【第17節】マンチェスター・シティ対スウォンジー【相手の配置や論理に対するマンチェスター・シティの変化】

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

今は昔、スウォンジーは高いボール保持率を武器にプレミア・リーグで旋風を巻き起こしていた。マンチェスター・シティ、アーセナルを相手にしても、ゆらがないその姿勢にかなりの衝撃を与えられた。特にジョー・アレン、ブリットンというお前ら誰やねんコンビを起点とするボール保持に感嘆させられたことをよく覚えている。結果を出したスウォンジーの元には個の力で何かを成し遂げてくれそうな選手が足りなかった。しかし、結果を出せばそういう選手を獲得できるようになる。放出もしてしまうけれど。その流れでかつてのスウォンジーらしさは失われ、よくあるプレミア・リーグのチームになってしまったことは非常に残念極まりない。しかし、不常であることをはるか昔から叩き込まれている我々の民族からすれば、それもむべなるかなとなるのだろう。どんな枕やねん。

スウォンジーの守備の論理と変化

スウォンジーの守備の配置は4-5-1。人への意識よりも、ゾーン・ディフェンスの志向が強い守備であった。マンチェスター・シティの2.3列目のエリアを狙う攻撃を防ぐために、スウォンジーは3センターを横並びにすることで対応する。また、サイドハーフの選手にハーフスペースを守護させることで、その志向はさらに強いものとなっていた。大外エリアでのプレーが許されたマンチェスター・シティだったが、この試合で大外にポジショニングしていたのはスターリングとデ・ブライネ。序盤の右サイドはデ・ブライネが大外、中にベルナルド・シウバという役割になっていた。いわゆる隣り合うポジションは同じ列にいてはいけないの法則となっている。

センター、ハーフスペースをスウォンジーに規制されていたので、大外からの侵入が増えていくマンチェスター・シティ。しかし、大外にポジショニングしているのはデ・ブライネとスターリング。過去を思い出せば、デ・ブライネは質的優位勝負に慣れていそうだが、この試合では非常に大人しく、ダニーロのサポートの遅さに苛立っていた。左サイドのスターリングも、マンチェスター・ダービーで中央に移動したように、サイドからの質的優位で勝負をもっとも長所としているキャラではない。そんなキャラであるサネはこの試合でベンチにいた。というわけで、大外からの侵入はどうもうまくいきそうもない雰囲気である。

そんな雰囲気のなかで、マンチェスター・シティが見つけた突破口はフェルナンジーニョであった。スウォンジーの3センターの横並びを思い出してみると、フェルナンジーニョを守備の基準点とするのは誰だ?問題が浮上してくる。そんな守備の曖昧さを利用して、フェルナンジーニョから攻撃を組み立てていくマンチェスター・シティ。これをほっておいたら怪我をしそうだとスウォンジー。3センターの中央に位置していたロケ・メサがフェルナンジーニョを守備の基準点とするようになる。しかし、3センターでパスラインを遮断作戦がただの4-2-3-1の守備のようになっていく。これでは3人を並べる必要がない。よって、ワントップのボニをフェルナンジーニョにぶつけることで、もともとの狙いを継続するように変化していった。

スウォンジーの守備を受けてマンチェスター・シティの変化

ワントップのボニの守備の基準点がフェルナンジーニョになれば、マンチェスター・シティはセンターバックが自由になる。ビルドアップで怪しさをみせるマンガラを尻目に、オレをフリーにするなら痛い目に遇うぞとばかりにオタメンディが躍動していった。また、フェルナンジーニョ周りにプレーエリアを見つけたマンチェスター・シティのサイドバックは、ときどきアラバロールをするようになる。マンチェスター・シティの狙いとして、アラバロール(ポジショニング)、運ぶドリブル(ボールを伴う移動)によって、スウォンジーの1.2列目のエリアを支配するようになっていった。グアルディオラはこのエリアでオープンな状態でボールを持つことに非常に拘りをもっている印象を受ける。

横並びの3センターやゾーン・ディフェンスは、各々の選手の守備の基準点がはっきりしている。よって、ジャンプ(守備の基準点を変更しながらプレッシングを行う、または二度追い)をすることはあまりない。特定の選手に負荷が強くなるように設計されていないからだ。ときどき、ワントップの選手に片道燃料で走らせるチームもいるけれど、今は1列目ではなく、2列目のお話。フェルナンジーニョ単体ならば、まだ守備の基準点が乱れることはないんだけど、このエリアにアラバロールでサイドバックが登場すると、3センターにそれぞれ守備の基準点ができるようになってしまう。その場合、ボールの循環によって、移動を強いられる展開となる。移動が完了すれば、守備が整っている状況と定義することはできるだろう。逆に言えば、この移動を相手にさせる状況を作ることで、相手の守備を少しの間でも整っていない状況にすることができる。守備の基準点をたくさん用意することによって、ボールのスピードと相手のスピードで勝負させる策もグアルディオラは得意としている。

