「さて」
「今日はフランス対オーストラリアか」
「マッチレポを書く試合と書かない試合の基準は特にない」
「ないのか」
「アメリカ対ウェールズとかメキシコ対ポーランドとかうまくかけそうだけどな」
「あと地味にスタメン表が色々と変化しているんだな」
「ゆっくりと図作成にも慣れていく必要があるやろと」
オーストラリアの正面衝突
「他の会場の結果を書いても怒る人はいないと思うので、サウジアラビアの健闘について触れてみたい」
「鬼のハイライン、裏に出されたら根性で走るで逃げ切りに成功している」
「なにげにセンターバックがデュエルで負けなかったし、カンノは相変わらず強烈だったし」
「何よりもこれまでのカタールやイランと比較すると、個々の勝負でも負けてなかったな」
「アルゼンチンはメッシのいるデメリットが全開になってしまったようで」
「エクアドルがカタールを、イングランドがイランを破壊した最大の理由はプレッシングの強度にある」
「ここでサウジアラビアにチャンスを与えてしまった感があるな」
「サウジアラビアはボールを保持することは上手だったから」
「つまり、トーナメントの法則である相手の良さを消すをアルゼンチンは決してうまくできなかった」
「というわけで、アジア勢の試合を振り返ると、相手がどうあれある程度はいつもどおりにやらないとどうしようもないし、ボール保持は必要な局面で何かを成し遂げる準備が必要であると」
「当たり前の話だな」
「で、この試合のオーストラリアはボール保持から逃げる気がなかった」
「序盤からデンベレとエムベパのスピードの驚異にされされながらも」
「得意の433システムでボールを運ぶオーストラリアは立派だった」
「ただし、フランスの前線の守備の役割は曖昧だったな」
「ジルーとグリーズマンは誰を見るのかはっきりしないし」
「デンベレとエムベパもどこまで下がるか曖昧だったし」
「こんなチャンスを与えてはオーストラリアに流れを引き寄せることも必然というわけで」
「オーストラリアがセンターバックからのサイドチェンジからの大外アタックで先制する」
「これで目を覚ましたフランスは442でグリーズマンとジルーがプレッシングに出るように変化する」
「本当の試合はこれからだぜ!!というやつか」
「フランスの振る舞いの変化としては、オーストラリアのキーパーまでプレッシングをかけるようになった」
「ボールを奪われた瞬間の切り替えも速くなったな」
「さらにボールを保持しているときの選手の配置も段々と彼らの好んでいる配置に近寄っていった」
「フランスの強度がましたけれど、連携連動は微妙だった」
「しかし、連携連動を凌駕するスピードと勢いがあり、オーストラリアからすればリードしている状況で無理矢理に繋ぐ必要はない」
「結果として、フランスの脅しのようなプレッシングによって、オーストラリアはボールを手放す形となり、押し込まれて耐える展開へと試合は変わっていった」
フランスのボール保持の配置と役割とオーストラリアの狙い
「左サイドバックのエルナンデスは大外、エムベパが内側。ラビオは彼らのサポートに尽力」
「右サイドバックのパバールは後方に残りながら内側、デンベレが大外。グリーズマンは右ハーフスペースを主戦場としながらもサイドユニットの形成よりもフリーマンとして振る舞う」
「マドリーではインサイドハーフのように振る舞うチュアメニだが、フランス代表では正統派のアンカーのようなプレーだったな」
「で、話を少しオーストラリアに戻し」
「このままではあかん!とキーパーに戻すなどなどボールを保持する工夫をするんだけど」
「結果的にはロングボールのこぼれ球を拾ってマイボール作戦でほんの少しだけ盛り返す」
「で、このときにオーストラリアのボール循環をみているとちょっと狙いがすけてみえる」
「その狙いとなんだ」
「エルナンデスからエルナンデスへ交代したサイドからの攻撃が多く、両サイドに共通することはサイドバックの攻撃参加も多い」
「その心は」
「デンベレとエムベパの裏だろうな」
「懐かしのバルセロナ対策か」
「例えが流石に古すぎるけどそれだな」
「エムベパを放置して攻撃参加するサイドバックは浪漫にあふれているけれど」
「そんなことがわかったところで、フランスは徐々に自分たちの立ち位置を整理して、グリーズマンのポケット襲撃で得たコーナーキックの流れから」
「ラビオが同点ゴールを決める」
「流れを取り戻したいオーストラリアは根性でボールを保持しようとキーパーからビルドアップを試みるが」
「ボールを奪われて逆転されてしまう」
「なんてこった!!」
「しかし、その後もオーストラリアは砕けない」
「ボールを放棄しても勝てるわけではないってことを理解しているようだな」
「生贄になったのはカタールとイランか」
「ただし、フランスの猛攻は続く」
「選手の立ち位置も入れ替わるからな」
「チュアメニが地味に左右のレーンに移動して時間とスペースを作ることも上手だったし」
「パヴァールはチュアメニの横を基本としながらもデンベレが内側に切れ込んだら必ず大外に流れるし」
「エムベパを解き放つためにエルナンデスとラビオは奔走することで左サイドの強烈なユニットを形成しているし」
+1を作り続けるグリーズマン
「で、問題はグリーズマンだろうな」
「グリーズマンか」
「グリーズマンがバグ担当となっている」
「デンベレが孤独でも勝てるからサポートに行く必要がない」
