ウェストハムのスタメンは、アドリアン、ジェンキンソン、コリンズ、リード、クレスウェル、ソング、ノーブル、クヤテ、アントニオ、バレンシア、パイェ。8月からはホームで負けていないウェストハム。ビリッチ監督に就任してグレードアップした印象。ビッククラブの不調により、ウェストハムにも欧州の舞台にいける可能性が転がっている。今日の相手はマンチェスター・シティ。実力もあるからこの順位にいるんだ!ということを、証明するには絶好の相手。スタメンにソングがいて驚いた。デニウソンは元気か。
マンチェスター・シティのスタメンは、ハート、サニャ、オタメンディ、デミチェリス、クリシー、ヤヤ・トゥーレ、デルフ、デ・ブライネ、シルバ、ヘスス・ナバス、アグエロ。デ・ブライネの加入でちびっ子軍団化が進んでいる。なお、デルフも大きくはないので、セットプレーの高さは大丈夫なのかと、不安を増大させるメンバーとなっている。なお、3冠の可能性は残っているようで、ペジェグリーニはそのチャンスを狙っているらしい。
■ビリッチの差配
57秒でウェストハムが先制。
クヤテの突撃ドリブルからマンチェスター・シティの守備は秩序(誰がカバーリングに行って、誰がスペースを埋めるか)を失い、フリーになったバレンシアにシュートを決められてしまう。
57秒で何が起きたかといえば、ウェストハムの攻撃的なプレッシング。対するマンチェスター・シティは、どのようにプレッシングを回避するかが明確でなかった。ロングボールを蹴っ飛ばしてもアグエロでは跳ね返されてしまう。では、ビルドアップはどうするかという準備はされていなかった。そんな迷いが相手にチャンスを与え、それが失点につながってしまった。
ウェストハムのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。ノーブルを前に出して、システムを変化させる。自陣に撤退する、または高い位置からのプレッシングを行わない場合は、4-1-4-1。基本的には、高い位置からのプレッシングを志向。マンチェスター・シティの拙いビルドアップのミスを狙ってショートカウンター。またはロングボールを蹴らせることで、高さのミスマッチを狙っている。
マンチェスター・シティは、定位置攻撃ではボールを前進できない。よって、相手の守備が定位置に戻る前の時間(トランジション)を利用して、ボールを運ぶ場面が目立った。守備の位置が正しくないときは、最初の守備者の決定にどうしても時間がかかってしまう。そのわずかな瞬間に、前線の選手にボールを繋げれば、あとは前線の選手の個人能力から導かれるコンビネーションでどうにかなってしまう。そして、9分にアグエロのPKで同点に追いつく。
11分にジェンキンソンが負傷で交代。サム・バイラムが登場する。
20分が過ぎると、ウェストハムは4-1-4-1に変化する機会が多くなる。センターバックがより時間とスペースを得られるようになるが、マンチェスター・シティは丁寧にビルドアップは行わない。相手の守備が整っていても、速攻を狙う。意図としては質的優位(アグエロなら何とかしてくれる)を狙っているように見える。または、相手にボールを渡して攻撃を仕掛けてもらい、ボールを奪ってからの速攻という状況の機会を増やしたいようにも見える。だから、前線に早めにボールを入れる。この攻撃が成功すればバンザイ。失敗しても、カウンターで殴り返すから結果オーライみたいな。特にオタメンディは蹴っ飛ばしていた。
ウェストハムの攻撃は、丁寧に意図を持って行われる場面が目立った。マンチェスター・シティの守備は4-4-2。ただし、試合の展開としても、マンチェスター・シティが守備を定位置で行う場面は少なかった。よって、ウェストハムはボールを繋ぎながら、自分たちの準備された攻撃を仕掛けていく。特徴としては、ウイングに配置されたパイェとアントニオ、そしてインサイドハーフにあった。パイェは下がってボールを受ける場面が多い。ただし、単純に下がっては相手の標的となる。よって、パイェの下がったスペースに誰かが飛び出していく必要がある。普通は同じ列(バレンシアたアントニオ)や縦の列(サイドバック)の選手を動かすのだが、。ウェストハムはインサイドハーフを飛び出させる。
マンチェスター・シティのカウンターを嫌がって、サイドバックの攻撃参加を自重させたのかもしれないが、普段からこのような形でやっているのだろう。先制点のきっかけとなったクヤテの突撃も、こういった仕組みから生まれやすい現象といえる。また、アントニオは右サイドなんだけど、左サイドに現れる事が多い。逆サイドの選手をボールサイドにポジショニングさせることで、発生する数的有利を活かしたかったのだろう。その攻撃はなかなかの破壊力を見せていた。
準備された攻撃に対して、マンチェスター・シティは攻撃を跳ね返しながらカウンターのチャンスを狙っていく。幸運だったのは、運動量にまさるデルフが相手のインサイドハーフをなかなか自由にしなかったことと、デルフが前に出て行くので、運動量が懸念されるヤヤ・トゥーレが守備に重視したポジショニングをしていたことだろう。もしも、ヤヤ・トゥーレが前に出て行って帰ってこない場面が何度も見られていたら、もっと崩されていたに違いない。
