今回の記事は気になっていることシリーズに近いのですが、テーマとして、ポゼッションサッカーってなんなんだよ?ということを感じました。プレーオフの大分対千葉を観戦して。また、Jリーグではボール保持率が高いほうが結果が出ないチームが多いようなので、その辺りも海外の事例を踏まえて考えていく回になります。
──最初にポゼッションサッカーと聞いて何を思い浮かべるかというところから始めましょうか。
正確な言葉の定義はわかりませんが、個人的にはボールを保持して攻撃を仕掛けていくサッカーだと認識しています。恐らく、この定義には特に違和感は感じないのではないでしょうか。ただし、サッカーにおいて、攻撃を仕掛けていくときはボールを保持しているのが当たり前なので、もうちょっと突っ込まないと、正しい把握にはならなそうな気がします。
──ボールを保持していなくても、攻撃的な姿勢を維持することはできる。ただし、それはまた別のお話なので、省略します。では、もうちょっと突っ込んでみて下さい。
日本では、遅攻がポゼッションサッカーであると認識されている気がします。それに対して、速攻がカウンターアタックですよね。カウンターアタックはボールを奪った瞬間に発動するものなので、相手の守備状況が整っていないときに行うものだと考えています。なので、ポゼッションサッカーは相手の守備陣型が整っているときに行うとすれば、多少は突っ込んだ表現になるかと思います。
──カウンターアタックはボールを相手から奪った時やこぼれ球を拾った時にスイッチが入る。これはわかりやすいと思います。ポゼッションサッカーのスイッチはいつ入るのでしょうか。
攻撃のスイッチが入るタイミングはチームによって、異なると思います。大前提として、CBかDHの選手がオープンな状況でボールを持てている時にスイッチが入るのが一般的です。パスの出し手が顔を上げてボールを保持している時に、ボールを持っていない選手が動き出しても視野に入りますからね。平たく言うと、後方から縦パスが入ったときと言えばいいのでしょうか。
──CBやDHの選手がオープンな状況でボールを持てる状況を作るのがビルドアップだと認識していますよね??
そうですね。ビルドアップの正しい認識は知りませんが、そのように認識しています。相手のシステムやプレスの開始位置のよって、状況は変わりますが、いくつかのパターンを仕込めば、どんなチームでもできるようになる時代になってきています。なので、それらを妨害するためには、それ相応のリスクが必要になってきています。
──浦和対広島の枚数揃えや、CFにDFラインで仕掛けないと襲われる状況を作って、攻撃のスイッチを入れさせるような妨害ですよね。
そうですね。あとはGKを使ったビルドアップに対しても、近くのパスコースにいる選手たちをすべて捕まえることで、GKからのショートパスをさせないというプレスもあります。スウォンジーのラウドルップ監督がレイナに仕掛けていましたね。バルセロナもたまにやられていました。
──そこまでして、相手にボールを持たせたくない理由はなんなのでしょうか??
相手にボールを保持されると勝てないからです。ボールを保持することを基軸にしているチームは、ボールを保持することで、試合の主導権を握ります。試合の主導権を握れば、時間とスペースを操ることができます。そこまで出来るチームはまれですが。やはり、相手の長所を発揮させないためにはどうしたらいいんだろうと考えると、上記のような戦い方が出てくるのだと思います。
──でも、バルセロナの真似事をして崩壊しているチームも見かけます。なぜにそこまで自分たちでボールを保持しようとするチームが増えてきているのでしょうか。
ボールを保持するということは、相手からボールを奪っている、つまり、攻撃の機会を奪っていることに繋がります。また、相手を押し込んだ状態、つまり、相手を自陣に釘付けにした状態でボールを保持できれば、何が起こるかという話に繋がります。
その前に、ビルドアップがうまく機能し、DHの選手がフリーでボールを持っているとしましょう。このときに、それより前の選手。例えばSH
やFWの選手は何をしたらいいと思いますか??
