ワトフォードのスタメンは、ゴメス、ミゲル・ブリトス、セバスティアン・プレドル 、クレイグ・キャスカート、ノルディン・アムラバト、ヴァロン・ベーラミ、エティエン・カプエ、アドレネ・グエディウラ、ホセ・ホレバス、トロイ・ディーニー、オディオン・イグハロ。監督はマッツァーリ。ナポリで旋風を巻き起こしたことは、記憶に新しい。代名詞である3バックでプレミアリーグでも旋風を起こせるだろうか。
チェルシーのスタメンは、クルトワ、イバノビッチ、ケイヒル、テリー、アスピリクエタ、カンテ、オスカル、マティッチ、アザール、ペドロ、ジエゴ・コスタ。EUROで価値を高めたコンテが監督に就任。コンテ式でチェルシーを改造するのかと予想されたが、オーソドックスな4-1-4-1でシーズンを始めることにしたようだ。スタメンの特徴としては、セスク・ファブレガスがベンチにいるくらいだろうか。新戦力のカンテは、スタメンに定着したようである。
両監督の差し合い
ワトフォードのビルドアップは、3バックをメインに行われた。チェルシーがワントップでジエゴ・コスタの守備の役割が曖昧だったこともあって、インサイドハーフやアンカーのベラミーのサポートを受けずに、ボールを保持することができたワトフォード。ビルドアップの出発点は左センターバックのミゲル・ブリトス。左利きのブリトスはサイドチェンジ、同サイドでの楔のパスと、ビルドアップの出発点として機能していた。
チェルシーの考えとして、相手が3バックでビルドアップをしてくる。相応の枚数を揃えなければ、相手のビルドアップの精度を落とすことはできない。しかし、4-1-4-1を基本としているようなので、プレッシング隊に避ける枚数はジエゴ・コスタのみとなる。だったら、相手にボールをもたせる代わりに、自陣に撤退して相手の攻撃を跳ね返すことに集中するという道を選んだ。この選択は、モウリーニョ×マンチェスター・ユナイテッドと同じで、ボールを保持することにこだわりはなく、自陣に撤退した守備も必要なんだというメッセージにも感じる。
3バックによるボール保持は、システム噛み合わせ論を複雑にする。3バックへのプレッシングの役割も曖昧になるし、相手のウイングバックへの対応を誰が行なうかも事前に準備する必要がある。3バックがボールを持てたこともあって、高いポジショニングをとるワトフォードのウイングバック。ウイングバックにチェルシーのサイドバックが対応すると、中央のセンターバックと相手の2トップが数的同数のどつきあいになってしまう。イタリア人監督がそんなリスキーなことを受け入れるわけもなし。よって、ペドロを下げて、相手のウイングバックへの対応をしたチェルシーだった。
システム噛み合わせ論に対して、しっかりと枚数を用意する。相手にボールを保持させる部分は捨てる。などなど、しっかりと準備したチェルシー。試合を支配されているように見えるけれど、クルトワの出番はほとんどなかった。ただし、ワトフォードからしても、ミゲル・ブリトスからの攻撃を延々と続けることができていた。よって、なかなかチャンスにはならないけれど、別に悪くはない前半を過ごすこととなる。
チェルシーのボール保持を見てみると、ワトフォードの守備をしっかりと牽制したものになっていた。ビルドアップでは状況に応じて、カンテがセンターバックの間におりる。相手の2トップと2センターバックが数的同数にならないように非常に気を使っていたコンテだった。サイドバックも高い位置にはいかない。サイドハーフがすでに大外にポジショニングしているからだ。ビルドアップを助けるのはインサイドハーフの役割。特にオスカルは相手のインサイドハーフの守備のエリアから離れてボールを引き出すことで、ビルドアップの出口となっていた。
ビルドアップの出口となったオスカルは、同サイドのペドロとの連携、もしくはアザールへのサイドチェンジを何度も選択していた。ワトフォードの守備の方法は非常に独特だった。3-5-2になるのだが、基本は4-4-2に変化する。左ウイングバックのホレバスをサイドバックの位置に下げて、4バックを形成する。ただし、周りの選手の動きが非常にちぐはぐであった。3バックで守るのか、4バックで守るのかの約束事が入り乱れているようだった。よって、システム変換の起きるチェルシーの右サイドには時間ができる。その位置からオスカルが試合を組み立てるのは理にかなっていた。
