【6バックの理由と週末のバイエルン戦について】ドルトムント対ダルムシュタット

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

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好成績を残しているものの、ときどき複数失点という形で不安定さを見せるドルトムント。もうすぐ首位攻防戦のバイエルン戦が待っています。できれば、3ポイント差で首位攻防戦を迎えたい、そのためにはこの試合で3ポイントを必要とします。つまり、この試合で勝つか負けるかで首位攻防戦の持つ意味がちょっとだけ変わってきます。立ちはだかるのはダルムシュタット。昇格組ですが、インゴルシュタットと同じように中位に位置しています。そんなダルムシュタットはドルトムントに勝つためにしっかりと対策をしてきました。その対策について見ていきます。

■ダルムシュタットの6バック

トゥヘル監督になってからのドルトムントは、ボールを保持して攻撃を仕掛ける展開が多くなりました。その理由はドルトムントにもありますし、相手の対策にもあります。ドルトムント相手にトランジションが頻繁に起こるような展開に持っていくことはやあり自殺行為といえます。よって、ドルトムントと対する相手は、ドルトムントにカウンターをさせない仕組み(多くの場合は自陣に撤退)をもって試合に臨むことが多いです。ドルトムント側からしても、実は理不尽な守備力をもつセンターバックはいないですし、中盤に守備を長所とする選手を使っていないので、今はもうトランジション大会を歓迎しない風潮があります。攻撃面を考えれば、オーバメヤン、ロイス、ムヒタリアンを最前線に配置しているので、大歓迎なんですけれども。

ボール保持からのドルトムントの攻撃は、様々な仕組みを持っています。その多彩さが相手にとってこちらを立てればあちらが立たず状態に追い込んできました。例えば、相手の四角形(センターバック、サイドバック、サイドハーフ、ボランチを頂点とする)のなかでボールを受ける中央攻撃。中央攻撃に対処するために、相手は中央に選手を密集させることで、スペースを消します。すると、ドルトムントはサイドバックに横幅をとらせているので、インサイドハーフやサイドバックから逆サイドのサイドバックへのクロスという大外攻撃で外からの強襲を狙ってきます。中をしめれば外から。外につけば、中から。この攻撃を支えるのがインサイドハーフにビルドアップに参加させることで発生するボール保持の安定です。

どちらかの対策しかできないのだとしたら、普通は中央を優先します。香川、ギュンドアンという攻撃の起点をつぶし、さらにムヒタリアンやロイスをマンマーク気味に対応する。そして、大外攻撃が実らないことを祈る。なお、ゾーン・ディフェンスの特性上、マンマーク気味に対応したり、圧縮を強めたりすれば、大外のサイドのスペースは捨てることになるので、どうしても、ドルトムントの大外の攻撃に対応しにくくなります。やけにギンターが得点に絡むのはこういう背景があります。

そして、ダルムシュタット。昇格組のダルムシュタットは考えました。中央を守ることは最優先だ。でも、大外攻撃も放置するわけにはいかない。あちらを立てればこちらが立たずとはいっても、何かを犠牲にすれば両方を成り立たせることはできるはずだ、と。その結論が6-3-1。モウリーニョかだれかが行っていた6バックがブンデスリーガで再現されました。ダムシュタットにとって、これが日常の形なのかドルトムント対策なのかは試合を見ていないのでわかりませんが、ドルトムント対策としてかなりはまっていました。

香川、ギュンドアンという攻撃の起点を機能させないために、3センターで対応します。ついでに、バイグルまで人数を合わせることで、守備の基準点がずれないようになっています。香川にプレッシングに行く→香川はバイグルにパス→そのままバイグルにプレッシングに行く→香川フリーというような教科書に載りそうなミスを防ぐための3センターは、香川たちを苦しめました。

6バックは文字通りの鉄壁です。サイドハーフはドルトムントのサイドバックについていく。大外攻撃に対してマークすることで防ぎます。つまり、サイドチェンジの意味がなくなります。また、大外にクロスを送っても相手がいるという非日常にぶつかります。このマークにシュメルツァーが苦しみます。なぜかギンターばかり目立つサイドバックの攻撃参加ですが、シュメルツァーもエリア内に侵入する機会は多いです。しかし、この試合は相手がいたので効果的ではありませんでした。

4バックは中央に絞り、中央に移動してくるロイス、ムヒタリアンを迎撃スタイルで対応します。3バックによる迎撃スタイル(相手のライン間でプレーする選手をマンマーク気味に対応すること)は可能ですが、オーバメヤン、ムヒタリアン、ロイスを3人で対応することが困難であると考えたのでしょう。もしもこのトリオに5バックで対応したら、ウイングバックがドルトムントのサイドバックの対策よりも中央のカバーリングに気を取られてしまうかもしれません、なので、念には念を入れるために6バックで臨みます。

攻撃を犠牲にすれば、守備を完璧にこなすことはできる。しかし、ずっと相手に攻撃の主導権を握らせてしまえば、何かの拍子に失点してしまうかもしれない。相手の攻撃機会が多ければ多いほど、その可能性はわずかだが高くなる。と、昔の偉い人が言っていました。しかし、ダルムシュタットは攻撃を犠牲にしませんでした。

ダルムシュタットの攻撃はロングボールとカウンターに分類されます。ワントップのヴァグナーはポストプレー、空中戦に秀でていて、ドルトムントの守備陣を苦しめました。単純なロングボールをバイグル付近に放り込むことで、実はドルトムントは苦労します。空中戦対応でフンメルスたちが前に出てこないといけませんし、それでも、フンメルスたちは空中戦で無類の強さを発揮するわけでもありません。また、ダルムシュタットはドルトムントのサイドバックに空中戦を放り込むなど徹底してボールを前進させていました。

また、カウンターでは長い距離を走ることで相手のマークを剥がす場面が見られました。メッシが横の移動(ドリブルやワンツー)で相手の守備の基準を狂わせることは前に見てきましたが、ダムシュタットは縦に走ります。カウンターなので、当たり前といえば当たり前ですが。長い距離を走ることで、相手のプレーエリアを横断することは横の移動と非常に似ています。相手の守備の役割を走り抜けることで、相手は受け渡すか、ついていくかの判断をしなければなりません。相手に選択肢を強いることで、エラーを引き起こすことが狙いです。バイグル、ギュンドアン、香川が相手の縦への長いランニングについていけるかといえば、攻撃に長所を持つ彼らからすれば、かなり難しい作業となります。これはドルトムントの泣きどころになっていくかもしれません。

攻めあぐねるドルトムントはリスクの高いプレーをするようになり、それはボールロストに繋がります。そして、17分にカウンターから失点を許してしまいます。両サイドバックをあげていることからドルトムントからいかにボールを奪っていかにカウンターでサイドを攻略するかは各チームの必修事項になるかもしれません。

3センターの前に、香川は相手のブロックの外でのプレーを余儀なくされ、フンメルスも窮屈そうにプレーしています。理屈ではスペースのあく3センターの脇ですが、ここで誰がプレーをするのだ?と考えると袋小路になります。サイドバックが下がってきても、相手のサイドハーフがついてきます。だからとってセンターバックが駆け上がってくるのはちょっと時間が早すぎます。相手の6バックに大外攻撃を失ったドルトムントは、狭いエリアにひたすらに突撃していきます。またはサイドからの個人技特攻。これで、あわや決定機という場面を作りますが、先制したことで守りを固めればいいというメンタルになったダルムシュタットをなかなか崩せません。空中戦を中心としたフィジカルバトルでドルトムントのイライラも積み重なっていきます。

2つのもっともな武器を抑えられてしまったドルトムントですが、後半になってもトゥヘルは動きません。その代わりに、香川とギュンドアンのプレーエリアをよりサイドにすることで、3センターを揺さぶりにかけます。また、特に香川は必要以上にボールを持つことで、相手の守備をひきつけることに成功していました。また、左サイドから中央にドリブルで入っていくことも、パスで相手をひきつけるのと同じ効果を生みます。後半になると、ダルムシュタットはより全体のラインを下げて守備を固めるようになっていったので、香川も相手の隙間にポジショニングするようになっていきました。

そして同点ゴールは香川から始まる大外攻撃。インサイドハーフの香川が左サイドから中に切れ込んで大外のギンターへ斜めのクロスを入れる→ギンターは中央に折り返してオーバメヤンが決めます。イニエスタからのアウベスの形とそっくりなので、バルセロナスタイルのゴールと呼ばれたこともある形です。そのときはバイエルンがこの形を再現していたのですけど。この形の特徴的なのは最初に香川の中央への切れ込みと身体の向き。相手は香川を注視するしかないので、大外のギンターたちを視野に入れることが難しくなります。そし次に大外へのクロス。香川を見ていた選手たちからすれば、視野外にボールが供給されるので、視野がリセットされます。そして、ギンターが中へ折り返す。またも視野外にボールが供給されます。これだけ視野がいったりきたりすると、相手のマークもずれるものです。

対策をしていた大外攻撃からやられたダルムシュタットはやっぱり不安定になります。守りを続けるのか、攻めるのか。こういう隙を見逃さないのが強いチームなのでしょう。やっと取れた得点の後には更なるチャンスが待っている。途中から出場しているヤヌザイとオーバメヤンが中央をわって逆転ゴールを決めます。前半から続けていた狭いエリアへの突撃が実った瞬間です。結局は相手の対策を力技で破壊してしまうのだから、ドルトムントは強いといえるかもしれません。

逆転されたことで、ダムシュタットは果敢に攻撃に出ますが、ドルトムントにカウンターを浴びせられます。ここでとどめをさせれば試合は終わったのでしょうが、ぎりぎりのところでゴールは生まれませんでした。その代償は試合終了間際に訪れます。時間を稼ぐのか、追加点を狙うのか。その意思統一の曖昧さは相手にチャンスを何度か与えることになりました。そのひとつのセットプレーからドルトムントは同点ゴールを許してしまいます。こぼれ球を押しこまれて、まさかの同点ゴール。残された時間は少なく、試合は同点のまま終了します。

■バイエルン戦はどうなる??

両チームともに欧州での戦いを控えていますが、ヨーロッパリーグを戦うドルトムントのほうが日程的にきついのは言うまでもありません。しかも、会場はバイエルンのホームスタジアムとくれば、引き分けでもドルトムントはミッション達成と言えるでしょう。これまでのドルトムントは基本的にボールを保持していました。しかし、相手はバイエルン。ボール保持対決になるのか、どちらかが早々に守備から試合に入るのかは注目です。数的同数プレスでマインツ時代に結果を残したように、トゥヘルは相手の長所を潰すことを苦手としていません。よって、トゥへルがどのような展開を望んでゲーププランを組み立ててくるかは非常に注目です。ポゼッションで正面対決か、バイエルン対策をしてくるのか。守備で不安の残すドルトムントがきっりと守り切るようだったら、非常に未来が楽しくなる試合となりそうです

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