【打倒、ユベントスに向けて】ヴォルフスブルク対バイエルン

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

ヴォルフスブルクのスタメンは、カステールス、ヴィエリーニャ、ナウド、ダンテ、リカルド・ロドリゲス、グスタボ・ロペス、トレーシュ、シェーファー、ドラクスラー、アーノルド、クルーゼ。12人が離脱しているようで、ベンチに6人しかいない。怪我人が多いのは、バイエルンだけではなかった。チャンピオンズリーグでベスト16に残り、その先も現実的に意識できるヴォルフスブルグ。その一方で、ブンデスリーガでは8位。3位のヘルタ・ベルリンまでは5ポイント差ではあるが、来季の欧州の出場権を考えると、そろそろ連勝などの結果がほしい。崖っぷちは言いすぎだが、そんな状況に下手したらなってしまいそうなヴォルフスブルグ。

バイエルンのスタメンは、ノイアー、ベルナト、アラバ、キミッヒ、ラーム、シャビ・アロンソ、コマン、ドグラス・コスタ、ミュラー、ロッベン、レヴァンドフスキ。センターバックの大量離脱によって、おなじみのメンバーがずらり。インサイドハーフに誰を起用するかが興味深い。この試合では、ドグラス・コスタとミュラー。チアゴ・アルカンタラとヴィダルとの個性の差は、果てしないものがある。ベンチには7名。ゲッツェ、リベリが怪我から復活してきている。このタイミングでフレッシュな選手が戻ってくることは大きい。2位のドルトムントと8ポイント差で首位。もう少しでドルトムント戦があるので、チャンピオンズリーグとあわせて緊張感のある試合が続いている。

■我慢のヴォルフスブルグ

最初にバイエルンの配置から。

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キミッヒの運ぶドリブルによる起点攻撃がとても多かった。それに比べると、アラバの起点攻撃の回数が少ない。その理由が図のようなシステムが基準だったと考えると納得が行く。

実際にはこのような形で行われた。

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シャビ・アロンソが列を降りる。ベルナトを左サイドバックとして考えると、ミシャ式の動かし方と同じだ。左サイドバックのポジションにいることもあれば、いないこともあったベルナト。平たく言うと、シャビ・アロンソとベルナトのポジションチェンジといえなくもない。ただし、ベルナトの役割は、アラバロールのような形。

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キミッヒとベルナトのやっていることは同じだというお話。相手を押し込めたら、シャビ・アロンソは前に出て行くこともあって、アラバは守備で自陣に残る必要がある。もちろん、シャビ・アロンソが最終ラインで、ラームも高い位置にいないなどの条件が揃えば、アラバも前に出て行く。でも、レアケース。おそらく、相手のカウンター対策で常に後ろに残ってるのはアラバだ、という約束事になっているのだろう。ボアテングが帰ってくれば、ベルナトの役割はアラバがやるようになる可能性が高い。運ぶドリブルによるビルドアップがキミッヒを中心に許されている現状を見ると、ビルドアップ能力でいえば、ベルナトよりもキミッヒのほうが信頼を得ていそうだ。

ヴォルフスブルグのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。奇襲の意味もこめて、開始直後は一気呵成にプレッシングを実行するチームも多いが、ヴォルフスブルグは冷静に自陣に撤退して、バイエルンの攻撃に臨んだ。1列目の役割は攻撃の体力を失わない程度にポジショニングで相手の攻撃を牽制。シャビ・アロンソが降りていくようにポジショニングをかえながらビルドアップをするバイエルンにボールを保持させないように守備をするには、相手陣地からプレッシングを行なう必要がある。ボールを奪えなければ、守備が分断されてしまうし、体力の消費スピードも尋常じゃない。よって、1列目は無理せずに守備をしているのが印象的だった。だって、一生懸命にがんばっても、どうせオープンな選手をなくすことはできないんでしょうという開き直り。その代わりに、2列目の守備に加勢することもあるよというヴォルフスブルグの1列目の守備だった。

バイエルンの序盤の攻撃の起点は、キミッヒ。運ぶドリブルで相手の陣地に侵入していく。相手のサイドハーフをピン留め(運ぶドリブルを相手にむかって行なうことで、自分の対応をさせる)して、中のミュラーと外のロッベンにボールを届けていく。