序盤こそはデ・ブライネが中央にいたが、気がついたら左にデ・ブライネ、真ん中にシルバといつもの形に落ち着いていたマンチェスター・シティ。デルフがビルドアップにまったくかかわらないので、デミチェリスがボールに絡んだ時だけボールが前進していた。または、強引な外外(サイドバックからサイドハーフ)へのボール循環。デミチェリスは運ぶドリブルが上手い。ファーストタッチでボールを前におき、相手の足を止めることができていた。相棒のオタメンディも頑張って欲しい。
マンチェスター・シティの攻撃は、デ・ブライネの左サイドからの仕掛けにデルフが飛び出して絡んでいく形が多く見られた。デルフは前線のスペシャルな選手たちと相性が良いのかもしれない。でも、小さい。素晴らしい飛び出しからポスト直撃のシュートを放つなど、その攻撃性能はチームでも認められているのだろう。だからこそ、大将のヤヤ・トゥーレが後方で待ち構えていることを受け入れているというか。ただし、マンチェスター・シティは個人能力で時間とスペースを作ることが基本的に求められているので、攻撃が機能していかといえば、ときどきね!という感じ。スペシャルな選手に時間とスペースを与えられるようになれば、一気にレベルアップしそうだが。
55分にウェストハムに追加点。クイックリスタートのスローインで、オタメンディがバレンシアに敗れ去り、バレンシアはゴールに蹴るだけだった。失点後に画面にうつるオタメンディが物悲しかった。そして、背中でオタメンディをブロックしたバレンシアの勝ち。そしてすぐにスローインしたアントニオの判断が巧み。
失点したことで、ヤヤ・トゥーレが動き始める。やっぱり俺も攻撃参加しないとダメだなと。このときにデルフも突撃して行ったら悪い意味で面白かったんだけど、さすがにそれはなかった。ウェストハムはアントニオ→モーゼス。片道燃料というか、明らかに役割過多のアントニオはお役御免。モーゼスはボールサイドに流れるために逆サイドへの移動はあまりやってなかった。そういう意味で、バランスを重視した役割変更も兼ねての交代だったのかもしれない。
マンチェスター・シティは、ヘスス・ナバス→スターリング。デ・ブライネが右に、スターリングは左へ。デ・ブライネは中央から左サイドで良さを発揮するので、良い交代なのかどうかというと微妙。ただし、ヘスス・ナバスよりもスターリングのほうが個人でどうにかできるので、マンチェスター・シティらしい選手が揃ってきたと言える。
攻撃のギアを入れ、猛攻を仕掛けるが、得点は入らない。すると、徐々にウェストハムが落ち着いていく。ウェストハムはボールを蹴っ飛ばすことなく繋げるときは繋ぐ。インサイドハーフ突撃もやるときはやると、できるかぎり普段通りに振る舞った。その姿は非常に訓練されている印象を受ける。このままではきっついとマンチェスター・シティはデルフ→イヘアナチョでスクランブルアタックへ。守備なんて知らんかったんや状態へ。
この状態でオタメンディ。ようやくボールを前線につなぎ始める。昨今の守備事情を思い出すと、ボール保持者に近いエリアはマンツーマンのように対応するようになってきている。だからこそ、前線へのパスコースはゾーンに比べると開きやすくなる。ただし、その先も選手も捕まっている事が多いんだけれど、マンチェスター・シティの場合は捕まっていても別に構わないみたいな。そうした総攻撃に対して、ウェストハムはソングを中心に対抗。ボールを蹴っ飛ばすでもなく、繋ぐ姿勢をみせ、自分たちの時間を作る強さを見せる。
ただし、そういった強さが裏目にでる。インサイドハーフ突撃で中盤にできたスペース。そのスペースにカウンターを仕掛けるマンチェスター・シティ。ソングを外すと、あとはイヘアナチョが独走。アグエロとのワンツーでゴール前に突撃すると、こぼれ球がアグエロのもとにこぼれ、同点ゴールが決まる。このあたりのリスクの冒し方は非常に難しい。強いていうなら、攻撃はアウトオブプレーで終わりましょうということだろうか。
残り時間はあと少し。マンチェスター・シティはシルバ→フェルナンドで守備にテコ入れ。やっぱり怖いウェストハム。ウェストハムもイェラビッチを入れて攻撃に出る。同点に追いつかれたのに、攻撃にでられるのだからなかなか素敵だ。そんな最後まで攻め合いを見せた試合は引き分けに終わった。
■ひとりごと
ウェストハム強いなーという印象と、その仕組みを利用したトランジションで追いついたマンチェスター・シティも見事だった。マンチェスター・シティも変な色気を出さずに自分たちの持ち味を出そうとする姿も好感が持てた。その試合内容はチームにいくら使っているんでしたっけ?と質問されちゃいそうな感じだけれども。ただ、小さい。ちびっ子を売って大きい選手を取ってきたほうが良いと思う。そうしないかぎり、ヤヤ・トゥーレからの卒業は達成できそうにもない。
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