個の優位性以外の策の大切さと、6バックは流行するか【バルセロナ対ユベントス】

マッチレポ1617×チャンピオンズ・リーグ

バルセロナのスタメンは、シュテーゲン、ジョルディ・アルバ、ウムティティ、ピケ、セルジ・ロベルト、ブスケツ、イニエスタ、ラキティッチ、メッシ、スアレス、ネイマール。ブスケツとジョルディ・アルバが、スタメンに返り咲いた。パリ・サンジェルマンとの試合で起こした奇跡を再現できるかが注目されている。ただし、あの試合を改めて思い出してみても、パリ・サンジェルマンのプランが狂っていたというよりも、人智を超えた何かが働いたとしか表現できないような試合であった。よって、セカンド・レグのバルセロナが論理的に正しかったかというと、疑問が残っている。そして、そんな人智を超えた何かが何度も起こると考えるのは、いささか都合が良すぎるというものかもしれない。

ユベントスのスタメンは、ブッフォン、アウベス、キエッリーニ、ボヌッチ、サンドロ、ケディラ、ピアニッチ、マンジュキッチ、クアドラード、ディバラ、イグアイン。盤石のスタメンとなっているユベントス。試合開始前に、アウベスがバルセロナのベンチに挨拶していると試合が始まってしまったのは、少し面白かった。アッレグリに率いられたユベントスの最強感は尋常でない。セリエAでは、ユベントス以外が優勝する場面を想像できないくらいになっている。そう考えると、プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ以外の4大リーグは優勝チームがほとんど決まっているといえるかもしれない。ブンデスリーガはバイエルン、セリエAはユベントス。リーグ・アンではモナコが奮闘しているようだけれど、パリ・サンジェルマンの時代が長く続いていた。

封じられたバルセロナの必殺技

ボールを保持しているときのバルセロナのシステムは、4-3-3。メッシを自由にするために、ラキティッチがサイドに流れ、セルジ・ロベルトがサポートする関係性は持続された。左サイドがネイマール&ジョルディ・アルバのコンビになるので、左右の破壊力に差が生まれてしまうのはしょうがないのだろう。ボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。メッシを前に出して、ブスケツとイニエスタがセントラルハーフになる形だ。ユベントスのボールを保持しているときのシステムは4-2-3-1。ボールを保持していないときは4-4-1-1(4-4-2)だったこともあって、両チームのシステムは噛み合う関係性となった。むしろ、バルセロナが噛み合わせを狙ったと言ってもいいだろう。

噛み合わせを狙ったバルセロナの意図は、相手陣地からのプレッシングを行いやすくするためだろう。表現は悪いが、本気になったときのバルセロナのプレッシングは強烈の一言だ。相手のボールを即座に奪い返すようなプレッシングをこの試合では行った。63分にはスアレスが果敢なプレッシングでボールを奪い、ケディラのファウルを誘っている。このファウルでイエローカードをもらったケディラは、累積で次の試合に出場できなくなってしまった。バルセロナからすれば、高い位置でボールを奪い、ショートカウンター&自分たちの攻撃を延々と続けたかったのだろう。その意思をしっかりと示すことはできていたと思う。つまり、ユベントスにボールを保持させないように取り組んできた。

その姿勢はユベントスも似たようなものだった。開始序盤はシュテーゲンまでプレッシングをするユベントスの1列目の面々。相手陣地では4-4-2でプレッシングを行なうユベントスは、ブスケツをケディラ、ラキティッチをキエッリーニが抑えることで、ほぼマンマークの陣容となった。もちろん、ボールサイドでないポジションの選手たちはカバーリングを意識したポジショニングを行なうのだけど。システムのずれをどのように解決するかをユベントスはしっかりと準備してきている。

ただし、キエッリーニがラキティッチに対応するということは、バルセロナの3トップとユベントスの最終ラインは同数になる計算になる。22分くらいからシュテーゲンがロングボールによるプレッシング回避をみせるが、ボヌッチがスアレスを抑えきる。ボヌッチがスアレスに優位性を示すことができるという計算の正しさが、バルセロナのボール保持をマンマーク気味で抑えるという守備を可能にしている。アッレグリは計算をなかなか間違わない。

それでもボール保持は、バルセロナに傾いていった。その理由は3-0のスコアにあるのだろう。ユベントスからしても、決して無理をする必要はない。しっかり守ってクアドラードを走らせるカウンターでバルセロナにとどめをさす策に時間の経過とともに移行していった。ボール保持を許されたバルセロナは、センターに移動したメッシからチャンスを作っていく。16分には裏へ飛び出したジョルディ・アルバへあわやというパスを通したメッシ。大外のサイドバックがゴール前に飛び出していく形は、グアルディオラ時代のバルセロナの得意技であった。ゴール前にバスを並べる相手に対して、大外クロスによる視野のリセット&中への折り返しまたはフィニッシュという形はわかっていても止められない形として、世界でも流行する。