バイエルンの得意技に対して、ヴォルフスブルグは2つのパターンで対応。最初の対応策は、キミッヒにそのままサイドハーフをぶつける。そして、セントラルハーフかセンターバックにミュラーの対応を任せることで、サイドバックはロッベンに集中する。次の対応策は、キミッヒをスルーしてさらに自陣に撤退。サイドハーフにはミュラーを見させて、守備を固める形だ。前者のパターンでは中央からのヘルプを要求するので、スライドがおろそかになれば、中央にスペースができる。また、スライドが成功して中央をしめても逆サイドによりスペースができるようになる。後者のパターンだと、キミッヒの侵入は許すが、スペースは埋めることができている。キミッヒが上がったスペースにボールを放り込めれば、カウンターチャンスが広がるのもヴォルフスブルグにとってはメリットになる。

冬休み以降のバイエルンのシステムの特徴は、サイドバックを攻撃参加させなくても、インサイドハーフとウイングのコンビネーションをサイドから機能させることできることにある。しかし、ヴォルフスブルグがしっかりと複数で守れる仕組みを作ってきた。よって、他の手を使いながら、守備に隙ができるのをまつバイエルン。オープンなビルドアップ隊から、相手の裏を狙ったロングボールによる速攻。レヴァンドフスキ以外の選手も相手の裏を狙って飛び出していくので、なかなか危険。さらに、大外を使うサイドチェンジからのアイソレーション。特にコマンがその役割を担っている。様々な攻撃方法でヴォルフスブルグに迫っていくが、決定機を作ることはできないバイエルン。

もう少しリスクを冒しましょうとなると、バイエルンは中央突破の回数が増えていく。相手のセントラルハーフをラームやインサイドハーフのボールを受ける動きで引き出して、中央にパスラインを作る。そのパスラインは本当にわずかなスペースにしか見えないのだけど、バイエルンの選手は平気で狙ってくる。そんなときのための、中央にアラバ、シャビ・アロンソという優秀な出し手。中央突破とサイド攻撃を行いながら、相手が崩れるときを待つバイエルン。

しかし、相手が攻撃的に出てくれば、自分たちのカウンターチャンスも広がる。今がチャンスだと言わんばかりに、ヴォルフスブルグも攻勢に出る。バイエルンの弱点である個々の守備能力の低さを利用して、積極的にドリブルで勝負を挑む。すると、自然とセットプレーなどのチャンスが増えていく。試合の流れを分断することもできるので、バイエルン相手には好手とされている方法だ。さらに、相手が前に出てくれば、裏へのロングボールもいきる。相手の陣内にボールを運べれば、相手のビルドアップを邪魔するようなプレッシングも可能となる。こうして、自分たちの時間を少し作ることに成功したヴォルフスブルグは、リスクを冒してきたバイエルンにうまく対抗して、その攻撃が延々と続く流れを壊すことに成功した。

■狙われた中央エリア

48分にドグラス・コスタ→チアゴ・アルカンタラ。おそらく相手の守備の入りを見てからの交代策。前半とヴォルフスブルグの守備は変わらないな、ということで、予定通りにチアゴ・アルカンタラが登場する。

ヴォルフスブルグは、前半よりも相手のバックパスをスイッチとするプレッシングの意思統一をしてきた。センターバック同士のパス交換や2列目から3列目のパスをきっかけに一気に圧力を強めてボールを奪いにくるヴォルフスブルグ。チアゴ・アルカンタラの登場によって、ラームは右サイドバックでプレーする機会が増える。でも、ラームによるアラバロールは健在。

