チームの準備とセンターバックの使命 ~マンチェスター・ユナイテッド対スパーズ~

マッチレポ1415×プレミアリーグ

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久々のファン・ハール×マンチェスター・ユナイテッド。ディ・マリア、ファン・ペルシー、ファルカオはどこへ消えた?と聞きたくなるスタメンだが、バランスは決して悪くないメンバーがスタメンに名を連ねている。現在の順位は4位。目標はチャンピオンズリーグのストレートインが現実的だろう。チャンピオンズリーグの出場権を獲得することができれば、ひとまずは成功と言えそうだ。

ケインが大ブレイクを果たし、気がついたら他のポジションでも序列の変化が起きている。全体的に若いメンバーが多いので、チャンピオンズリーグなどの経験や何らかのタイトルを獲得することで、一気に覚醒し、チーム力が増す可能性が高い。よって、是が非でも手に入れたいチャンピオンズリーグの出場権。この試合に勝てば、チャンピオンズリーグの出場権が現実的に見えてくる大事な試合。

■同じ境遇の中で

最初に両チームの守備の形から見ていく。

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マンチェスター・ユナイテッドは4-1-4-1の形で対抗。スパーズの4-2-3-1に噛み合わせることで、スパーズの中盤の自由を奪う。もちろん、マークを受け渡すこともあるが、キャリックは幅広くエリクセンについていっていた。ファン・ハールの計算としては、スパーズのセンターバックにボールを持たせても何も起こせないと考えたのだろう。自分のエリアを飛び出してボールを受けようとしたのはメイソン、ベンタレブ、エリクセンくらいだった。よって、その選手をしっかりと捕まえることで、スパーズの攻撃はまったく機能していなかった。

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スパーズの基本形は4-4-2で対抗。しかし、キャリックのポジショニングに対応しないと、フルボッコ確実である。よって、4-4-1-1に変更して、対抗する。マンチェスター・ユナイテッドはセンターバックが横幅を取ることで、スパーズの4-1-4-1に対抗する。

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しかし、ケインは頑張る。ときどき、キャリックへのパスコースを規制しながら、エリクセンも助けに来る。こうして、奇しくも両チームが似た境遇におかれることとなった。センターバック以外のエリアは、数的同数か不利。つまり、センターバックのビルドアップ能力とチームの準備にすべてが託された形となった。しかし、前述したように、スパーズはセンターバックのビルドアップ能力でも、チームの準備でもいい形を作ることができなかった。

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チームとしての準備は、フェライニの空中戦。スモーリング、デ・ヘアから質の高いロングボールが供給されたので、フェライニは空中戦で勝ちまくっていた。ただし、フェライニの場合は質の低いボールでも競り勝てるだろう。序盤のマンチェスター・ユナイテッドはスパーズのプレッシングに慌ててしまう場面もあったが、フェライニへのロングボールを中心にボールを前進させることによって、試合のペースをコントロールする立場を手に入れていった。

ボールを保持できるようになると、スモーリングの運ぶドリブルからマンチェスター・ユナイテッドは試合を組み立てていく。右サイドは、エレーラとマタのスペイン人コンビが得意のポジショニングでボールを受けることに成功する場面が多かった。バレンシアを加えた、3人の旋回によるポジションチェンジは、スパーズの守備の役割を混乱させるには十分だった。左サイドでは、サイドにはっているヤングをブリントが徹底的に追い越す形がメイン。また、フェライニが相手のDH、CB、SB、SHの間の四角形のスペースにポジショニングすることが多く、サイドへのパスコース確保、または自分が活きる選択がうまくはまっていた。

こうして攻守に機能不全に追い込まれたスパーズ。さらに、ミスが出れば失点につながるのも当然の理。シャドリが必要以上にボール保持者にプレスをかけたことで、キャリックがフリーになる。そして、キャリックのスルーパスからフェライニが決めて先制。2点目はコーナーキックのこぼれ球をキャリックに押し込まれる。2点目は不運が重なったとしても、3点目はベンタレブのビルドアップミスからルーニーが技術を見せつけて3-0。ダイアーにとって試練の日であった。

攻守に機能不全に追い込まれたスパーズ。ポチェッティーノは修正する必要がある。最初の手は、30分にタウンゼント→デンベレ。デンベレをトップ下に、エリクセンを左サイドに、シャドリを右サイドに移動させた。交代の意図はデンベレのキープ力とエリクセンをサイドから中央に移動させることで、相手の守備の基準点を狂わせにかかったのだろう。実際にデンベレが強引にボールをキープすることで、時間をかせぐことはできていたが、あくまで個人を入れ替えただけでどうにかなる状態ではなかった。その後の采配はメイソン→ラメラ。シャドリ→懐かしのアデバヨール。選手の位置を入れ替えながら、また、マンチェスター・ユナイテッドが自陣に撤退していったことを考えると悪くない采配だが、デ・ヘアを驚かせるような場面はほとんどなかった。

形としては、ボランチ落としのセンターバックの運ぶドリブルの推進、相手の裏への飛び出しの連続などを期待していたのだが、チームとしてあまり準備されていないようだった。また、死なばもろともの枚数合わせのプレッシングを仕掛けることも考えられたが、デ・ヘアに蹴っ飛ばされることを考えると、打つ手としては適切でなかったかもしれない。実際に後半にはデ・ヘアを使ったプレッシング回避に苦しむ場面も見られた。こうして、3-0のまま、試合を終わらせることに成功したマンチェスター・ユナイテッドがチャンピオンズリーグの出場権にぐっと近づいた試合となった。

■独り言

スコアレス状態の両チームのおかれた状況は似ていた。センターバックがどうにかしないとけない状態。フェライニを準備し、運ぶドリブルなどで試合を動かす準備ができていたスモーリングを要したマンチェスター・ユナイテッドと、チームとしてどうする?がなかなか見えてこなかったスパーズ。その差が内容にも結果にも出たという意味では、非常に妥当な試合だったと言える。

スパーズはマンマーク的なマンチェスター・ユナイテッドの守備に苦しんだ。ゾーン・ディフェンスを苦しめる相手の隙間にポジショニングする方法への対抗策として、マンマーク的なやり方はかなり前から流行している。迎撃型の3バックがその走りといえるだろう。フリーでボールを受ければ、フィジカルなんて関係ないが、その選手をどこまでも捕まえてけばフィジカル勝負になる不思議。だが、マタやエレーラが見せたポジションチェンジの多用でマンマークはあっさりと瓦解する。答えは必ずピッチに落ちている、という例でした。

また、フリーでボールを持っています。味方がフリーならボールを放してもOK。だって、味方もフリーなんだから。しかし、味方がフリーではありません。だからこそ、運ぶドリブルで相手の陣形を変化させる必要がある。味方に時間とスペースを与えるために。これはセンターバックに限らない話。運ぶドリブルをしている時間で味方がフリーでなくなっていったら本末転倒。これはサッカーの本質の1つです。お忘れなきよう御願います。

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