「さて、今日はマンチェスター・シティ対アーセナルを振り返っていこうと思う。」
「最初にスタメンはこちら」
「これは両チームの配置を正確に表している、というよりは、スタメンはこのメンツだぜ!というくらいの意味だと思ってくださいな。」
「この試合はグアルディオラの打ち筋がなかなか興味深かったので、それについて詳しく見ていこうと思う。」
「奇策成功!というパターンだな」
「成功!!と言い切れるかは怪しいけれど、アーセナルは嫌がっているように見えたな」
グアルディオラの打ち筋
「最初のマンチェスター・シティのボール保持の形からみていく」
「基本はロドリが列を降りる形が多かった。ときにはシルバが降りる形も見られた。形だけ見ると、ミシャ式のようにみえるがそれは気のせいだ。」
「アーセナルからすると、前からプレッシングに行きにくくなる。相手が3枚ならそのままいけばいいのだけどな。」
「だから、ジャカが前に出てくる、と言いたいのだけど、その前に列を降りる動きのトリガーについて考えていきたい」
「普通は相手が2トップだから、アンカーにマンマークをしてきたからなど、列を降りるきっかけとなるなにかがある。」
「しかし、マンチェスター・シティにはそのトリガーがあるようでないように見える。これが実に厄介なのであった」
「対戦相手からすれば、マンチェスター・シティに存在する内在的論理を知りたい。しかし、それがないとするとどうなる」
「対策がうちにくくなる」
「というわけで、列を降りたり降りなかったりするマンチェスター・シティはさすがだなと」
「で、ジャカがが出てくるとどうなるか」
「突然にカンセロの位置が生きてくる。ヒカルの碁みたいだな」
「この試合でのスターリングはトップ下のような位置で振る舞う場面が目立っていた。アグエロが降りてくることもあったが、基本はスターリング。スターリングに気を取られれば、シルバが空いてしまう。サカも5バックに移行したほうがいいのか、カンセロを捕まえたほうがいいのか悩んでいるように見えた」
「相手陣地でのアーセナルのプレッシングは343。自陣に引いたときは532気味の541になっている。」
「その可変の隙間に取り入るようなグアルディオラの奇策だった。可変システムのキーマンはサカであり、サカにカンセロの立ち位置で判断を迫る術はなかなか興味深いものがあった。」
「ついでにグアルディオラのプレッシングもみていく」
「相手陣地にいるときは4トップのようなプレッシングをする。2トップは背中でセバージョスたちを消しながら、徐々に間合いを詰める。で、SHのコンビが外切りでプレッシングを仕掛ける。曖昧な場面もあったけれど、基本形はこんな感じだろう」
「にくいのはカンセロ。可変式のキーマンであるサカを早めに捕まえに行く場面が目立った。で、カンセロのあけたスペースを残りの3バックのメンツだろう。大外にアケがいるのがにくい。アーセナルの攻撃は左サイドから繰り出されることが多い。で、その逆サイドにアケが控えていることで、カバーリングでなんとかしよう作戦とも言える」
「ぺぺがクロスに飛び込んできてもアケなら対応してくれそうだもんな」
「で、自陣に引いたらこうなる」
「最終的には442。カンセロはサイドバック。ボールを保持しているときは偽サイドバック。ただし、3バックでビルドアップしているときはインサイドハーフ」
「偽サイドバックとインサイドハーフは地味に違うか」
「地味に違うな」
「というわけで、この試合はマンチェスター・シティの奇策の前にアーセナルはちょっとした混乱で失点をする。それでも前半にチャンスを作るがエデルソンに止められてしまう。シティもチャンスが多かったわけではないので、何だか不思議な試合だったな。マンチェスター・シティがうまく時間を消化したというか」
「マンチェスター・シティの土俵に誘い込まれたという意味では、グアルディオラのプランがそれなりに機能していたとみるべきだろうな」
「最後にアーセナルについて少し」
オーバメヤンとぺぺ
最後の図でも分かる通り、アーセナルの攻撃は左サイドに人員が多い。また、この試合ではボール保持は4バックを貫いていたが、ティアニーとサカが可変式のキーマンになっている。ときにサカはオーバメヤンの位置に合わせてレーンを調整できる術を持っている。そのサカを試合から追い出そうとしたグアルディオラの策は論理的だったと言えるだろう。
また、後半のアーセナルは442でマンチェスター・シティのボール保持に対抗するようになっていった。つまり、オーバメヤンは前線に残し、ぺぺはサイドハーフのタスクを担っている。結果として何が起きているかというと、右サイドはほとんど出番がない。機能していないのではなくて、機会が少ない。これで結果を残せ!というのはなかなか酷である。オーバメヤンを前に残したいゆえの可変システムならば、根性でオーバメヤンを中央で使ったほうが良い。ぺぺを解き放つことで得られるメリットや、左右の攻撃機会の均等によって、相手はもっと様々な対応を迫られるようになるだろう。アルテタがどうするかは見守っていきたい。
ひとりごと
グアルディオラの今回の奇策の中で一番驚いたのは、撤退したときにウォーカーがセンターバックをやっていたことだ。そして、普通にオーバメヤンを止めていた。なかなか恐ろしい。
アーセナルはもっと3バックでボールを運ぶ場面が見られても良かったと思う。一見、無駄に見えるかもしれないが、その無駄が駆け引きになることもしばしばである。ティアニーが残って、レノを使いながらという場面がもうちょっと見たかった。
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