UEFA Champions League 2008-09 ~メッシのゼロトップ誕生!?~

バルサのスタメンは、バルデス、シウビーニョ、ピケ、ヤヤ、プジョル、ブスケツ、イニエスタ、シャビ、アンリ、エトー、メッシ。スタメン予想と比べると、ケイタ→シウビーニョ。個人的にはとっても嬉しい誤算。でも、ケイタをアンカーで使わないってことは、バルサのイズムをさらに忠実に実行したってことだろう。原点回帰の大勝負。

 ユナイテッドのスタメンは、ファンデルサール、エブラ、ビディッチ、リオ、オシェイ、ギグス、キャリック、アンデルソン、ルーニー、パク・チソン、ロナウド。いや、何だか不思議なメンバーである。ハードワークのテベスがいない。パクを使っているわりに、ギグスがスタメンにいる。ちょっと余裕を見せたスタメンのユナイテッドであった。

バルサのネタ

 序盤は完璧なユナイテッドペースであった。ユナイテッドのシステムは4-1-4-1のようで。ただし、ルーニーとギグスの位置関係の把握がちょっと流動的過ぎる。なので、守備のときの役割が流動性とともに入れ替わるのだけど、そういうのは昨年のサッカーなんでないのかユナイテッド。

 ユナイテッドのスコールズの位置の選手って守備のバランスを考えて、あんまり攻撃参加するイメージがない。そりゃSHとSBが攻撃的に振舞うのだから、当たり前のリスクマネージメントともいえるけれど。ただ、攻撃的である一方で、そういう固さがユナイテッドらしさなのかなとか感じていた。しかし、この試合では、ギグス、アンデルソンと3センターが妙に攻撃志向で、ファーガソンまさかの斬りあいかよとか思ってしまった序盤であった。

 序盤のユナイテッドは、アンデルソンの股抜きをきっかけに加勢に出る。ロナウドのFK、前からのプレスと、試合が落ち着く前に先制点を狙いに来た模様。シュートもがんがん放ち、自分たちでボールを繋いで攻めるさまは、引きこもるユナイテッド、、、ってな予想を覆すには十分であった。

 そんなファーガソンの奇策の前に、バルサは非常に固さがみられる序盤戦。ユナイテッドのプレスが立派だった要因もあるだろうけど、単純なミスを連発。バルサらしいボール運びは鳴りを潜め、ユナイテッドの勢いにおされているように見えた。バルサはゴールキックからも愚直にボールを運ぼうとしていたけど、バルデスがそれを嫌がったのが印象的で。

 しかし、9分。中央のメッシのおかげで、ほんのわずかなスペースをもらったイニエスタのドリブル突破。アンデルソンが恐ろしく軽い守備を披露し突破を許してしまう。パスを受けたエトーが最近は低調なビディッチをあっさりとかわし、なんとバルサがファーストシュートで先制点を取ってしまう。

 ファンデルサールからのロングボールを誰も競らなかったとか、ギグスの位置がおかしいとか、アンデルソンが軽すぎとか、ビディッチがあんなに簡単に抜かれるとは誰も思っていなかったとか、どっちかというと、ユナイテッドの選手に慢心が合ったようで。試合前の評判と序盤の内容から、こりゃ勝てると予想してしまったかのような失点であった。でも、これで目が覚めるだろう。

 バルサのシステムは4-1-2-3。いつもの形である。ただし、メッシが中央にいる。クラシコのトップ下・メッシにちょっと似ているけど狙いがちょっと違う。バルサのアンカーはブスケツ。繋ぐのはうまいが、このレベルでできる選手かというと怪しさが残る。なので、ここにテベスをおくか、ギグスをおくかという判断はリスクとの取り方次第だろう。つまり、ブスケツにはそこまでの対策を練らなくていいかもしれない。

 それはバルサもわかっていたようで。この試合でのブスケツはうまく試合から消えていた。たぶんわざと。で、守備面でのギグスを消していた。ギグスからすると、自分の担当が消えているのだから、僕の仕事はないよってな意味合いで。ブスケツが攻撃に絡まなければ、ギグスも守備に絡まない現象。

 となると、アンデルソン×キャリック対シャビ×イニエスタ。で、ここの中盤の攻防を有利に進めるために、バルサはメッシを中盤に組み込む作戦に出る。つまり、実質はメッシ×イニエスタ×シャビ対アンデルソン×キャリック対決。いや、非常にうまい采配。しかも、守備のときはメッシを最前線に配置する形にして、巧妙のこのネタを隠そうとしている。まとめると、ブスケツを試合から消すことで、ギグスを消す→メッシを中盤に下げることで、中央で数的有利を形成させる。そんなネタを仕込んできたバルサ。

 でもさ、パクだったりルーニーがそのギャップを埋めようとするだろうと。そのとおりで、特にパクチソンは精力的に動くのだけど、彼の担当はシウビーニョ。パクチソンが中央のスペースを助けに行ったら、シウビーニョが浮くわけで。ケイタでなくてシウビーニョを使った理由はこんなところだろう。17分のシウビーニョへのサイドチェンジがまさにそんな感じで。ギグスがちゃんとした位置にいれば、パクチソンはあんなに中央に絞る必要はない。

 24分。バルサが中央からの繋ぎでメッシがフリーになったのも同じ現象。今度はイニエスタにプレスをかけたらメッシが空いたパターン。ユナイテッドは守備のときに4-4-2みたいになる場面もあって、完全に守備機能が麻痺している状態。麻痺に追い込んだのはバルサのネタのせいだけど。。。ってか、4-4-2だったら、ルーニーがSHをやらされている意味もわからないし、ベルバトフでも良かったのではないかと。

