ユベントスのスタメンは、ブッフォン、エブラ、バルザーリ、ボヌッチ、リヒトシュタイナー、マルキージオ、ケディラ、ポグバ、グアドラード、モラタ、ディバラ。セリエAの首位攻防戦。まさかの14連勝中のユベントス。スタートダッシュは豪快に失敗した。しかし、時間が経てば経つほどに強くなっていくアッレグリスタイルを今季も証明している。解説者曰く、普段は3バックだけど、キエッリーニ負傷により4バックらしい。マンジュキッチも負傷離脱。なお、チャンピオンズリーグはバイエルンが相手。決戦は来週のミッドウィーク。いわゆる正念場の時期。首位攻防戦の直後にチャンピオンズリーグでなかったことは、日程くんに感謝か。
ナポリのスタメンは、レイナ、グラム、クリバリ、アルビオル、ヒュサイ、ジョルジーニョ、ハムシク、アラン、インシーニェ、カジェホン、イグアイン。マラドーナ時代を彷彿とさせる8連勝で首位のナポリ。マラドーナ時代などすでに歴史だ。リアルタイムで知っている人のほうが少ない。得点も多く、一部でサッリ監督の評価もうなぎのぼり。さらに、ヨーロッパリーグも勝ち残っている。チャンピオンズリーグ離脱組など、ヨーロッパリーグには強豪がちらほらいる。ヨーロッパリーグでそんな強豪たちを倒していけば、さらにナポリの評価が上がっていきそう。何はともあれ、まずはスクデットが最優先か。
■ライン間とサイド攻撃
ナポリがボールを保持する展開で試合が進んでいった。最初の10分間の奇襲(相手陣地からのプレッシング)も含めて、攻守に積極的な姿勢を見せるナポリ。サッリ監督はアウェーだからって引き分けは狙わない発言。まさに、その言葉を証明するかのような立ち上がりを見せた。
ナポリは4-1-2-3。アンカーにジョルジーニョ。ビルドアップでは、レイナ、クリバリ、アルビオル、ジョルジーニョでひし形を作ることが特徴。ユベントスの1列目の守備は2枚なので、4対2のエリアを作ることで、ビルドアップを円滑に進めた。ユベントスのシステムは4-4-2。ディバラとモラタはセンターバックと数的同数になるので、積極的なプレッシング姿勢を見せる。しかし、モラタとディバラの間にポジショニングするジョルジーニョに苦戦する。2トップの間にアンカーを配置は定跡。さらに、レイナからジョルジーニョにもボールが供給される場面も多く見られた。ある程度は予想された状況だったのだろうけど、やっぱり無理かのユベントスの序盤は、ナポリに試合の主導権を握られるようになる。
前からのプレッシングから、ハーフからのプレッシングに、ユベントスは移行する。ボール保持者へのプレッシングもしっかりとラインを決めて行なうユベントス。このエリアまでは放置、このエリアまで来たらプレッシングスタートといったように。ユベントスの4-4-2は、中央に絞る傾向が強かった。よって、ナポリの攻撃は、サイドバックを起点に始まる場面が自然と多くなっていく。サイドバックがボールを持ったとき、ウイングがポジションを下げてボールを引き出しに来る。相手のサイドバックがついてきたら、サイドバックの裏にインサイドハーフが突撃する。または、相手のプレッシングが来る前に、イグアインにボールを当てる形が多かった。どちらの形も決して効果的とはいえなかったけれども。
ナポリの狙いとしては、サイド攻撃よりもライン間を狙うプレーが多かった。ウイングの選手もサイドにポジショニングするよりは、相手のブロック内にいることが多い。だからこそ、ユベントスはライン間を使わせないように、ライン間にポジショニングする選手へのパスコースを遮断するために中央よりの4-4-2を形成していた。それでもナポリはまずは1列目と2列目のライン間、そして2列目と3列目のライン間とボールを強引に動かしていく。わざと相手の狭いエリアにボールを供給して、ボールがどっち付かずの状況を作り、トランジションで攻めきる考え方もある。というよりは、単純に相手のライン間でプレーすることを好む選手が多いだけのように見えたナポリ。よって、中央絞りのユベントスの守備と正面衝突になり、ユベントスがボールを奪い、攻撃をする場面が増えていった。
相手がボールを保持しているときのナポリのシステムは、4-1-4-1。ナポリの1列目がワントップなので、バルザーリ、ボヌッチが得られる時間とスペースで試合のテンポをコントロールするユベントス。ショートパスによるビルドアップやテンポアップを狙った相手のディフェンスラインへの裏へのロングボールが見られた。また、相手を背負った状態、カウンターのときなどは必ずサイドチェンジを入れて、味方が攻め上がる時間を捻出するプレーも多く見られた。
ナポリは前からプレッシングをかける場面も多く見られた。そのときは4-1-4-1から4-4-2に移行する。ただし、この移行に問題があった。前の列に移動する選手は、普通は決まっている。しかし、ナポリの場合は、状況に応じて前に移動する選手が変化する。ウイング、またはインサイドハーフの選手が前に移動するのだけど、そのたびに2列目の選手は、前への移動によって発生するスペース管理の対応をしなければならない。この対応に苦労するナポリ。苦労の代償は、サイドハーフのポジショニングがおかしくなったり、2列目の選手同士の距離が空いてしまい、相手に楔のパスコースを与えてしまったり。
