【やっぱりモドリッチ】トルコ対クロアチア【システム噛み合わせ論の罠】

EURO2016

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トルコとクロアチアといえば、ミラクルターキーと呼ばれたときの試合を思い出す。

トルコといえば、エムレ運団とハカン・シュキュルとだったことは今は昔。他国で育った選手が、その国の代表選手として活躍する一方で、トルコ代表は表舞台から姿を消しかけていた。しかし、他国で育った選手をしっかりとスカウトをすることで、良い選手が集まり始めている。アルダ、チャルハノールはまさに逸材。ただし、アルダはバルセロナで塩漬けにされているけれど。

ボバン世代以降のクロアチアは、良い選手は揃っているんだけど、結果が出ない時代が続いている。今回のスタメンもかなりえぐい。しかし、監督のチャチッチが非常に怪しいらしい。シュケルが会長だ!ということも非常に怪しい。そんな怪しいスタッフと良い選手のどちらかが勝るのだろうか。それとも、チャチッチが、まさかの名将なのだろうか。

システム噛み合わせ論の罠

システム噛み合わせ論をなめてはいけないが、システム噛み合わせ論と心中してもいけない。システム噛み合わせ論を簡単に説明すると、自分たちのシステムと相手のシステムを比べて、浮く選手がいないかどうかチェックすることにある。例えば、4-4-2で守備をするチームと4-3-3でボールを保持するチームが対決したとしよう。4-3-3のチームは、中盤で数的優位になりそうだ。その代わりに、1トップの選手は2人のセンターバックと対峙する数的不利エリアとなる。よって、試合前から、このエリアは有利で、このエリアは不利だ!ということが判明する。つまり、試合前にわかるということは、準備ができる!ことを意味している。つまり、数的不均衡エリアをどのように解決するかを試合前に準備しなければならない。よって、しっかりと準備してきた場合には、システム噛み合わせ論は、ほとんど役に立たない。

クロアチアは4-2-3-1でボールを保持する。トルコは4-1-4-1でクロアチアのボール保持を迎え撃った。

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システム噛み合わせ論を採用すると、図のようになる。トスンがチョルルカとビダを見れれば、基本的に守備がずらされることはない。よって、トルコは4-1-4-1でクロアチアのボール保持に対抗を試みた。

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ボールを保持したクロアチアは、相手のシステム噛み合わせ論をあざ笑うかのようにポジショニングを変えながら、ボール保持を行った。今大会で目立っている形が、2センターバックと2セントラルハーフによるビルドアップ。過去にボックスビルドアップと名付けたが、他にいい名称はないだろうか。チョルルカ、ビダはボールを繋げるし運べることもあって、トルコはこのエリアの4対3から、あっさりとボールを前進させてしまっていた。トルコのインサイドハーフコンビは、クロアチアのセントラルハーフコンビを抑える役割だったのだけど、チョルルカたちが上がってきたり、モドリッチがスルナのいたエリアにポジショニングしたりすると、大混乱に陥った。

また、サイドバックが横幅を取る関係で、ペリシッチとブロゾビッチが中央にポジショニングする場面が多かった。トルコはサイドバックで深追いさせる約束事になっているようだったのだけど、追わない場面もしばしば。アルダとチャルハノールが気合で相手のサイドバックについていっていたのには、泣けた。アルダとチャルハノールが守備に追われるような形で守ってしまったことに試合の主導権をあっさりと渡してしまった要因がある。

クロアチアのボール保持でマンジュキッチとラキティッチの働きは、各々の個性を活かしたものだった。マンジュキッチはフィジカルを活かしたポストワークとサイドに流れてのプレー。サイドバックが上がってこないときは、マンジュキッチがサイドに流れて攻撃の起点となっていた。ラキティッチは、ビルドアップのサポート、相手のサイドバックの裏に走る、サイドに流れる、ライン間にポジショニングするなど、技術の高いプレーと持ち前の運動量でチームに貢献していた。

トルコのボール保持は、イナンがセンターからサイドに流れ、インサイドハーフが落ちてくる。そして空いたエリアにチャルハノールが登場する形が多かった。トルコのボール保持に対して、クロアチアはまっとうな4-4-2で対抗する。クロアチアの4-4-2は1列目がサボらないので、非常に堅固。そして、トルコのセンターバックがビルドアップで貢献できなかったこともあって、クロアチアの1列目は2列目の前のスペースを埋めながら、トルコの2列目の選手へ集中することができていた。両チームのセンターバックの攻撃参加の有無もこの試合の流れを左右した大きなポイントだろう。

