【ロングボールで優位をとれるか】柏レイソル対鹿島アントラーズ【原川と渡井の関係性で】

J2025

はじめに

フトチャンで柏レイソルについての記事を書かせていただいたぜ。というわけで、リンクはこちら。果たしていつまでこのフトチャン企画が続くかは神のみぞ知るんだぜ。ちなみに次回に取り上げるチームは決まっていますが、最近は匂わせもやっていないので、恐らく予想しても次にどのチームを取り上げるかは当たらないでしょう。たぶん。

企画で取り上げた柏レイソル対開幕戦で湘南ベルマーレにぶん殴られて、一気に目を覚ました感のある鹿島アントラーズの対決。鹿島版ファンタスティック・フォーこと、鈴木優磨、レオ・セアラ、師岡、荒木の起用をさっさと諦め、裏に走ることを厭わない松村と、攻守にバランスを維持することに長けている小池を起用。鬼木監督、割り切りがはやいぜ!と誰もが思ったに違いない。

柏レイソル対鹿島アントラーズ

杉岡の代わりに出場している田中隼人を狙い撃ちにするキックオフで試合を始める鹿島。柏のゴールキックの再開にも睨みをきかせる鈴木優磨とレオ・セアラ。こうなれば流石に蹴ったほうがいいよねとなる柏。そのときのための木下と垣田の起用。でも、鹿島のセンターバックは空中戦を主戦場としている。柏を起点とするロングボールがどちらに優位性を運んでくるかが試合の鍵を握りそうな試合開始から44秒ではられた伏線。

序盤戦はお互いに探り合いの様相であった。想定内と想定外の整理をしているようだが、実際にはロングボールの応酬であり、ただのサッカーあるある。柏と同じように、基本的にはロングボールを選択する鹿島。2トップ+トップ下でセンターバックに圧をかけやすい配置を柏が選んでいる理由もあるのだろう。なお、今日の原川はボール保持では明確にインサイドハーフ、ボール非保持では熊坂の横を主戦場としているようだった。

トランジションの連続のなかで、時間の経過とともに、段々と柏がボールを保持する展開が目立ち始める。キーパーからボール保持を始めるというよりは、ボールを奪ってから急がない、ボール保持をやりなおすことで、自分たちの時間を増やし始める流れとなった。ボールを保持する柏に対して、鹿島はミドルに構えて対抗する。ミドルで構えてから徐々にハイプレに移行したい様子だった。

ビルドアップの選択肢が少なくなり、困ったときの柏は、浦和戦のように2トップのポストプレー、空中戦を頼る傾向にある。しかし、今日の試合では怪しげな雰囲気であった。特に植田の迎撃能力の高さは異常。さらに、怪しげな雰囲気の正体は原川の立ち位置にあった。小屋松をサポートするため、セカンドボール争いを優位に進めるために、最初からインサイドハーフの立ち位置だったが、3バックから前進する選択肢が準備されてない状況とあいなってしまった。後半に修正していたので、しくじった案件なのだろう。

10分が経過すると、樋口と柴崎を起用しているのだから、おれたちもキーパーから繋ごうぜと、ビルドアップチャレンジをする鹿島。しかし、柏のハイプレを真正面から受け止める形になり、危険な雰囲気が満載だった。なお、その後もときどきキーパーからのビルドアップチャレンジを試みる鹿島だったが、ことごとく怪しげな雰囲気だったことは覚えておいて欲しい。

鹿島のプレッシング設計

16分に鈴木優磨がもっとボールを奪いに行こうぜ!とみんなに指示をする。そして小池が早速動き出すのが面白い。延々と柏にボールを保持させることは嫌がっているのかもしれない。このあたりから鹿島のプレッシング設計がはっきりとピッチに現れるようになる。

ロングボールをほとんど跳ね返された柏は、地上戦しか選択肢がなくなっていく。ゴールキックなどは2トップで睨みをきかせていたが、ボールが落ち着くと鹿島はミドルに構える傾向にあったので、ボール保持をする時間帯を柏は実現はしていた。ただし、レオ・セアラが古賀、鈴木優磨が熊坂を担当するように整理され、サイドハーフの松村、小池は柏のよしお、原川を背中で消すことを優先していた。

