マンチェスター・シティ対ウェスト・ブロムウィッチ ~私はたぶん4人目だと思うから~

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

いけいけ!僕らのマンチェスター・シティ。前節のバーンリー戦では、バーンリーの中央圧縮&ボールサイドでない選手のカバーリングに苦しんだマンチェスター・シティ。片側アラバロールをやめて、メンディーがいたころのインサイドハーフ、サイドバック、ウイングによるデルタアタックに修正した。その修正によって試合をさらに支配し、勝利という結果を手に入れたマンチェスター・シティ。ボールを保持するんだけど、ボール循環の仕組みを変えることで、一気に相手を攻略する姿はかなりえぐい完成度といえるだろう。

ウェスト・ブロムウィッチ。自分のなかで、まさにプレミア・リーグっぽいメンバー構成となっている。エバンス、ギブス、バリーとビッククラブで経験を積んだメンバーに、クリホビアク、リバモア、ロンドン、ジェイ・ロドリゲスとしっかりと曲者が脇を固めている。むろん、その他の選手も代表クラスだ。しかし、チームは開幕ダッシュには成功したものの、最近は調子が悪いらしい。この試合では4バックを捨て、5バックで試合に臨んだ。監督の焦りを感じさせる采配である。

ウェスト・ブロムウィッチの論理を読み解く

ぼくらのマンチェスター・シティが自分たちのサッカーを実行するためには、相手の論理を知る必要がある。相手の論理とは守備の習慣、約束事のことだ。普段は4バックシステムを採用しているウェスト・ブロムウィッチだけれど、マンチェスター・シティを相手に5バックで試合に臨んだ。付け焼き刃なのか、しっかりと準備された策なのかは、試合を追っていけばわかるものだ。また、それとは別に5-3-2の長所、短所もある。そして、それを実行する選手にも同じように長所と短所がある。それらを相手の論理として試合前の分析や試合中の観察で解き明かせるかどうかが鍵となってくる。そういう意味において、普段とは異なる形で試合に臨むということは奇襲という意味合いが強い。レッツ桶狭間の戦いだ。

5-3-2の泣きどころは、緑の円で囲まれたエリアとなる。自然と相手のサイドバックには時間とスペースの余裕が生まれる。罠としては、このエリアで相手にボールを持たせる。全体をボールサイドにスライドさせて選択肢を削るとなる。ただ、ボール保持者に誰がプレッシングをかけるのか?それとも放置するのか?という選択肢がある。なお、マンチェスター・シティはこのエリアにデ・ブライネがいることも多いので、さすがにデ・ブライネを放置することは賢くない。よって、ボール保持者に誰がプレッシングをかけるのかがウェスト・ブロムウィッチにとって大事な約束事となる。

定跡をまとめると、1列目(ジェイ・ロドリゲスとロンドン)が根性でサイドバックまでプレッシングをする。根性と書いているとおり、役割過多になることが多い。よって、片道燃料でのプレッシングとなる。2列目がスライドする。この形がもっともポピュラーな方法だろう。3列目(ウイングバック)が縦にスライドする。この形も悪くはない。特に相手陣地からプレッシングをかけていく場合は、ウイングの縦スライドで相手の選択肢を削っていくことは必須の作業といえるだろう。なお、ウェスト・ブロムウィッチの約束事は2列目のスライドだった。

2列目のスライドによって発生する新しい泣きどころが、ボールサイドでない3センターの脇だ。このエリアにボールを運ばれないように、ジェイ・ロドリゲスがフェルナンジーニョをマークする役割となっていた。フェルナンジーニョ経由ではないサイドチェンジだったら、スライドが間に合うことで、泣きどころを消せるというウェスト・ブロムウィッチの計算になっている。しかし、マンチェスター・シティはえぐい。狭いエリアでもボールを受けて叩いてと平気でプレーする。よって、フェルナンジーニョを経由しない形で、ボールサイドでない3センターの脇のエリアまでボールを運ぶことに成功していた。

このエリアに登場したのがデルフ。8分までに3回も仕掛けるチャンスをもらっている。そのうちの2回はミドルシュートだった。だったら、このエリアを誰がカバーリングするのか?となるが、マコリーしかいない。しかしマコリーが前に出ていくと、空いたエリアをジェズスやシルバに使われるという地獄だった。だったら、ニョムがマコリーの空けたエリアをスライドすればいいじゃんとなるが、それでマンチェスター・シティに先制点を与えることになったのだから、どっちみち地獄だった。マンチェスター・シティはボール保持者に相手がプレッシングをすることで発生するエリアの認知と、そのエリアをどのように活用するかのコンセプトが徹底されている印象を受ける。

よって、同じエリアから繰り返しフィニッシュに持ち込まれているのは上手く守れているとは言えないウェスト・ブロムウィッチ。ジェイ・ロドリゲスを下げてデルフ番とさせる。このデルフ番というのが曲者で、ゾーン・ディフェンスの約束事というよりは、マンマークの約束事であった。よって、アラバロールの罠であるサイドへのパスラインができてしまう形となる。さらに、フェルナンジーニョ番だったジェイ・ロドリゲスが移動したことで、フェルナンジーニョがフリーになった。ロンドンは曖昧なポジショニングといっても、相当な数的不利だったこともあって、何をどうしたらいいかわかっていないようだった。おそらくジェイ・ロドリゲスがデルフ番に変更するまでの準備をウェスト・ブロムウィッチはしてこなかったのだろう。

で、何が起きたかというと、フェルナンジーニョが躍動するようになる。マンチェスター・シティの先制点は、フェルナンジーニョの攻撃参加からサネへのパスが通ってサネが決める。ここまで戦術的な変更がゴールに直結することも珍しい。なお、マンチェスター・シティの追加点はフリーのフェルナンジーニョのミドル炸裂であった。

なお、ウェスト・ブロムウィッチもバリーのスルーパスからジェイ・ロドリゲスが決めて、同点に追いつく時間帯があった。この失点場面で切なかったのがウォーカー。裏に走っていくジェイ・ロドリゲスを華麗にスルー。マークを受け渡された格好のストーンズだが、すでにそばにはロンドンがいたので、対応ができなかった。また、裏へのボールに飛び出したエデルソンだが、浮き玉には飛び出してはいけない法則を破った格好となる。よって、簡単に浮き球でシュートを決められてしまう。

私はたぶん3人目だと思うから、本当は4人目もいるけれど

その後の試合は、マンチェスター・シティが圧倒的な試合内容で時間をすすめていく。簡単に要約すると、シルバに決定力があれば、バロンドールも夢ではなかったんだろねという感じだ。63分にマンチェスター・シティは自陣からのビルドアップから何度もサイドチェンジを繰り返し、途中交代したスターリングのゴールを演出して試合を終わらせる。ただし、ウェスト・ブロムウィッチのモラルも半端なく最後には1点を返すことには成功する。オタメンディのバックパスを奪ってのゴールとなった。悲しみのオタメンディ。スコアは3-2だが、差は圧倒的なものがあった。

4-4-2を相手にサイドに3人目を登場させることで、時間とスペースを3人目に与える策がある。4-4-2と3-4-3が噛み合う形を想像すれば、その状況は想像しやすいだろう。かつてのチェルシーでいえば、ペドロとモーゼスが相手を押し込んで、後ろから上がってくるアスピリクエタはフリーであることが多い現象がまさにそれだ。マンチェスター・シティの場合は、インサイドハーフとサイドナック、ウイングで3人を揃える。さらに。3人で作られたトライアングルの頂点は入れ代わり立ち代わりなので、マンマーク的な要素だと、ポジショニングがごちゃごちゃになってしまう。この試合で言えば、エバンスはどこまでついていくのか?非常に悩ましい場面が多かった。よって、相手のそんな判断の隙をついて、3人目に時間が与えられる場面が多かった。

3人目だけでは足りないと考えるマンチェスター・シティは4人目も登場する。よく見られる形は攻撃の起点にストーンズだ。三角形の場合は攻撃の起点がサイドバックだったり、インサイドハーフだったりするマンチェスター・シティ。ストーンズやときどきフェルナンジーニョが登場する四角形になる場合は、ビルドアップ隊に攻撃の役割が任されることが多い。残りの頂点の役割は入れ替わることがやっぱり多い。

4人目がセンターフォワードの場合。アグエロが好む形だ。ジェズスの場合はサイドまで流れたり、列を下げてプレーしたりすることが多い。なんにせよ、ベルナウド・シルバがかなり自由なポジショニングを許されるようになる。ウォーカーが後ろで固定の形だと、ここまでの流動性は生まれない。インサイドハーフとウイングの役割交換くらいだろう。ウォーカーの攻撃参加があると、インサイドハーフとウイングは横幅役割から解放されるので、幅広く動くことができる。この形だと、ベルナウド・シルバはチームに馴染んでいけそうな気配だ。3点目のアシストのように、ウォーカーの攻撃参加もチームの武器となりそう。

ボールサイドでないインサイドハーフが4人目の場合。最近の試合ではよく見られる形となってきている。シルバがデ・ブライネの近くでプレーする形だ。なお、逆の関係性はあまり見られない。サネのアイソレーションをより期待しての形の可能性が高い。懐かしい言葉になるが、接近、展開、連続的な。単純に空いたエリアに選手が入っていこうねというコンセプトを愚直に行っているだけかもしれないが、このようなポジショニングが攻撃方法に変化を加え、相手に守備方法の変化を迫っていくのは、相手からすれば、非常にめんどくさい状況なんだろうなと思う。

ひとりごと

盤石のマンチェスター・シティだけれど、ゆっくりと普段はしないようなパスミスをするようになっている。スタメンの固定でどうしても疲れてきてしまうだろう。ターンオーバーをできそうな選手がアグエロ→ジェズス、スターリング→ベルナウド・シルバ。あとはギュンドアンくらいしかいない。ベルナウド・シルバがゆっくりと馴染み始めたので、ギュンドアンが根性を見せるしかない。選手構成を見ると、優秀そうな若手たちで誰が台頭しいてくるか非常に楽しみにしておく。

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