【数的優位かor質的優位か】レバークーゼン対バイエルン

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

レバークーゼンのスタメンは、レノ、ウェンデウ、トプラク、ター、イェドバイ、カンプル、クラマー、チャルハノール、ベララビ、キースリンク、チチャリート。好調のレバークーゼン。チチャリートがようやく居場所を見つけた感がある。能力の高い選手がしっかりとチームの中心選手として試合に出場し続けるのは非常に良いことだと思う。ボージャンしかり、チチャリートしかり。現在の順位は4位。定位置に戻ってきた感がある。

バイエルンのスタメンは、ノイアー、アラバ、バトシュトゥバー、キミッヒ、ラーム、シャビ・アロンソ、コマン、ドグラス・コスタ、ビダル、ロッベン、レヴァンドフスキ。バイエルンはトーマス・ミュラーをベンチへ。代役はヴィダル。チャンピオンズ・リーグの気配が高まってくるなかで、相手はユヴェントス。決戦のときは近い。しかし、ターンオーバーをするような人員はいない。トーマス・ミュラーをベンチにしたように、1人1人休憩していくのが現実的だろうか。この状況がシーズンの終盤にどのような影響をあたえるかは興味深い。

■ロジャー・シュミットらしいレバークーゼン

バイエルンの形は前節と同じ。自分たちがボールを保持していないときは4-1-4-1。自分たちがボールを保持しているときは、右サイドバックからシャビ・アロンソの隣へラームが移動する3-2-4-1。その他では、ドグラス・コスタが右インサイドハーフ、ヴィダルが左インサイドハーフで起用されていた。

両脇のセンターバックでレバークーゼンのサイドハーフを引き出し、サイドハーフとサイドバックの間のスペースにインサイドハーフ(ヴィダル)が流れる。相手のセントラルハーフがついてくるか否かの駆け引き。今季の序盤のバイエルンのインサイドハーフも同じような動き(サイドバックとサイドハーフの間にながれる)をしていた。守備の基準点としても、誰が観るべきか曖昧なエリアにポジショニングすることで、ビルドアップの出口とすること。この流れは冬休み以降のシステムにも組み込まれている。

レバークーゼンのシステムは4-4-2。10分くらいから、レバークーゼンの素早いプレッシングにバイエルンが苦戦する。相手に考える時間を与えないようなプレッシングを連続して与え続けていくことで、バイエルンのビルドアップの精度を落としていた。その球際の激しさがファウルを連発する形にもなっているけれど、バイエルンの攻撃を流れさせない、という意味においても、プレッシングのスピード、球際の強さは、バイエルンに脅威を与えていただろう。

レバークーゼンのセントラルハーフは、ラームとシャビ・アロンソにくいつく傾向があり、2列目と3列目の間にスペースができてしまう。ただし、ボール保持者へのプレッシングがしっかりかかっていれば、そのエリアをバイエルンに使われることはないと計算しているレバークーゼン。レバークーゼンは1列目の激しいプレッシングをスタートに連動して、後方の列の選手も前にどんどんプレッシング支援してくる。その連動性の高さがバイエルンを苦しめる展開となっていった。ちなみに、ノイアーまで基本的には追いかけない約束事になっていた。

序盤こそはショートパスによるビルドアップを試みたバイエルンだったが、徐々にロングボール(レヴァンドフスキへの放り込みかウイングへのサイドチェンジ)が目立つようになっていく。レバークーゼンのプレッシングに対して、正面衝突を避けた模様。一方でレバークーゼンは、高さのミスマッチを狙ったキースリンクへの放り込みと、速攻による攻撃を中心に構築した。よって、試合は蹴り合いの様相となる。よって、両チームともにカウンターや速攻での攻撃が多くなる。ただし、ビルドアップを行わないので、いわゆる高い位置で奪われてのショートカウンターを相手に与える場面はなかった。

バイエルンのプレッシングも強烈ではある。バイエルンのプレッシングがボールを取り戻すことで、ボール保持を高めることだとすれば、レバークーゼンのプレッシングの目的は相手陣地でボールを奪い返して、ショートカウンターを炸裂させることだろう。このように考えると、ボールの蹴り合いという展開は、レバークーゼンにとってはあまり好ましくない展開と言える。ただし、レバークーゼンの放り込みもバイエルンを苦しめていたので、どうしようもない状況というほどにネガティブなものではなかった。バイエルンのカウンターはコマンの突撃が目立ち、イェドバイと一瞬即発の雰囲気が漂い始める。

バイエルンの起用で興味深かったのがヴィダル。インサイドハーフにドグラス・コスタとミュラーでは守備のポジショニングで不安が残る。ヴィダルもどうなんだという話だが、前者に比べればまし。この試合ではシャビ・アロンソの空けたスペース、シャビ・アロンソの隣のスペースまで戻って守備をする場面が目立っていた。このヴィダルの起用が守備の局面が増える展開を予測して行われたのか、たまたまなのかが非常に興味深い。結果として、レバークーゼンにも流れのなかから決定機が生まれることはなかった。

