ドイツ・カップの準決勝。もう一方の準決勝は、バイエルンが勝利。バイエルンとのファイナルを戦うチームを決める試合。
ヘルタ・ベルリンのスタメンは、ヤースタイン、プラッテンハルト、ブルックス、シュタルク、ヴァイザー、シェルブレット、ルステンベルガー、ヘゲラー、カルー、原口元気、イビセビッチ。今季のブンデスリーガで躍進を遂げたヘルタ・ベルリン。原口元気が想像を超えたレベルアップを海外で遂げるとは、誰が想像できただろうか。ヘルタ・ベルリンとしてが調子を落としていて、まさに正念場。なお、今後の予定はリーグ戦でバイエルン、レヴァークーゼンと続く。チャンピオンズ・リーグの出場権確保に向けて負けられない試合が続く。
ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、シュメルツァー、フンメルス、ベンダー、ピスチェク、カストロ、ヴァイグル、香川真司、ムヒタリアン、ロイス、アドリアン・ラモス。大ブレイクを果たしたオーバメヤンは、練習中に負傷。爪先の亀裂骨折らしいので、復帰には時間がかかるかもしれない。リーグ戦ではバイエルンを追い続けるが、チームの優先順位は、ドイツ・カップやヨーロッパ・リーグ(敗退したけど)になっている。マインツ時代を思い出すと、トーマス・トゥヘルがチャンピオンズ・リーグの舞台で采配をふるう姿を想像すると、胸が熱くなる。
ドルトムントのビルドアップの歴史
今季の序盤戦のドルトムント、強烈なポゼッションサッカーで結果を残してきた。サイドバックのギンターが得点に絡み続けることでブレイクしたことは、記憶に新しい。しかし、年明けからのドルトムントは、サッカーの方向性を転換する。ボール保持にこだわっていたように見せた前半戦から比べると、相手にボールを渡す場面も増えるようになった。カウンター局面の守備が弱点になっていたので、自分たちの弱点を隠したかったのだろう。そして、その変化は攻撃にも現れるようになってきいる。特徴は、誰を後ろに残すかということだろう。
今季の序盤に見せたドルトムントのビルドアップの形は、2-3-5。
この試合のドルトムントのビルドアップの形は、3-2-5。
選手の配置で考えると、2-3か3-2かの差しかない。
サイドバックを残すか、インサイドハーフを残すかの2択。トゥヘルの選択は、ビスチェクを後ろに残すことだった。その代わりに、ムヒタリアンがゴールから遠くなっている。序盤のドルトムントは、相手の質的優位を利用した攻撃に苦しむことが多かった。具体的に言うと、その状態でボールを奪えないのか、簡単にドリブルで剥がされてしまうのか、という場面が頻繁に見られた。よって、インサイドハーフ(ギュンドアンや香川)よりも、守備に優れるビスチェクを後ろに残すことによって、相手の質的優位アタックを防ごうとする狙いがあるのだろう。なお、準備が整っているときのドルトムントの守備は4-2-3-1となる。
3-2-5からのドルトムントの攻撃パターン
シャルケのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。ドルトムントの選手配置は、グアルディオラの法則に似通っている。ラームがセントラルハーフの位置に移動する形と、非常に酷似している。ちなみに、グアルディオラの法則は、隣り合うポジションは同じ列にいてはいけない。
普段のドルトムントを見ていないので、リーグでも3バックのビルドアップをしているかは不明。もしも、3バックでビルドアップをしているとするならば、ヘルタ・ベルリンの準備不足を露呈する前半戦となった。
1列目にはイビセビッチとヘゲラー。ヘゲラーはヴァイグルを担当。しかし、横にカストロがいたので、非常に迷いながらの守備となってしまった。イビセビッチはフンメルスを担当。よって、ドルトムントの攻撃方向を右サイドに偏らせる狙いは、ヘルタ・ベルリンにあったのだろう。しかし、カストロがフリーだったので、あまり意味はなかった。フンメルスの出番を減らすという意味では機能していたけれども。
