【藤田のリカバリー】アルビレックス新潟対東京ヴェルディ【ハイプレッシングの功罪】

J2025

はじめに

昨年のボール保持に尖ったチームから論理的なチームに変貌を遂げようとしている新潟対昨年の結果をアゲイン!するために残ったのにアゲイン!できないのか?となっていそうなヴェルディの対決。お互いに結果を得ることで、調子の浮上や自信をつけるきっかけにしたいのが本音だろう。特にヴェルディはメンバーもほとんど変わっていないので、不思議なものである。

アルビレックス新潟対東京ヴェルディ

序盤から繰り返されたかみ合わせは、ボールを保持しようとする新潟に対して、執拗にプレッシングをかけ続けるヴェルディだった。【523】を基本配置としているヴェルディにとって、新潟の【4231】はかみ合わせがよくない。かみ合わせが良くないときは調整が必要になる。その調整を調べていくのが楽しい作業となる。なお、ときどき調整がない場合もある。正気か!

ヴェルディの調整は、染野、木村を新潟のセンターバックに当てる。ヴェルディの2トップのギャップに新潟の選手が登場すれば、森田、齋藤功佑のどちらかが前列に移動して対応する。左右は新井悠太が下がり気味、宮原が上がり気味で【4312】のような形で高い位置からのプレッシングを目指したヴェルディであった。稲村の前に蓋をする形は、多くのチームが新潟対策で採用しそうではある。だからこその2トップ化というか。

恒例になりつつある稲村からの裏へのロングボールを交えながら、新潟はボールを効果的に保持しようと企んでいた。久々に登場の秋山がフリーマンのように動き、新井泰貴が中央で主に基準点となる一定でない配置に対してヴェルディがどのように対応するかと観ていると、シンプルに根性であった。なお、根性は必要であるし、間違った解決策ではない。

どのような根性か?と言うと、二度追いである。この場面は自分が二度追いしないと、チームのバランスが壊れてしまう局面がサッカーには存在する。この判断がヴェルディは迷わない。もしかしたら、少し暴走気味な場面もあったかもしれないが、細かいかみ合わせはスピードで解決することもサッカーの定跡である。是非、前田大然の2トップによるプレッシング大会をみてみたい。迷わない強さもサッカーには間違いなく存在している。

心が砕けることのない新潟が徐々にヴェルディのプレッシングに慣れ始めた7分ころから、ヴェルディもボールを保持するように変化していく。初手は4バックに可変したまま行い大失敗していたが、その後を観ていると、3バックでボールを保持することが本来の姿のようだった。そして華麗な形でゴールを決めるのだから興味深い流れである。

マテウスを利用することで、新潟にミドルに移行させることに成功したヴェルディ。齋藤功佑の立ち位置で新井泰貴を動かすことに成功し、ライン間でボールを受けた染野に今度は稲村がつられてしまうエラーが連続していた。両方ともに人に行ってしまい、スペースをあける同質のエラーであった。ハイプレには人への意識が必要になり、撤退守備ではゴールを守る意識が必要になる。フェーズの変更、グラデーションの濃淡で変わるフェーズって意外と難しいもので。

ただし、それはヴェルディも同じ。相手陣地では【4312】っぽく誰が誰のマークかを明確にしているけど、自陣に撤退したら【541】で構える。この場合、染野はかなり走ることになるわけで。守備の配置が整っていない状態でのプレッシングで、ヴェルディは森田と齋藤功佑が力技で守備を整えてしまうことが多い。例えば、染野がいるべき場所に間に合わないときは代わりに前に出ていくとか。中盤が空いてしまいそうだけど、3バックの迷わない迎撃が森田たちをプレッシングで解放する仕組みになっている。

一度のミスで下を向いている時間はない

スコアの変化で何が変わったか?といえば、特に何も変わらなかった。強いて言うならば、ヴェルディがハイプレをあまり行わなくなったことだろうか。ミドルからのハイへの移行と、新潟のゴールキックへは、ハイプレを発動する決まりになっていた。新潟に目を移すと、開幕戦でみせた狂気のハイプレは、どちらかというと、ヴェルディがこの試合で行っている構造になっている。

ヴェルディのハイプレへの移行を逆手に取って、自陣の深さを使ったビルドアップで時間とスペースを得たい新潟だが、20分前後には藤田のパスミスで新井泰貴にイエローと危険な位置からのフリーキックを与えてしまう。万事休すだったが、染野が豪快にフリーキックを外してしまう。チーム全体でこのミスが頭をよぎったのか、その直後のゴールキックを蹴っ飛ばす新潟であった。どうせ蹴るにしても22分の稲村が蹴っ飛ばした場面のように、相手を自陣に誘き出してから蹴るのが最近の定跡。

その後の藤田は、同じような局面でセントラルハーフにボールをつけることに成功している。こういうときに大きな拍手をしてあげてほしい。たぶん、していたはず。無音で観ているので、その状況はわからない。全体として、新潟からすればマイボールの時間を増やしたいのだけど、ヴェルディの【325】に対して、ボールを奪うを実行するには後ろが重たすぎて狂気を感じられなかった。どちらかというと、ヴェルディのほうが狂気だった。

藤田の勇気によって、ハイプレに行ってもメリットが少ないし、リードしているし、残りは15分だしというわけで、33分の場面のようにミドルモードになっていくヴェルディ。こうなると、新潟はボールを持ってあれこれができるようになっていく。相手のプレッシングの芽をつむのって大事。今日は妙にミスが多かったけれど、まったりボールを持つことができればそのようなミスも減るかもしれない。

前半の終わりまでは耐えたいヴェルディと追いつきたい新潟。結果を出したのは新潟であった。フリーの秋山がボールの持ち方をかえた瞬間にレッツゴーの法則。裏へのボールを跳ね返したけれど、こぼれ球を長谷川元希が華麗に決めて、新潟が同点ゴールを決める。残り4分間でヴェルディが何かを起こすことは難しく、長谷川元希は惜しいシュートを前半が終わるまでに放つ流れとなった。

ヴェルディは【541】からのハイプレ移行に苦しみ、新潟は、場所によっての配置は変わらないけれど、配置のかみ合わせを解決するための後方の迎撃がどうにもはまっていなかった。稲村サイドは良かったんだけれども。Jリーグ名物になりつつあるサイドバックがウイングバックにスライドしてくるので、ダイレクトにその裏に蹴っ飛ばそうぜ作戦は王道になりつつある。

ヴェルディの修正はあっちへ行ったりこっちへ来たり

ヴェルディは後半の頭から【442】に変更。ウイングバックをサイドバックへ、綱島をセントラルハーフへ、齋藤功佑を右サイドハーフへの移動となった。問題はなぜヴェルディが【442】に変更したか?である。前半を見る限り、【541】からのハイプレ移行に苦しんでいる様子はあった。しかし、【442】に変更しても自陣からのミドルプレに終始していた。想定よりも新潟のボール保持が上手だったのかもしれないが、それは前半で実感していたはず。

というわけで、54分に山見、松橋を入れてテコ入れをする城福監督だった。この変更によって、ボール保持は【325】、ボール非保持は【442】に変更となる。後半頭からその計画だったかもしれないが。移動する綱島。しかし、58分にコーナーキックから最後はマイケルに押し込まれて逆転されてしまうヴェルディであった。

リードしたこともあって、ミドルプレで問題ない新潟に対して、60分になると、ようやく落ち着いてボールを持つことを許されたヴェルディ。というよりは、順番が回ってきたというか。展開としてはお互いにボールを保持するようになり、ヴェルディも負けているけど特別な振る舞いは行われず。齋藤功佑がもっと前から行こうぜ!と、周りを鼓舞する場面は観られたが。

そのスイッチは69分の食野の登場からだった。このあたりからボール非保持のヴェルディの配置はしなもろな雰囲気をまとっていく。たぶん、元の形に戻し、前から相手を追いかけ回す齋藤功佑を明確に前に出すために食野が登場したのではないだろうか、たぶん。

新潟のビルドアップの起点である稲村に齋藤功佑が突撃していき、周りが根性でスライドする方式となった。ハードワークができそうな松橋、迎撃が得意な綱島を導くように齋藤功佑は走りに走る。そしてボールの奪い合いから得たフリーキックから、ヴェルディが同点に追いつくことに成功する。ヴェルディからすればこの流れを継続したいけれど、残り15分をどのようにマネージメントするかで迷いが生じる。

そのままハードワークだべ!と言いたいところだが、撤退守備も華麗に披露。スコアの変化によって変化する振る舞いの王道が必ずしもピッチの正解に繋がるとは限らないサッカーあるある。試合は一進一退の攻防となるも、お互いに最後の決め手を欠いたまま、試合は無秩序な世界へ。お互いに攻撃のキーマンがフリーで受けられる場面が出てくるけど、ファウルを辞さないプレーでカードが増えていった。新潟は怪我人が出た影響もあり、残り10分で一気に選手が交代する男前な采配を見せる。

突然に前線が元気で溢れていく新潟の前に、少し面をくらう形となるが、ヴェルディもしのぎきって引き分けで試合は終了した。新潟はもうちょっと早めに前線の4枚を交代しても良かったような気がするけど、スタメン組への信頼が厚いのだろう。特に落合陸には期待しているので、頑張ってほしい。

ひとりごと

両チームを苦しめたものは、前への迎撃スライドであった。お互いにハイプレッシングを志向しているようで、特に木村はえげつない距離を走ったのではないだろうか。ハイプレッシングは後方の連動が必須となる。ピン留めされても関係ない。前の選手が走れば根性で連動しないと無駄走りとなる。この見殺しにするのか、連動するのかの判断で賢さが露見することも事実。そもそもこの試合の新潟は少しハイな雰囲気でもなかったけれど。

ヴェルディのように配置をプレッシングを修正することも策だが、あまり機能しているようには見えなかった。このあたりは新潟の変幻自在感が勝っていったかなと。守備の基準点をはっきりさせても相手が移動を繰り返していったら、なかなか難しいものである。でも、序盤の走りまくりは昨年の東京ヴェルディみたいだった。

新潟からすると、藤田のミスからのリカバリーが良かった。あれ大事。ビクトール・バルデスを思い出した。リードしてから守りきれなかったというべきか、追加点を取る姿勢を見せられなかったというべきか。相手がハイプレッシングに移行してきたときに繋いでプレッシングのやる気を削ぐのか、ロングボールでひっくり返すのかは難しいところ。ただ、残り10分の元気組が鍵を握りそうな予感。

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