監督がマルティン・シュミットに交代したマインツ。トゥヘルがスカウトしてきた監督。クロップ、トゥヘルと当たり監督を引きあてるマインツのフロントの秘密が知りたい。なお、マルティン・シュミットはマインツのU23で修行を重ねてきたらしい。
ヴォルフスブルグはターンオーバーを敢行した試合。前節から6枚交代。スタメンです!と自信を持って言えるのは、ベナーリオ、ナウド、クローゼ、グスタボ、デ・ブライネ、アーノルドくらい。ただし、デ・ブライネがサイドで、アーノルドがトップ下で起用されているので、日常とは違う景色になっている。
■ヴォルフルブルグの紹介
ヴォルフスブルグはセンターバックの位置でボールを前進させる特徴を持つ。
センターバックが横幅をとるために、ベナーリオへのバックパスを多用する。キーパーまでプレッシングをかけることは体力的に、プレッシングの連動の面でリスクが大きい。キーパーまでプレッシングをかけるチームはあまり多くない。よって、キーパーへバックパスをすることによって、自分たちがいるべきポジショニングを調整する時間を稼いでいる。ポジショニングが正しければ、ビルドアップがほとんど成功したといっても良いだろう。
最近の定石になりつつある、相手のサイドハーフを狙った動き。センターバックの横幅と中盤のポジショニングで相手の一列目の守備の基準点をずらす。本来の基準点が他にある選手、例えばサイドバックを見なければならないサイドハーフ、に選択を強いることで、相手のマークをはがしていくことがヴォルフスブルグの狙いだ。
相手の一列目の守備をはがした場合の選択肢。他にも前線への放り込みや外外循環、サイドハーフを落として、相手のサイドバックの裏にデ・ブライネやセンターフォワードの選手を走らせる戦術的柔軟性を併せ持っている。基本は堅固な4-4-2の守備が目立っているヴォルフスブルグだが、ボールを繋いで相手を攻撃するという点においてもこれだけの準備がされている。
■マインツの守備方法
序盤のマインツは徹底的なプレッシングでヴォルフルブルグを苦しめた。ゆったりとボールを保持するヴォルフルブルグの最終ラインにボールを持つ、思考する時間を与えないように次から次へとプレッシングをかけていった。時間を与えられなかったヴォルフルブルグは相手の形にあわせて自分たちのポジショニングを調整する暇がなく、序盤はかなり厳しい立ち上がりとなった。特に、グスタボ、ギラボギのポジショニングで苦戦していた。ボールを奪ったときのマインツは速攻とカウンターをメイン。特にサイドバックの攻撃参加が目立っていた。恐らく、ヴォルフルブルグのサイドハーフの帰陣よりも素早く攻撃参加できるという計算があったのだろう。
効果的にボールを前進させられなかったヴォルフルブルグはロングボールでプレッシング回避を狙う。しかし、前線のベントナーが勝てない。ショートパス、ロングパスとともに機能しなかったヴォルフルブルグはマインツのプレッシングを正面から受け止めることになり、終いには明らかなバックパスをベナーリオがキャッチするという混乱を象徴する現象もあった。そして、その現象から連なるコーナーキックから失点する。
ポジショニングを調整するために、バックパスをするヴォルフルブルグ。しかし、マインツは深追いを辞さない。つまり、時間をかせぐためのバックパスならば、時間を稼げないように守ればよい。ロングボールを蹴らせるのはOK。岡崎、マッリの献身的なプレッシングによって、ヴォルフルブルグはイレギュラーな状態での戦いを余儀なくされた。
ただし、いくら献身的でもキーパーへのプレッシングを延々と続けるのは厳しい。先制したこともあって、30分が過ぎるころには、ヴォルフルブルグがボールをゆったりと保持する日常が戻りつつあった。しかし、それでもヴォルフルブルグはボールを上手く前進させることができなかった。