では、前からプレッシングに行かなければ問題がないか?というとそんなこともなかったナポリの守備。ユベントスほどの割り切り(プレッシング開始ラインを思いき入り下げる)ができないナポリ。ゾーン・ディフェンスの前提はボール保持者へのプレッシング。でも、どのエリアでもプレッシングをかけなければならない、というわけではない。しかし、ナポリは一生懸命にボール保持者へのプレッシングを行なう。そして、全体がスライドしてポジショニングを調整する。しかし、どのエリアからプレッシングをかけるかが曖昧だったので、列同士の距離感が空いてしまう事が多かった。いわゆる深追い。ユベントスの列の距離に比べると、ナポリの列の距離はちょっと広くなってしまっていた。その広さをユベントスは狙う。インサイドハーフとサイドハーフの間にパスラインを見つける事が多かった。
そんなユベントスのペースに拍車をかけるのが、相手のビルドアップに対して、ケディラ(ときどきマルキージオ)をジョルジーニョにぶつけることで、数的同数状態にするユベントスの変化。厳密に言えば、レイナがいるので、数的同数ではないが、ナポリは困った状態になる。しかし、ナポリもこの状況をあっさりと打開。ロングボールを使いながら、2列目の選手を落としてボールを空いているサイドに展開する。また、特に働いたのがハムシク。サイドバックからの攻撃も効果的でなかったので、ハムシクが頻繁にボールに絡むようになる。ハムシクは列の移動(ジョルジーニョの列)をすることで、ポゼッションを安定させる。相手を押しこんだら、相手のブロックの外にポジショニングする列の枚数を増やしてボール保持の安定をはかることも定跡。ハムシクの動きはチームにも落とし込まれているのだろう。だから、ナポリの攻撃は左サイドにかたよる傾向が強いのではないだろうか。
ユベントスはビルドアップのときに、マルキージオがアンカーのような役割をはたす場面が多い。ポグバ、ケディラがインサイドハーフ。左ウイングはいないので、4-4-2から4-3-3への移行というわけではないが、部分的にシステムを移行できるように見える。おそらく相手の守備の基準点を狂わせる狙いがあるのだろう。また、ナポリが4-4-2に移行したときに、2トップの間にマルキージオを配置することで、同じ形で殴り返すことができることも大きい。ナポリがボールを保持しながらも、イグアインのシュートはなしという前半戦だった。ユベントスもシュートまで行く場面はあったが、レイナを焦らせる場面はなし。
51分にボヌッチ→ルガーニ。ボヌッチが負傷退場。たぶん、たいしたことはないので、バイエルン戦には間に合うだろう。後半のユベントスは、ポグバがインサイドハーフのように振る舞い始める。ナポリの右サイドバックが空いてしまうのだけど、ヒュサイはクロスの精度で大失敗を繰り返してしまう。多少はほっておいても問題ないと計算されたのかもしれない。
57分にモラタ→ザザ。左ウイングにザザなのかなと眺めているが、基本システムに変化はなかった。両者ともに大きく戦い方を変更することはなかったので、後半も試合展開は似たり寄ったり。ユベントスの守備で素晴らしかったのは役割分担が明確であったこと。2列目と3列目のライン間でボールを受けようとするナポリの選手を捕まえるのは最終ラインの選手。撃退守備の徹底。もしも、ナポリのサイドバックがユベントスの最終ラインまで上がってきたら、サイドハーフが降りて対応。4バックはあくまで中央から動かさずに撃退守備に集中させる。また、相手のボール循環のなかで、サイドバックが外に引き出されたら、サイドハーフをサイドバックとセンターバックの間に落としてカバーリングを形成。こうした守備に対して、ナポリは打つ手がほとんどなし。サイドからのクロスにイグアインのみが飛び込んでいく形くらいだった。ウイングがサイドにポジショニングし、相手を広げるなんてことは、あんまり普段からやってないのだろう。
ナポリはメルテンスを投入。ユベントスはカウンター狙いながらも徐々に守備の時間が増えていく。何かが起きるとしたらトランジション状態からなんだけど、ナポリは定位置攻撃に自信を持っている。だからこそ、守備も整理されている状況でないとならないみたいな状態からユベントスも前に出るのはちょっとみたいな。ナポリのクロス爆撃に対して、ユベントスはアレックス・サンドロを投入。守備固めが登場する。
アレックス・サンドロが登場したときに、残り時間は5分。しかし、ここで試合が動く。いわゆるユベントスのカウンターが炸裂し、最後はザザ。いわゆる自分の形に持ち込んで左足を振りぬくと、アルビオルにぶつかってシュートコースは変化する。そのシュートはゴールに吸い込まれてユベントスが先制。反撃の時間は少なく、というよりも、整理されていない状態を相手に与えるわけもないユベントス。試合はこのまま終了し、首位攻防戦に勝利したユベントスが首位に浮上した。
■ひとりごと
采配を見ていても感じたのだけど、ユベントスは無理矢理に勝利を狙っていたようには見えなかった。相手の守備の隙をつくことで、攻撃を相手よりも有利にすすめることはできたのだろうけど、それで勝ちきれるかというと微妙。だったら、しっかり守りながら様子を見ようみたいなスタイル。たぶん、ここで勝てなくても首位に浮上できるだろうみたいな計算もあったと思う。ただ、普段が3バックだったならば、その急造ゆえにリスクを冒さなかっただけかもしれないが。
ナポリは残念。相手のシュートがスクランブルだったことも残念さに拍車をかける。ただ、自分たちの形を延々と繰り返してもブッフォンまではなかなか届かなかったことも事実。ヨーロッパリーグでその真価が問われることになりそう。
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