スペイン対ベルギーから見るボール保持の振る舞い対決

FIFA World Cup 26
スペイン対ベルギーの分析がはじまるよー

■リュディ・ガルシアは凄かった

リュディ・ガルシアとは何者なのだろうか。セネガル戦では56分にデ・ブライネとドクを交代し、気がつけば同点に追いつく采配を見せた。試合を見返せ!という指摘は甘んじて受け入れたいが、世界中の視聴者がどんな采配やねん!とツッコミを入れただろうし、突然に0-2から2-2に追いつくのだから、意味がわからなかった。なお、解説者もびっくりしていたと記憶している。もちろん、ぼくもびっくりした。
続いて、アメリカ戦ではドクとデ・ブライネがスタメンから外れた。国際親善試合のベルギーはデ・ブライネがドクに時間とスペースを渡し、ドクがチャンスメイクをし、トロサールとデケテケがゴールを決めるパターンがメインだった。ワールドカップ中の変身や成長はワールドカップで結果を残す重要なファクターなのだが、この方向性は驚いた。
アメリカの自滅もあり、ベルギーが大勝するのだけど、デ・ブライネとドクの代わりに出場したラスキン、ルケバキオは驚くほどに優秀な選手だった。ティーレマンス、オナナ、ラスキンの中盤の強さはアメリカを凌駕し、左利きのルケバキオは右サイドを制圧していた。ワールドカップをホームで迎えるチームはハイテンションで試合に臨む傾向がある。スタジアムの声援を味方にし突撃してくるチームをハードワークで対応するリュディ・ガルシア采配は見事だった。
そしてスペイン戦である。デ・ブライネとドクがスタメンだった。トロサールもスタメンだった。世界中がなんでやねんである。もしかして、スペイン戦に温存していたのか?と言いたくなるが、そんな采配の流れではなかった。恐るべしリュディ・ガルシア。この大会で最も見直した監督と言っても過言ではない。
本当はスタメンだったティーレマンスは怪我、ついでに前の試合でオナナも怪我をしたので、満身創痍のベルギー。でも、190なのにテクニシャンのファナーケンとおれたちのラスキンが根性を見せることでどうにかする作戦に土壇場で変更し、それなりに形にするのだから、リュディ・ガルシアは流石である。

■ヤマル周りのトランジション

ベルギーのスペイン対策は、プレッシングから非常に興味深いものだった。プジョルにボールをもたせようぜ!のモウリーニョのバルサ対策を最近は思い出すことが多い。ラポルテにはデケテケをぶつけ、クバルシはフリーになるかみ合わせはしびれるものだった。ラポルテからのサイドチェンジでヤマルのアイソレーションを最もベルギーは避けたかったのかもしれない。
クバルシがボールを持ち、ヤマルに届ける道筋はドクとデ・クーパーで対応する設計になっていた。そしてボールを奪ったらドクのドリブルによる突破。もしくはデ・ブライネ経由でトランジション合戦に勝つ策略だったのだろう。実際にドクは単騎での突破やファウルを受けることで、ヤマル周りで発生するトランジションを優位に運びそうな気配はあった。
このサイドに流れるデ・ブライネにはロドリが執拗についてきた。元チームメイトなので、警戒心もマックスだったのだろう。ロドリがサイドに移動すれば中央が空く仕組みになるのだけど、この位置にはファビアン・ルイスがしっかり下がっていた。そういう部分も期待されての出場だったのではないだろうか。もちろん、ペドリもできるだろうけど、餅は餅屋というか。

■ロングボールをデケテケ作戦

ベルギーの前進も面白かった。クルトワからのデケテケへのロングボールがおさまるおさまる。スペインの弱点がセンターバックがどつきあいに弱いこと、それを隠すためのボール保持による試合支配なので、クルトワからのデケテケからのドクとデ・ブライネがセカンドボールに飛び込んでくる形は秀逸だった。このコンビなら即興芸でどうにかできるといっても過言ではないわけで。
ボール保持による試合を支配することを目指しているスペインはハイプレッシングが日常となっている。でも、キーパーまでのハイプレッシングはロングボールを誘導することになりがちだ。で、蹴っ飛ばされると苦労するとなると、スペインも迷う。果たしてロングボールに誘導するハイプレッシングは自分たちに優位性を運んでくるのかどうか的な禅問答。
そんなスペインの悩みを見ると、ボールを繋ぎ始め、地上戦はトロサールのフリーマンがギミックになる場面もあったけれど、基本的には相手を誘き出してロングボールに導くベルギーの策略。バントをするふりをして相手を動かして強振みたいな。バスターだっけ。ただし、噂ではロングボールを蹴りすぎてクルトワが負傷したらしい。そんな馬鹿な。

