「さて」
「いけるところまではいこうかと」
「というわけで、セネガル対オランダだな」
「ちなみにカタールとエクアドルと同じグループとなっている」
「オランダとエクアドルやろうな」
「突然の予想にしてもシンプルに初戦に勝ったチームを並べただけという潔さ」
「ちなみにオランダの監督はファン・ハールである」
「他にいないのかと泣きそうになるな」
「色々と試した結果、ファン・ハールに時を戻したと聞いているが本当のところはどうかわからない」
「恒例の裏とりなしか」
「なしだ」
オランダの5212プレッシング
「最初にオランダの特殊な配置からみていく」
「特質系ではないのか?」
「特質系ではない」
「セネガルの配置は433でOK。プレッシングのときに442な雰囲気も出していたけど、基本的には433でいいと思う」
「インサイドハーフが前に出ることもあるというやつだからな」
「で、オランダのプレッシングの配置は5212」
「さらに2トップは外切りプレッシングで襲いかかってくる」
「ガクポが率いる中盤の選手たちはシンプルに眼の前の相手をマンマーク」
「試合終盤までこの形が続いた」
「セネガルは普通にサッカーを行うつもりが、特殊なオランダの配置に対して少し困ったように見えた」
「後半になると、センターバックがどこまでもボールを運ぶように変化していったからな」
「で、実際にセネガルがどのようにプレーしたかというと」
「前線への放り込みだった」
「シンプルだな」
「中盤を経由したくても、中盤の選手たちはオランダのマンマーク作戦に苦しんでいる。サイドバックを経由できてもオランダのウイングバックが出てくる」
「フリーにボールを持てるのはセンターバックだけ、キーパーを経由しても状況に変化はなし」
「オランダ側からすればまるでロングボールを蹴ってほしいみたいだな」
「なので、セネガルは中盤の選手をセカンドボール拾う隊に任命し、ファン・ダイクを避けた格好でロングボールから前進を試みる」
「デ・リフトがサールを相手に苦戦していたことが印象的だったな」
「プレミアリーグは別世界というからそれやろ」
「というわけで、ロングボールトランジション大作戦を結構するセネガルだが、デ・リフトサイドから壊せそうで壊せない」
「オランダからすれば、最終ラインからのロングボールでやられたとしても枚数が揃っていればどうにかなるやろという計算だったのかもしれんな」
「ブロックの前でボールを動かされて自分たちを動かされるような状況になるくらいならロングボールを蹴ってくれ、みたいなことか」
「セネガルも勝てるポイントがあったので、愚直にこなしていたが、気がつけば試合終盤となっていた」
「もうときは戻せない」
オランダのへんてこなビルドアップ
「次にオランダのビルドアップをみていく」
「セネガルはハーフラインをプレッシング開始ラインと設定し、オランダのセンターバックとにらめっこ状態であった」
「オランダのボール保持は325と言いたいところだが、どうも様子がおかしい」
「様子がおかしいのはブリントとダンフリースのアシメ構造にある」
「アシメだったのか」
「個性の差かもしれんけどな」
「デ・リフトとアケもアシメ関係にあったように見えたもんな」
「そこも含めると、オランダが何をしたかったがわかるかもしれん」
「ボール保持のオランダはデ・リフトが右サイドバックのような振る舞いをみせる」
「アケは左のセンターバックだな」
「そしてブリントは左サイドバックのように振る舞い」
「ダンフリースはウイングのような立ち位置に変化していた」
「なお、守備面でもこの構造は保たれることが多く、トラップディフェンスでもやっているのかと観察していたが、それを断言できる要素はピッチにはなかった」
「話を後半にすっとばすと、ガクポが右サイドに流れることを好んでいるようなので、ダンフリースを上げることでユニットを形成したかった可能性は高い」
「ただし、この形はほとんど機能しなかった」
「隙きあらばプレッシングをかけまっせというセネガルの姿勢にオランダはフレンキーのサリーや運ぶドリブルでの打開を狙うことになる」
