ベイルがスタメンに復活したレアル・マドリー。ファースト・レグを3-1で勝利したことを考慮すると、守備的なスタメン(ルーカス・バスケスとか)を起用したほうが論理的と言える。しかし、ジダン監督はぶれない。ときには非論理的に見える采配も、そのぶれなさがときにはチームを救うこともあるのかもしれない。また、ヴァランの代わりにペペ。ヴァラン、ペペ、セルヒオ・ラモスと世界屈指のセンターバックを揃えるレアル・マドリーは、ずるい。
ジエリンスキ→アランのスタメン変更をしたナポリ。アラン、ジエリンスキともにそんなにプレーを見たことがあるわけではないので、その意図は不明。試合を眺めていると、アランが果敢なプレッシングをしていた。ジエリンスキもできなくはないプレーなんだろうけど、アランのほうが守備で力を発揮できるから起用されたのかもしれない。勝ち抜けには得点が必要なナポリは、ホームの利を活かして、攻守に積極的なプレーでレアル・マドリーに臨みたい。
ナポリのボールポゼッション
前半に何度も繰り返された形が、クリバリからの縦パスであった。ナポリのストロングサイドは左サイドだ。クリスチャーノ・ロナウドの守備が不安定なので、レアル・マドリーのウィークサイドは左サイドとなっている。長所と短所が噛み合っていないのだが、ナポリは自分たちらしさを強く発揮するためにも、得意の左サイドからの攻撃を中心に試合を組み立てていった。予想通りに、献身的な守備をしないベンゼマとクリスチャーノ・ロナウドを尻目に、ナポリのビルドアップ隊は好き勝手に攻撃の起点として機能していた。特にクリバリの楔のパスは秀逸で、何度もチャンスを作っていた。一方でアルビオルはシンプルなミスを連続させていたので、それでも俺達は左サイドから攻めるんだ!というナポリの姿勢は、自分たちの事情が大きいのかもしれない。
モドリッチ対ハムシク
ビルドアップ隊が自由に振る舞えていたので、ハムシクはライン間にポジショニングすることが多かった。狙いはモドリッチの背中だ。ハムシクへのパスコースを制限するために、モドリッチは常に後方を確認しながら、ポジショニングをとっていた。しかし、さすがのモドリッチも背中に目がついているわけではない。モドリッチがハムシクから視野をきると、ハムシクはモドリッチの背中(右手か左手に移動)でボールを受けられるポジショニングをすぐに取っていた。モドリッチとカゼミーロ、モドリッチとベイルの間にパスラインができてしまうのだけど、決してがら空きというほどに、レアル・マドリーの守備が無秩序だったわけではない。どちらかと言えば、ナポリのパスの出し手のレベルの高さを知らしめるような場面の連続だった。
グラムとメルテンスとインシーニェのサポート
ナポリのポジショニング攻撃でえぐかったのは、ハムシクとインシーニェの関係性だった。モドリッチの左手にポジショニングするハムシク。ハムシクの位置を確認してポジショニングするモドリッチ。ハムシクは動かない。そして、モドリッチの右手にインシーニェが登場する。カルバハルが対応すれば良いのだが、グラムが絶妙なポジショニングにいることと、ベイルが帰ってきていない。ペペはメルテンス担当になっている。さらに、このライン間でボールを受ける動きをメルテンスも行なう。メルテンス、ハムシク、インシーニェが役割をかえながら、モドリッチの裏に登場するので、レアル・マドリーの守備はたじたじとなっていく。
こうしてモドリッチの背中を使いまくったナポリ。それでもペペとセルヒオ・ラモスの何とかしてしまう能力の前に、フィニッシュまではなかなかたどり着けなかった。しかし、自分たちの型をうまく使えていれば、あとは続けるだけとなる。そして23分に先制点を決める。ライン間でボールを受けたインシーニェ→ハムシク→メルテンスとワンタッチで繋いだ綺麗なゴールであった。
ナポリの誤算とそれでも戦わねばならない理由
この試合のナポリのプランは、ボールを保持する時間を長くすることだった。ファースト・レグの守備を思い出すと、レアル・マドリーにボールを保持される場面が目立っていた。その守備方法(相手のアクションに対応する)では、自分たちがボールを保持する時間を長くすることはできない。そのボールを返せ!というくらいにプレッシングをかければ、相手はボールを離してくれるだろう。よって、ナポリは高い位置からプレッシングを行い続けた。そのためにアランは起用されたのかもしれない。何度もセルヒオ・ラモスまでダッシュするアランが目撃されている。
