

守備的な人選をしたレアル・マドリーを相手に、ホームのセビージャはらしさを全面に出していく。能動的なスタイル、ボールに対する果敢なアクションは健在だった。レアル・マドリーは撃退守備でセビージャの攻撃に対抗し、モドリッチ、クロースの能力の高さでトランジションをくぐり抜けていった。また、いつもよりも高いポジショニングをとれるカルバハルとマルセロの攻撃参加も目立っていた。

セビージャのキーマンはナスリとヴィトロ。両者ともにボール保持者の側によってきて、オープンな状態でボールを受けることが得意だ。そして、フリー状態を利用して運ぶドリブルで相手の列を優雅に突破していく。しかし、レアル・マドリーも人海戦術で対抗する術を持っていたので、セビージャは決定機を作れそうで作れなかった。前半からオープンな展開となったが、クリスチャーノ・ロナウドとベンゼマにいつもの迫力がなかったことはレアル・マドリーにとって誤算だったろう。このコンビの守備の曖昧さはレアル・マドリーの中盤を苦しめることになるのだが、ジダンはこの問題にはなかなか手を付けない。

先制はレアル・マドリー。カルバハルのプレーからPKを得ると、クリスチャーノ・ロナウドが決める。その後のセビージャの采配は見事だった。フランコ・バスケス→ヨヴェティッチで餅は餅屋。そして、イボーラ→サラビアで左サイドの活性化&ナスリのセントラルハーフという火力マックスの采配に出る。本来の中央に戻ったベン・イェデルが運動量を取り戻し、サイドにはっったサラビアは攻撃の起点として活躍する。

レアル・マドリーの采配は、クロース→コバチッチ。システムに変更はなし。4-4-2に戻す理由もないが、セビージャのサイドアタックがめんどくさくなってきたことを考えると、ありな手だった。それか、5-4-1。ここで、5-4-1で守りきれば、ジダンの評価は上がったのだろう。この試合でセビジスタに目の敵にされていたセルヒオ・ラモスが、残り5分でセットプレーからオウンゴールをして同点。そして、ロスタイムにはベンゼマが不用意にボールを奪われて、ヨヴェティッチに逆転ゴールを決められてレアル・マドリーの偉大なる記録は途絶えることとなった。

セルヒオ・ラモスのオウンゴールは仕方ないとしても、味方のスローインを受けるベンゼマ→あっさりボールを奪われるのくだりは、監督の怒りを買ったに違いない。ただし、ケイラーナバスもシュートに対する予備動作でシュートコースとは逆の動きをしてしまうらしからぬミスをしていた。そんなミスが重なれば失点もしょうがない。結果とは裏腹にジダンの評価が高まらない理由は、どうせならもっと守備的にやればいいのにねと誰もが考えることをしないで内容がこの試合の後半のようにどんどん悪化していくからだろう。それが選手への信頼なのかもしれないので、何ともいえないが。

ひとりごと

サンパオリのセビージャはようやく落ち着いてきた印象を受けた。シーズンが始まってしばらくはどんなサッカーをするんだ?というのがころころ変わっていて意味不明だったけれども。しばらくは継続して見てどのような設計なのかをまとめていきたい。

とうとう記録が途絶えたレアル・マドリー。3バックをものにすると、なかなかめんどくさいチームになる。今でもめんどくさいチームだが、ジダンが何を考えて3バックを導入したかは、もうちょっとさきまで見てみないとわからないだろう。想定よりもスムーズだったので、奥の手になるかもしれない。

コメント

  1. ヴィバルディ より:

    ナバスはヨベティッチが1人で突破して来た時に飛び出す事を意識していたとインタビューで答えていました
    まぁニアにもシュートコースはありましたし少し難しい場面ではあったかなと思いますがミスですね

  2. らさな より:

    アトレティコ同様に万能型のチームを目指した代わりに器用貧乏になった印象があります。
    三冠達成に失敗した理由もそこにある気が。

    • らいかーると より:

      相手も対策してくる世界なので、対策の対策を考えると、万能型にいったほうが早いとも言えます。チームも変化が必要ですし。

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