 30分過ぎになると、ユナイテッドは完全に4-4-2の形になる。ギグスとロナウドのツートップ。で、2人とも守備をしない。ただでさえ、中盤の中央で数的不利ができていて、プレスをかけにくい状態なのに、それを加速させる4-4-2。最初から4-4-2だったのか、ギグスが守備をしないから4-4-2に見えるのかは謎。それにしても、ブスケツも消えている。

 ちなみに、ルーニーとパクチソンはチームの守備が機能しない状況に気づいているようで、メッシだったり、数的不利で浮くシャビやイニエスタを潰そうとゾーンを越えることがある。だから、バルサのSBが空くのだけど。はやめに、ギグスの位置にルーニーを入れないと取り返しのつかないことになるかもね。

 何だか噂の試合を見ているようだった。ファガーソンが学んだっていわれている、CLのミラン戦に非常に似ている。選手の配置に対して、有効な対策が出来ていないってな感じ。数的不利を作りにくい4-3-3が4-4-2に見えるようじゃきついだろう。

 また、バルサは先制したことで、守備の意識も非常に高くなった。組織的なプレスによって、ユナイテッドの攻撃を食い止めていたのは非常に素晴らしい。キャリックとアンデルソンが過労死しそうなので、ユナイテッドはボール運びの部分と中盤の数的不利を修正する必要がある。やはり、スコールズかな。パクチソンを中央にしても大丈夫かもしれないけど。

特攻じゃないだろうに

 アンデルソン→テベスで後半に臨むユナイテッド。やはり移籍しちゃう選手は使いにくいのかなとか邪推な予想。後半のユナイテッドは4-1-3-2みたいな。左にパクチソン、右にルーニー、中央にテベスとロナウド。この布陣の狙いは前プレでバルサのボール運びを破壊するか、ルーニー対シウビーニョの機会を増やして、局地戦を作ろうってとこだろうか。パクチソンがプジョルに勝てるわけないだろうし。

 しかし、前半から見られたユナイテッドのボール運び問題が後半も顕在。ろくな形で前線にボールが入らないので、前線に選手をそろえてもあんまり効果的とはいえなかった。特に後半のバルサはプレスがちょっとゆるくなったので、チャンスだったのっだけど。

 バルサ側からすると、最初のプレスさえかいくぐればチャンスを量産できる形になった後半。中盤にスペースが出来たので、後半の攻撃はドリブルがちょっと多くなった気がする。前半ほど苦労せずにボールを運んでさっさと勝負。

 ユナイテッドがボールを下から運べれば、チャンスが作れそうなのだけど、ロングボールがメインとなってしまいかなり辛い。そして、狙い撃ちのルーニーがどうも良くない。なんで、この舞台でSHなんだよってぐれる子ではないと思うが、シウビーニョを狙い撃ちにするなら、ロナウドでいいのではないかと。それに、ボール運びにロナウドを使ったら面白かったのではないかなって。今日のロナウドは怖いくらいに気合が入っていたし。

 65分にパクチソン→ベルバトフ。そういえば、バルサは4トップの放り込みに弱いんだった。それかユナイテッド。でも、ユナイテッドもロングボールに強くないんだったら五分五分でなはないか。と思ったら、ロナウドがいきなりプジョルを吹っ飛ばした。ちなみに、パクチソンとベルバトフを変えただけで、前線に枚数を増やしたわけではなかった。

 70分。バルサに追加点が生まれる。きっかけはプジョルのインターセプト。頑張ったプジョル。中盤がすかすかのユナイテッドを尻目に、シャビがこぼれ球を拾うとフリーでクロス→メッシが頭で決めて2-0。で、すかさずにアンリ→ケイタ。ぶっちゃたはなし、エトーとアンリにサイドを突破する能力がもっとあれば、バルサは楽勝だったね。

 75分にギグス→スコールズ。ここまでギグスを引っ張った意味がかなりわからない。中央も出来る選手だってことは百も承知だが、今日はまったく機能していなかったじゃないか。スコールズとキャリックだけではつらいけど、他の選手は特攻なのだろうな。

 で、残り時間が少なくなっても流れは変わらず。逆にプジョルに決定機を2度も与える始末のユナイテッドだった。個人的には、プジョルにゴールを決めてほしかったぜと。そして、そのまま試合が終了。審判が非常にうまかったなと感じた試合であった。

独り言

 プレビューにもあったが、ファーガソンは何をしたかったのだろうか。引きこもってカウンターを選択せずに正面からの斬り合い??にしては、守備的な選手を配置している。ミラン戦の反省をまったく活かしきれていない戦術もかなりひどかった。4-4-1-1みたいな布陣で守れるかっての。

 バルサとユナイテッドに差があったのは事実だけど、戦術的な差が一番多かったように感じる。やっぱり、アウベスとアビダルの不在がファーガソンに余裕を与え、その余裕が結果として凶と出ちゃったのかなってな試合であった。ギグスの代わりにフレッチャーがいれば、引きこもったのかユナイテッド。スコールズ、アンデルソン、キャリック、パク、ルーニーがいるんだから、やっぱり選択ミスだろうか。

 チェルシーのやり方をまねするならば、前プレが必須なのにテベスしかまともにやっていないちぐはぐさが非常に悲しかった。そんな決勝戦となった。バルサはもちろん素晴らしかったけれど、ユナイテッドの采配ミスかなって。これで、ユナイテッドがさらに守備的になったら嫌だななんか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました