カナダ対ボスニア・ヘルツェゴビナ ~様々な幻影との戦い~

FIFA World Cup 26

はじめに

この試合はJAPAN ANALYZING FESTIVAL ’26でドラフトで獲得した試合になります。カナダ対ボスニア・ヘルツェゴビナを選んだ理由を先に発表します。なお、他に誰も指名しなかった試合です。人気なし!な対戦カード!!!ラッキーだったぜ。

カナダとの出会いは、だいたい4年前。カタールワールドカップ直前の親善試合で、日本はカナダと試合をしました。そのときに「カナダ、いいサッカーするじゃねえか」と感嘆したことを4年経っても覚えています。なので、カナダを指名。

ワールドカップの試合をたくさん見ようとなると、あとになればなるほどに死にそうになります。なので、元気なうちにやりたい!と。なので、初戦のカナダ対ボスニア・ヘルツェゴビナを選びましたとさ。でも、今日は朝の7時から17時までグラウンドにいたので、すでにヘロヘロなのさ。

平日の試合にすればよかったぜ。というわけで、話題は試合に移ろっていきます。

自分の幻影との戦い

カナダの監督はJesse Marschです。通称・マーシュ。マーシュ監督には実は少しだけ思い入れがあります。かつてストーミングという言葉が存在していたことを賢明なる読者の方々は覚えているでしょうか。ボール保持でまったりする展開に対して、嵐のように相手陣地、ゴールに迫り続けることを表現している言葉です、たぶん。

なるほど、そういう言葉があるのか?と実際にストーミングっぽいサッカーを探してみたのですが、ほとんど見当たりませんでした。当時のクロップはだんだんとマンチェスター・シティのように変化していき、ライプツィヒを筆頭とするレッドブルグループも強くなるにつれて、ストーミングだけでは生きてはいけないと、ノーマルなサッカーを志向するようになっていきます。

ラングニックに率いられた2部時代のライプツィヒとかは、まさにストーミングだったのかもしれませんね。で、探しに探してとうとうストーミングと表現しても差し支えないだろうチームを見つけました。それがマーシュ監督に率いられていた時代のザルツブルクです。ちなみに、ハーランド、ファン・ヒチャン、ミナミーノの時代です。確かリヴァプールも倒した記憶があります。その試合によって、ミナミーノがリヴァプールに引き抜かれたような。

時は経ち、マーシュはカナダの代表監督になり、ボスニア・ヘルツェゴビナを迎えます。自国開催の初戦なので、カナダも大盛り上がりだったでしょう。

試合が始まると、計画されたキックオフを披露し、高さで勝るボスニア・ヘルツェゴビナに対して、準備してきたショートコーナー、トリックを惜しげもなく見せていくカナダ。この試合にかける思いを感じさせる序盤戦となりました。

カナダがボールを保持するのかと眺めていると、ボスニア・ヘルツェゴビナはどんどんロングボールを放り込みます。チェコを彷彿とさせる展開ですが、【4222】に変化するボスニア・ヘルツェゴビナは空中戦に備える人、セカンドボールを拾う人のデザインに優れ、試合のペースを乱打戦のようなものにしていきました。そう、かつてのマーシュ監督がザルツブルクで表現したように。

アーセナルの幻影

加えて、ボスニア・ヘルツェゴビナはハイプレッシングを行います。カナダにボールを持たせたくないというよりは、試合のペースを早くすることで、試合の主導権を握りたかったのでしょう。ロングボールとハイプレッシングの組み合わせは試合を慌ただしいものにします。そう、まるで嵐のように。

時間の経過とともに、カナダはボールを持つ場面も増えていきますが、序盤は自分たちの配置を整える前に攻めきるしかない状況に追い込まれていました。あとの時間でカナダの真の狙いは見えてきますが、序盤のカナダは前線のクオリティのある選手たちが孤立状態でボールを受ける場面がどうしても増えていきます。

そして、ボスニア・ヘルツェゴビナのコーナーキックが炸裂します。ゴールキーパーの周りに選手を配置することで、キーパーの可動範囲を狭くしながら、ニアそらしからの押し込みが炸裂。アーセナルをリスペクトしたようなゴールが決まりました。元ネタはブレントフォードでしたっけ。でも、世界的に流行させたのはアーセナルで間違いないでしょう。このネタは多くのチームに取り入られる気がします。

真価を発揮するカナダ

スコアの変化によって、ボスニア・ヘルツェゴビナはだんだんと試合のペースを落としていくようになります。強固な【442】によるボスニア・ヘルツェゴビナの守備はカナダにとって厄介なものとなりました。

ただし、カナダも自分たちのやりたい配置の実現に成功していきます。アルフォンソ・デイヴィスの代役として出場したリッチー・ラリアが変幻自在のポジショニングを見せます。リアム・ミラーが大外マンだったことを受けて、ハーフスペースに侵入しライン間で平気でプレーしていました。