時間がありそうな原田と田中だが、まったりしているとレオ・セアラが二度追いを発動したり、鈴木優磨がときには出てきたり、後ろからの押し上げで松村たちが出てくる構図になっている。それでも、柏の長所であるよしおと原田が登場する右サイドからの攻略を柏は狙った。なので、鹿島は柴崎がボールサイドのヘルプを行うことで、松村、柴崎、安西の三人で柏のトライアングルアタックを止めにかかった。

偶然か、必然かはわからないけれど、柏が原田サイドから攻撃を仕掛ける。鹿島もそのサイドに人を集めるなかで、逆サイドの小池がさぼることなく絞って守備をしているのが印象的だった。鹿島のセントラルハーフはハーフスペースを守ることを役割としているので、運動量がかなり必要となる。サイドハーフの高さは鈴木優磨たちに合わせていることを優先している疑惑。となると、セントラルハーフの片方がハーフスペースを埋めれば、もう片方が中央を埋め、ボールサイドでないサイドハーフも中央に絞る。それを完璧にこなす小池によって、鹿島の守備は見事に機能していた。

もしも柏が左サイドから攻撃を仕掛け続けた場合、松村がボールサイドでない守備ができたかは要チェックしたい。でも、足が速いので間に合ってしまうかも。柏からすれば、原田サイドから小屋松サイドへのサイドチェンジが三回くらいあったので、チームとしても狙いにあったのかもしれない。三度目の正直で木下のポケ凸に繋がった場面は可能性が少しあった。ただし、三度目の正直を実らせたのは鹿島だったけれど。

よしおの抱える憂鬱

柏のボール保持を燦々と止めていく鹿島。だったら、おれたちもボールを繋ぐんだぜ!と二度目のビルドアップチャレンジはやはり失敗。24分に三度目の正直だ!と、ビルドアップチャレンジをする鹿島。この場面ではビルドアップの出口を見つけた!ように見えたが、最終的には蹴らされる形となる。しかし、このボールをまたしても鈴木優磨がマイボールにし、鹿島の速攻が発動。最終的に松村と安西のコンビネーションからのクロスをレオ・セアラが頭で合わせて鹿島が先制した。

リードしたので、ゆったりと構えるか!となってしまったら柏の思う壺になるので、リード直後はハイプレを復活させる鹿島。ただし、ハイプレに来てくれたほうが助かるんですよ!!みたいなプレーを柏はできるので、なかなか難しいところ。この場面も鹿島側からすれば、見事にプレッシングを回避されてしまっている。

柏がボール保持のリセットで原田サイドから田中隼人にボール渡すと、小池が出ていく決まりごとが明確になっていった。鈴木優磨とレオ・セアラはハイプレをしたくてしょうがないのかもしれない。ただし、前半の柏のボール保持が機能しなかった理由は、原川の立ち位置、ロングボールで鹿島のセンターバックに完敗、柏のセンターバックが落ち着いてボールを持つ盤面を作れなかったことの合せ技だったのではないだろうか。

リードした鹿島はビルドアップをするよりは、自陣でボールを持って相手を誘き出してロングボールみたいな様相となる。負けているので、果敢にプレッシングをかけ続けるよしお。この試合を分けたもうひとつの要因が鈴木優磨の空中戦の強さ。序盤から熊坂に競り勝ち、途中からは原田を狙い撃ちにする移動を見せていた。蹴らせて回収すればいい!とは言うけれど、よしおがプレッシングをかける→相手が蹴っ飛ばす→相手が空中戦で勝つの流れは無限地獄のようであった。

原川の立ち位置の修正

後半の頭から木下と交代で細谷が登場する。さらに、ボール保持で原川の位置が熊坂の横に修正していた。なので、ビルドアップを修正し、困ったら細谷の裏だったのかもしれない。背中で原川を消す役割だった小池は、シンプルに原川にそのままついていくようになり、こうなると小屋松へのパスラインができそうな予感が漂う序盤戦だったが、前半の文脈で追加点をいれる鹿島だった。

49分に相手のロングボールを奪い切ると、運が良く目の前にボールがこぼれる松村が一気に加速。そのままクロスをあげレオ・セアラがあわせて追加点となった。機能しないロングボールの文脈が引き続き継続。蹴ってもダメだし蹴られてもダメというのはなかなか厳しい。鹿島はリードが広がったことで、ビルドアップチャレンジは行わずに原田対鈴木優磨の空中戦を淡々と繰り返していた。

一方で、原川の立ち位置の変更にどうしようかと悩んでいる小池。ボールの逃げ場ができたことで段々と落ち着いていく柏。でも、フリーのセンバがボールを運びまくる絵はなかなか出てこない。ならば、相手の背後で受けさせればいいよねというわけで、前に行く原田。原田を担当する松村は目の前に現れたよしおに気を取られる。たぶん、瞬間的に樋口と松村の役割を重ねることに成功したよしおの立ち位置が秀逸だった。その後は原田のスルーパスをきっかけに最後は久保が豪快なシュートを決める。

そしてこの得点直後にジエゴ、渡井が登場する柏。鈴木優磨は熊坂番を継続。そのあとに鹿島も柴崎から知念に交代する。そして、その直後によしおの個人技からえぐいパスが原川へ。もしかしたらスルーが正解だったかもしれない。コントロールに苦戦したところを奪われて鹿島のカウンターが発動。小池が最後まで相手を引き寄せて最後はレオ・セアラが三点目となった。

原川と渡井の合せ技

64分に田中隼人のこの試合で初めてのサイドチェンジ炸裂させる。点差がついたこともあって、鹿島があまり前からプレッシングをかける必要がなくなったことで、田中隼人は前半よりもオープンな形でボールを持てるようになっていった。

この流れに拍車をかけたのが渡井、ジエゴ、原川の関係性だ。さっさと高い位置に移動するジエゴ。よって、サイドバックエリアが空になる。原川がサイドに移動しても問題はなく、原川のエリアには渡井が登場すれば良い。ジエゴサイドでのトライアングルアタックの成立により、小池は田中隼人へのプレッシングをできなくなり、段々と鈴木優磨とレオ・セアラが原川と熊坂を背中で管理しないと、鹿島は守備が成り立たなくなっていった。

この流れは原田サイドにも波及する。鈴木優磨とレオ・セアラの縦関係は徐々に横関係になり、センターバックよりもセントラルハーフの管理に移行していけば、古賀と田中隼人は楽な状況でボールを持てるようなる。相手がハイプレな雰囲気を出せばキーパーを前に出して解決する場面も実際に観られた。ビルドアップでは古賀、田中隼人の2バックのようになり、両サイドでトライアングルアタックの成立とボールを届けることができるようになり、2点差があるとはいえ、嫌な雰囲気になってきた鹿島は、師岡と田川を送り込んで守備の改善を狙う。

というわけで、ハイプレを再開するが、無理なものは無理である。この状況から田川と一緒に鈴木優磨に走って死んでタスクは物理的に不可能だろう。なので、ほとんど状況は変わらずに、柏にサイドから崩され早川の根性でシュートストップに成功した場面を観て鬼木監督も決断。これ以上は無理というわけで、残りおよそ10分は5バックで凌ぐことを選ぶ。

5バックへの変更で興味深いのはセントラルハーフが船橋と知念に変更になったことだろうか。5枚交代の時代において、前線の4枚をそうとっかえはよく見るが、セントラルハーフをそうとっかえはあまり見かけない。ただ、それだけ守備での負担が大きいことの証明かもしれない。右ウイングバックに入る小池と右サイドハーフにはいる樋口のポリバレントな働きはちょっと替えがきかなくなってきているのではないだろうか。というわけで、守りきりに成功し、鹿島が首位になりましたとさ。

ひとりごと

伏線通りの試合となった。関川も植田も鈴木優磨も空中戦は鬼。

最初から地上戦に全振りしてもどうなったかは不明だけど、負け方としてはそっちのほうが良かったのかもしれない。柏からすれば原川がビルドアップ隊とフィニッシャー隊を行ったり来たりできればよかっただろうけど、それは今後の課題となるだろうか。個人的には【22】でビルドアップして欲しい。ただの願望です。

他のチームがどのようなサッカーをするか?で色々と計画をしているなかで、鹿島は勝つために全力を尽くすに全集中している感じがよい。少しハイプレにこだわりすぎているかもしれないけど、そのための選手起用もできている。ときどきみせるビルドアップチャレンジの不安定さが面白かった。ここが安定すると、えげつなくなりそう。

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