【まさかの5-4-1対決】ドルトムント対バイエルン

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、シュメルツァー、フンメルス、ベンダー、ピスチェク、ヴァイグル、ドュルム、ギュンドアン、ロイス、ムヒタリアン、オーバメヤン。久々のドルトムント。気がつけば、3バックによるビルドアップなど様々なチャレンジをしているらしい。おそらく、相手からカウンターをくらったときに、誰を後方に残しているかを重視しているのだろう。ちなみに、香川真司はベンチ外。ライトナー、ヌリ・サヒン、カストロなどがベンチ入りしている。なお、カストロがベンチ外になる試合も多いようなので、ベンチ外=戦力として計算されていない、というわけではない。ただし、ときどきベンチ外になる選手が絶対に欠かせないメンバーとして計算されていないのは事実だろうけども。

バイエルンのスタメンは、ノイアー、ベルナト、アラバ、キミッヒ、ラーム、シャビ・アロンソ、ドグラス・コスタ、ヴィダル、ミュラー、ロッベン、レヴァンドフスキ。ウイングタイプの選手がインサイドハーフに配置されることが多かったが、今日はミュラーとヴィダル。餅は餅屋。前節にマインツに敗れたことで、ポイント差は5。バイエルンがこの試合に負けたら2差になるので、優勝争いが混沌としてくる。そんな首位攻防戦。また、バイエルンは5バックを少し苦手としている雰囲気があるので、トゥヘル監督がどのようなシステムを採用するかに注目が集まっている。

■5-4-1対決だけれど

ドルトムントがボールを保持しているときのシステムは3-4-3。3バックはベンダー、フンメルス、ピスチェク。ベンダーが中央。ウイングバックにドュルム、シュメルツァー。ドルトムントがボールを保持していないときのシステムは5-4-1。ロイスとムヒタリアンは相手のサイドバックへのパスコースを制限しながらボール保持者にプレッシングをかけることがあるが、基本的にはバイエルンのサイドバックを見る役割。バイエルンがサイドバックにアラバロールをあまりさせなかったこともあって、中央の守備のヘルプ(オーバメヤンと相手の2センターバックの数的不均衡の解決)をすることはあまりできなかった。

バイエルンがボールを保持するときのシステムは4-1-4-1。今までのバイエルンは右サイドバックのラームをシャビ・アロンソの横に移動させる3バックを使ってきた。しかし、ロイス、ムヒタリアンに守備の基準点を用意するためにも、バイエルンのサイドバックは基本的にサイドに配置された。その代わりに、インサイドハーフにヴィダルを起用。よって、シャビ・アロンソの横でプレーする役割は、サイドバックからインサイドハーフのヴィダルに代わった。

バイエルンがボールを保持していないときのシステムは、5-4-1。ドルトムントの3-4-3のボール保持に対しては、守備の役割をはっきりさせることで対応。3バックにはレヴァンドフスキ、ロッベン、ドグラス・コスタを当てる。ヴァイグル、ギュンドアンにはインサイドハーフのミュラー、ビダルを当てる。ドルトムントのウイングバックには、バイエルンのサイドバックを当てる。ドルトムントの3トップとバイエルンのディフェンスラインがドルトムントにとって優位性のあるエリアになりそうだが、シャビ・アロンソを最終ラインに下ろすことで、数的同数で対応。サイドバックを含めた最終ラインのポジショニングは、ボールが中央にあるときは中間ポジション、ボールがサイドにあるときは、同サイドの選手は人につき、逆サイドの選手はカバーリング体制を取るようになっているのだろう。ドルトムントのロングボールにシャビ・アロンソとオーバメヤンが競り合う場面が多発した理由は、シャビ・アロンソを下ろしたから生まれた現象といえる。

ボールサイドでヴィダルがシャビ・アロンソの横に降りて行くと、ヴァイグルもついてくる。ヴァイグルの空けたスペースをカバーするのはセンターバックの迎撃になっているドルトムント。しかし、どこまで迎撃体制でついていくかは不安でいっぱいのようだった。試合序盤のドルトムントは5-4-1でも相手陣地からの守備をする。よって、ライン間でボールを受けようとするバイエルンの選手を潰そうとすると、相手の陣地までついていくことになる。ヴィダルが降りて、空いたスペースにドグラス・コスタにポジショニングさせるのは練習通りなのだろう。序盤に多く見られた形だった。

