采配対決で勝利したグアルディオラだが ~バイエルン対ドルトムント、ドイツカップのセミ・ファイナルより~

マッチレポ1415×ブンデスリーガ

myboard

欧州がオフ・シーズンになったので、欧州サッカーを振り返ろうのコーナーです。第一弾はドイツ・カップの準決勝より、バイエルン対ドルトムントの一戦。クロップ監督の退任が既に決定してからの試合だったので、グアルディオラ対クロップの見納めとなった試合でもあります。なお、ドイツ・カップは一発勝負。なぜか会場はバイエルンのホームスタジアムでした。

この試合の一週間前にリーグ戦の優勝を決定していたバイエルン・ミュンヘン。そんな上げ潮モードでカップ戦に突入。ドルトムントもリーグ戦で勝ち始めていた状況。つまり、両チーム共に怪我人がどうこうを除いて考えると、まあ悪くないよねという状況での衝突となりました。

■クロップのビルドアップ潰し

myboard1

昨年までのバイエルンは4バック→3バックの変化を得意としていた。この変化の目的は、守備の基準点を狂わせることにある。ならば、枚数を合わせて守備の基準点、、オレが誰をみるべきかはっきりさせる、、をぼやけないように、ドルトムントが4-3-3で守備を形成することは昨年の形からも観ることができた。図でも分かるように、怪しいのはサイドのベルナトとヴァイザー。このエリアは中盤のスライドやサイドバックの突撃で対応するのがクロップ流である。ドルトムントの一列目の守備がサイドに攻撃を誘導できれば、スライドする時間は稼げるという計算になっている。

■グアルディオラのビルドアップ潰しへの対策

myboard2

相手が2トップのときに、相手の間に選手を配置する方法はよく見られる。定石。角度とポジショニングでボールを前進させていく理論。グアルディオラの場合は、3トップの間に選手を配置する。ラームとシャビ・アロンソ。シャビ・アロンソはディフェンスラインに落ちることもある。4対3の数的優位を作り、相手のプレッシングを牽制し、ボールを前進させる数的優位理論。両者のミックスでドルトムントのプレッシングにせまる。

香川とロイスの間にポジショニングするラームは狭いエリアでも息をすることができる。実際に2人の間で何度もボールを受けるラームが目撃されている。この2人の間にある狭いエリアをより狭くしようとすれば、ロイスとベナティアの距離が空く。スペースと時間をもらえたベナティアはロングボールだったり、サイドにボールを逃したりする余裕が生まれる。ロイスがベナティアに寄せれば、ラームによりスペースが生まれる悪循環だ。

■相手が動く中で

myboard3

だったら、ラームを潰せばいいとなり、ギュンドアンが出てくる。しかし、ギュンドアンの本来の仕事はサイドへのスライド。つまり、ギュンドアンが出てくれば、ヴァイザーエリアが空く。ヴァイザー対策にシュメルツァーが出てくれば、今度はミュラーとフンメルスが一対一の状況になりやすくなる。

また、シャビ・アロンソの空けたスペースにチアゴ・アルカンタラが登場することで、状況はさらに複雑になる。チアゴ・アルカンタラはときどき、正確には必要なときに、後方に落ちてくることで、ボールを前進させることを助けていた。むろん、チアゴ・アルカンタラの動きにつられたらベルナトが空くという仕掛けになっている。

ここまでの仕掛けを準備してきたバイエルン。ドルトムントは完全に後手を踏むことになる。マンマーク気味に捕まえに行けば、レバンドフスキとミュラーに放り込まれる。プレッシングで追い込んでもノイアーにボールを下げる。全体のラインを下げることで、ドルトムントの一列目と二列目の距離を剥がしにくる。ビルドアップの起点を下げることで、相手をおびき出すという懐かしい手が再現された。

守備が不安定に、時には分断されたドルトムントは、時間の経過ともに、バイエルンに好き勝手に暴れられる展開となっていった。ここまでの用意周到な準備があればむべなるかな。ただし、ドルトムントも攻めこまれれば、オーバメヤンを中心としたカウンターの勢いが増す、という準備がある。でも、効果的にボールを奪えないので、その機会は非常に少なかった。そして、その少ない機会で香川がボールを奪われる。そして発生するバイエルンの逆カウンターで先制点が生まれた。ポゼッションだけでなく、カウンターもあるよ!というバイエルンのプラン通りに試合が進んでいった。

■クロップの僅かな望み

後半のドルトムントは攻守に4-2-3-1に変更。バイエルンの高い位置からのプレッシングが緩まったこと、自分たちでボールを繋ごうという意志統一が上手くはまり、ボールを繋げる場面も出てくる。ドルトムントのシステム変更により、バイエルンはビルドアップの始まりの形をどのようにするかに戸惑いを見せていた。ただし、ドルトムントが前から行けば、あっさりと剥がしていたが。

ドルトムントは3-5-2で守るバイエルンに対して、外外のボール循環で流れを掴もうと画策する。そんなクロップ変更に対して、バイエルンは特に変更なく。自分たちの型を相手にも強いることで、後半もすすめていった。前半に比べればボールを保持する機会の増えたドルトムントだが、全体で見れば、バイエルンのペースに変わりはなかったと思う。隙があるとすれば、外外の循環に対して数的不利になりやすいことくらいだった。

得点の気配がないドルトムントに対して、バイエルンは怪我明けのロッベンを投入。そんな余裕。チアゴ・アルカンタラ→ロッベンでロッベンがまさかのトップ下。怪我明けのロッベンはまったく機能していなかったけれども、それでもどうにかなるだろうと考えていたのだろう。

ドルトムントは香川→ムヒタリアン。ロイスが中央に移動。この交代が功を奏したなんてことはないが、外外が上手くいっていたわずかな希望が実ることとなる。クバのクロスを大外のムヒタリアンが折り返して最後はオーバメヤンでまさかの同点に追いついたドルトムントであった。軽い奇跡。

バイエルンはシュバインシュタイガーを入れて、バランスの改善。そして、ロッベンが怪我をしたのでゲッツェを投入し、攻勢に出るが狂ったバランスはなかなか元に戻らず。ドルトムントもチャンスを得ながらも試合は延長線へと突入した。

■叩き潰すグアルディオラ

延長になると、システムを4-1-2-3に変更するバイエルン。相手の外外の攻撃に対して、枚数を揃えてきた。僅かな望みを後半に放置した私が悪かったでやんすと思ったかどうかは定かではない。バランスを改善したバイエルンは延長線に猛攻を見せる。ついでに途中出場したカンプルを退場に追い込むことに成功する。

猛攻はさらに加速するが、そこは残念ランゲラク。おまえは誰だと観ていたが、ファインセーブの連続でバイエルンの計算を狂わせていた。最後までファインセーブを続けるランゲラク。そのせいで10人で守り切ることに成功するドルトムント。迎えるはPK戦。ここで、ラームとシャビ・アロンソの軸足が滑って連続で失敗。躍動するランゲラクはゲッツェのPKを止める。最後はノイアーのシュートが失敗に終わり、まさかのドルトムントのファイナル進出が決定した。

■独り言

グアルディオラの打ち手が凄まじかった。でも、ランゲラクがすべてを狂わせた。ただ、動きまわるグアルディオラに対して、クロップはぜんぜん動けなかった。同点に追いついたのもちょっと奇跡な雰囲気だったし、延長戦でのグアルディオラの対応にも特に何もできなかった。退任が決まっていることもあって、恐らくかなり疲弊しているに違いない。お休みをするとのことなので、元気になって帰ってきてほしい。そして、この試合内容で負けるバイエルンがかなり切なく見えた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました