【無敗記録39の終わりに】バルセロナ対レアル・マドリー

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

リーグ戦のポイント差を考慮すれば、両チームにとって大きな意味を持つ試合ではなかった。たとえクラシコだったとしても、ミッドウィークに控えるチャンピオンズ・リーグがどうしても両チームの脳裏にかすめる状況と言える。しかし、ヨハン・クライフの追憶試合という意味がこの試合に足されたことによって、バルセロナにとって、絶対に負けられない試合となった。また、レアル・マドリー側からしても、自分たちの正しさを証明する、誇りを取り戻すには持って来いの状況となっている。

バルセロナのスタメンは、ブラボ、ジョルディ・アルバ、マスチェラーノ、ピケ、アウベス、ブスケツ、ラキティッチ、イニエスタ、ネイマール、スアレス、メッシ。泣く子も黙るスタメンが並んでいる。欧州と違い、ワールドカップの予選という公式戦を戦っている南米勢の疲労を考慮すると、このメンバーが本当に最強なのかは、非常に気になるところだ。それでもこのメンバーを並べなければいけない事情があったのだろう。

レアル・マドリーのスタメンは、ケイラー・ナバス、カルバハル、ぺぺ、セルヒオ・ラモス、マルセロ、カゼミーロ、モドリッチ、クロース、ベイル、ベンゼマ、クリスチャーノ・ロナウド。ヴァランが怪我のため離脱。ジダン監督に賛否両論はあるが、途中就任という困難さをうまく乗り切っていると感じる。ジダン就任とともに、スタメン争いも激化。クラシコに勝てば、チームと監督の評価がうなぎのぼりになることは間違い無し。そういう意味ではお得な試合とも言えるか。もちろん、負ければぼろくそに言われることも間違い無しなので、博打打ちにはオススメかもしれない。

中央にポジショニングするメッシは、機能していたのかどうか

バルセロナのシステムは4-3-1-2。メッシがトップ下に配置された。前線のネイマールは左サイド、スアレスは中央にポジショニングしていた。よって、右サイドは空となる。この空エリアを埋めるために、アウベスの高いポジショニング、ラキティッチのフリーランニングを準備していた。メッシを中央で使う意図は、相手の守備基準の混乱、ボールポゼッションを安定させることなどが上げられる。なお、守備の場面のバルセロナは、メッシとスアレスを1列目とする4-4-2と4-3-3(メッシは中央にいるから右サイドはいない)を併用していた。併用といっても、4-3-3はメッシがいないので、機能するわけもないのだけど。よって、ラキティッチが奔走する形で何とかしていた。

レアル・マドリーのボールを保持していないときのシステムは、4-3-3。自陣に撤退を基本とし、相手のゴールキックや自陣深くでのスローインのときだけ、プレッシング開始ラインを高めに変更していた。ワントップのベンゼマはブスケツを担当し、相手のセンターバックへのプレッシングは捨てる。クリスチャーノ・ロナウドとベイルは相手のサイドバックのポジショニングに従属せずに、パスコースを制限するポジショニングでサイド攻撃に対抗していた。つまり、バルセロナにボールをもたせるけれど、しっかりと守備で跳ね返します!という意図の守備を行ってきた。

メッシのトップ下よりも、バルセロナのサイドバックのポジショニングに罠があった。メッシのいないエリアを埋めるために高いポジショニングをとるアウベス。一方で、ジョルディ・アルバはピケ、マスチェラーノと3バックでビルドアップを行っていた。サイドバックによる役割の差異は、ネイマールとメッシのポジショニングの差異から来ている。メッシは中央にいるが、ネイマールは外から中へ侵入する。よって、前方にネイマールがいるジョルディ・アルバは高いポジショニングを取る必要が無い。

また、ジョルディ・アルバのポジショニングには、さらに罠があった。ジョルディ・アルバやアウベスが高いポジショニングをとると、レアル・マドリーのサイドハーフ(クリスチャーノ・ロナウドとベイル)は、この状況を解決する選択をしなければならない。前述のように、チームの約束事として、レアル・マドリーのサイドハーフは、パスラインを制限するポジショニングで、相手のサイドバックの高いポジショニングに対抗することになっていた。アウベスに気を使う必要のあるクリスチャーノ・ロナウドに対して、ジョルディ・アルバが3バックのエリアにいれば、ベイルはそこまで気を使わないで良いとなる。これが罠であった。ジョルディ・アルバのポジショニングでベイルをピン留めすると、レアル・マドリーのサイドハーフとサイドバックの間のエリアは広がる。この位置にイニエスタがポジショニングして奇襲を仕掛ける場面が目立った序盤戦だった。