さらに、フェルナンジーニョが地味な技を行うようになっている。アンカーの選手はセンターエリア(ど真ん中)から動かないことを基本としている。攻守に中継地点になることで、チームのバランスを保っているから動かないことが求められるポジションと言えるだろう。しかし、ボールを保持しているときのフェルナンジーニョはときどき隣のハーフスペースに移動する。この単独なレーンの移動によって、怠慢な1列目の守備から自由になる場面が多い。さらに、フェルナンジーニョがハーフスペースに移動したことによって、フェルナンジーニョのいないハーフスペースに誰かが登場する(アラバロールや運ぶドリブル)も多い。この動きをフェルナンジーニョがやるときは、フェルナンジーニョ周りの相手の選手が一枚であるときが多い。

流れを整理すると、3センターでライン間攻撃を遮断だ→フェルナンジーニョがフリー→ロケ・メサで対応だ→ライン間を使われそうになる→ボニで対応だ→オタメンディやアラバロールでフェルナンジーニョ周りの人員が増える→マンチェスター・シティの攻撃の起点作りが成功し、スウォンジーは耐え忍ぶ展開となった。

スコアと配置の変化

26分。オタメンディのスーパーなデ・ブライネのパスから、ベルナルド・シウバのクロスをダビド・シルバがあわせてゴール。最初は大外にいたデ・ブライネだったが、スウォンジーの1.2列目のエリアで味方がオープンになるようになると、中へ移動。シルバとともに、ライン間にポジショニングして、スウォンジーのゴールを狙い続けた。外に移動したベルナルド・シウバだが、左利きを利用したゴールに向かっていくクロスで存在感を発揮。そのうちのひとつのクロスが見事にゴールに繋がった。なお、この場面で起点になったオタメンディだが、相手がプレッシングに来ないとその場に止まる芸当をこの後に見せた。昨年のプレーから考えると、えぐい成長と言えるだろう。

34分。デ・ブライネの直接フリーキックが決まる。ここでもオタメンディがキーパーのブラインドに役立っていた。耐え忍ぶスウォンジーだが、結局は耐えきれず。カウンターでときどき迫力を見せる個はいたものの、チームで連動することはほとんどなかった。トランジションでもマンチェスター・シティのほうが素早いプレーを見せていたこともあって、スウォンジーの前半はマンチェスター・シティのポジショニング、攻撃方法の変化に対応しきれずに終わった。1列目の守備問題で苦しんでいるチームは世界中に多い。ただ、1トップの場合は、できることも少ないので、なんとも言えないのだが。

後半からキャロル→エイブラハム。4-4-2に変更するスウォンジー。死なばもろともだべ!というわけで、エデルソンにもプレッシングをかけるようになる。普通の4-4-2で挑んできたスウォンジーに対して、このパターンは死ぬほどやってきましたとマンチェスター・シティ。さらに言えば、スウォンジーの1列目の守備はまたしても曖昧だったこともあって、フェルナンジーニョを誰が見るんだ問題がまたも出てくる。この時点で勝負ありであった。

51分にマンチェスター・シティが追加点。ライン間にボールを届けるためにはどうしたらいいの?という解決策が多彩なマンチェスター・シティ。この場面ではサイドチェンジで相手を動かして、大外からライン間にボールを入れるであった。フェルナンジーニョとデルフのボールの動かし方がお見事であった。57分にフェルナンジーニョ→ヤヤ・トゥーレ。ここでほとんど試合は終了する。72分にデルフ→ジンチェンコ。ウクライナ代表で活躍していたジンチェンコはマンチェスター・シティで修行をしているわけだ。最後にデ・ブライネ→ギュンドアンで、代えのきかない選手を次から次へと休ませるグアルディオラ采配。最後にマンチェスター・ダービで出番のなかったアグエロが怒りのゴールを決めて終了。かつてに良さがひとかけらも残ってなかったスウォンジーを撃破して、次は難敵スパーズとの試合となる。

ひとりごと

フェルナンジーニョ周りが面白い。基本は1アンカー。センターバックが前に出てくると、片側アラバロールみたいになる。一人が中央で、一人がハーフスペース。両方アラバロールで3センター。さらに、フェルナンジーニョが中央から移動すると、双方がハーフスペース。または、フェルナンジーニョが後方に移動すると、そのエリアを誰が使うかと柔軟になっている。たいていはデ・ブライネが下りてくる。大雑把な決まりごとがあるのだろう。パターンのようでパターンでないみたいな。

コメント

  1. ヴィヴァルディ より:

    シティシリーズ続いてて嬉しいです!
    でももうシーズン終わりますけどね笑

    次のトッテナム戦すごく楽しみです!!

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