マンチェスター・シティのスタメンは、ブラボ、クリシー、オタメンディ、ストーンズ、フェルナンジーニョ、ギュンドアン、サネ、スターリング、デ・ブライネ、シルバ、イヘアナチョ。ミッドウィークにバルセロナ戦を控えているマンチェスター・シティ。サニャが負傷離脱している&サバレタを温存するために、3バックで試合に臨んだ。フットボリスタで特集されてから、結果が出なくなっているのはたまたまだろう。そういう法則があれば、なかなか興味深いが。カンプ・ノウへのグアルディオラの帰還が話題になっているが、その前にカンプ・ノウで同じ時を過ごしたクーマンとの対決が待っている。
エバートンのスタメンは、ステケレンブルグ、コールマン、ジャギエルカ、ウィリアムズ、オビエド、バリー、クレバリー、ゲイエ、デウロフェウ、ボラシエ、ルカク。クーマンを監督に迎えて、かつての順位に戻りつつあるエバートン。クーマンはグアルディオラとかなり仲が良いらしい。親友対決だ!ということで、注目を集めている試合だ。バレンシア時代にシルバがお世話になったような記憶がある。もしかしたら、マタかもしれない。バレンシア時代の印象が強烈だが、プレミアリーグでは着々とステップアップを遂げている印象だ。
アラバロールをするなら、餅は餅屋作戦
サイドバックの選手がアンカーの横でプレーすることを、アラバロールと呼んでいる。この動きは相手のカウンターに対する策として生まれたものだ。ポリバレントなアラバはセンターでのプレーを攻守ともに苦にしないタイプだった。よって、サイドバックだけでなく、プレーエリアを広げることで、アラバ自身にとって、そしてもちろんチームにとってもポジティブな策だった。
マンチェスター・シティに在籍しているサイドバックは、センターでのプレーをしていましたよ、という選手は特にいない。思い出してみても、クリシー、コラロフ、サバレタ、サニャ。そんな彼らがアラバロールをこなしているのはなかなかの衝撃だった。ただし、アラバに比べれば、攻撃面での物足りなさは、どうしても否めない。だったら、最初からセントラルハーフの選手を置いてしまえばいい。この試合では、ギュンドアンとフェルナンジーニョがセントラルハーフでコンビを組んだ。このポジション変更によるデメリットは、3バックでの守備を強いられることだろう。クリシー、ストーンズ、オタメンディは数的均衡のなかでプレーする機会が多くなった。その代わりのメリットが、マンチェスター・シティの攻撃機会の増大に繋がる試合となった。
初手でしくじったクーマン
マンチェスター・シティは流れの中で3バックに変化することは、今までの試合でもよくみられていた。しかし、試合開始から明確な3バック(フェルナンジーニョが下りるではなく)をしてきたことはほとんどなかった。よって、エバートンは守備の修正に時間を強いられる展開となった。特に曖昧だったのがデウロフェウとボラシエ。サイドハーフの彼らは、マンチェスター・シティのサイドバックを守備の基準点とするはずだった。しかし、マンチェスター・シティにサイドバックはいない。ちなみに、ウイングはスターリングとサネだった。
守備の基準点を失ったサイドハーフコンビは、マンチェスター・シティの3バックに数的均衡プレッシングで対抗しようとした。しかし、3バックの前にいるフェルナンジーニョ、ギュンドアンを捕まえる選手を、エバートンは準備していなかった。バリー率いる3センターが前にスライドすれば、ギュンドアンたちを捕まえることができる。しかし、3センターはシルバ、デ・ブライネと下りてくるイヘアナチョの対応に追われていた。つまり、マンチェスター・シティのインサイドハーフによるピン止めが、エバートンの3センターに行われた。よって、ビルドアップの出口として、フェルナンジーニョたちが機能する展開となった。さらに言えば、エバートンのサイドハーフはプレスバックをほとんど行わなかったので、4-3でマンチェスター・シティの攻撃に耐えるエバートンという展開で試合は進んでいった。言うまでもなく、試合開始とともにフルボッココースであった。
トライアングルのスイッチ