このナポリの死なばもろともプレッシングに対して、レアル・マドリーはたじたじとなる。ボールを保持すれば、スタジアムからブーイングを浴びせられる。12分くらいからは、もう繋がなくていいよという開き直りになっていったレアル・マドリー。ナポリのディフェンスラインは高めに設定されているので、蹴っ飛ばしてBBCに任せようという形が増えていく。この形だったら、ベイルを起用した理由もわからなくはない。ただし、ほとんどレアル・マドリーのチャンスに繋がることはなかった。16分にレアル・マドリーがようやく長々とボールを保持する場面が出てくる。それまでは、ナポリの一方的な展開だった。
ファースト・レグのナポリの守備がノーマルな形だとすると、相手のボールを果敢に奪いに行くスタイルはあまり得意としていないのかもしれない。完全なゾーン・ディフェンスと果敢なプレッシングは似て非なるものだ。相手陣地からのプレッシングは、どうしても人への意識を強くしなければならない。待ち構える守備に比べれば、運動量も増える。23分にナポリが先制点を取ったのだが、その前後の時間帯から徐々にレアル・マドリーがボールを保持する時間が増えていった。
28分にレアル・マドリーもビルドアップからチャンスをつくるが、クリスチャーノ・ロナウドがポストに当ててしまう。この場面では痛んでいた選手がいたとはいえ、レアル・マドリーに自陣からボールを繋がれてフィニッシュまで持って行かれてしまっている。国内リーグの連戦や慣れない戦い方に疲労はあったのかもしれない。レアル・マドリーも隙を見ては高い位置からプレッシングを行くようになると、ナポリの面々もファースト・レグのようにミスをするようになる。よって、試合は徐々にレアル・マドリーが得点を取りそうな雰囲気はないけれど、五分五分なものになって、前半が終了する。
困ったときのセルヒオ・ラモス
後半になっても、前半のリプレーをしたいナポリ。しかし、その望みを断ち切ったのが前半30分以降から見られた試合展開だった。きっかけは、レアル・マドリーの前線からのプレッシング。クロースとモドリッチの一人何役なんだろうという攻守の働きから、レアル・マドリーは50分にコーナーキックを得る。そして完全なるゾーン・ディフェンスで守備をするナポリに対して、セルヒオ・ラモスがはるか上空からヘディングを炸裂させる。困ったときのコーナーキックからのセルヒオ・ラモスの頻度は異常だ。
55分にアラン→マルコ・ログ。カードをもらった瞬間に交代する。ナポリの交代は前線の選手を交代することで、守備の強度を復活させたかったのかもしれない。
その交代直後に、カルバハルへの放り込み&裏とりからコーナーを取るレアル・マドリー。カルバハルが高いポジショニングをとれている次点で、前半とは異なる光景になっている。ナポリは完全なるゾーン・ディフェンスのため、セルヒオ・ラモスは誰にも邪魔されずにジャンプしてヘディングができる。セルヒオ・ラモスのヘディングは相手に当たってゴールに吸い込まれた。メルテンスが触らなければ、レイナが止めていたかもしれない。同点ゴールから6分後のことだった。
アグリゲートスコアも5-2になってしまった試合。サッリ監督は交代をしながら諦めない姿勢を見せるが、前半戦のような攻撃を再現することはできなかった。サイドバックが高いポジショニングをとれなかったこと(疲労か、ビルドアップが心配になったか)と、カルバハルがサイドを捨てたことが大きい。カルバハルは、インシーニェを観る。グラムへはボールが出たら寄せる。グラムがいなかったらラッキー。このカルバハルの修正によって、モドリッチがプレッシングに行くことを許可されたことも大きい。なお、ベイル→ルーカス・バスケスでレアル・マドリーの右サイドの守備はさらに固くなった。
こうして、スコア的にも体力的にも苦しくなったナポリは、レアル・マドリーのゴールに迫れなくなっていく。そして、レアル・マドリーはボールを保持する時間が増えていく。そんなナポリのスタジアムにさらなる絶望をもたらしたのがモラタ。ユベントスでも活躍したモラタのゴールは、ナポリの観客にとって、まさに泣きっ面に蜂的なゴールであった。よって、内容的には負けそうだけど、気がつけばいつも勝っているレアル・マドリーが、チャンピオンズ・リーグでもしっかりと勝利することとなった。
ひとりごと
ナポリが疲れていたとすれば、選手層の差も大きかったのかもしれない。ローマ戦後のナポリと主力を温存したエイバル戦のあとのレアル・マドリーでは、疲労度が違う。それも含めてのチャンピオンズ・リーグなのだけど。そして、ペペとセルヒオ・ラモスは本日も凶悪だった。さらされても関係ないコンビがいなければ、ナポリが勝っていたかもしれない。カゼミーロ、セルヒオ・ラモス、ペペ、ヴァランの3人で帳尻を合わせるサッカーがどこまで続くかは見ものでもある。
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