■ダニ・オルモとオヤルサバルの2トップがみたい

スペインで注目はダニ・オルモとオヤルサバルの数奇な関係性。インサイドハーフの間に下りる動きが最高のオヤルサバルとライン間の住人ことダニ・オルモは自分たちの役割を交換できる。ときどき2トップに見えるのも良かった。そこに乱入してくるのがバエナ。イニエスタよりはアタッカーの雰囲気が強い。ククレジャの大外アタックを導くためのポジショニングや、ファビアン・ルイスのためにスペースを空けたりと味方の位置を見て、自分の立ち位置を決められる選手であった。
で、ロドリがやばい。アルベルティーニの啓示がなければおれたちは駄目なんだとトッティがかつて言っていたけれど、スペイン代表はロドリがまさにそれ。ペドリが霞むんだからまじで意味がわからない。なお、ぼくはペドリとヤマルが世界で最も見ていて楽しいサッカー選手だと思っています。だったら、バルセロナをもっと見ろって。いや、本当にそう思いますわ。ロドリ、あっちをみてこっちをみて、身体の向きで相手に与える情報を吟味して、それを逆手に取ったり素直にプレーしたりともうやりたい放題。
ブスケツの後釜なんで出てくるわけないだろと言われていたけれど、出てきてるやんけ。ぼくは、シャビ、イニエスタ、ブスケツが世界一の中盤トリオだと思っているのだけど、今のスペイン代表もそれに近いものがあると思っているので、優勝してほしいなと思い始めている。
スコアはなかったけれど、この試合で最も相手に脅威を与えていたヤマルとポロのコンビで右サイドを蹂躙しゴールを決めるスペイン。デケテケのロングボールからドクが仕掛けて、最終的にデ・ブライネの知性で導かれたクロスをデケテケが決めて同点になった試合。

■ボール保持チームは後半勝負の鉄則

でも、後半のベルギーもう走れていなかった。ボールを保持するチームの勝負は後半説は根強い。全方位型のどの局面でも大丈夫です、サッカーには耐える時間があることを知っているという余裕と、ボール保持チームの前半のこれでOKは根本的に意味合いが違う。前者はときどき落とし穴が待っている。
疲労困憊のベルギーは卒業式みたいな采配。ヴィツェルとルカクが登場。でも、卒業式からクルトワとデ・ブライネが途中で退場。特に最後にイエローをもらって去るデ・ブライネは気力体力の限界だったのだろう、たぶん。ロングボール大作戦もルカクはサムズアップで答えるだけ。でも、デケテケも体力は残っていなかったので、どっちみち詰んでいたのだろう。でも、ヤマルを抑えるためにでてきただろうセイスの名前は覚えておきたい。ヤマルも体力の限界だった説もあるが、それでも抑え続けるのだから凄まじい。

■トゥヘルの香りがするスペイン式3トップ

中央の3レーンに純粋なCFを置かない形で天下を取ったのがトゥヘルのチェルシーだった。あれは発明だった。ぼくのなかでハヴァーツとフィルミーノは純粋なCFではない。異論はもちろん認める。
スペインもそうなんだけど、ダニ・オルモ、オヤルサバルにフェラン・トーレスを加えると、一気にその香りが強くなる。で、ここに仕上げのメリーノが入ると、相手は本当に大変。パレデスがゼロトップむずいといっていたけど、この三人がゼロトップをやるようなものなので、スペースメイクとスペースアタックの繰り返しを残り10分から改めて対応しなければならないのは地獄だと思う。
そしてこの試合を決めたのがクバルシのミドルだったのも面白い因果と言えるだろう。フリーにしたら危ないのは何度もあったけれど、決定的な仕事もするところが彼らしい。それにしても、仕上げのセンターバックが攻撃参加して攻撃の起点になることを最大火力とするチームをどのように止めたらいいかは世界中の悩みどころ。サリバのスルーパスでアーセナルが最大火力を出した場面を思い出したとさ。

■楽しみな準決勝

というわけで、スペインはフランス戦。たぶん、トランジションが鍵を握りそう。ドゥエがどれだけ守れるだろうか。フランスの泣き所は左サイドバックなので、ヤマルとポロのコンビが鍵を握ることは間違いない。そして、この周りのトランジション勝負をベルギーが仕掛けてきたことはフランスからしても攻略のヒントになったのではないだろうか。
トランジション勝負になれば、ロドリ周りをどうするかも楽しみとなる。古の策を思い出すと、ロドリ対オリーセがどの局面でもっともお互いを消すことができるかも楽しみな試合となるでしょう。乞うご期待。

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