【自動化の罠と、カウンターアタック】ボルシア・メンヒェングラッドバッハ対ドルトムント

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

ボルシア・メンヒェングラッドバッハのスタメンは、ゾマー、ヴェント、エルヴェディ、クリステンセン、コルプ、ダフード、ノルトヴェイト、ジョンソン、トラオレ、シュティンドル、ラファエル。ルシアン・ファブレからアンドレ・シューベルトに監督が交代し、一気に勢いを取り戻したボルシア・メンヒェングラッドバッハ。気がつけば4位。実力通りの位置に戻ってきた感がある。ここから先は上位対決で結果が残せるかどうか。注目のシャカは、累積で出場停止。ちなみに怪我人が多く、センターバックコンビは19歳らしい。立派。

ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、ピスチェク、ソクラティス、フンメルス、パク・チュホ、ヴァイグル、カストロ、ギュンドアン、ロイス、ムヒタリアン、オーバメヤン。我らが香川真司は胃腸炎のためベンチスタート。ただし、カストロにスタメンを奪われた気配がないわけでもない。地味に正念場の香川真司。ムヒタリアンとロイスの位置でも起用してもらいたい、という希望がある。リーグ戦の優勝を狙いたいが、バイエルンの独走についていけるかどうか。

■システムの移ろい

ボルシア・メンヒェングラッドバッハのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。ただし、ゴールキック、バックパスがビュルキに渡ったときは、ダフード(ときどきノルトヴェイト)がヴァイグルまで前にでていく。4-3-3に変化することで、相手のビルドアップ隊の底辺にいるセンターバック&アンカーをマンマークすることで、ビルドアップをさせないことが狙い。ドルトムントのサイドバック、インサイドハーフの4枚に対しては、3センターのゾーンで対応していた。ビュルキからのロングボールは受け手に渡るまでに時間がどうしてもかかるので、スライドで間に合うという計算になっている。

冬休み前までのドルトムントであったなら、香川やギュンドアンが、ヴァイグルの横やサイドバックのあけたスペースを埋めるこようになっていた。しかし、今日のドルトムントは、そういった動きがほとんど見られなかった。理由は不明。相手がビルドアップをさせないという意図できたならば、その意図と正面衝突するのではなく、プレッシングを回避しながら多様性(ボールを保持しない)を見せるといった方向性に変化してきているのかもしれない。

ドルトムントはビュルキが特別に繋げるわけではない。よって、無理矢理にビルドアップをするのではなく、ロングボールを蹴る展開となる。空中戦の的がいるわけではないので、効果的なロングボールとはいかなかった。よって、ボルシア・メンヒェングラッドバッハがボールを回収する場面が多く、ボルシア・メンヒェングラッドバッハがボールを保持するようになっていった。

ドルトムントのボールを保持していないときのシステムは、4-3-3。4-1-4-1でもいいんだけど、ウイング(ロイスたち)のポジションニングが曖昧。香川を前に移動させる4-4-2がデフォルトだったように記憶もしているのだが、今日はオーバメヤンのワントップで守備をスタートさせていた。

ボルシア・メンヒェングラッドバッハのボールを保持しているときのシステムは、4-2-2-2。

サイドハーフの選手は、相手の四角形でプレーか大外。サイドバックに大外のポジショニングをとらせることで、ドルトムントのサイドバックとサイドハーフに守備の選択を強いる。サイドハーフに中を絞らせるか、大外をケアさせるか。サイドバックにライン間でボールを受けようとする相手のサイドハーフを撃退させるか。サイドハーフのポジショニングで中のパスコースを制限させるか。この基本形に対して、ライン間(四角形)を前線のラファエルとシュティンドルが狙うパターンもある。サイドハーフが外なら、前線は中。サイドハーフが中なら、前線は相手のセンターバックとバトルすると行った具合に。

ボルシア・メンヒェングラッドバッハのボール前進に対して、ドルトムントは積極的な姿勢を見せる。チームの哲学であったり、染みついた習慣だったりするのだろう。しかし、オーバメヤンのワントップで2人のセンターバックを抑えることは難しく、さらに相手はライン間でボールを受けるポジショニングをボルシア・メンヒェングラッドバッハの前線の選手がしているので、インサイドハーフががんがんプレッシングに行ってしまうと、2列目と3列目が分断されてしまう。また、ウイングのロイス、ムヒタリアンは守備に熱心でないので、実は守備の機会が多くなると、粗が出やすくなるドルトムントであった。ただし、オーバメヤンを中心とするカウンターという武器を出す機会も増えるのだけど。

このような流れから、試合を思い通りにすすめているのは、ボルシア・メンヒェングラッドバッハのほうだった。相手にボールを保持させない、自分たちが相手の守備の隙をついて攻撃を仕掛けていく。ただし、ドルトムントにとっても思い通り(ボールを保持したいという気持ちがあったかどうか)であったかは謎だ。恐らく、ドルトムントはボールを保持したかった。でも、相手の対策によってできなかった。でも、ボールを保持しなくてもサッカーはできる。ドルトムントはボールを奪い返してからの速攻で相手のゴールにせまる場面を作りながら、反撃のチャンスを待った。