55分にロッベン→リベリ。コマンは右サイド、リベリが左サイド。そして、ミュラーとレヴァンドフスキを1列目とする4-4-2のような形になった。

復元された狙いは、バイエルンの3列目(キミッヒとアラバ)と2列目(シャビ・アロンソとチアゴ・アルカンタラ)の中央の選手のポジショニングで相手の中央の守備の基準点を狂わせる。ヴォルフスブルグの1列目の守備がバイエルンのセンターバックに激しいプレッシングをかけるわけではないので、バイエルンのセンターバックは自由。よって、バイエルンの2列目(チアゴ・アルカンタラやシャビアロンソ)がボールを引き出す動きをする。その動きに対して、ヴォルフスブルグの2列目(アーノルドとグスタボ・ロペス)が迎撃体制をとれるかというと、迎撃したら深追いしすぎ。ミュラーとレヴァンドフスキと数的同数のセンターバックを見捨てる訳にはいかない。よって、ヴォルフスブルグの1列目と2列目のライン間を使いながら、バイエルンが試合の主導権を握り返す展開となっていく。前半の終了間際に見せた中央突破の可能性を考慮しての変更だろう。ヴォルフスブルグの守備で一番付け入る隙があるとすれば、1列目なことは間違いない。

ヴォルフスブルグ側からすると、列を降りなくなったシャビ・アロンソをドラクスラーが見る役割になっている。しかし、シャビ・アロンソの脇にもともとチアゴ・アルカンタラがいる。さらに、アラバロールでラームも出てくる。さらに、キミッヒは運ぶドリブルで上がってくると、見るべき対象が多すぎる状態となった。サポートはセントラルハーフを前に出すしか無いのだけど、今度はそのスペースを2トップや中央に移動してくるリベリに狙われる状況。前半は相手のサイドハーフを狙い撃ちにするべく攻撃を構築したが、後半になると、中央の選手を狙い撃ちにする変化を見せるバイエルンだった。そして右サイドでのリベリの存在感は尋常でなかった。

63分にミュラーのあくどいバックパスからヴォルフスブルグに決定機。

66分にバイエルンが先制点。シャビ・アロンソへのファーストディフェンダーの決定が曖昧なヴォルフスブルグ。アーノルド(セントラルハーフ)が出てくるのだけど、それがバイエルンの狙い。アーノルドの空けたスペースをリベリに利用され、中央突破を許してしまう。最終的には浮き球をコマンがダイレクトで合わせて、バイエルンが先制する。

先制後のバイエルンは、4-4-2のゾーンディフェンスでヴォルフスブルグの攻撃に対抗。どこへだってボールホルダーにプレッシングをかけるんだサッカーを封印。守ろうと思えば守れるのだろうか実験を行っている。でも、ボールを保持したらいつもどおり。ユベントス戦では守りきれなかったので、予行演習の意味もあるのだろう。

ボールを持てるようになったヴォルフスブルグは、72分にトレーシュ→シュールレ。

しかし、73分にバイエルンに追加点。一所懸命な守備で相手にロングボールを蹴らせてボールを回復。そして、センターバックの横幅ビルドアップでオープンな状況を作ると、数的同数の前線へロングボール。この勝負にコマンが勝ち、クロスボールを中に折り返すはリベリ。このボールをアクロバットなシュートでレヴァンドフスキが決める。

その後も整理された状態からは、相手にチャンスを与えないことに成功したバイエルン。ミスからボールを奪われてのカウンターでノイアーの出番を作ることはあったが、グアルディオラからすれば手応えありか。ロッベンとドグラス・コスタをベンチに下げた後に2得点で快勝という試合展開もなかなか見られるものではない。ヴォルフスブルグもプレッシングの圧力を強める場面もあったが、バイエルンの中央のライン間を使う動きに最後まで対応できなかった。試合はそのまま終了。昨年の1位2位対決は、バイエルンの勝利で終わった。

■ひとりごと

前半と後半で異なる表情を見せたバイエルン。ヴォルフスブルグの守備の役割の変更もなかなかおもしろかったが、攻撃方法を変更されると、修正がめんどくさい。最近はいかにセントラルハーフの選手を動かしてスペースを得るか。そのためにはどのような準備が必要かをしっかりとやっているチームが多い気がする。迎撃守備は流行する中で、バイエルンのように縦のポジションチェンジをしながら相手の裏に走ることも重要。2点目のように裏でボールを受けての一対一勝負での優位性はバイエルンに分がある。ドグラス・コスタ、リベリ、コマン、ロッベンが裏に走ってくるのだから、怖くて仕方ない。

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