【改善と修正の福岡】アビスパ福岡対浦和レッズ【変わらない浦和】

J2025

はじめに

画角とは何なのか。サッカーの試合で22人がピッチに溢れているとして、5人くらいしか画面の写っていないのはなぜなのか。他のスポーツでもありえるのだろうか。なんだかありえそうな話ではある。でも、攻守の切り替えがあるスポーツだとないか。

でも、全員が画面に映らなくてもピッチにいる人の8割くらいはどのスポーツも映っているのではないだろうか。一方で、選手がまめつぶのような状況では面白くもないことは間違いない事実なわけで。思想の問題なのかもしれないし、会場の問題かもしれないし、映像制作会社の問題かもしれない。真相は闇の中。

アビスパ福岡対浦和レッズ

清水エスパルス戦では、渡邊凌磨とサビオの自由化に合わせた周りの選手の柔軟な立ち位置が目立つ試合となった。渡邊凌磨の変幻自在の立ち位置は彼に与えられた裁量を示し、自由に走り回るサビオについては色々なことが許されている証かもしれない。

しかし、清水の計画的なプレッシングに対して、浦和のショートパスによるビルドアップはあまり効果的ではなかった。清水のプレッシング配置は【523】であり、福岡の配置も【523】であった。CFが中盤を背中で消し、WGが外切りプレッシングで来る形は浦和対策としてポピュラーなものになっている気がする。

さて、今日の浦和はどうなる?と見ていると、ロングボールが中心。ウイングがセンターバックにプレッシングにくる→パスラインが消える前にサイドバックに渡す→相手のウイングバックが怒涛のプレッシングをかけてくる→裏に放り込みを連打していました。裏には松尾、金子が走ることもあれば、サンタナ、松本が走り抜けることもあります。

福岡のプレッシングをひっくり返しながら、おんどりゃーと福岡のゴールに迫る機会を増やしていく浦和。恐らく、選手たちでも手応えがあったのでしょう。ロングボールを蹴る選手、ロングボールを追いかけたり、競ったりする選手たちに迷いは全くありませんでした。というわけで、序盤は浦和の猛攻タイムとなります。事前に計画した策を実行し流れを引き寄せゴールに迫っていくのですから、手応えを感じた序盤戦だったのではないかと。

アビスパ福岡の地道な修正

12分が経過して、紺野たちがプレッシングに行くよりも、ブロック形成を意識し始める。自分たちのプレッシングが浦和の攻撃のスイッチになっていることは明白なので、じっと我慢する場面が増えていく。それで、相手の状況と味方の状況が噛み合ったら、一気にプレッシングをかける。どちらかというと、自分たちが正しい位置に全員がついたらプレッシングのスイッチを入れるイメージかと。

相手のロングボール攻勢の流れを変化させない福岡の初手がプレッシングからブロックへの移行だとすると、次の手はボールを保持するであった。村上を交えて、3バック+GKでボールを繋ぐが、じわりと寄せてくる浦和のプレッシングに苦戦。ロングボールを蹴るけれど、孤立するザヘディ。

浦和は松尾、金子のサポートを受けて、サンタナ、松本が位置関係を調整しながら、プレッシングに奔走。セントラルハーフコンビも前線に連動することで、福岡のビルドアップの出口を塞ぐことに成功し、ロングボールからのセカンドボールを次から次へと回収していった。つまり、未だに浦和ペースで試合が進んでいく。

最初の決定打になったアビスパ福岡の変更は、20分前後の松岡のサリー。3バックにサリーして4バックに変化する技はミラクルサガン鳥栖時代から続くキム・ミョンヒの得意技。あのときは中野がキーマンになっていた。どうしてこうなった中野。中野の役割を志知がこなすことで、あのときの戦術がリサイクルされた瞬間である。いわゆるボール非保持では3バックの一角で、ボール保持では左サイドバックに変貌するあれである。

松岡の登場で、サンタナと松本は少し迷いが出るようになる。勇気をもった二度追いでどうにかなりそうだが、いざとなったら村上に下げてロングボールもある。となると、走るには覚悟が必要になり、片道燃料でも走り切る覚悟も計画も浦和にはないようだった。よって、福岡は徐々にボールを保持するようになり、紺野や北島の柔軟な立ち位置に苦しむようになっていく。