このサイドバックとサイドハーフの間のエリアは、右サイドも同じように使われる。クリスチャーノ・ロナウドはポジショニングでパスラインを制限したいが、ボールを持たされているバルセロナのビルドアップ隊は、フリーであることが多かった。フリー状態ならば、難しいコースでも平気でパスを通すバルセロナの面々。アウベスにロングボールが渡る場面もあり、レアル・マドリーからすれば、なんとも言えない雰囲気が漂っていく。バルセロナの狙いとして、レアル・マドリーのサイドハーフはポジショニングを下げて守備をしない。だから、レアル・マドリーの3センターの脇=サイドバックとサイドハーフの間を狙おうと決めていたのだろう。

序盤に関して言えば、この仕組みを利用して一気呵成に攻撃を仕掛けるバルセロナ。圧倒的なボール保持からの定位置攻撃とカウンター、速攻を織り交ぜた多彩な攻撃に、レアル・マドリーは防戦一方となっていく。レアル・マドリーの攻撃はベイルの裏にロングボールによる速攻の一択。ただし、まったくボールが通らなかった。バルセロナの素早いプレッシングにたじたじとなり、ひたすらに我慢の展開が続いていく。この我慢の展開で活躍したのがカゼミーロ。ボール奪取が持ち味のカゼミーロは、何度もボールを奪い返すことで、バルセロナの勢いを食い止めることに成功している。メッシが中央にいたこともあって、マークすべき、または止めるべき対象がそばにいたことは、カゼミーロにとってラッキーだったかもしれない。

15分が過ぎると、レアル・マドリーはバルセロナの狙っているエリア(サイドハーフとサイドバックの間)をしめるようになる。インサイドハーフがサイドに流れたり、ベイルやクリスチャーノ・ロナウドがポジショニングを下げたりすることで、バルセロナは狙っているエリアを使えなくなる。この守備の修正によって、レアル・マドリーは守備で相手の攻撃に慣れる時間を得られるようになる。ケイラー・ナバスの出番も徐々に減っていき、全員守備(ベンゼマは怪しい)で、しっかりとバルセロナに対抗するように変化していった。

時間がたつにつれて、レアル・マドリーは攻撃に出るようにもなる。30分が過ぎると、バルセロナの攻撃の精度が落ちたこともあって、レアル・マドリーがボールを保持する場面もときどき出てくる。バルセロナは4-4-2で守ることが基本路線のようだが、選手の動きを見ていると、4-3-3で守っているかのように錯覚をすることもあった。つまり、撤退守備は不安定極まりない。しかし、メッシを中央に配置したこともあってボール保持の時間は長くすることはできていた。よって、その不安定極まりない守備が目立つ場面は非常に少なかった。しかし、時間の経過とともにその機会は増え、最後にはベンゼマのボレーの決定機を作られてしまう。守備を見ていると、ボール保持者へのプレッシングと後方の列との連携がうまく噛み合っていない印象を受ける。前から奪いに行くんだという選手と、その動きによって発生する距離が非常に危険。

左サイドをイニエスタとネイマールの個人技やコンビネーションでチャレンジしていたのに対して、右サイドは誰と誰がコンビネーション、または単騎特攻をするのかが曖昧だった。メッシを中央に配置した弊害だが、ボール保持できたこととメッシの守備を免除したことによる体力温存を考えると、ポジティブ、またはネガティブ捉えるべきか、非常に悩ましいメッシの中央配置だった。

アルダ投入の是非と他の選択肢

ハーフタイムを挟んで、レアル・マドリーは攻撃の方向性を修正。メッシのいない右サイド(レアル・マドリーからみたらマルセロサイド)からのカウンターを増やすことで、ラキティッチを苦しめ続けた。マルセロの攻撃参加の回数が増え、レアル・マドリーはカウンターの精度向上を狙った。

バルセロナはギアを巻き直すように、前半の序盤戦のようなスピーディーな攻撃を見せる。南米予選を戦った選手の疲労を考えると、スコアレス状態が続く展開はできれば避けたい。よって、積極的に得点を取りに行くバルセロナと、マルセロを起点としたカウンターで対抗するレアル・マドリーという構図になった。

55分にバルセロナがコーナキックから先制。ネイマールのブロックで時間を得たピケがほぼフリー状態でヘディングを決める。

60分にはオーレの大合唱。先制したことで、無理に攻撃をする必要がなくなったバルセロナ。しかし、この大合唱の直後にレアル・マドリーが同点ゴールを決める。ジョルディ・アルバのパスミスからレアル・マドリーのカウンターが発動。ブスケツをクロースで回避したことで、攻撃が加速した。そして、前半から発生していたボールを奪いに行った2列目が3列目との間を埋めきれないエリアをマルセロに利用される。最後はベンゼマのボレーが炸裂。