複雑なシステムの変換や列の移動は、相手に隙を与えてしまうことが多い。また、時間がたてば立つほど、定位置にいることはどうしても少なくなってしまう場面が増えてきてしまう。定位置にいないことが守備が準備できていないと表現されている。

ドルトムントの狙いとしては、ボルシア・メンヒェングラッドバッハのセントラルは、列の移動(ヴァイグル対策で1列目にずれる)を毎回行う。よって、セントラルの選手がいるべき場所にいないこともある。チームのルールとして、セントラルの空けたスペースはサイドハーフが埋めることになっているボルシア・メンヒェングラッドバッハ。しかし、ボールサイドと逆のサイドハーフは、サイドチェンジを警戒&自分がカウンター要員として、中央にしぼることを行なわないケースが何度も見られた。ドルトムントはこのエリアをギュンドアンに使わせることに何度も成功する。

よって、時間がたてば立つほど、ドルトムントの攻撃の精度が上がっていく。ビルドアップ隊が抑えられ気味になったことで、フンメルスサイドから試合が展開していくことが多かったドルトムント。左サイドのパク・チュホとムヒタリアンは基本に忠実に外外のボール循環でボールを前進させ、カストロはライン間でボールを受けるポジショニングで攻撃に厚みを加えた。左サイドでためて、中央にギュンドアン、大外のピスチェクと、ドルトムントらしい形がでるようになっていく。

そして、40分にドルトムントが先制。ジョンソンが定位置(3センターの左)に戻れていないのに、前にずれるダフード。中盤が2枚になり、ビュルキはジョンソンのいるべき場所でフリーのギュンドアンにロングパス。一気にトランジション状態となり、ギュンドアンのスルーパスをロイスが決める。いわゆる時間がたつにつれて、定位置に人がいない状況を利用された場面だった。ロングボールがどっちつかずだったビュルキだったが、勇気のある決断だったと思う。いわゆる速攻というやつである。

後半になっても、大きく試合展開は変わらず。あえて言うなら、ボルシア・メンヒェングラッドバッハはより攻撃的に、ドルトムントはより守備でしっかり戻ろうと変化していた。

50分にドルトムントが追加点。またもギュンドアン起点のカウンターで、最後はロイスのアシストをムヒタリアンが決めて追加点。

57分にボルシア・メンヒェングラッドバッハが反撃に成功する。右サイドの外外からヴァイグルの横のスペースをトラオレに使われる。トラオレとダフードのコンビネーションからごちゃごちゃするも、最後はラファエルの個人技が炸裂する。

50分の場面では、トラオレの突破が止められての失点だったが、今回は得点の起点になれたトラオレ。何人目のトラオレだといつも言っている気がするか、このトラオレが一番強い気がする。

インサイドハーフのプレッシングの問題、ヴァイグルがラファエルに動かされすぎてしまう問題が嫌なトーマス・トゥヘル。さらに、クロスに対してどうしても大外が空いてしまう問題もあった。もうええやろと、カストロ→ギンター。ロイス→ドゥルム。ヴァイグルの横にギンター。ギュンドアンはトップ下のようなイメージ。守備は4-4-2で行うようになった。ロイスよりはムヒタリアンのほうが熱心に守備をするので、ピッチに残された模様。

そして、74分にドルトムントのカウンターがまたも炸裂。ムヒタリアンのクロスをギュンドアンがあわせてダメ押しゴールが決まる。ドルトムントはオーバメヤンを下げて、アドリアン・ラモスを投入。余裕の采配。

まだ試合は終わっていないと、ボルシア・メンヒェングラッドバッハ。ホフマンとヒンテレッガーを投入し、炎の3バックに変更する。相手の1列目に対して、センターバックの運ぶドリブルで対抗。あとは、ずらしていくだけだとボルシア・メンヒェングラッドバッハ。あわやの場面を作り出すも、ソクラテスが立ちはだかる。スボティッチからスタメンを奪い去ったソクラティスが魂のカバーリングをみせ、スコアが動くことはなかった。

■ひとりごと

ドルトムントが上手く守っていたかというと疑問が残るが、ボルシア・メンヒェングラッドバッハの決定機が多かったか?と言われれば、そんなこともなかった。お家芸だったカウンター、速攻でドルトムントは相手に違いを見せつけた結果のゴール。オーバメヤンは完全にブレーキだったけれども。

ボルシア・メンヒェングラッドバッハは試合を自分たちのプランどおりに進めたけれど、やっぱり先制点を与えてしまったことが痛かった。自動化で動いたけれど、他の選手がいるべき場所にいなければ、後方を優先すべきという定跡に逆らった隙を見逃さなかったドルトムントが巧みであった。

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