【ジェコ≒トッティ】ローマ対インテル【フランク・デ・ブールは名将か?】

マッチレポ1617×セリエA

ローマのスタメンは、シュチェスニー、ファン、ファシオ、マノラス、ペレス、ストロートマン、デ・ロッシ、ペロッティ、サラー、フロレンツィ、ジェコ。監督は懐かしのスパレッティ。セビージャでヘスス・ナバスとコンビを組んでいたペロッティが、イタリアの地で活躍しているようだ。今季はチャンピオンズ・リーグのプレーオフで敗退。ヨーロッパ・リーグに参加している。打倒ユベントスの筆頭だと思うので、トッティ隊長と仲良く頑張って欲しい。なお、トッティは40歳らしい。

インテルのスタメンは、ハンダノビッチ、サントン、ムリージョ、ミランダ、アンサルディ、メデル、ジョアン・マリオ、バネガ、ペリシッチ、カンドレーヴァ、イカルディ。ユベントスを倒したことで身につけた自信が結果にあらわれているようだ。しかし、ヨーロッパ・リーグはすでにぼろぼろ。幸か不幸か、リーグ戦に集中することになるかもしれない。シーズン開幕前に、チームを急遽率いることになったフランク・デ・ブールからすると、リーグ戦に集中する、または試合数が減ることのどちらが好都合なのかは、ちょっとわからない。

相手に何かを解決させる状況を作れるかどうか

フランク・デ・ブール以降のインテルは、ボールを保持するサッカーのチャレンジしている。恐らく、イタリアにおいてボールを保持することにプライドを持っているチームは少ない。ボールを保持することが結果につながるならば、その姿勢は賞賛されるだろう。つまり、試合の流れにおいて、必要ならボールを保持すべきだし、必要がなければ、ボールを保持しなければ良い。インテルのボール保持に対して、ローマはしっかりと対策をしてきた。ボールを保持していないときのローマのシステムは、4-4-2。フロレンツィとジェコが第一守備ラインとして、相手の前に立ちはだかった。

ボールを保持しているときのインテルのシステムは、4-2-3-1。試合後の長友がインタビューで語っていたように、フランク・デ・ブールはボール保持において、サイドバックの高いポジショニング、サイドハーフを追い越すようなオーバーラップを必要と考えていない。よって、サントン、アンサルディのポジショニングはいわゆる守備をするという意味でのサイドバックらしいポジショニングであることが多かった。

相手がボールを保持しているときのポジショニングにおいて、守備の基準点が大切となる。つまり、あの選手にボールが入ったときに私がプレッシングをかければいい、ということがはっきりしていればいるほど、守備は機能する。インテルのボール保持はポジショニングが普通であったために、ローマの選手は迷いなくプレッシングをかけることができていた。序盤のインテルはロングボールを蹴る場面も目立った。もちろん、試合開始直後のリスク・マネージメントがプレーに表れていたけれど、ビルドアップが上手くいかないという事情もあった。

相手のビルドアップを破壊したローマは、ペロッティ、サラーのスピードを活かした速攻を見せた。また、自分たちがボールを保持しているときもジェコのポストプレーを利用し、攻撃のスピードアップを成功させる。こうしたローマの速攻、個人技の前に、インテルはさらされることとなった。そして、サラーのキープ、ペレスのインナーラップでサントンサイドを攻略され、最後はジェコに決まられ、たったの5分でインテルは失点することになった。

バネガとジョアン・マリオ、そしてサイドバック

早すぎる先制点だったが、ローマはしっかりと守備を固めたからの速攻に移行する。もともと速攻をメインに考えていたので、相手にボールを保持させる時間を増やしても問題ないと考えたのだろう。第一守備ラインを少し下げて、インテルがボールを保持する、持たされる格好となった。

ボール保持を目的とする場合、どのように第一守備ラインを突破するかで準備が試される。ビルドアップは再現性を持って繰り返されなければいけない。もちろん、安定的に前進できるならば、再現性がなくてもいいけれど、そういうチームはあまり見たことはない。

インテルのネタは、ジョアン・マリオとバネガのポジショニングにあった。このコンビは、オフ・ザ・ボールの動きで相手から離れてボールを受けることがうまい。両者に共通していることは、自分のプレーエリアを限定しない。バネガは上下動で相手の守備の役割を混乱させ、ジョアン・マリオは左右に幅広く動くことで、相手の守備から自由になる。コンセプトは、相手から離れてボールを受ける。このコンセプトを忠実にこなすことで、ジョアン・マリオとバネガはビルドアップの出口として機能していた。ローマからすれば、ストロートマンとバネガをマンマーク気味にという計算があったが、バネガが下りていってしまうので、ストロートマンは非常に困っていた。ローマからすれば、解決しなければならない状況が出てきたと言える。

ジョアン・マリオとバネガのポジショニングでボールを前進させたインテルは、サイドバックも高いポジショニングを取り始める。別にフランク・デ・ブールに怒られていたこともないので、攻撃参加をしても怒られないのかもしれない。この攻撃参加によって、ローマのサイドハーフを自陣に押し込める、またはマークのずれからサイドの高い位置でボールを受けることができていた。マークを受け渡すよりも個人の裁量に期待しているようなローマの守備にとって、ポジションチェンジ&プレーエリアを離れる動きは非常に厄介だったろう。

ただし、守備重視で起用されているだろうサイドバックコンビに攻撃で何かを期待するのは困難そうだった。バネガのスルーパスをアンサルディは大チャンスだったけれど。特に左サイドのサントンはボールを右足に持ち替える場面が多く、時間の無駄使いになる場面が多かった。左足使えなかったっけ。もちろん、ローマのカウンター、速攻が炸裂する場面は見られたのだけど、ハンダノビッチを中心に何とかしのぎながら、インテルも定位置攻撃(ほとんどバネガ)、セットプレーでシュチェスニーまで迫ることはできていた。前半は0-1のまま、終わる。

セレクターか、仕込みか

後半が始まると、55分くらいまではプレミアリーグのような光景がピッチに広がった。中盤が間延びして、カウンター合戦。どちらのチームにとって得なのかは不明だ。このままボールを保持されたらやばいとローマが計算する理由もない。インテルからしても、ボール保持とカウンターを組み合わせて攻撃を仕掛けたほうが得点の機会は多い。となると、どちらかのチームによって意図的に生み出されたというよりは、ボール保持するよりも、シュートまでいけるなら行け!というローマの姿勢が悪い意味で両チームに伝染したと言えるかもしれない。リードしているローマにとっては決していい状態ではないので、55分を過ぎると、ローマがリードしてからの前半のリピートとなる。

60分にジョアン・マリオ→グノウコーリ。ジョアン・マリオは怪我をしていたらしいので、最初から60分限定のプレーだった可能性が高い。ジョアン・マリオのポジショニングなしにボールを運べるのかと不安に見守っていた。しかし、バネガがひとりでボールを運んでいた。恐るべしバネガ。トップ下のバネガが下りれば、ゴール前の人数は少なくなる。しかし、ペリシッチとイカルディ、カンドレーヴァと絶対的なエースとゴール前に侵入できる両ワイドを置いているので、大丈夫という計算だ。でも、バネガ以外の選手がバネガのようなプレーをできるかは非常に怪しい。

なお、登場したグノウコーリはポジショニングは悪くなかったけれど、ボールを持ったときの判断が良くなかった。よって、ジョアン・マリオがピッチからいなくなったことで、インテルの攻撃は少しトーンダウンすることなる。ジョアン・マリオとバネガのポジショニングはチームで仕込まれたというよりも、個の能力に依存していることが多い。その場合、彼らがいなくなったときに同じようにビルドアップの出口を作れるかどうかは、フランク・デ・ブールの真価が問われる。得点やチャンスメイクに関しては、選手の離脱で安定感がかけるというのはあり。だが、失敗が失点につながるビルドアップに関しては、誰が抜けてもそれなりにできなくてはいけない。もちろん、別にボール保持しないよ、という場合はどうでもいいが。

そして、62分に長友が登場する。サラーサイドに登場するが、サラーがすぐに交代でいなくなったのは面白かった。サラーが苛立っていると断言するほどの時間を長友とサラーは過ごしていない。ただし、存在感が抜群だったサラーがいなくなったことで、インテルはかなり楽になる。なお、サラー→エル・シャーラウィでエル・シャーラウィは左サイドに登場するが、守備の時間のほうが長く、ペロッティのほうが明らかに目立っていた。

そしてヨヴェティッチが登場することに、インテルは同点ゴールを決める。イカルディとバネガのコンビでゴールを決めてしまうのだから、凄い。特にゴール前で相手をかわしてニアに蹴り込むバネガ。ビルドアップ、チャンスメイクからフィニッシュまでしてしまうのだから、今日はスーパーなバネガだった。

同点に追いつかれて、やっとスコアがイーブンな状態のローマがどのように振る舞うかわかるぞと期待していると、あっさりとローマに追加点が決まる。交代で登場したヨヴェティッチのファウルが余計であった。セットプレーからマノラスで試合はあっさりとこの試合で繰り返された展開に戻る。

スパレッティもまじバネガめんどくさいとなったのか、パレデスを入れて4-1-4-1に変更する。中央を3センターで守り、イカルディへのパスコースを遮断しながら、サイド攻撃にも対応をした。なお、長友は果敢なオーバーラップからチャンスを作っている。よって、サイドバックが上がってくるなら、しっかり守りまっせという変更だ。相手が1トップになったので、ミランダとムリージョの攻撃参加に期待が集まるが、あまり攻撃に参加してこなかった。となると、人員的な終始はマイナスになるので、苦しいインテル。最後はハンダノビッチを上げたセットプレーで起死回生の同点ゴールを狙うが、ゴールには届かずに試合は終了した。

ひとりごと

ヴォルフスブルグで最強感のあったジェコがポストワークで貢献していた。カウンターの起点となり、サラーたちが走る走る。トッティのゼロトップを少し思い出した。なお、トッティの出番はなかったので、ちょっと残念無念。ただし、後半のジェコは潰される場面が多かった。ミランダの復讐。

フランク・デ・ブールはバネガとイカルディ、ジョアン・マリオで持っているように思える。もちろん、チームの中心選手なので、致し方ないが。長友のインタビューにあったようにサイドバックにどのようなタスクをかすかで、インテルの行く末は決まっていきそう。たぶん、攻撃参加しないと、ボールを保持するサッカーは成功しない。両翼にフィーゴでもいれば、話は別だが。

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