バルセロナの攻撃で特徴的なのは、スイッチだ。かつてビラノバドリルとして有名になった動き方だ。具体的に言うと、ボール保持者以外の三角形の頂点の選手たちがポジションチェンジをする。ポジションチェンジによって、相手を動かし空いたスペースを使う。この動きをバルセロナはピッチのあらゆるエリアで行なう。普通のチームだったら、相手陣地で相手の守備ブロックを崩すときに行なう策だ。しかし、バルセロナやグアルディオラに率いられたマンチェスター・シティは、あらゆるエリアでこのトライアングルのスイッチを行なう。
この試合で頻繁に繰り返されたのが、インサイドハーフとウイングのスイッチだ。バイエルンのウイングほどに質的優位で、相手に迫ることのできる選手がマンチェスター・シティにはいない。よって、マンチェスター・シティでは、インサイドハーフの支援をうけてサイド攻撃をすることが多い。インサイドハーフとウイングのスイッチでボールを前進させる。サイドに流れたインサイドハーフにボールが入ると、ウイングがまたサイドに流れる。などなど、そのあとのパターンも確立されてきている。
ダイヤモンドからの4人目の動き
マンチェスター・シティのインサイドハーフは、デ・ブライネとシルバが担うことが多い。言うまでもなく、このコンビはマンチェスター・シティの核と言っていいだろう。よって、彼らのポジショニングに相手のポジショニングは従属してしまうことが多い。つまり、インサイドハーフのポジショニングによって、相手を動かし、ない場所にスペースを作ることができる。このスペースを利用するのがうまいのがイヘアナチョだ。イヘアナチョは4人目として、チームの攻撃に貢献することができる。
例えば、ボールをギュンドアンがボールを持つ。左手(左サイド)にはスターリング。前方(相手の最終ライン)にはシルバ。右手(相手のセントラルハーフの間)にはイヘアナチョという場面が多かった。なお、これが逆サイドになると、ボール保持者がフェルナンジーニョ。右手にはサネ。左手にはイヘアナチョ。前方にはデ・ブライネとなる。まるで、フットサルの3-1システムのような形だ。ボール保持者の位置は基本的に固定となり、この3人がスイッチをすることで、相手を動かして崩すのがマンチェスター・シティの得意技だ。特に繰り返された形が、前方のインサイドハーフがイヘアナチョの方に降りて相手を引き出し、相手がつれたら、ウイングが飛び出す形だろう。
やっぱり繰り返すアイソレーションと2人の戦術
バイエルンほどに質的優位で相手に迫ることは、確かにできない。バイエルン以上に質的優位で相手に迫れるチームは、バルセロナくらいだろうか。ないものはない。というか、バイエルンを基準にすることが間違っている。トライアングルやダイヤモンドの形で相手を密集させると、サイドチェンジでアイソレーションを行なうのはバイエルン時代から続いているグアルディオラの得意技だ。
この試合では序盤にサネがオビエドを何度も攻略することに成功している。また、後半には右サイドに移動したスターリングが積極的な仕掛けを見せていた。アイソレーションからの突撃はチームで許された選手の権利なのだろう。失敗する権利と言ってもいい。サネが右サイドからのカット・インでものになってくれれば、マンチェスター・シティの破壊力はさらに増していくだろう。また、後半にデ・ブライネをサイドで起用したように、サイドでの質的優位にはこだわっていく可能性が高い。ギュンドアンの存在が、デ・ブライネのポジションを柔軟なものにしていくだろう。
また、前述のように、アイソレーションのようで、インサイドハーフの支援もある。選手の外を追い越すオーバーラップと内を走り抜けるインナーラップを行なうことで、サイド攻撃の精度をあげようという意図を読み取ることができる。その代わりに、中の枚数が減ってしまうのが玉に瑕だが。
クーマンの修正とステケレンブルグの躍動
そんなマンチェスター・シティの攻撃に対して、クーマンが修正をしたのは25分過ぎ。そこまではよく我慢していたというか、なぜ動かなかったのかというか。ただし、4-3での守備と引き換えに、マンチェスター・シティの3バックとエバートンの3トップが数的均衡状態だったので、このカウンターでどうにかならんかなと様子を見ていた可能性は高い。ただし、どうにもならんわな、というわけで、修正をする。