この流れに拍車をかけたのが、2トップのデイビッドとオルワセイです。トップ下のようなデイビッドは幅広く動き回り、オルワセイもボールサイドに頻繁に移動してきていました。このため、左サイドではカナダは多くの選手を集結させることに成功し、だんだんと左サイドに優位性を見出していくことになります。

渋かったのはイスマエル・コネです。果敢な攻撃参加を行うラリアの空けた席に移動することで、後方支援を進めていきます。コネが後方支援、ラリアとミラーで大外と内側を埋めながら、2トップのどちらかも参加してくれば、左サイドを攻略するには十分な選手が揃っていると言えるでしょう。

逆サイドを眺めると、右サイドバックのジョンストンもそのような振る舞いをすことは多かったです。ただし、中心はあくまで左サイド。なので、ジョンストンは後方に残って3バックでビルドアップに強力する場面もありました。そのため、妙に目立たなかったブキャナンという流れになります。なお、その後の崩しのほとんどが左サイドを起点としていたことは言うまでもありません。

教科書のような強度の高い試合

ボールを保持し、攻撃を続けていくカナダに対して、ボスニア・ヘルツェゴビナはときどきのカウンターとときどきのセットプレーで対抗します。その姿勢は若干のチェコ感を感じさせましたが、【442】で相手にプレッシングをかける場面、かけない場面の判断は秀逸でした。

欧州で見られるような試合だったねと試合後に振り返ったのですが、その理由はこのあたりにあります。ボスニア・ヘルツェゴビナは連続性の高い守備を披露したので、カナダは常にボールを動かす判断を強いられました。つまるところ、自分たちで試合の主導権を握るためには、さらに回転数を上げることでプレッシングを回避するか、もしくは回転数を抑えた状態でのプレーを可能にすることで、相手にプレッシングを諦めさせる必要があります。

後半になると、カナダはポケ凸を繰り返すようになります。ボスニア・ヘルツェゴビナからすれば、サイドハーフやセントラルハーフが執拗に対応するのですが、そうするとどうしてもマイナスが空きます。このエリアを利用して攻撃をやり直しながらハーフスペースの攻略を狙い続けるカナダは巧みでした。コラシナツのスーパークリアーもこのストーリーから後半序盤に生まれます。

ボスニア・ヘルツェゴビナからすれば、最後まで強度を維持したかったでしょう。交代で選手をいれながらとなりましたが、さすがに最後までは持ちません。さらにいえば、ゴールを守るに集中すればそれが可能なチームとも言えます。こうなると、何が正しくて何が誤っているかは非常に綱渡りの判断になります。チャンピオンズリーグのファイナルでアーセナルが早い段階でゴールを守るに移行したように。

カナダの奥の手は交代選手たちが明らかにパワーを持っていることでした。交代した選手が守備でパワーを見せることは少しむずかしいかもしれません。長友には密かに期待しています。アリ・アーメドは孤立した状態からの何かを示すことができることを颯爽と証明し、プロミス・アキンペルは明らかにサイズでもボスニア・ヘルツェゴビナに匹敵する雰囲気を示しました。

流行りの言葉を使えば、ゲームチェンジャーになるんでしょうか。最後に登場したラリンもサイズは半端なかったです。カナダの同点ゴールは、もうパスコースないじゃねえか、なら自分でいくしかないだろのコネがきっかけとなっています。

ワールドカップでは負けたことしかなかったらしいカナダが同点に追いつき、その後もゴールに迫るものの、試合はそのまま終わります。

ひとりごと

真っ向からのぶつかりあいだったので、今のところはベストバウト。南アフリカのご乱心、チェコの謎行動を考慮すると、両チームの長所を活かした殴り合いは今大会で初めてであり、見応えがあった。ボスニア・ヘルツェゴビナからすれば、もう少しボールを保持する時間を増やせれば、最後まで守備の体力を残せたかもしれないという反省は、どこの浦和レッズさんなのでしょうかと考えると、サッカーは世界までちゃんと繋がっていますね。

あとカナダの配置を【325】とするのはいささか強引だなと感じました。基本はサイドバックがハーフスペースに移動することで、攻撃の枚数を増やしながらも、そのエリアに2トップも顔を出すような感じです。だからといって、現代的な【442】かというと、それも少し違います。

恐らく理想は【226】でボックスビルドアップだったのではないかと。ただし、右サイドバックのジョンストンは残ることが多かったので、【325】と言いたい気持ちもわからないでもない。でも、5人が整理整頓されているというよりは、ボールサイドの密集を優先しているような場面ばかりだったので、それはそれで流行を取り入れているというか。

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