ワトフォードからすれば、アムラバトのポジションを下げたくなかったのだろう。よって、左サイドで守備の変換が行われた。チェルシーの狙いは、アムラバトの守備にあった。よって、サイドチェンジからのアザールでアムラバトが守備をする→カウンターの威力半減。アムラバトが守備をしない→アザールで相手を破壊するという流れになっていた。チェルシーは狙った形を繰り返すことはできていたけれど、こちらもゴメスまでは届かない。サイドバックは攻撃を自重し、インサイドハーフにマティッチでは何かが起きる可能性は必然的に減る。最後にはアザールが逆サイドに流れてきてオスカルとのコンビネーションで状況打開を試みるなど、両チームともに悪くはないけれど、得点は入らないそうだなという前半はスコアレスで終わった。
コンテの力技
先制点はワトフォード。スローインからの攻撃をトランジション、またはセットプレーに分類するかは個人的に悩んでいる。アムラバトのクロスを合わせたのは大外のカプエ。大外のマークはペドロだったのだが、流れの中で下がるのを忘れてしまったようだった。守備をさぼった数少ない機会が失点に繋がってしまうことは往々にしてあることだ。いわゆる、ミスを見逃してくれない世界。
55分の先制点で慌ただしくなったのはチェルシー。イバノビッチも攻撃参加をするようになり、徐々に攻撃への意欲が強まっていった。
コンテの最初の手は、4-4-2への変化。4-2-4という声もあるが、別にどちらでもいい。ただし、これは4-2-4だと断言する何かがピッチにあったわけではない。アザールとジエゴ・コスタの2トップ、オスカル、ペドロをサイドハーフにかえて攻勢を強めていく。そして登場するは左サイドハーフにモーゼス、ジエゴ・コスタの相棒にバチュアイ、そして、マティッチ→セスクで交代を完了する。最終的にアザールは右サイドハーフに落ち着いた。
先制したときのワトフォードの姿勢は、先制したことなど関係ないぞというものだった。しかし、チェルシーの圧力の前に守備をする時間が長くなっていく。サイドハーフの大外を使った攻撃、セントラルハーフやサイドバックもゴール前に飛び出していくチェルシー。また、交代で出てきた選手の個で無理のきく感が異常。相手をとにかく突破するというよりは、何人がかりでもボールを奪えないモーゼスなど、非常に厄介な存在だらけとなっていった。いままではこの枚数で対応できていたけれど、もうちょっと枚数が必要になるよとなれば、どこかで齟齬が生じる。サイドチェンジで順々にずらされたフリーのアザールのミドルが炸裂すると、こぼれ球に反応したのはバチュアイでチェルシーが同点に追いついた。
そして、その数分後にはカウンターが炸裂。セスクのロングスルーパスに抜けだしたジエゴ・コスタという懐かしい光景が逆転ゴールを生んだ。逆転までは少し出来過ぎたストーリーにも感じるが4-4-2(4-2-4)で圧力を強めるチェルシーの迫力は本物だったと思う。まさに困ったときのプランB。最終的にはプランAをこのような形にするのか、3バックをメインにしていくのかはわからないが、開幕戦から続く士気の高まりそうな結果は、今季のチェルシーの躍進を期待させるには十分なものになったと思う。
ひとりごと
チェルシー。
コンテ式と違うじゃないか!ということは置いておく。想像していたよりもノーマルというか。横幅を使ったサッカーがメインなのかな。マティッチのインサイドハーフ起用にイタリアらしさを感じなくもない。でも、コンテがイタリアらしい監督なのかというと疑問が残るけれど。今の時代にそういったらしさを投影することが間違っているのかもしれないが。
ワトフォード。
システムを噛み合わせない強さを感じた。でも、守備の変換で後手を踏む。やはり3バックのまま守るのは不可能ということなのか。ジエゴ・コスタに3バックという流れは、ヒディンクの3バックには1トップをぶつければ勝てるの法則を思い出した。でも、らしさはみせているし、降格するようなチームではないと思う。新戦力も試合を眺めていたみたいだし。旋風を期待しています。
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