──ボールを引き出す動きをすればいいと思います。というか、それしか選択肢はないと思います。もちろん、ボールを引き出す動きは自分がボールを受けるための動きもあれば、味方にボールを受けさせるための動きもあります。
そうですね。ポゼッションのためのポゼッション、つまり、ずっとボールをつないでばかりのチームはここに問題があります。また、この動きこそがポゼッションサッカーに取り組む最大の利点になりえます。
この動きはある程度は機械化すべきだと思います。機械化という言葉が嫌なら、連動性でも構いません。そこにアドリブの要素、つまり、相手を見て対応できる余地が残されていれば、問題はありません。
──具体例に移る前に、最大の利点について、もうちょっと詳しく教えて下さいな。
例えば、ユベントスの攻撃を思い出してみましょう。3バックの両脇の選手はオープンな状態でボールを保持していることが多いです。これはシステムによるミスマッチを利用して、ビルドアップを円滑に進めているパターンです。そして、キエッリーニなどがボールを保持している時に、相手のCHとマッチアップしているマルキージオたちは中央でボールを受けるよりも、中央のスペースを開けようとサイドに流れたり、 裏に飛び出すことが多いです。そして、中央のスペースにFWを下ろして楔をうける。
この一連の流れの中で、相手がどのように対応するか。マークを受け流すのか、そのまま移動するのか。そのまま移動しようとしたら、マルキージオたちが機械的な動きとは異なる動きをした。そのままボールを引き出しに下がっていった。こうなると、相手はどのように守るべきか非常に曖昧になってきます。
ボールホルダーにプレスがかかっていれば、相手の位置を我関せずのゾーン・ディフェンスを発動することもできますが、ボールを持っている選手はフリーです。さあ!どうする!となります。
で、相手のミスが生じます、これが利点ですではありません。このような仕掛けを続けていれば、相手の守備のポジショニングはめちゃくちゃになります。SHの選手はSBの位置まで下がる必要がありますし、SBの選手も中央に絞って持ち場を離れていると思います。この状況が最大の利点に繋がります。
このようなカオスな状況では、ボールを奪ったあとに大変な状況が起こります。持ち場にいるのは前線で待っているFWくらいです。この選手がイブラヒモビッチのフィジカルとメッシのドリブル力でもあればどうにかしてくれそうですが、そんな選手はほとんど存在しません。
つまり、ポゼッションサッカーの最大の利点は、相手を押し込んだ状態でのオフ・ザ・ボールの動きと横幅と縦幅を使ったボールの軌道によって、相手の守備組織をイレギュラーな状態にし、攻守に機能させない状況にすることです。これが最大の利点といっていいと思います。
──機械化の具体例みたいなものって他にありますかね??
流行りは旋回ですよね。3人によるポジションチェンジです。ビルバオのビルドアップで面白かったのは、イトゥラスペも旋回の一員だったことです。相手に捕まえられやすいポジションだからこそ、前線に上がっていって、エラーレたちが降りてくれば、相手は嫌ですね。
ビルバオといえば、とにかく裏へ抜ける動きが多いです。フットサルのパラですね。そのままその選手を使うことも多いですし、その選手が動いてできたスペースに他の選手が入ってきて、その選手を使うことも多いです。DFとGKの間のスペースでボールを受ければゴールはすぐそこなので、ボールを落ち着けたらそこを徹底的に狙うのも理にかなっています。
スウォンジーはとにかくやり直します。相手を背負っている状況でもボールを受けますが、それは相手を引きつけるためです。なので、さっさとバックパスをして、動き直しをします。で、サイドチェンジして相手を動かして、相手の視野から味方が消えてボールを受ける状況ができるまで、これらを繰り返します。
どのスペースを狙うか、そのスペースを開けるためにどのような動きが必要かということを理詰めで繰り返します。ビルバオの場合は、この動きにジョレンテへの放り込みが加わります。最近は契約更新の問題で干されていますが、デポル戦では頑張っていました。
なので、ポゼッションが目的になってしまっているというのは、この部分が曖昧なのではないでしょうか。それか選手任せか。もちろん、個人で浮いたポジションを作って勝負を仕掛けられる選手もいます。相手のプレスを受けていても相手の急所にパスを通すような化物もいます。そういう選手がいなけれな、チームとして狙いをもって崩しに行かないといけない。それがなければ、ボールを保持しているだけになってしまうのではないでしょうか。
ちなみに、ペジェグリーニのビジャレアルはDFとMFの間のスペースとSBとCBの間のスペースを執拗に狙っていました。SHを中央に絞らせる動きで中央を、FWをサイドに流れさせて、相手のSBをサイドにつり、味方のSBに相手のCBとSBの間を狙わせる。こういった視点でポゼッションを志すサッカーを見てみると、面白いかもしれないです。どこを攻略しようとしているのかな、誰をフリーでボールを受けさせようとしているかなって。
■独り言
ぐだぐだ考えてみた。もっと深く潜ってみたら、また書きます。
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