マンチェスター・シティのキーは、フリーのセントラルハーフコンビ。よって、ここを抑えないといけない。なので、サイドハーフのデウロフェウたちに見させる。よって、エバートンのシステムは4-3-2-1のようになる。この変更によって、マンチェスター・シティはセンターバックが出て来るようになるが、どちらかというと、インサイドハーフのサポートでボールを前進させる場面が増えるようになった。ビルドアップの出口という役割が増えたこともあって、マンチェスター・シティの攻撃の勢いをほんの少し防ぐことはできていたと思う。それにしても、デウロフェウはふらふらしていた。
攻撃の勢いや機会が減ったとしても、攻撃を延々と繰り返していれば良いマンチェスター・シティ。前半の終了間際にはシルバが倒されてPKを奪う。しかし、このPKをステケレンブルグが止める。そして、前半が終了する。
後半になると、デウロフェウに見切りをつけるクーマン監督。ただし、この交代直前にデウロフェウは決定的なシュートを放つなど、カウンターで活躍をしそうだった。マッカーシーの登場で、エバートンのシステムは、4-3-1-2のようになる。トップ下にはクレヴァリー。クレヴァリーが走って死んでを行うかわりに、カウンターの威力を増したいみたいな計算による采配だ。後半の修正で一番ハマったのは、ルカクの位置だろう。前半の途中からオタメンディとデートをしていたルカクだが、後半からクリシーとデートをするようになる。質的優位で殴れるのはどちらかといえば、言うまでもない。そんな変更がどうこうというよりも、数的均衡状態での数少ないカウンターをエバートンが成功させる。ルカクの見事なシュートが炸裂し、エバートンが先制する。
マッカーシーの登場の前に、イヘアナチョ→アグエロでストライカーはやっぱり大事という采配をするグアルディオラ。しかし、イヘアナチョほどにチームの攻撃に絡めないアグエロ。しかし、ゴール前でのターゲットマンとしての役割を果たせるのはイヘアナチョとの違いか。エリア内で頑張り、自らPKを奪う。そして、これを自分で蹴る。でも、ステケレンブルグに止められる。
これはマンチェスター・シティの日でないかもしれんねと思ったときに、同点ゴールが決まる。いつのまにかサネと交代していたノリートのヘディングが炸裂する。守りをかためていくエバートンの前に迫っていくマンチェスター・シティ。最後にはコンパニが登場するが、ゴールには届かずに、親友対決は仲良く引き分けに終わった。
ひとりごと
PKを2本も止められてはどうしようもない。流れのなかでも、ステケレンブルグはスーパーなセーブをしていた。今日のステケレンブルグは、記憶に残るセービングを連発していた。クーマンの采配も守備を修正していく流れは見事だった。それを打ち破ったのが、いつのまにか登場していたノリートの、しかもヘディングというのも面白い。
マンチェスター・シティの3バックは、ちょっと危なっかしかった。相手にフィジカル優位の選手がいると、一気に計算が狂わされるというか。ボールを保持したときのシステムは3-2-5のようになる。ちょっとだけミシャ式ににている。でも、ミシャ式でいうウイングバックで起用されているのがスターリングとサネ。この時点で、哲学の違いにおののく。
コメント
ストーンズはアンカーをやる能力はあると思いますか?
以前の試合で、ビルドアップの時に、ジーニョとストーンズがポジションを入れ替えてビルドアップをしていたシーンがあったので、アロンソのような完全なアンカーとまではいかなくても、場面によってそういう役割を任せることが出来る選手なのかな?と少し思いました
やろうと思えば、できると思います。でも、現状を考えると、とくにやる必要性がないです。ほかに繋げるセンターバックでもいれば話は別ですが。
シティはテクニカルな選手が揃ってますけど、エラーが多かったり未熟な印象があります。
リーグではトッテナムに敗れましたが、リヴァプールとも相性が悪そうな気がします。
グアルディオラが来たばかりですので、エラーや未熟な印象をうけて当然だと思います。さすがに、年明けまでは落ち着かないかと思います。
やっぱりリヴァプールに敗れましたか。
対策したのに予想通りカウンターでやられるという展開が切ないです。
思い切りの良いプレーがやりにくくなっていきますね。