Copa América 2007 final ブラジル対アルゼンチン

 ここまで絶好調のアルゼンチン。個人能力に依存した戦いも徐々に組織的な表情も見せ始めている。メキシコ戦では前線の3人も守備をしていて、守備の問題も解決されてきている。攻守ともに完成度が上がってきているので、この試合でさらなる進化をするかもしれない。

 アルゼンチンのスタメンはアボンダンシエリ、エインセ、ガブリエル、アジャラ、サネッティ、カンビアッソ、マスチェラーノ、ベロン、リケルメ、テベス、メッシ。メキシコ戦とスタメンである。ポストの役割をどれだけテベスが担えるか。そしてカンビアッソは攻撃に参加するのかがポイント。クレスポに復帰の噂があったが病み上がりではきついか。

 こちらも内容を高めてきているブラジル。特にロビーニョ、バチスタがともに守備に参加した、ウルグアイ戦の後半の守備の完成度は非常に高かった。しかし、ジウベルトシウバがいない。代わりはドゥンガの恋人ことエラーノ。右サイドに入るだろう。アルゼンチンの左サイドの攻撃は弱いので、エラーノが多少しくじっても問題ないかもしれない。

 ブラジルの狙いは引いてプレス&人数をかけたカウンター。アーセナルのカウンター形に一番似ていると思う。守り方はリバプールだが、リバプールのほうがもっとえげつない。

 ブラジルのスタメンはドニ、マイコン、ファン、アレックス、ジウベルトミネイロ、バチスタ、ジョズエ、、エラーノ、ヴァグネル、ロビーニョ。結局最後までヴァグネルは先発。

アルゼンチンの右サイドを潰せ

 ヴァグネルが守備をした。今まであまり守備をしなかったヴァグネルが決勝になると守備をした。ブラジルの気合がここから読み取ることが出来る。ブラジルの守備はアルゼンチンの右サイドによっていた。この守り方は攻撃が右サイドに偏るセビリア対策としてよく見ることが出来る。ちなみに右サイドのスペースを潰されたセビリアは4トップにしてカヌーテめがけて放り込みこぼれだまをレナト+残りのFWで拾うことが多い。しかし、アルゼンチンにカヌーテはいない。

 ロビーニョは完全にサネッティのマークをしていた。ヴァグネルはサネッティからエインセへボールが行くようにプレスをかけ、右サイドから攻撃をする起点そのものを潰そうと試みる。あっさり成功。今までの試合に比べてエインセの攻撃参加が目立ったのはブラジルの守備が機能していたからである。プレスが弱かったにもかかわらず、何も出来なかったエインセ、カンビアッソは切ない。

 メキシコが自分達のサッカーをするしかないと割り切って、流れを取り戻したように、アルゼンチンもリケルメにボールを入れようとするが、リケルメにはミネイロが密着マーク。前を向かせない守り方を実践し、パスも出させなかった。アルゼンチンの攻撃の形は中→外→中と展開されると一気にゴール前まで言ってしまうことがよくある。この外の役割を担うのはサネッティ。メッシがいなくなり、ベロンがそのスペースを空けるとサネッティはフリーでボールを持つことがよくできていた。しかし、この試合ではロビーニョが横にいたので、飛び出ず場面は前半20分まで一度もなかった。もともと左サイドは死んでいるので、アルゼンチンの攻撃は中→中→中となっていく。そこをバチスタ、ミネイロ、ジョズエ、エラーノの囲まれればどんな選手でも突破するのは無理である。

 だったらロングパスで相手の裏を突けばいいじゃないか。そのとおりである。今はなきチャンピオンシップでマリノス対浦和の試合ではまさにその形が見られた。当時のレッズは前線から激しいプレスをかけることで有名。そのプレスを交わすために。マリノスは徹底したロングボールをレッズ3バックの横に放り込んだ。その結果、レッズのボールの回復点が後ろになりレッズはバランスを崩した。

 しかし、アルゼンチンに相手の裏を突く選手はいない。テベスの任務はポストプレーだし、そもそも一人ぼっちである。ニステルが1人ぼっちだと棒立ちになったように、1人で相手の裏を取るのは難しい。オフサイドになった場面はあったがあのような状況をたくさん増やせば、ブラジルDFのラインを下げさせられたかもしれない。ボールをもらうためだけにしか走らない選手が多ければちょっときつい。

 それに対して、ブラジルのロングボールの多さはとても気になった。セビリアかと思った。中盤でボールを奪われそうになると徹底して相手の裏へ放り込み、ヴァグネルが疾走。アルゼンチンのDFラインは非常に高い傾向になるので、それを下げさせたかったのかもしれないし、疲れさせたかったのかもしれない。このロングボール作戦でアルゼンチンのDFラインが下がったのは事実である。またアルゼンチンの中盤がすっ飛ばされたので、マスチェラーノがまったく目立たなかった。

 またブラジルの人数をかけた速攻にも中盤はすっ飛ばされた。次から次へと選手が後ろから飛び出してくるのに、その選手に誰もついてこない。サイドチェンジを許し、サイドで一対一を仕掛けられる。特にマイコン。