18分のエリア内でのメッシのシュートもジョルディ・アルバのワンタッチの折り返しから始まっている。このように、バルセロナはジョルディ・アルバの特性を上手く利用することができていた。ただし、この形はイニエスタ→アウベスの形が最も繰り返されていた。ときどきアビダルがやっていたことも覚えている。バルセロナの右サイドを見てみると、ラキティッチとセルジ・ロベルトだ。サイドに置いて何かをできる選手ではない。よって、スペースをつくるためにサイドにはっていても、警戒されなくなってしまうことがある。別にボールが入ったら寄せれば良いんだから、サイドを捨てて守備をしようぜを相手に許してしまうことになる。この位置に誰を配置するかで、バルセロナはさらに攻勢を強めることができたかもしれない。つまり、片方の翼を落としたような戦い方をすることになってしまったバルセロナの策でユベントスを攻略するのは至難の業となってしまった。なお、マスチェラーノの登場とともに右サイドにネイマールが登場するが、それはだいぶあとのお話となる。

流行するか、6バック

ジョルディ・アルバの動きにやられそうだったユベントス。だったら、どこまでもついていってもらおう作戦に切り替える。ハリルホジッチが原口元気に課しているような役割をマンジュキッチとクアドラードが行なうようになった。よって、ユベントスの守備は6-2-2のようになる。全体が下がり過ぎなのだが、クアドラードがロングスプリントをできてしまうこと&イグアインとディバラを中心にトランジションで優位にたてたことで、カウンターへの移行は可能だった。よって、撤退しすぎによるデメリットが目立たないユベントス。4バックはペナ幅で守り、バルセロナの中央攻撃を人海戦術で凌ぐ。サイド攻撃はサイドハーフのサイドバック化で跳ね返す。特にマンジュキッチの高さはユベントスを助けていた。

6バックに弱点があるとすれば、相手のサイドバックのポジションにいる選手に時間とスペースを与えてしまうことだろう。この試合で言えば、2トップの脇から登場するピケ、ラキティッチのサポートのセルジ・ロベルト、そして、ネイマールのサポートにまわったジョルディ・アルバには時間とスペースが与えられた。しかし、その位置から中央に侵入していくワンツー地獄を人海戦術で耐えることができる。だったら、質の高いクロスになるのだが、ユベントスの高さの優位性には勝てそうもない。ユベントスからすれば、クロスによる失点はそうないだろうと計算していたのだろう。だから、捨てる。それよりはクロスの的になる大外アタックと中央突破を警戒しましょうとなった。

延々とボールを繋ぎながら、ときどきはエリア内に侵入していくバルセロナ。イニエスタの切り返しは素晴らしかったし、仕事量が多いメッシもときどきは彼らしい仕事をすることができていた。ただ、突破のドリブルによって、ファウルがほとんどもらえなかったことがバルセロナにとっては痛かったかもしれない。このままでは個人技爆発、もしくは相手のミスでもないと得点が入らなそうな雰囲気となっていく。逆にユベントスのカウンターはエリア内でのシュート機会を作ることに成功していた。いわゆる、相手にボールを保持されているけど、ユベントスが試合を支配しているといった展開だった。

58分にラキティッチ→パコ。メッシをインサイドハーフへ。右サイドにも強い選手を配置しようという采配だ。または、セルジ・ロベルトをサイドに上げて、パコを中へ絞らせる。良くも悪くも配置が普通になったバルセロナ。65分にはコーナーキックからブッフォンが痛恨のキャッチミス。しかし、メッシのシュートは枠の外へ。68分にはメッシの粘りから、セルジ・ロベルトのエリア内のシュート。でも、枠外。シュートが枠外に行ってしまう理由は、もちろん、ブッフォンの存在感もあるんだろうけど、ユベントスの守備陣の中央密集からの最後の寄せが厳しいからだろう。キエッリーニ、ボヌッチの最後の集中力は異常だ。

75分にディバラ→バルザーリ。ユベントスは5バックに移行する。サイドハーフを前に残してカウンターの威力を高めたいのかと思ったが、ときどきは7バックになっていた。さらに中央の枚数を増やすことで、メッシたちへの撃退守備を可能にしたかったのだろう。78分にセルジ・ロベルト→マスチェラーノ。この交代で、バルセロナはスクランブルアタックとなる。右サイドにネイマール、左サイドにジョルディ・アルバ。中央にピケ、パコ、スアレスが並んだ。右サイドでも普通に突破するネイマールは、なかなか凄い。パワープレーも視野にいれた配置で、バルセロナは最後の反撃を試みる。考えてみると、右サイドコンビ(ラキティッチとセルジ・ロベルト)が両方ともに交代したという事実は重い。

その後のユベントスの采配は、サイドハーフを交代して、守備の強度維持を狙う。最後までピッチに残るマンジュキッチへの信頼は高いのだろう。スコアが動くことなく試合は終了した。こうしていつかのファイナルのリベンジに成功したユベントス。念願のチャンピオンズ・リーグ優勝まであと少しとなった。

ひとりごと

週末のクラシコでもしも結果が出なかったら、全てが真っ暗になりそうなバルセロナ。この試合で受けたダメージをどれだけ回復できるかが鍵となってくるだろう。ルイス・エンリケの最後を締めくくる意味でも幸せな結末になって欲しいと切に願っている。

すったもんだがあり欧州の舞台から遠ざかっていた時期もあるユベントス。再びチャンピオンズ・リーグの常連になり、優勝してこそ、ユベントスが帰ってきたとなるのかどうか。むろん、残っているチームは曲者だらけだが、本命に名前が上がってもおかしくない結果と内容を残してきている。

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