「セネガルのウイングがオランダのサイドバックたちにつられているから叶う構造だけれど、狙ってやっているかは曖昧なところだな」
「実際に後半になると、433に戻したセネガルの前にフレンキーが降りてもどうしようもなくなるからな」
「後半のオランダは3バックちっくな雰囲気もあるが、デ・リフトはサイドバックかよ、というくらいに開くことも多かった」
「逆偽バックでダンフリースへのパスラインを創出しているなんてこともなかった」
「それでもえぐいキープ力で状況を打開するフレンキーは怪物くんだな」
「というわけで、オランダはへんてこなビルドアップを行い、ほとんど機能しないけれど、致命的な位置でボールを失うことなく時間を過ごしていくことになる」
「ベルフワインなんかはもっと好き勝手に動くイメージが合ったけど、中央3レーンに閉じ込められている印象すら受けた」
「結果として、オランダの可変システムは配置で得られる優位性が得られるわけでもなく、誰かの個性を発揮しやすいように組まれた印象もなく」
「ただし、トランジションで相手にチャンスを与えるような雰囲気はないことが唯一のメリットというか」
「だから両チームにチャンスがなかったのか」
「お互いに整理されている守備網への突撃を繰り返す羽目になっていたからな」
「で、これは全部ファン・ハールのせいと思っているわけか」
「たぶん、ファン・ハールの罠やろうな」
「ノートランジションノーライフや」
「それだどトランジションを起こさないといけないやつだ」
「それでも俺たちのファン・ダイクがセットプレーからなんとかしてくれる!と思っていたけど、ボールは枠の外へ飛んでいった」
動き出したファン・ハール
「流石にこのままで終われないよとファン・ハールの最初の手は」
「ベルハウスをちょっと高めの立ち位置に置く」
「地味だな」
「ベルハウスはゴール前手前で最も力を発揮する選手で325のセントラルハーフの選手ではない」
「できなくはないだろうけどな」
「ベルハウスが抜群のタイミングでサポートを行うため、トップに当ててベルハウスからサイドへ展開という場面が目立つようになる」
「後方はフレンキーだけで良いと考えたんだろうな」
「次の手が62分にデパイ」
「デパイか」
「デパイはボールを引き出す動きがべらぼうにうまい。レーンやライン間に閉じこもることなくボールを受けることによってオランダの攻撃がまともになっていった」
「恐らくはデパイの登場ともに、リスクのある攻撃もOKとなる予定だったのだろうな」
「というわけで、急激にまともなサッカーをするように変化していくオランダの前に、セネガルはボールを奪ってカウンターを仕掛けられるようになっていく」
「試合がゆっくりとオープンになっていく、というよりもオープンにしなければ何も起きないとファン・ハールは考えていたのだろう」
「よって、両チームのキーパーにようやく出番が訪れるというか」
「で、この賭けに勝利したのはオランダで、フレンキーの見事なパスをガクポが綺麗に頭で合わせて先制点を決める」
「ゴールの前にクラーセンとコープマイネルスを入れてオープンな展開でも耐えられるようにした采配も見事だった」
「で、セネガルの猛攻をしのぎながら、最後はデパイの根性アタックにクラーセンが答える形で突き放して終わる」
「よくできたストーリーだな」
「デパイを入れるまではおとなしめで、という計算はあったと思う」
「もっと早い段階でオープンな試合となったらどうなるかわからないという計算は間違っていないだろうしな」
「実際に後半75分からノペルトが目立ったことも事実だろうし」
「セネガルからすれば消化不良で試合を終えたのではないかと」
「イエローももらいまくってしまったしな」
「せめてスコアレスドローで終われればというところか」
「相手の良さを消し、自分たちの良さを消しながら、それらを解き放つタイミングは自分たちで決定します、というのはファン・ハールらしいとも言えるし、トーナメント向きとも言える」
「カタールはさておき、エクアドルとオランダの試合は楽しそうだな」
「そんな楽しみを増やしながら」
「こんなところで」
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