20分にカストロのゴール。繰り返されたビスチェク→ムヒタリアン→香川真司の関係性からサイドを突破。クロスを最後はカストロが合わせてドルトムントが先制。左サイドはロイスのポジショニングが絶妙。相手のセントラルハーフが浮いているカストロを捕まえに行くと、セントラルハーフの空けたエリアにポジショニングするロイス。よって、相手のセントラルハーフは迷う。3列目から迎撃守備を行ってきた場合(図ならヴァイザー)は、空いたスペースにシュメルツァー、おしくはラモスで仕留める仕組みになっている。カルーと原口も守備におわれ、ヘルタ・ベルリンは、かなり厳しい展開となる。
ヘルタ・ベルリンの変化に対するドルトムント
失点したこともあって、24分に4-1-4-1に変更するヘルタ・ベルリン。
よって、攻撃方法を変更するドルトムント。
ドルトムントはフリーのベンダー、ビスチェクの運ぶドリブルを攻撃の起点として、外からの攻撃から中を中心とする攻撃に変更し、ヘルタ・ベルリンを攻め立てる。フィニッシュに持ち込まれるたびに激怒していたヘルタ・ベルリンの守備。4-1-4-1で整理されたつもりだったが、その変化は予定通りだと押しこむドルトムント。ドルトムントの攻撃は、ムヒタリアンサイドで作る形が多かった。ムヒタリアンと香川のコンビネーションで崩すか、ムヒタリアンのサイドチェンジからシュメルツァー強襲という序盤の見られた形も継続しているところがにくい。ただし、フンメルスがフリーならば、カストロとフンメルスで左サイドからの攻撃も機能したに違いない。
解き放たれたフンメルス
後半のヘルタ・ベルリンは守備の形をボールの位置に応じて使い分けた。相手陣地にボールがあるときは4-4-2で、押し込まれたときは4-1-4-1で。試合に大きな影響を与えたヘルタ・ベルリンの変更は、イビセビッチの役割だった。前半はフンメルスを何があっても監視続けたイビセビッチ。あんまり意味ない、というわけで、いわゆる普通の役割に戻る。その結果、フンメルスが解き放たれることとなった。
前半は右サイドに偏ったドルトムントの攻撃だったが、フンメルスの登場で、左サイドにも攻撃の起点ができる。香川とロイスが相手のライン間でボールを受けようとすると、フンメルスは針の糸を通すようなパスで楔のボールを何度も成功させた。役者が違う。フンメルスの弱点は裏への対応だが、3バックだと前への守備機会が増える。よって、フンメルスは攻守に輝きを放つようになっていた。また、フンメルスがボールを運べるようになったことで、カストロが高いエリアでプレーできるようになったことも好循環となった。
61分にヘゲラー→バウムヨハン。64分に原口→シーバー。攻撃の駒を交代しながらだが、特に大きな変化はなし。守備が曖昧なカルーを下げることも考えられたが、チーム得点王のカルーは下げられないのだろう。ヘルタ・ベルリンもセットプレーや強引な攻撃でフィニッシュまで繋げていくが、得点には繋がらない。ヘルタ・ベルリンの守備をフルボッコにしていたドルトムントだったが、こちらも追加点が生まれない。そうなれば、ホームのヘルタ・ベルリンに何かが起きるのがサッカーの常。
しかし、74分に香川のアシストからロイスが追加点を決める。。相手のミスに乗じたカウンターが炸裂。ドリブルを失敗したブルックスは無念。意外な形で得点が決まると、83分にロイスからのムヒタリアンでとどめをさされたヘルタ・ベルリン。残り時間はドルトムントに消費されて終了。2位対4位の対決だったが、改めて力の差を思い知らせる結果内容となった。ブンデスリーガは、バイエルンとドルトムントを中心に回っている。
香川真司の現在位置
最近の試合のデータを見ると、スタメンで試合に出ることが多い香川真司。カストロとギュンドアンとのポジション争いに負けた感があった。しかし、チームの戦術変更にともない、ムヒタリアンがサイドへ。その関係で香川真司は序盤戦よりも高いエリアでのプレーをすることになった。序盤戦はビルドアップ隊のような仕事がメインになっていたので、この変更は香川真司にとって非常にポジティブなものだろう。この試合でもすべてのゴールに地味に絡んでいる。本来の位置でプレーする香川真司に対するトーマス・トゥヘルの評価は、ドイツカップの決勝戦、バイエルン戦の起用でわかるだろう。それまで懸命に頑張って欲しい。
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