「だから色々なところに神出鬼没になりながら味方をオープンにしたり自分がオープンになって一気にボールを進めたりと」
「しまいにはデンベレを内側に追いやって大外から裏とりを行うなどなど」
「グリーズマンやりたい放題だったな」
「そもそもフランスの場合は+1にする必要がない両翼がいる」
「なので、邪魔をしないように振る舞うが、当然にサイドは警戒される」
「そんなときにフラッとグリーズマンが現れると、整理された守備に一瞬の歪みが生まれる」
「そんなフリーマンとしての役割と、サイドへ流れてユニット形成も行うわけか」
「贅沢な使い方だけど、ネーションズリーグでも同じような役割をグリーズマンは行っていたからな」
「それでもめげないオーストラリアは放り込みや相手陣地でのプレーの再開からのボール保持で打開を狙う」
「フランスのプレッシングはよーくみるとバランスが怪しい」
「エムベパは攻め残りを許されているようで、デンベレは下がる」
「エムベパの位置にはラビオが流れる」
「ラビオがサイドに移動するとチュアメニ周りにスペースができる」
「実際にはチュアメニもラビオがサイドに移動するなら一緒にスライドするとして」
「チュアメニの位置に誰が入るか?というと」
「グリーズマン?になるのか」
「デンベレにはならないやろ」
「ラビオもマテュイディリスペクトプレーなのかと思ったけど、このメンバーでは無理があるようで」
「マテュイディへのリスペクトとは、ボール保持ではインサイドハーフをボール非保持ではサイドハーフを行うこととする」
「ラビオなら何とかいけそうだけど、問題は周りか」
「というわけで、ボール保持では鬼のように強いけど、ボール非保持では隙きがありそうなフランスは」
「ロスタイムにオーストラリアの狙い通りであるサイドバックの攻撃参加のすえのクロスから」
「ポストにぶつけられてしまう」
4231に修正して粗をなくすフランス
「リードもしたし、相手に隙きを与える必要はないだろうのフランスは少し配置を修正して後半に臨んだ」
「ラビオが右のセントラルハーフでチュアメニが左のセントラルハーフとなる時間が多かったことがその証拠となる」
「そもそも前半は左インサイドハーフでプレーしていたラビオだからな」
「恐らく後半は4231をはっきりさせたのだろう。その場合、チュアメニとラビオのの左右はどうでもよい」
「どうでもよくはないやろ」
「前半の役割でチュアメニとラビオの役割がいれかわったらびっくりするだろ、比較の問題だ」
「で、こうなるとレーンを移動して基準点をずらすことが得意なチュアメニがさらに自由になり」
「チュアメニが空けたエリアにウパメカノが進出してエルナンデスにがんがんパスを通すようになる」
「オーストラリアはボールを繋ぐ意思は見せるけれど、フランスのボール保持の前に守備の時間帯が増えていくこととなる」
「ビルドアップの段階でレーンを移動することで、オーストラリアにファーストディフェンダーの決定をさせないことがべらぼうにうまい」
「ちょっと人数が多すぎにも見えるが、ボール保持の安定とカウンターに備えるためには問題ない差配となっている。この流れは4231への変化でさらに加速している」
「で、気がつけばサイドチェンジでエムベパとデンベレが襲いかかり、ライン間にはバグ要員のグリーズマンが控える構図となっている」
「何が悪夢ってクロスが逆サイドまで流れたときに登場する選手がデンベレかエムベパ」
「クロス攻撃をしのいだように見えて全くしのげていない構図」
「3点目はこの構図と似た形から生まれている」
「4点目はさらにえぐかったな」
「ウパメカノからエムベパにボールが渡り、サイドを突破してクロスをジルーがあわせる」
「必ずニアで潰れるグリーズマンとポケット襲撃を諦めたラビオが巧みだったな」
「残りは15分」
「フランスが決定機を作りながらゴールは奪えず、オーストラリアも意地を見せるがゴールまでは遠く」
「試合は終了した」
「フランスは強かったな」
「一番強かったわ」
オーストラリアの正面衝突
カタール、イラン、サウジアラビアの試合を見て、オーストラリアは正面衝突を画策。先制点を奪った場面などはスカウティング通りだったのではないだろうか。しかし、フランスの強度を上げたプレッシングの前にどのように振る舞うかの整理、というよりは、ピッチの中の選手たちの意思の共有にミスが出たのではないかと。さすがに2失点目のビルドアップミスを本大会でしてしまうことはもったいなすぎる。一方で、正面衝突したからこその距離をはかれるわけで、長い目で見たときにこの試合の持つ意味をオーストラリアがどのようなものにするかは興味深いところである
フランスの差配
前半の433チックから後半の4231チックと幅を見せながら後半は盤石だった。4231に変更したところを見ると、自分たちで守備の配置が少しいかれていることは認識しているのだろう。この部分をつけるチームがそもそも現れるかが今大会の鍵となってきそうだ。デンベレのアイソレーションは強烈で、エムベパが外側で内側を自由に移動してもバランスが壊れないエルナンデスとラビオのサポート、ビルドアップ隊の枚数の調整によるファーストディフェンダーを混乱させる作戦、そして、バグとして活躍するグリーズマンとボールを保持したときの破壊力は協力である。現段階では優勝候補に名乗り上げたと言っても過言ではないだろう。
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