で、とどめの変更が30分前後の岩崎と前嶋のスイッチだろう。志知がサイドバック仕事をする関係で、左ウイングバックがサイド仕事から解放される、もしくはピン留めとなるが、右ウイングバックの仕事はあまり変わらない。紺野を解放するために高い位置を取る岩崎だったが、田代からすれば、お前の位置は高すぎだ!となる。

よって、前嶋がサイドバック仕事を志知と行うことで、福岡のビルドアップは両サイドから行えるようになる。それでも西川を脅かすような場面まではたどり着けていなかったので、浦和からすれば、これからが本当の試合だ!となるし、福岡からすれば、序盤の劣勢を何とか五分まで前半のうちに持ってきたぜとなる。

迷う浦和と迷わない福岡

福岡から効果的にボールを奪えなくなるとなると、浦和はロングボール攻勢が正しいのかどうか?となる。ロングボール攻勢はボールをどうしても失う機会は増え、相手のボール保持が機能すれば、相手に主導権を渡し勝ちになるからだ。そして、松岡のサリーに対しては、松尾のサポートが多めで修正したが、決定打にはならなかったかと。

五分五分の試合になると、浦和もボール保持で試合をどうにかしようと企み始める。その主役はやはり渡邊凌磨だ。この試合でも様々な場所に姿を表し、何とかしようと根性を見せていた。しかし、今日のテーマはロングボールなので、どこか噛み合わず。この展開では良さが出しにくいと、松本から休憩のサビオが登場する。

でも、サビオは右サイドだったので、恐らくは左サイドの主役は松尾になったのだろう。実際に松尾を前に出す修正で、福岡はボールを持てど踊らずの状態にはなった。つまり、その役割から松尾を動かすことは不確定要素が多くなってしまう。ゆえに、サビオを右。トランジションが続くと、自力で勝りそうな浦和がチャンスを掴んでいくんだけど、残念そこは村上で何とかしのいでいく福岡は名古を入れて、狭いエリアでもどうにかする!とセットプレーに期待をのせる。

そして、セットプレーから福岡が先制。岩崎が豪快に決める。なんてこった。いわゆる困ったときのセットプレーが炸裂。そして登場する関根。サイドバックで使われていたやんけ!攻撃でもジョーカーの役割って役割が多彩すぎるやろ!とツッコミたくなりますが、そこまでスーパーではないですよね。ってか、世界を探してもそんな選手はあまりいません。

最終的に恒例になっている原口が登場するけれど、スコアを動かせずに試合は終了。VARで取り消されたけれど、実はセットプレーでまたやられていた浦和。シンプルに高さ要員を増やすことも解決策のひとつになるのだろう。サンタナがいなくなると、高さは厳しくなる現実がそこにはあるぜ。

ひとりごと

試合の序盤戦をみると、浦和は計画されたことを愚直にできていた。松岡のサリーと北嶋の右サイドバックへの移動をきっかけに試合の主導権を渡した感じはあったけれど、それでも我慢の展開からのカウンターでチャンスを掴んでいた!と考えると、悪くはない試合と言えなくもない。ただ、この試合を10回施行すると、何回勝てそう?と聞かれると、なんとも言えないだろう。

どっちに転んでもおかしくない試合はどっちに転んでもおかしくはない。その差異を分けるのは困ったときのセットプレーや理不尽な仕事をこなす攻撃者と守備者にある。それを体現しているチームが今季で言えば、鹿島アントラーズなのではないだろうか。

どっちに転んでもおかしくない試合を選ぶときはそういうタレントがいるかどうかが鍵となる。いないならいないなりに何とかしないといけない。相手の変幻自在のボール保持にファーストラインが苦しめられたり、相手のプレッシングスタイルによっては、まるでビルドアップが通用しないようだと、試合中における選択肢が少なすぎてがんじがらめになる。がんじがらめの強さもあるが、今のところはその気配のない浦和レッズさんであった。

ミラクルサガン鳥栖の香りを漂わせるようになってからのアビスパ福岡は哀愁漂うものだった。良い意味でリサイクルだし、悪い意味で言えば、芸が無いといえるが、ひとつの必殺技としてキム・ミョンヒのなかで確立しているのだろう。それでも試合の主導権を取り返すような修正を試合中にできることはお見事だった。

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