スルナを中心とするクロス爆撃のオープニングは、ラキティッチのボレー。その後も延々と再現されたスルナのクロス爆撃。わかっていても止められないクロアチアのボール循環の中心はモドリッチ。ボールをセンター、サイドと状況に応じて供給。ビルドアップでは味方にボール循環の方向性を指示。相方のバデリもなかなかできる選手のようで、このコンビをオープンにした状態からボールを奪うには至難の業と言えるだろう。そんなクロス爆撃の果てに、ゴールを決めたのはモドリッチ。上空から落ちてきたボールをまさかのドライブシュートで先制点を決めた。

4-4-2で対抗するトルコ

エズヤクプ→シェン。シェンは左サイドハーフ、チャルハノールを1列目に移動させ、トルコはシステムを4-4-2に変更した。ドリブラーのシェンを左サイドに配置することで、スルナの攻撃参加を自重させたい。アルダを右サイドに置くことで、守備の比重を軽くしてあげたいなど、様々なことを同時に解決するいい采配だった。また、クロアチアのボール保持に対しても。2センターバックに2トップを当てる。プレッシングが早ければ、ポジショニングでサポートをする時間すら与えないのだ、という解決策は大いにあり。トルコのシステム変更を伴う采配によって、後半の序盤はトルコの奇襲が成功する。シュートは味方にあたってしまったけど。

クロアチアの凄まじさは、相手のプレッシングの方法が変更になっても、特に変化はしないことだった。モドリッチとバデリは圧巻。数的同数でも繋げますからというパフォーマンスは、相手の心をへし折るには最適だった。さらに、センターバックの列に下りてロングボールで試合を構築するモドリッチ。右サイドに移したのに、アルダサイドから攻め込むクロアチアはかなりえぐい。もちろん、スルナのクロス祭りは後半も開催されたのだけど、ペリシッチのクロスも同じくらいに目立っていた。4-4-2のハイプレッシングに形を変えたことで、試合の流れはクロアチアの速攻を導き出す形となった。

ただし、1トップが機能しなかったトルコだったが、2トップにすることで、ハイボールの競り合いからのセカンドボール争いには勝機を見出すようになる。また、センターからボールを運ぶよりもサイドからボールを前進させることで、自分たちの時間を作れるようになっていく。クロアチアの守備は1列目の守備が間に合わないと、サイドハーフがセンターに絞る傾向があるので、サイドバックからボールを運ぶという決断は最適だったトルコ。また、サイドバックコンビはどうみてもボールを持ったときに長所を放つようだった。

そんな流れを加速させるために、トルコはブラク・ユルマズを投入。でも、裏をとった場面以外はほとんど機能しなかった。そして、最後に登場したのは、エムレ・モル。生まれも育ちもデンマーク。ドルトムントへの移籍の決まった97年生まれのエムレ・モルは、ボールを持ったときに驚異的な技術を披露。明らかに何かをしてくれそうなプレーの数々でトルコの攻撃を牽引した。しかし、クロアチアのスバシッチを焦らせるような場面は少なかった。何度も離脱するチョルルカも含めて、クロアチアの守備は堅い。

クロアチアはバーやポスト直撃のプレーもあったけれど、追加点はなし。ロスタイムにはミラクルターキーの雰囲気をほんの少しだけ感じさせられたけれど、無事に守り切りに成功する。追加点をとれなかったときの法則をしっかりと破り、グループリーグを突破を決めた状態でのリベンジに向かう。

ひとりごと

後半のテリム采配の気持ちはよくわかる。前半を無駄しにしてしまったのが痛かった。それでも、もっと点差がついてもおかしくない試合内容だったけれど。前半のインサイドハーフコンビが何かを起こしそうな気配はなかったので、エムレ・モルを起用してほしい。ただ、相手の裏に走るような選手がいないことが攻撃の迫力を停滞させてしまっているので、誰かいないだろうか。

クロアチアは盤石。ボール保持、速攻、カウンターと追加点をとれなかったことが不思議なくらいの攻撃を見せる。守備でも11人による4-4-2でしっかりとトルコの攻撃を跳ね返した。相手のレベルが上ったときに、どの局面が足を引っ張るかはやってみなければわからないだろう。それでも、スタメンの強さは他のチームと比較しても劣らない雰囲気。ただ、交代が遅かったように、控え選手をどこまで起用できるかが、負けている状況や疲労が溜まったときに鍵を握りそう。

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