バルセロナ化を目指す!とテーマを掲げているヴィッセル神戸。開幕戦ではウェリントンとマイク大作戦で起死回生のゴールを決めている。言うまでもなく、全然バルセロナらしくない。ピケのパワープレーリスクペクトなんだ!と声をあげたところで、バルセロナ化を目指す!というのは、そういうことではないんだろう、多分。なお、開幕戦からスタメンをかなりいじっているようだ。つまり、開幕戦は反省で一杯だったに違いない。
サンフレッチェ広島からヨンソン監督を補強した清水エスパルス。昨年は寝ても覚めても鄭大世のイメージが強かったが、今季は集めに集めた有望な若手とヨンソンのUEFA基準のサッカーをインストールすることで、J1の舞台を戦い抜くことを決意しているようだ。そして、開幕戦は鹿島アントラーズをぎりぎりのところまで苦しめて引き分けと幸先の良いスタートをきった。よって、ヴィッセル神戸とは対象的にスタメンをいじる必要はない。そんな両チームの激突である。
ヴィッセル神戸のビルドアップ
清水エスパルスはオーソドックスな4-4-2。よって、前線のプレッシング隊は1列目の2枚が基本となる。ウヨンのポジショニングは2トップの中間ポジションがデフォルトの形だが、2トップの脇のエリアからの侵入をヴィッセル神戸は狙った。よって、ウヨンは列を下りて3バックを形成。センターバックの中間に下りるだけでなく、渡部の左手にポジショニングする場面も多かった。清水エスパルスの4-4-2は執拗なサイドチェンジにも根性でスライドしていたが、ビルドアップ隊の枚数がどうしても足りない。よって、辛抱してサイドチェンジを繰り返すヴィッセル神戸のビルドアップの前に苦しい立ち上がりとなった。
ヴィッセル神戸のストロングサイドは左サイドだった。2トップの脇からセンターバックが攻撃の起点となる。サイドバックが高いポジショニングをとり、サイドハーフはインサイドレーンに移動。金子と立田はゴテゴテの展開となっていった。なお、立田は2年目のルーキーであり、189センチのサイドバックというロマン枠である。なお、本職がサイドバックなのかは不明だ。ヴィッセル神戸の左サイドを眺めると、柏レイソルを彷彿とさせる。序盤のファウルをもらった三田の突撃やポドルスキからのスルーパスに橋本のクロスなどなど、左サイドから再三に決定機を作っていくヴィッセル神戸であった。
なお、なぜか小川がサイドバックに配置された右サイドは非常に微妙であった。なお、ベガルタ仙台でセントラルハーフとしてブレイクした三田が前線で起用されている。その理由は、ポドルスキとのポジションチェンジがお題目のように見えた。ポドルスキは気ままにピッチを動いてボールを触りに行く。よって、ポドルスキの空けたポジションに誰かが移動しなければいけない。その役割が三田だ。逆にポドルスキが列を下りないことで、全体のポジショニングを調整する必要が出てきたときの役割が三田だ。ときには前線の選手として、ときにはセントラルハーフとしての役割を同時に果たすのはなかなか困難だ。その役割が三田だ。たぶん、三田くらいしかできないのだろう。
清水エスパルスのプレッシング
ヴィッセル神戸が優勢に試合をすすめていたが、ときどきヴィッセル神戸のビルドアップ隊は致命的なミスをする。清水エスパルスのプレッシングの圧力に負けたと表現したくないほどの技術的なミスをする。よって、清水エスパルスもいちかばちかのプレッシングを行うことがしばしばあった。相手の技術を考えれば、ミスを誘発できるかもしれないからだ。
12分の清水エスパルスの先制点は、プレッシングに対して、キム・スンギュが蹴っ飛ばしたボールをマイボールにしてから始まっている。プレッシングが実ったといえばそうだが、カウンターでトランジションを制したと表現したほうが良いだろう。北川のクロスをクリスランが華麗に合わせて清水エスパルスが先制する。
26分の清水エスパルスの追加点は、プレッシングでボールを奪ってからのカウンターだった。しかし、ヴィッセル神戸のビルドアップもあと一歩でプレッシング回避に成功する場面でのビルドアップミスであった。吉田監督のハーフタイムコメントでもあったように、戦術どうこうという問題ではないミスたちであった。もちろん、清水エスパルスのプレッシングも良い賭けにはなっていたのだけど、数あるチャンスをポドルスキが決めていれば、どのような試合の評価になったかは定かではない。つまり、ボールを奪える、相手がミスをしてくれる場面もあれど、左サイドからの攻撃を止める術が清水エスパルスにもなかったからだ。前から奪いに行くには枚数が足りない。撤退して守備をするには、インサイドレーンにいるサイドハーフと大外にいるサイドバック、そしてオープンな状況でボールを持つ渡部とウヨンへの守備は整理されなかった。そして、1.2列目のLライン間を巧みに使う松下、三田、ポドルスキに苦しめられる形は続いていた。
そして、30分にヴィッセル神戸が反撃の狼煙。ボール保持からの攻撃。右サイドのインサイドレーン突撃した三田のクロスを田中順也がヘディングで合わせた。繰り返された左サイド攻撃ではなく、まさかの起点は右サイド。右サイドでのポドルスキと松下のポジショニングで1列目のプレッシングラインを超えられたのが鍵となったゴールだった。ただし、大外でボールを持つ選手をインサイドレーンの選手が飛び出していく形は両サイドで繰り返された形だったので、ヴィッセル神戸は練習通りだったのではないだろうか。
後半にもこの流れは継続する。清水エスパルスは6バックにならないようにしながらも、全体が撤退して抗戦。51分にはポドルスキからマイクのヘディング炸裂するが、六反がファインセーブで事なきを得る。ヴィッセル神戸でえぐかったのは、地上戦ときどき空中戦の攻撃だった。思い出したかのようにハーフナー・マイクに放り込む攻撃はヴィッセル神戸の攻撃を単調にしないものであった。というわけで、スタジアムではこれは同点、逆転までいけるかもしれんね、という雰囲気になっていたのではないだろうか。
問題の采配が炸裂する
62分に橋本→ウェリントン。まさかの田中順也がサイドバックになった。そして、ボールを保持しているときのシステムも4-2-3-1になる。清水エスパルスからすれば、ヴィッセル神戸が配置的な優位を捨て、ストロングサイドだったレイソルトリオを解散したことになった。その代わりに前線にウェリントン。パワープレーに出るにはだいぶ早い時間の采配となった。68分にチョン・ウヨンがフリーキックを叩き込んで同点ハーフナー・マイクが身体をはってファウルをもらったのが大きかったので、ウェリントンとハーフナー・マイクを並べた采配が的中だといえなくもないが、この後に問題が起きる。
フリーダムなポドルスキは左サイドに配置したが、中央にいることが多かった。なお、ウェリントン登場前のヴィッセル神戸の守備の約束事は、ポドルスキを前の列に上げて4-4-2。前線の2枚は懸命に守備をしなくてもまあ良いシステムであった。ウェリントンの登場によって、さらに守備をするのかしないのか不明な選手が増えている。例えば、前線のスペシャルな選手が守備をしてくれない問題は、欧州のビッククラブが抱えている問題だ。なので、その問題を隠すために多くのビッククラブが四苦八苦している。その問題解決の定跡は、4-3でも守れる人材を配置するだ。しかし、ヴィッセル神戸のサイドバックは田中順也と小川慶治朗となっている。まるで、本職ではない。前半から松原のオーバーラップに対して慣れない守備を繰り返していた小川慶治朗の心境やいかに。さらに、田中順也はドリブラーの金子とのマッチアップを何度も繰り返されることとなった。
さらに厄介だったのは清水エスパルスの攻撃のデザインだろう。4-2-2-2のライプツィヒ型からの2トップのサイド流れは急造4バックで抑えるのはなかなか酷であった。清水エスパルスの追加点は田中順也サイドをわられ、最後は2年目のルーキーの立田がゴールを決める。立田のオーバーラップのタイミングは抜群だった。たぶん、相手の守備が遅れることを認知していたのだろう。これはやばいとハーフナー・マイク→渡邉千真、小川→高橋峻希と采配する吉田監督。しかし、ときすでに遅し感は否めず、金子にとどめをさされて試合は終了となった。
ひとりごと
橋本→ウェリントンの采配がよくわからなかった。ポドルスキのシュートが枠に飛んでいなかったので、攻め筋の変更ということだったのかもしれないけれど、もうちょっと我慢しても良かったかもしれない。また、守備を免除する選手の枚数もしっかりと決めておく。また、免除するなら後ろは本職で固めるなどしないと、さすがに守りきれないという試合となってしまった。バルセロナ化という言葉を思い出すと、ボールを保持して攻撃をしたいんです!ということは、それなりにできていたのではないだろうか。ただし、ポドルスキがフリーダムすぎることもあって、トランジションのときにファーストディフェンダーがあやふやになる場面があったことは何とかしたい。
清水エスパルスは献身的な守備を見せたが、ウェリントンが登場するまでのヴィッセル神戸の攻撃に苦戦していたことは事実。要修正といったところだろうか。リードしている時間が長かったので、今度はスコアレス、もしくはリードされているときにどのように振る舞うのか見てみたい。
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