ハリルホジッチは、その言葉で多くの人を良い意味でも悪い意味でも踊らせている。そんな言葉に注目していきたい。また、周りの選手(ほとんど香川と本田になってしまった)の言葉にも注目していく。引用は記載がない限りは、スポナビ様より行っております。
戦術の準備をしっかりして、われわれのフィジカル状態をしっかり管理して、選手たちは特に守備面で素晴らしい試合をしてくれた。相手にわざとポゼッションをさせて、得点を取る可能性があることも最初から分かっていた。
オーストラリア戦後の記者会見からハリルホジッチの発言。キーワードは、守備面で素晴らしい仕事をしてくれたと、相手にわざとポゼッションをさせて、というくだりだろう。つまり、オーストラリア相手にボールを保持しないなんてダメだ!!!という理屈は、ハリルホジッチのゲームプランを否定することになる。監督のゲームプランを否定することもなしとは言わないが、あまり建設的とは言えない。意見が必ずしも建設的である必要は無いと思うが、ボールを保持したくないと考えているチームに、ボールを保持せよと叫び続けることに、個人的にはむさしさを覚えてしまう。ただし、ボールを保持しないハリルホジッチなんて解任せよというのは、その人の価値観を通してみると、一応は筋が通っている。このあたりについては、協会がもっとハリルホジッチに何を期待しているかをアナウンスするべきだと思う。
オーストラリアもポゼッションサッカーに切り替えているので、ポゼッションを高めてくる相手に対してはカウンターが、ショートカウンターを含めてキーになると思います。(カウンターのイメージは)速いタッチで両サイドを使いながらプレーすることが必要です。両サイドにはスピードのある選手がいるので、カウンターになったらみんなが迷わず速いスピードで展開していければ、必ずチャンスはあると思います。
オーストラリア戦の前日会見の香川真司の発言から。はっきりカウンターがメインだと発言している。そういう意味では、ハリルホジッチのやりたいサッカーを選手が、、ひとまずは、、オーストラリア戦で体現した!ということは言えそうだ。
(思い当たる課題は)多いです。守備もそうですし攻撃も。やっぱりこの短期間でイラク戦から全く戦術を変えて、アウェーでとにかく勝ち点は絶対に取りたいと思い、最低限の勝ち点は取れた。とはいえ、内容はいいように支配された。「支配させる」という感覚で前半はちょっとだけいられたんですけれど、後半は「支配される」に変わったと思います。これは大きな課題だと思っています。
オーストラリア戦後の本田圭佑の発言から。後半に関して言えば、うまく守れていなかったという感触をもつ選手が本田の他にも多い。本田の発言が象徴的で、前半は支配させていたけど、後半は支配されたという表現が適切な試合だったと思う。
(どのようにしたら良くなるのか?)まずはやはり守備の段階で、僕たちがやられないようにうまく守備をしたというのがある。ただ、今日は前線からプレスにいけたシーンというのは数えるくらいだったと思います。後半あれだけラインを落とされた中で攻撃をするというのは、なかなか厳しいなというのをすごく感じるゲームでした。それを踏まえて、W杯であったり、ヨーロッパのチームと戦うときはこういう戦いになるんじゃないかな、というのをすごく感じるゲームだったと思います。
オーストラリア戦後の香川真司の発言から。本田圭佑の攻守に課題があるという発言にもう少し踏み込んでいるのが特徴だ。守備の課題は、前線から守備をする機会を増やそう。攻撃の課題は、ラインを落とさない守備を手に入れる必要があるぞ、とのこと。また、ワールドカップやヨーロッパの強豪と試合をするときには、こういうふうになるんだろうなと香川が予想している。その予想の根拠はどこにあるんだとなりますが。
ハリルホジッチのサッカーは、カウンターサッカーと日本代表の選手たちが言っています。
当日のFOOTでの木崎氏の発言より。木崎氏の発言でほかに興味深かったのは、ハリルホジッチはワントップを本田圭佑にたびたび打診していた!ということ。この発言でわかることは、ハリルホジッチはカウンターサッカーをしたいと。カウンターを具体的に説明してみると、ボールを奪い、相手の守備が整っていないときに攻撃を仕掛けること。ゆえに、ボールを奪うと速攻を組み合わせることで、カウンターとなる。つまり、自分たちがボールを持ったらカウンターはできない。もちろん、ボール保持→ボールを奪われる→即座にボールを回収してカウンターという策もあるが、相手にポゼッションさせて、というハリルホジッチの発言からも、この策を使いそうな雰囲気はない。
(50点ということは決して満足ではない?)全然よくなかったです。もっとできたと思います。自分の中である程度、腹をくくって、そんなに自分の特性ではないと分かっている右サイドで気張ってやってきているというのがある。別にスピードがなくても点を取れるってことを証明したいと思ってやっている中で、ぶっつけ本番でいきなりFWになったりする。サイドと全く求められている役割が違うので。悔しいけれど、50点くらいにしかならないですね。
オーストラリア戦後の本田圭佑の発言から。キーワードはぶっつけ本番。そして、前の段落で引用した部分から、短期間でイラク戦から戦術をかえて、という部分もキーワードになる。ハリルホジッチは自分たちの動きで相手を動かしてしとめる、というよりは、相手がこういう論理で動くからそれを逆に利用してしまうという策を用いることが多い。両者の差は、自分たちの動きを優先するか、相手の動きを優先するか。相手の動きを優先する場合は、自分たちの役割も試合ごとに代わる。それこそ、短期間で戦術をかえたり、ぶっつけ本番で臨むことも多いだろう。そんなときに試合がうまく機能しないときの解決策として、自分たちの得意技を選手たちが採用してしまうことも、理解はできなくない。
いったんまとめてみる
ハリルホジッチのサッカーは、カウンターサッカー。相手にあわせて形をかえる。そういう意味で柔軟な姿勢が選手に求められる。いまのところは、何色にもなれない出来損ないのカメレオン。アジアではボールを保持する機会の多い日本。恐らく、オーストラリアを相手にボールを保持しようと思えばできただろう。しかし、ハリルホジッチがハリルホジッチのサッカー(カウンターサッカー)を選手にやらせたことを、評価する声も多い。もちろん、ボールを相手に保持させるサッカーの完成度の低さは、選手たちが痛感している。また、香川真司の発言からもわかるように、強豪を相手にしたときは、こういうサッカーになっていくだろう、ということも選手は肌感覚で感じている。肌ではなく、普通にハリルホジッチから直接言われているかもしれない。
よって、この試合でわかったことは、ハリルホジッチのサッカーの形。そして、ハリルホジッチのサッカーを選手たちにやらせることができたこと。そして、その完成度はお世辞にも高くなかったこと。相手がオーストラリアだから救われたという事実。同点にされたという意味では、救われているのかはわからないけれど。この完成度が上がっていくかどうかが注目だが、アジアでこのサッカーを披露する機会があるのかは不明。
また、イラク→オーストラリアのようにポゼッション→カウンターのように戦術を変更するときに、両方の戦術に対応する選手を揃えられるかというと、難しい。原口元気のように、日本的な選手が欧州サッカーを経験することで、ハイブリッドになるかというと、ならない選手のほうが多い。両方の戦術に対応できないと、今回の香川や小林悠のように、本職はなんでしたっけ?という差異が生まれてしまう。この差異とハリルホジッチは向き合うことになっていきそうだ。差異を埋めるためにどうするか。不満を抱えそうな選手と、どのように向き合っていくか。それとも、がらりと人選をかえるのか。
お前はどう思うんだ??
昨年のチャンピオンズ・リーグファイナルがとても印象に残っている。ボールを保持するレアル・マドリー対ボールを保持しないアトレチコ・マドリーの構図が、スコアの変化とともに逆転する。そして、ボールを持たされたアトレチコ・マドリーが非常に困っていた。その反省をいかして、今季のアトレチコ・マドリーはボールを保持したときも強烈になっている。
結果が出るかどうかは別にして、試合の内容をどうにかする、ということは決して難しくない。相手を優先して、論理的に動いていくサッカーも悪くはないだろう。しかし、オーストラリア戦の後半のような場面に、ボールを保持して相手の攻撃機会を削るか、ラインを上げて相手を自陣から追い出し、積極的にプレッシングをかけていくか。この2択になっていくと思うのだけど、両方を極めて行ってほしいなと、心から願っている。もちろん、代表監督には時間がない。それにハリルホジッチはボールを保持するサッカーにあまり興味を持っていない。恐らく、ビルドアップタスクは柏木陽介に丸投げだと思う。そういった残念さはあるが、精一杯に頑張って欲しい。
まあ、なんというか、結論を言うと、擁護も否定もするつもりはない、みたいな。ピッチのサッカーを見て、もっとこうだったらいいなとか、この意図はなんだろうとか考えるのは好きだが、それを通り越してハリルホジッチは最高だ!ってこともないし、解任だ!という双方の感情が、まったくない。ひとまず、ピッチに意図は落ちているから。なお、ピッチに意図が落ちていない、または明らかに論理から外れた意図がピッチに落ちている場合は、やめてくれないかなと思うけれど、それは代表でもクラブチームでも同じ。ハリルホジッチがそうなりそうな気配は、ひとまずはないので、しばらくは生暖かく見守ろうと思っています。
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