【第三節】マンチェスター・ユナイテッド対スパーズ【繰り返されるポジションニング対決】

マッチレポ×プレミアリーグ1819

今季のマンチェスター・ユナイテッドの最大の注目点は、「ルイ・ファリア」がいなくなったことだ。モウリーニョの片腕として、ルイ・ファリアは一部界隈では有名な人物。ルイ・ファリアがいなければ、モウリーニョは飛べない鳥になるのではないか?という予想も一部では囁かれている。というわけで、今季のマンチェスター・ユナイテッドがどうなるかは要チェックなのだ。このタイミングで真価が問われるというのも、切ないものがあるモウリーニョだが。どれだけの成功を成し遂げてきたと思ってんねん!という意味において。

今季のスパーズといえば、補強ゼロで有名になっている。プレミアリーグといえば、言い方は悪いか金満リーグだ。よって、下位のチームにも強烈な選手が平気で在籍している。さらに、各チームのフロントが優秀な監督も連れてくるようになってきたので、魔境になってきるプレミアリーグだ。そして、スパーズ。そんななかで補強ゼロ。「我々には強力なスカッドがある!!」ということなのかもしれないが、補強ゼロはすごい。ただ、前線にはタレント豊かな選手が溢れていることも事実だし、平均年齢も若いので、覚醒にかける想いも決して勝算の低い計算にはならないだろう。というわけで、わからなくもない補強ゼロのスパーズであった。

モウリーニョの最初の策

マンチェスター・ユナイテッドのシステムは[3-5-2]。自陣に撤退して守備をするときは、図のように[3-5-1-1]になる。スパーズの[4-3-1-2]に対して、守備の基準点をはっきりさせたかったのだろう。数的不均衡エリアである[2センターバック対ルカク]に対しては、リンガードの献身性でどうにかする!という策になっていた。マンチェスター・ユナイテッドが3バックとか近年は記憶にないぞ!とポチェッティーノが思ったかどうかは定かではない。ただ、モウリーニョの3バックによる奇襲は、スパーズの攻撃の設計図を狂わせたのは間違いなかった。よって、マンチェスター・ユナイテッドの猛攻で前半の試合は展開していく。

守備の基準点がはっきりしたこともあって、スパーズのプレッシングもサイドは正面衝突の様相となった。そして、繰り返された形がローズの裏にポグバ、ときどきリンガードでヴェルトンゲンをおびき出す作戦。さらに、その攻撃を支えるのがエレーラ。左センターバックで起用されたエレーラだが、そつなくこなしていた。ただし、途中からケインがエレーラとの空中戦を挑んできたことには同情した。スパーズの2トップを3バックでかわす。いざとなったら、デ・ヘアがルカクに放り込む。ビルドアップの出口をエレーラサイドに設定する。で、狙い所はローズの裏としっかりと設計された攻撃を見せるマンチェスター・ユナイテッドであった。足りないものはゴールだけ!という展開へ。

ポチェッティーノの最初の策、というか、対策

マンチェスター・ユナイテッドの守備の基準点をはっきりさせる守備に苦戦するスパーズ。だったら、目先を変えながら守備もどうにかしようぜ!というわけで、デンベレがポグバの相手をするようになる。なお、トップ下の選手を上げて[3バックに3トップをぶつける]なんてことをするようになった。ただ、デ・ヘアに蹴っ飛ばされてルカク!なので、状況はそんなに変わらない。面白かったことは、空中戦がベルギー代表対決になったことだろうか。別に珍しいことではないか。空中戦のセカンドボールを拾う対としてもリンガードは非常に機能していた。ただ、マンチェスター・ユナイテッドのシュートは枠に飛ばない。ロリスをかわしてもシュートが入らなかったので、まるで呪われているようだった。

ポチェッティーノがモウリーニョを破壊した策

後半の頭から、前半の終わり頃から雰囲気はちょっとだけあったけれど、スパーズは[4-2-2-2]に変更する。この変更の肝は、[3-5-1-1]に対して、ボックスビルドアップで数と配置の優位性を仕掛けられたこと。それによって、ビルドアップ隊がオープンな状況でボールを持てたこと。さらに、守備の基準点が曖昧になったマンチェスター・ユナイテッドのポグバ、フレッジが迷子になったこと。そして、マティッチの周りにエリクセンとデレ・アリを配置したこと。

一番の罠が3バックに2トップをいじらなかったこと。マンチェスター・ユナイテッドは3バックで2トップをみるようにしていた。前半と同じように、サイドの守備の基準点ははっきりしている。ここでクイズです。エリクセンやデレ・アリがこの位置からサイドに流れる、マンチェスター・ユナイテッドのウイングバックの裏に移動したときにマークをするのは誰の役割でしょうか。答えはなし。よって、エリクセンのサイドに流れる動きからの攻撃でスパーズがあっさりと2得点を取ることに成功する。

なお、勘の鋭い方ならお気づきだろう。このエリクセンのサイドに流れる動きは、前半にマンチェスター・ユナイテッドが繰り返していたポグバのサイドに流れる動きに似ている。つまり、相手の狙いを逆用したというわけだ。この流れが偶然か、必然かは知らない。

殴り返すモウリーニョ

0-2になってからのモウリーニョは、選手をガンガン交代した。最初のエレーラ→サンチェスの交代だけ、リアクションが謎であった。その後はジョーンズ→リンデロフ、マティッチ→フェライニで[4-2-3-1]の完成だ。エリクセンがサイドに流れるならば、サイドバックをおいてしまえ作戦。4バックに変更してから、スパーズは攻め手を失っていき、マンチェスター・ユナイテッドに試合の流れが戻っていった。その大きな要因がスパーズの守備にある。

[4-3-1-2]の守備は、どのように設計すればいいのかちょっと難しい。前からプレッシングを仕掛けるときに2センターバックとアンカーに同数プレッシングを仕掛けるときに、近年は採用される形だ。インサイドハーフの選手に走って死んでタスクになりがちなので、普段のインサイドハーフとは違うタイプの選手が起用されることが多い。マンチェスター・シティの場合は、[4-3-3]から[4-3-1-2]にプレッシングを変化させるときにインサイドハーフを担うのはウイングの走れる選手たちだったりする。

で、スパーズのプレッシングはなんだかよくわからなかった。4-3で守る!にしても、デレ・アリにもそのタスクをおわせるのか?みたいな。4-2-2-2に変化してからは、相手がボールを保持している場面でもそのままの形が継続されていた。サイドの守備はどうするねん、みたいな。試行錯誤をの末に、4-2-3-1で守るように変化していったスパーズ。平たく言うと、デレ・アリとエリクセンがサイドハーフの守備タスクを行うようになっている。ただ、それにたどり着くまでに時間がとってもかかっていたので、何が起こるかみてみよう!状態だった可能性は高い。たぶん、今後も継続されそうな[4-2-2-2]や[4-3-1-2]だけど、守備タスクのあやふやさから失敗する可能性が高いと思う。

そんなあやふやな守備に対して、全力で向かっていくマンチェスター・ユナイテッド。しかし、シュートが枠に飛ばない。最後まで飛ばない。オールド・トラッフォードでそんな日がこなくてもいいじゃないか!と言いたくなるような試合であった。そして、終了間際にはルーカスに個人技でゴールを決められるという悲しい終わり方をする試合となってしまった。試合内容からすると、0-3はちょっとかわいそうなマンチェスター・ユナイテッドとモウリーニョであった。

ひとりごと

[4-3-1-2]によって、中盤に菱形を作ったスパーズ。しかし、ほぼマン・ツー・マンのように対応されたこともあって、ボックスに変化することで対応した。何でもかんでも菱形を作ればいい!というわけではないという事例。ただ、菱形や三角形を作るときの注意点は、攻撃の起点となるべき選手がオープンかどうか?オープンになりやすい仕組みになっているかどうかが超重要になっている。チェルシーの場合は、キーパーとセンターバックの片方はフリーであることが多い、というサッカーの仕組みに寄り添っている。なお、攻撃の起点となるべき選手が相手に捕まっている場合は、ロングボール、サイドチェンジ、攻撃のやり直しをする!ということは昨日書いた。

このように考えていくと、この試合の肝はエリクセンとデレ・アリのポジショニングよりも、リンガードに対して、ダイアーとデンベレを並べたことのほうが意味は大きいと考えても悪くはない。前線の[1-1]のプレッシングに対して、ボックスビルドアップはえぐい。菱形の有効性がどうこうではなく、この試合は守備の基準点はどのように設定するか、そして狂わせるか?という試合であった。モウリーニョに落ち度があったとすれば、後半の4-2-2-2に対して、0-2になってから修正になってしまったことだろう。ただ、あそこまでやられるのか!というのは予想外だったのではないかと思うけれど。

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