守備の基準点が狂うから、ボールを運ばれてしまう。だったら、相手がどんなに変化しても自分たちで定めた守備の基準点を守り続ければよい。プレッシング開始ラインを下げたマインツ。岡崎たちは相手のセンターバックがボールを持っていれば、どこまでも走る。いくらずらされても。相手がフリーでも、サイドハーフはぎりぎりまで我慢。その代わりに、サイドバックがボールを持ったらすぐに寄せに行く距離を保つ。
この我慢作戦にヴォルフルブルグは苦戦する。相手のサイドハーフのプレッシングにサイドバックは外外を封じられる。センターバックがフリーでも相手のサイドハーフはでてこない。もたもたしていると、岡崎たちのスライドが間に合ってしまう。バックパスを繰り返していれば、相手もラインを上げてプレッシングをかけてくる。つまり、攻撃が振り出しに戻る。それでもヴォルフルブルグはいつものメンバーではない。この状況の打開方法は日常に戻すことにあった。監督の仕事はイレギュラーな状況をレギュラーな状況に戻すこと。
■いつか帰るところ
ペリシッチとヴェイリーニャを後半の頭から投入。デ・ブライネは中央で表記しているが、シュールレと頻繁にポジションチェンジをしていた。
最初に、ヴェイリーニャが違いを見せる。相手のプレッシングを物ともしない。いわゆる、密集地帯でも普段通りにプレーができる選手。ヴェイリーニャの技術によって、外外循環が復活する。ボールを受けるのもいつものペリシッチなので、ゆっくりと状況が変わり始める。
次に、グスタボを落とす。相手がツートップなので、さっさと3バックに変化する場面が何度も見られた。数的優位で前進というよりは、相手のプレッシングを牽制する意味が大きかったように思える。相手が3枚ならば、無闇に追いかけまわすのは得策とはいえない。
最後にデ・ブライネ。サイドバックからサイドハーフへの外外循環を阻止するためには、相手のサイドバックへの距離を近くする必要が出てくる。すぐにプレッシングにいけるように。それはつまり、相手のポジショニングを離すことに成功したということになる。つまり、最終ラインから相手のサイドハーフとセントラルハーフの距離が離れる。前半はサイドでちょっと窮屈そうだったデ・ブライネが最終ラインからボールを引き出せるようになる。もともとセンターバックにはちょっとした時間は与えられていたので、デ・ブライネの自由化は相手にとって悪夢でしか無かった。
ヴォルフルブルグが攻撃を完結できるようになった後半戦。前半はヴォルフルブルグがボールを運べない→守備の準備が整う前にマインツの速攻が炸裂していた。後半はヴォルフルブルグが攻撃を完結できることによって、マインツのボール回復地点が後方に下がった。つまり、マインツもヴォルフルブルグの守備に対抗する必要が出てくる。ヴォルフルブルグは守備に持ち味があるチームなので、攻撃が止められ、ヴォルフルブルグのカウンターという前半には見られなかった現象がでる。攻撃、とくに前進を改善することによって、カウンターが出てくるようになるというのも論理的な展開。
この流れからヴォルフルブルグが同点ゴールを決める。残り10分はマインツが決死の猛攻を見せるが、ゴールには届かず。後半はヴォルフルブルグのいつもの形に試合の展開を崩されたと言っていいだろう。底力の差というべきか否か。
■独り言
今季で2位になったヴォルフスブルグを続けて観戦した。印象としては、何でもできる。守れるし攻めることもできる。もちろん、それぞれにおいて得意不得意はあるんだろうけど、まんべんなくできる印象がある。相手によって、自分たちを最適な形に変化させることもできるし、相手にある形を強いられたとしても、そこそこに相手を殴ることもできる。躍進を遂げたといっていいのかはチームポテンシャル的にわからない。欧州各リーグで上位にくる、または良い評価をうけているチームは、2パターンあると考えている。レバークーゼンのように振り切れたようなサッカーか、ヴォルフスブルグのように基本に忠実に石を積み上げているようなサッカーか。来季はCL。そこそこに戦えるようだが、この形なら絶対に負けません、という形が出てくれば躍進もありえるかもしれない。
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