後半になると、レバークーゼンがいつも通りの形の攻撃を見せ始める。いつも通りの形の攻撃とは、サイドを中心&ボールエリアに人を集めることで数的優位を作り、そのサイドで攻めきる&ボールを奪われても数的優位状態を活かし、ボールを奪いきって攻撃を継続させる戦い方だ。バイエルンの攻撃の精度を落とすことはできていたけれど、攻撃はうまく作れていなかった。よって、いつも通りに攻守にプレーすることで、全体の精度向上を狙ったのだろう。ボールを持って攻撃を仕掛ける場面の多かったレバークーゼンだったが、守備が整理できているバイエルンの前に、ノイアーまで届く場面はあまりなかった。

51分にイェドバイ→ヒルバート。コマンとやりあっていたイェドバイが交代。もともとスタメンはヒルバートはなずなので、交代によって戦力が落ちることはない。恐らく、一瞬即発の状況を嫌がっての采配はなず。同時にバイエルンもヴィダル→チアゴ・アルカンタラ。足を痛めた気配&脳震盪のヴィダルは大事をとって、チアゴ・アルカンタラが出てくる。

試合はレバークーゼンが攻守にらしさを発揮するなかで、徐々にバイエルンもらしさを見せていく。前半から繰り返された両脇のセンターバックからウイングへのパス循環ルートに加えて、中央でチアゴ・アルカンタラが時間とスペースを作り始める。チアゴ・アルカンタラの恐ろしいところは、プレッシングにきた選手を簡単に剥がしてしまうところ。独力で状況打破をし始めたチアゴ・アルカンタラとサイドにはボールが比較的簡単に届きそうな状況からグアルディオラが動く。

59分にロッベン→ミュラー。コマンを右ウイング、ドグラス・コスタを左ウイングに移動。ゴール前にボールが届かずに孤立していたレヴァンドフスキの近くにミュラー。そして、左ウイングにドグラス・コスタを配置する。前半はコマン対イェドバイで盛り上がっていたサイドは、ドグラス・コスタ対ヒルバートに代わる。そして、ドグラス・コスタの後方には時間とスペースを作りはじめたチアゴ・アルカンタラがいるという構図となった。

左サイドに配置されたドグラス・コスタは異次元のパフォーマンスでバイエルンの攻撃を牽引。交代で出場したミュラーもすぎに2度の決定機に絡む。60分すぎからバイエルンがフィニッシュまでいけるようになっていく。レバークーゼンの足が止まってきたという要因ももちろんあるんのだろうけど、チアゴ・アルカンタラとドグラス・コスタの質的優位から一気に試合の流れを取り戻したといったほうが適切だと感じる。

73分にキースリンク→ブラント。押し込まれ始めたレバークーゼンは裏に走れるブラントを起用。この時間帯から、レバークーゼンは前から守るのが現実的でないと考え始める。バイエルンは引き続きドグラス・コスタからのチャンスメイクが続く。フィニッシュ&決定機を作っていくが、レバークーゼンのセンターバックのトプラクとターが素晴らしいパフォーマンスを見せる。時にはサイドバックもプレッシング支援で列を飛び出していくので広大なスペース管理を任されているトプラクとター。撤退しても素早いカバーリングと対人の強さでバイエルンに対抗を続ける。特にターは96年生まれなので、将来が楽しみである。

レノを焦らせる、というよりは、肝心のシュートが枠に飛ばないバイエルン。カウンターを狙うレバークーゼンは、残り5分でシャビ・アロンソを退場に追い込む。試合の流れを取り戻すには十分なきっかけとなる退場劇だったが、レバークーゼンに力は残っていない。殴り返すというよりは、人が増えたから防御が固くなったというべきか。それでも質的優位で流れを掴んでいたバイエルンは決定機までたどり着くのだから立派。しかし、レヴァンドフスキ、ミュラーとともにいつもの決定力を示すことができずに、試合はスコアレスドローで終わった。

■ひとりごと

どちらかと言えば、レバークーゼンの戦い方にバイエルンが合わせたような試合だった。数字上はバイエルンがボールを保持したけれど、、みたいな試合に見えるかもしれないが、相手を自陣に押しこむようなポゼッションはほとんど見られなかった。それなのに相手に決定機をほとんど与えずに、自分たちの強いところで殴り返したバイエルンは見事だったと言える。ただし、この戦い方をグアルディオラが良しとしているかは謎。また、こういう展開でも勝ちきれるのが今季のバイエルンだったけれど、勝ちきれなかったという事実がチャンピオンズ・リーグを控えるなかで、ちょっとネガティブなものになっていきそうな予感。

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