ドルトムントのビルドアップの出口の想定は、相手のサイドバックとセントラルハーフ(バイエルンから見て左サイドなら、ベルナトとヴィダル)の間にパスラインを見つけることだった。数的同数のバイエルンのプレッシングだが、ロングボールを警戒して最初はウイングバックへの距離が遠いバイエルンのサイドバック。ボールを受けてから相手が到達する時間が一番あるのがドルトムントのウイングバックだった。よって、ウイングバックがボールを受けたら、ライン間でボールを受けようとするムヒタリアンたちに素早くボールを供給できるかどうかがドルトムントの最初の生命線。ただし、迎撃体制はバイエルンのほうが割りきってできていたので、想定していた出口が出口として機能するかは微妙だった。

よって、ドルトムントはボールを奪ってからのカウンターと、深い陣地でボールを回収してからの速攻が攻撃のメインとなった。ボールを保持する場面はあったけれど、効率的とはいえず。選手の配置のずれを利用してボールを運ぶ計算が、個の能力(ギュンドアンやムヒタリアン)のドリブルでボールを運ぶ方向性になってしまっていた。ただし、ボールを奪われたときのバイエルンは守備のときにボールへの圧力は強いけれど、定位置に戻るのは遅いので、その弱点を利用したカウンターや速攻は機能していた。つまり、ボールを奪ってから相手を押し込んでからのボール保持には可能性を感じさせるものがあった。

ドルトムントのプレッシングは5-4-1で始まる。バイエルンのセンターバックには時間があり、ノイアーという逃げ場もあった。そんな余裕状態をなくさせるために、15分過ぎからドルトムントのムヒタリアンとロイスは、サイドバックへのパスコースを制限しながらバイエルンのセンターバックにプレッシングをかける。しかし、バイエルンもサイドバックが空いていることはしっかりと認識していた。よって、ヴィダルやシャビ・アロンソにボールを当て、ワンタッチでサイドに展開する形でプレッシングを回避していく。ポゼッションの逃げ場があるバイエルンはボールを縦にあせらずにボールを繋ぎながら隙を探していく。チーム全体でどこのエリアにフリーの味方がいるかを共有できているように見えた。

前節で5バックによる迎撃守備に苦戦したバイエルン。ドルトムントが徐々に撤退していったこともあって、迎撃守備と向きあう時間が増えていった。主にミュラーとフンメルスのマッチアップが迎撃で繰り返された。ミュラーのプレーをつぶさに観察していると、プレーの優先順位がわかる。最優先すべきはボールを失わないこと。よって、楔のボールが来てもワンタッチで戻す。相手のゴールに対して前向きの味方にさっさとボールを渡す。戻した後に、フンメルスの行動を探る。ミュラーから離れてくれれば、またボールを受ける動きをする。離れなければ、攻撃のサイドをかえる。次に前を向く。フンメルスとの距離があれば、出来る限り前を向く。前を向いたときはサイドチェンジをすることが多い。最後にフリック。これはミュラー以外の選手が特に行っていた。迎撃で出てきた選手を外すために、ダイレクトでボールを前線(ロッベンやレヴァンドフスキ)に繋いでいく。ボールを保持することができていたバイエルンにとって、このボールを失わないが一番大切だったことは言うまでもない。

両チームの展開を見ていくと、ドルトムントは攻守に機能しているかというと、微妙。カウンター、速攻でらしさを見せていたが、3バックにしているメリットがあるのかどうかと言われると、なんとも言えず。バイエルンはボール保持からの攻撃、相手がボールを保持しているときの守備が機能していたので、上々の試合展開。コーナーキックからのカウンターでドグラス・コスタがビュルキと決定機を迎えるなど、カウンターでもチャンスを作れていたので、先制点さえ取ることができれば言うことなしの前半戦だった。