後半のバルセロナは4-4-2で、中盤が菱型。ネイマールとスアレスはサイドから中央に侵入。中央の菱型で中盤にフリーマンを作る狙い。レアル・マドリーはベンゼマをブスケツに当てることで、フリーマンを作らせない狙いを前半に見せた。しかし、非常にベンゼマの働きが曖昧だったこともあって、この狙いを継続するバルセロナ。ときどきメッシが右サイドに移動すると、いつもの4-3-3に戻る。あっさりと同点に追いつかれたことで、また攻撃に出なければならないバルセロナ。精神的にはきつい状況だ。

75分にラキティッチ→アルダ。アトレチコ・マドリード戦をにらんだというよりは、イエローカードをもらっっていたことと、より攻撃的に振る舞うための変更だろう。アルダを右サイドに置くことで、メッシを中央に置くことの問題を減らす作戦に出た。

77分にベンゼマ→ヘセ。カウンターで活きそうなヘセには守備でも貢献してもらおうという作戦。ヘセは相手のセンターバックにプレッシングをかけ続けることで、相手の攻撃機会を減らそうと頑張っていた。

83分にセルヒオ・ラモスが退場。

85分にクリスチャーノ・ロナウドが逆転ゴールを決める。10人になったレアル・マドリーだったが、カルバハルがボールを奪ってからカウンターが炸裂。マスチェラーノからネイマールへの縦パスが少し軽率だったか。その前にもベイルのヘディングがノーゴールにされるなど、危険な雰囲気が漂っていたバルセロナの守備。よりにもよって、クリスチャーノ・ロナウドに逆転ゴールを許してしまったことが悔やまれるだろう。試合はこのまま終了する。

バルセロナの守備を見ていると、今季のトゥヘルのドルトムントに守備の弱点が似ている。結論をいうと、組織をばらばらにされると、まったく守れなくなる。問題は組織がばらばらになる理由が相手の動き、または自分たちの動きによってもたらされているのかどうか。この試合の前半はボール保持かボールを奪われての切り替えが機能していた。後半になると、得点を奪うためにリスクをとった攻撃を仕掛けただけ、守備の準備が疎かになった。それでもボールを奪い切れればいいのだけど、レアル・マドリーの個々の能力は高い。かつてウィルシャーにプレッシングがかわされたように、連動しない守備で相手の攻撃を止めきれる選手はあまりいない。相手にゴールを許す前に、メッシ、ネイマール、スアレスが得点を決めるという計算になっているのだけど、この試合ではその計算がうまく機能しなかった。

むろん、アルダの投入でその穴は大きく広がった。メッシ、ネイマール、スアレスを交代できないルイス・エンリケに対して、ベイルとベンゼマを平気で交代できるジダン。この差は地味に大きい。危険な賭けといっても、他に選択肢はなかったルイス・エンリケと、いざとなったらクリスチャーノ・ロナウドも交代したこともあるジダン。その選択肢の差が結果に影響する日が来るのかどうかは、チャンピオンズ・リーグの再戦でわかるだろう。

ひとりごと

ポイント差は7あるので、バルセロナの優位は崩れない。この試合でレアル・マドリーが得られたものは、誇り。チャンピオンズ・リーグで再戦しようものなら、この誇りはあっさりと消え去るかもしれない。疲労が溜まっていそうなバルセロナは、ミッドウィークにアトレチコ・マドリードとの試合がある。ここで負けることがあれば、バルセロナはゆっくりと崩れていくかもしれない。リーガタイトルを本気で狙うならば、勝負どころはここしかないシメオネ。逆にアトレチコ・マドリードを突き放し、クラシコで失った自信を取り戻すためには負けられないバルセロナ。レアル・マドリーがちょっとだけ楽しくしたリーガエスパニョーラにとっても大事な試合でシメオネが何をしてくるか非常に楽しみだ。

コメント

  1. 匿名 より:

    バルサがホームでの連敗を免れたことで
    双方がユーロ・クラシコの実現を熱望してもおかしくない状況に。
    と言っても、レアルはPSGかシティを引きそうな気がしますが。

    • らいかーると より:

      匿名様

      コメントの返信が遅いゆえですが、バルセロナは残念でした。準決勝でマドリード・ダービーは楽しくないので、シティかバイエルンとやってほしいです。

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