The UEFA Euro 2008 Final ~レーヴの呪いはここから始まった~

 ドイツのスタメンは、レーマン、ラーム、メッツェルダー、メルテザッカー、フリードリヒ、ヒッツルスペルガー、フリンクス、ポドルスキ、バラック、シュバ、クローゼ。バラックが出場しているので、バラックの呪いが発動しそうである。しかも、右SBは普通にフリードリヒだし。奇策を打たないと勝てないぞレーブ。

 スペインのスタメンは、カシージャス、カプテビラ、マルチェナ、プジョル、セルヒオラモス、シルバ、セスク、シャビ、マルコス・セナ、イニエスタ、トーレス。予選で見られた4-1-4-1。シャビが低い位置に下りて、4-2-3-1になることもある最強のフォーメーション。ただ、システム変更で流れを取り返す采配ができそうにない布陣である。点がを取れなかったときの采配が楽しみである。

意外と似たもの同士

 思ったよりも、DFラインを高くして、中盤の密度を上げてきたドイツ。シャビとマルコスセナに前を向かせないように、しっかり守っている。相手のSBにはSHが対応。バラックのポジションに合わせて、フリンクスたちがラインを上下させている。そんな開始1分。このやり方だと、トーレスの前にスペースができるので、活躍の予感。ただし、トーレスめがけたロングボールは20分以降まではあまり見えなかった。

 その前にスペインはDFラインを下げて、ボール回しを挑むに違いない。そして、イニエスタが動き始めて試合が動くに違いない。イニエスタが動かなければ、DFやシャビ、セナからサイドチェンジやロングパスで試合を組み立てることになる。バルサだったら、マルケス×ミリートが試合を作る。

 マルコスセナがサイドチェンジを失敗。イニエスタはまだ動かない。ってもまだ2分。ここで興味深い動きがドイツにあった。右サイドでのスローイン。中央のバラックもきちんとサイドに流れてきている。しかし、ボールを奪われるドイツ→怪我の噂のあるバラックは歩いている→バラックのスペースを埋めるためにシュバが一気にバラックのゾーンで守備を敢行していた。ちなみに、シュバの猛烈なプレスにセルヒオラモスが致命的なミスパスでドイツはあわやの場面ができる。

 この場面からわかることは、バラックの怪我は本当っぽいこと。バラックはあまり走れないから、周りでフォローしてあげようぜみたいな共通理解がドイツにありそうである。確かに、シャビがボールを引き出す動きをしたときに、クローゼがあれ、バラックの役割じゃん、なのに行かないのか、みたいな仕草で守備を行っている場面もあった。

 そして、スペインのDFラインはやっぱり鬼プレスに強くないのか、それとも、決勝戦だから緊張しているのか。イニエスタとシルバが動かない限り、ドイツの守備は簡単には崩せないぜ。

 4分にはスペインのお株を奪うようなパス回しで、ドイツがスペインゴールに迫る。予想していた通り、ドイツのフリンクスより後ろの選手は、ちょっとした工夫でボールを自由にもてるようだ。バラックの動きに対応できなかったセナと、ボールホルダーにプレスに行かないFW→中盤がいるべき位置を越えてプレスに行く→バイタルすかすか病という、スペインは予選で見られた病魔が少しだけ復活した。本選では撤退がメインだったのに、どうやら浮き足立っているようである。

 7分。4分のデジャブか。左サイドのドイツの攻撃。バラックのフリーランニングにラームがボールを合わせる。セナはついていかず、プジョルが慌てて対応するものの、一瞬で交わされる危ない場面だった。またカシージャスは近くの選手にパスをした良いんだけれど、シュバがうまく相手をマークしているので、ゴールキックなどはロングボールを蹴らなければいけない状況であった。そのロングボールはレーマンまで飛んでいっていた。飛ばしすぎだろうと。

 つまり、序盤はドイツ。ボールを細かく繋ぐことを目指した意味をここで発揮。スペインは高い位置から、組織だった守備を行えないので、ドイツが次々にチャンスを作っていく。スペインはそんなドイツの挑発にボールを奪いに行く選手、ポジショニングを維持しようとする選手と意識がバラバラであった。そんな立ち上がりの10分。そんな苦しい状況をあらわすのがプジョルのロングボール→レーマンキャッチの10分。そしてレーマンは近くの味方にスローでパス。なんだこの差は。

 14分。初めてスペインが中盤でボールを奪い返してカウンター。最終的にメッツェルダーの足に当たってオウンゴールになりそうな場面であった。コーナーキックを奪う。ここでポゼッションが発表された。ほぼ五分五分。スペインはDFラインでボールを保持する時間が長く、ドイツはさっさと前にボールを運んでしまうから、このような数字になったのだろう。前線にボールが入れられるドイツと、入れられないスペインの差はでかい。そしてイニエスタはまだ動かない。

 17分。メルテザッカーがパスミスをする。そしてスペインの速攻。色気が出たかメルテザッカー。しかし、トーレスの突破を何とか食い止めるメルテザッカー。自作自演。イニエスタのすばやい攻守の切り替えで逆カウンターはくらわなかったスペイン。その前の場面も含めて、徐々にイニエスタが動き始めている。

 20分過ぎからドイツの攻撃に単純なミスが生まれ始める。丹念に繋げば良いものを一発の縦パスで状況を打開しようし始めたドイツ。どうしたんだろう。単純な縦パスは相手からすると読みやすい。そして、スペインはボールを奪ったらすぐにトーレスの裏へボールを供給するようになる。つまり、手数をかけなくなったスペイン。