時間が経つと、ドルトムントは3列目と2列目のライン間だけでなく、1列目と2列目の間のライン間もシャビ・アロンソに使われるようになり四苦八苦。2列目のヴァイグル、ギュンドアンの空けたスペースを迎撃体制で埋める計算も、バイエルンのボール保持を優先する対策に機能しなくなっていく。バイエルンはセンターバックやノイアーにボールを戻しても攻撃を開始できる再現性を持っていたので、冷静に攻撃を組み立てていった。特にキミッヒの時間とスペースを前線に紡いでいく能力が尋常でない。オーバメヤンに置いて行かれる場面もあったが、守備でもゆっくりと相手とバトルできるようになっている。バイエルンのシュート数が徐々に増えていき、前半は終了した。

■前から奪いにいったけれど

後半のドルトムントは、シャビ・アロンソ対策としてギュンドアンを上げて対応。サイドハーフを中央に絞らせる&フンメルスの迎撃体制を強めることで、ギュンドアンの空けたスペースのカバーリングを行なう。1列目と2列目の間のスペースをシャビ・アロンソに使われていた状況への修正だった。しかし、サイドハーフは守備に熱心でないし、時にはヴァイグルもヴィダルについていき、列を上がってしまう。すると、2列目と3列目の間には広大なスペースができ、このスペースをフンメルスが埋めるのはなんか違うと本人も感じていたのだろう。両手を広げながらもミュラーについていくのだけど、あっさりと他の選手にライン間を使われて、守備を分断される場面が目立っていくドルトムントであった。ただし、人海戦術で守る意志はあるので、攻撃を跳ね返し、分断状態を利用したカウンターに移行できそうな雰囲気はある。どこまで狙っているのかは定かではないが。

よって、後半もバイエルンが狙い通りに試合をすすめる。ドルトムントはときどきカウンター。バイエルンは迎撃守備をダイレクトプレーを使って回避していくが、人海戦術に最終的に捕まってしまう場面が多かった。迎撃守備よりも5バックによるウイングのアイソレーション対応のほうが地味にバイエルンにダメージを与えていた。サイドチェンジをしても、すぐに相手がくる5バックシステムに対して、ウイングによるサイド攻撃はなかなか機能しない。

60分が過ぎると、ドルトムントは4バックでビルドアップをするようになる。4-4-2に変化。狙いとしては、ドゥルムに横幅を取らせることで、ロイスを中央に送りたかったのだろう。ボールを保持した状態は解決できそうにもなかったので、後半はロングボールも増えたドルトムント。よって、オーバメヤンだけが前線にいる形をどうにかしたかったに違いない。ただし、相手がボールを保持しているときは5-4-1のまま。

しかし、後半のドルトムントは列ごとの意思疎通がとれていなかった。引き続き、1.2列目は前から奪いに行き、3列目は連動できない。2.3列目の間のライン間を使われて、バイエルンに攻撃を許してしまう場面がたびたび。このような場面が多いという意味でも後半は完全にバイエルンの展開だったといっていいだろう。

74分にドグラス・コスタ→リベリ。80分にロイス→アドリアン・ラモス。両者ともに特に試合に影響はなく。ドルトムントは個人が無理をして相手のゴール前まで行く。バイエルンはチームの仕組みでボールを支配しながら相手のゴールに迫っていく。セットプレーから最大のチャンスが生まれたが、ビュルキのファインセーブが飛び出す。前回の対戦では怪しさから失点したビュルキだったが、この試合では絶体絶命のピンチをセーブで救っていた。影の立役者。ノイアーも負けじと仕事を忠実にこなしたこともあって、試合はスコアレスのまま終了した。

■ひとりごと

バイエルンは条件次第だけれど、両チームともに5-4-1の守備だったことはちょっと面白かった。ただし、バイエルンの5-4-1は前から奪いに行くための5-4-1で、ドルトムントの5-4-1は自陣で相手の攻撃を跳ね返すためだった差もまた面白い。センターバックがライン間の選手をつぶしにくる守備に対して、グアルディオラはしっかりと準備をしてきた。フリックとワンタッチで前向きの選手を使う。その方法論に少し固執し過ぎな場面もあったけれど、チーム全体として手応えは感じていたと思う。内容を振り返ると、バイエルンが勝利してもおかしくなかったが、人海戦術で守備の粗を隠しきったドルトムントも悪くはなかった。ポイント差は5。緊張感が続くという意味では、両者にとってよかったのかもしれない。

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