 4-3で守るアルゼンチンの形は、さあ攻めて来い!!、という状況で機能する守り方である。ボールを奪われる→速攻に対応した守り方ではない。アルゼンチンは中盤で潰される→速攻をくらう→DFラインからやり直す→中盤にボールを入れる→潰されるの繰り返しであった。この状態になれば、中盤がサイドチェンジについていけず、ブラジルのSBが上がってくる。よって、数的優位を作れない。よって崩される可能性が高くなる。もちろん、ブラジルのように、前線の選手が戻ってくれば、この状況から抜け出すことは簡単なことである。しかし、戻ってこなかった。確かメキシコ戦では戻ってきた。良くわからない。

 ブラジルの先制点はヴァグネルがボールを奪い返し、エラーノが相手の裏へ→バチスタ奇跡で先制。直接フリーキックを決めることもあるバチスタが、器用なのかそうでないのか、この得点によって、彼がどんな選手かますます判断できなくなった

アルゼンチンの開き直り

 前半の早い段階で失点し、攻撃が機能していないアルゼンチン。そんなときはメッシの時間である。窮屈な右サイドを脱し、左サイドに居場所を求めるメッシ。前を向くと必ず何かを起こすメッシは決定機を作った。ブラジルの守備の穴、マイコンを切り裂きクロス→ベロン→リケルメの左足→ポストは見事だった。さすがメッシ。その後も、2人を相手にしても可能性を感じさせる場面もあった。やはりメッシか。


 前半の早い段階で失点し、攻撃が機能していないアルゼンチン。そんなときはメッシの時間である。窮屈な右サイドを脱し、左サイドに居場所を求めるメッシ。前を向くと必ず何かを起こすメッシは決定機を作った。ブラジルの守備の穴、マイコンを切り裂きクロス→ベロン→リケルメの左足→ポストは見事だった。さすがメッシ。その後も、2人を相手にしても可能性を感じさせる場面もあった。やはりメッシか。

 しかし、調子に乗ったメッシは、いつもより中盤に降りてくるシーンが目立った。ボールが前線まで来ないので仕方ない。しかし、中盤は密度が高いのでどうしようもない。確かにボールを持ったら凄いが、あの中盤を突破するのは難しい。

 前半23分過ぎからアルゼンチンのDFラインが上がる。攻撃の場面から守備ことを意識するようになり、ボールを奪われる→即プレス。この流れを中盤が実行するようになった。後ろ向きに走ることに疲れたのだろう。しかし、前線の3人は立っているだけだったので、いつアルゼンチンの中盤がばてるのか心配になった。ちょっと無謀である。交わされたら終わりのこの賭けは見事に成功する。中盤が前からプレスに行くようになると、ブラジルお得意の速攻が出来なくなっていく。そして決定機も作る。

 前線でベロンがボールを奪い返しテベス。テベスが潰れてこぼれだまをリリケルメ→ドニのスーパーセーブ。ボールを奪われた瞬間にプレスに行くことで、ブラジルの速攻を防げる&高い位置から攻撃ができる。しかし、いつまでスタミナが持つのか。

 リケルメのフリーキックから久々にブラジルのカウンターをくらう。ここから前線からのプレスは効かなくなる。ブラジル陣内で試合をすすめていたアルゼンチンだったが、このカウンターによってまた自陣からのスタートになる。ベロンがばて始め、中盤の位置が上が前にメッシにパス。メッシが奪われ、またそこからいつもの形に戻ってしまう。

 そしてアジャラのオウンゴール。アルゼンチンのお株を奪う中→外→中であった。前半で2-0。

カンビアッソ→アイマール

 後半になると、アルゼンチン中盤による前からのプレスはなりを潜め、前半の悪い時間帯と似た展開となる。多少ブラジルにファウルが増えたが、安全な位置でのファウルだったので危険な雰囲気はなかった。高さに自信のある選手が多いので、セットプレーには自信があったのかもしれない。実際に跳ね返す場面が多かった。

 後半15分にアイマール投入。アイマールを入れるよりもボールを取り返すメカニズムを改善しないと無理。改善できる選手がいなければ終わり。こういった場面で当たり障りのないアイマール投入はひどい。たたかれること覚悟で前線の3枚のうち誰かを下げてほしかったぞ。アイマールはキープ力を活かしてアルゼンチンの攻撃を活性化させたが、守備の問題はそのまんま。

 セットプレーから速攻→最後はダニエルアウベスで終了。

独り言

 今大会のブラジルのサッカーを破るために4-3-2-1だったり、4-4-2のひし形が最近はやってきているのだと思う。あのブラジルのサッカーは誰かがサボれば一気に機能しなくなる。それを狙うならロビーニョやヴァグネルを狙ったら面白かったと思う。

 アルゼンチンの最大の敗因は前線の3人だろう。なぜメキシコ戦で守備をしたのに今回はしなかったのだろうか。負けているからこそしなければならないのに。

 バルサ対リバプール、リバプール対ユナイテッド、アーセナル対チェルシー、バルサ対インテルナシオナルと似たような内容の試合がいくつかあると思う。でも、ミランはリバプールに勝った。来期は4-3が流行る気がする。

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