 なんでドイツに縦パスが増えたかというと、スペインの中盤の守備が修正されてきた。フリンクス達には前を向かせないようにプレスを行っていた。これで、ドイツのボールだしはDFラインからが主になる。フリンクスたちに比べれば、その精度は落ちる。それでも、ドイツはまだ自由なんだから落ち着いてやればいいものを21分にメルテザッカーがまたも色気を出してボールを失う。そのチャレンジ精神は買いなのだが。

 つまり、この時点で両チームともかなり似たサッカー、似た守備を行うという奇妙な現象が起きている。スペインの優雅さばかりがクローズアップされているが、ドイツも結構綺麗だと思う管理人でした。

 22分。スペインにビックチャンス。ポドルスキが中に絞りすぎという原因と、スペインの選手が右サイドに片寄って、うまく数的有利を作り出していた右サイドからチャンスを作る。フィニッシュはトーレスのヘディング→ポスト直撃。ドイツは左サイドがちょくちょく空く。シルバが低い位置に下りていく→ラームがついていく→空いたスペースにセスクやトーレスが流れてくる→それを気にしてラームはシルバについていけなかったり。

 この決定機から、ドイツは攻撃面の修正に成功する。フリンクスが他の選手と違いを発揮し始め、ボールを繋げる左サイドに集中させてから、ドイツはバイタルまで簡単にボールを運ぶようになる。スペインはトーレス狙いばっかりである。メルテザッカーと勝負の場面が多いトーレス。

 33分。試合が動く。きっかけはシャビの動きに注目したフリンクス。DFラインを上げてシャビのスペースを潰せと指示。しかし、DFラインはフリンクスの指示を華麗にスルー。セナの楔のボール→バイタルで簡単に前を向くシャビ。トーレスにスルーパスを通す。プレミアでの活躍を証明するかのようなトーレスのスーパーゴールが出てスペインが先制。フリンクスの指示をシカトしたDFは犯罪級、さりげなく守備をさぼっていたバラックも実は罪が重い。この先制点で、スペインはMFとDFの距離感問題を解決してくるだろう。

 残りおよそ10分。ドイツはバラックが血を流して治療中に、ピッチを自由に駆け回るシュバ。失点したことで、シュバは独力で何とかしようとするプレーが目立っていた。完全に空回りだったが。スペインはDFラインでボールを回していても特に問題がないので、精神的に余裕が生まれた模様。イニエスタが仕掛けて、シルバのビックチャンスとか凄かったぜ。その後も、ボールを奪ってカウンターのスペインがらしさを発揮して前半が終了。

ラーム→ヤンゼン

 ラームが怪我をしたようで。パスセンスのあるラームから突貫小僧のヤンゼンが登場。何ともいえない交代劇である。ノイビル出てこないかな。サイドに流れるノイビルが入れば、両SHがさらに羽ばたくに違いない。

 後半が始まる、スペインの中盤の位置取りが前半と変った。前半はハーフライン付近だったが、後半はハーフラインよりもかなり自陣よりになっている。問題解決の予感。こじ開けられるかドイツ。

 しかし、中盤の問題を解決したスペインの前にボールを持たされている感満載のドイツ。それでも楔のボールを入れられる場面があり、崩せそうな感じなんだけど崩せない。ポゼッションを志して、まだ日が浅いのか経験不足か。スペインはボールを奪う→守備の準備ができていないドイツ相手に仕掛けて、自分の形にもって行くえげつなさを披露。あれですか、チェルシーに負けトラウマを抱えたバルサのようでもある。そりゃバルサよりバランスは数段に上だけど。

 57分にヒッツルスペルガー→クラニー。なんでクラニーなんだよ。ここまできたらノイビルだろうがと。それかマリオゴメスの奇跡に期待するのが筋じゃないのかと。筋を通さないで何を通すんだ。ちなみにヒッツルスペルガーは前線とうまく絡めていなかったので、交代は納得。しかし、フリンクス1人で大丈夫か。意外に大丈夫でびっくりした。

 ドイツはクロスを上げるものの、スペインの空中戦対策に苦戦。前半からいつもよりも、前に飛び出すカシージャス。確かにキーパーが日常的に飛び出していれば、ドイツは工夫せざるを得ない。

 63分。セスク→シャビ・アロンソ。4-1-4-1だといつもよりも目立たないセスク問題の解決は次回に持ち越されたようである。この交代の狙いは守備固めか、ポゼッションを高めるためか。たぶん、守備だろうな。

 66分。小競り合いを起こしたシルバを、さっさとベンチに引っ込めるアラゴネス。代わりにカソルラが登場。徐々にカウンター色が強くなるスペイン。72分。トーレス→グイサ。クローゼ→マリオ・ゴメス。なんとバラックを残してしまった。

 そんなバラックは審判にいらだっている模様。パワープレー要員を投入したドイツだが、スペインがボールの出所にしっかりとプレッシャーをかけたことで、ドイツは崩壊気味のまま試合終了。ヒッツルスペルガーをベンチに下げたのが結果として痛かったかもしれない。パワープレーをするタイミングで、スペインが前からボールを奪いに来たときのための準備がドイツにできていなかった。

独り言

 戦術の幅はスペインに軍配が上がった。ポゼッション率が60%を越える頃が懐かしいが、カウンターあり、チャレンジ&カバーの密度を高めたスペインは一気に成長したと思う。予選で見られなかった幅を一気に身につけさせたアラゴネスがすさまじい。

 ドイツは徐々に幅を広げている最中で、2年後には恐ろしくなりそうな予感。マリオゴメスも黙っていないだろうし、シルバーコレクターのまま終われないバラック。負けたことがいつか大きな財産になりそうな予感である。審判に見放されたドイツも悲しかった。それにしても、今大会のEUROは不思議な審判が多かった気がする。

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