【役者が揃うリヴァプール】リヴァプール対スパーズ【3バックか、4バックか】

マッチレポ1617×プレミアリーグ

1月は散々だったリヴァプール。試合前の煽りPVでは、どんどん順位が下っていく様子を使われていた。1月はFAカップカップの勝利のみだったが、そのFAカップもすでに敗退。アフリカ・ネーションズカップでのごたごた、前線の怪我人など考慮すべき面があるのは事実だ。ただし、欧州での戦いがなかったことを考えれば、他のチームと比べても12.1月の過密日程でここまで苦しむのは来季の課題となっていきそうだ。ルーカスがセンターバックなどスクランブルな様相のあるディフェンスラインの一方で、前線はリヴァプールのベストメンバーが揃ってきている。反撃の2月となるかどうか。

引き分けという取りこぼしはあるが、許容範囲と言っていいだろう。1月も強さを見せつける試合で、上位陣を相手にしても、負けることはなかった。2月からはヨーロッパカップも始まる。過密日程は言うまでもないので、それまでにポイントを稼げたことは大きいだろう。怪我人がいないわけではないが、メンバーを見れば、何とかなるだろうという陣容になっている。シティ戦で3バックを破壊されて以降、3バックと4バックを使い分けるようになったようだ。

3バックか、4バックか

この試合のスパーズは4バックで試合に臨んだ。よって、図のシステムは例えになる。3バックでビルドアップをするチームが増えてきている。最初から3バックで行なうのか、アンカーを下ろす形で3バックに変化するのか、それとも片方のサイドバックだけを上げる形なのかと様々な種類はある。3バックのビルドアップの特徴は、配置的な優位性を得るために行われている。ならば、その配置的な優位性を消そうという試みが3トップで3バックにプレッシングするスタイルになる。リヴァプールのスタイルは、相手陣地からのプレッシングだ。3バックで臨めば、3トップでプレッシングをしてくる可能性が高い。その状況を避けるために、ポチェッティーノは4バックを採用したのだろう。

センターバックにダイアーいるし、セントラルハーフにはデンベレがいる。サイドバックに高い位置を取らせれば、コウチーニョたちはポジションを下げるだろう。フェルミーノを孤立させて、自陣でのボール支配を安定化させる。そして、前線のスペシャルな選手たちにボールを届ける設計になっていたのだろう。しかし、リヴァプールのプレッシングはスパーズのビルドアップを試合開始から終了まで破壊し続けた。

リヴァプールのプレッシング

4-3-3から4-4-2への変換は、インサイドハーフやトップ下の選手が前の列に移動して行われることが多い。スパーズを例に取ると、アリをケインの列に出して、4-4-2に変換していた。リヴァプールの場合は、4-4-2への変換という感じではない。どちらかというと、マンマーク気味に相手を捕まえに行く。特に目立っていたのがコウチーニョ、マネのプレッシングだ。サイドを担当する彼らは相手のセンターバックを捕まえるプレッシングを何度も行っていた。代わりに空いてしまうサイドにはインサイドハーフ、サイドバックの選手が移動することで、どうにかしていた。

連動でどうにかするという部分も確かにあったのだけど、どちらかというと、リヴァプールのプレッシングのスピードに、スパーズはたじたじとなっていた。相手陣地からのプレッシングを得意としていた時代のバルセロナのプレッシングの特徴もスピードだった。多少の連動性のなさがあったとしても、相手から思考の時間を奪うようなスピードで相手に迫ることで、冷静なボール前進をさせない。リヴァプールの前線はスピードあふれる繰り返されるプレッシングでスパーズのビルドアップをぼこぼこにした。

リヴァプールのビルドアップ

相手陣地からのプレッシングが得意なのは、スパーズも同じだ。アリを前に出して、前線から果敢なプレッシングを行なう。リヴァプールのポジショニングの特徴は、前線の3枚とインサイドハーフにある。フェルミーノがゼロトップのような動きをして、コウチーニョとマネが前線に飛び出していく。また、コウチーニョとマネは中央に移動する機会が多いので、インサイドハーフが代わりにサイドに流れる。相手のリアクションは、インサイドハーフについていくか否か。ついていかなければ、インサイドハーフにボールを預ける。インサイドハーフについていけな、中央に移動したマネたちにボールを預けられる仕組みになっている。ユベントスの3-1-4-2時代のインサイドハーフの動きにほんの少しだけ似ている。

ただし、リヴァプールも細かく繋いでいくというよりは、ミニョレにボールを下げて蹴っ飛ばす場面が多く見られた。狙いは左サイドバックのデイビス。マネなら競り勝てると考えていた可能性は高い。空中戦に対して、リヴァプールはインサイドハーフとサイドバックがセカンドボール回収隊になるように設計されていたこともあって、背の高くない前線の選手をうまくサポートできていた。

リヴァプールのゴールは、空中戦のトランジションからコウチーニョ&フェルミーノの空けたスペースにマネが飛び出す形と、前線のプレッシングで相手からボールを奪う形で生まれている。そういう意味では、狙い通りの形がゴールまで結びついたと言えるだろう。

スパーズの変化

25分過ぎから、スパーズはシステムを4-3-1-2に変更する。ソン・フンミンを前に出したというのが明確な変化だろう。ソン・フンミンはオフ・ザ・ボールの動きで決定機を作るなど、前に移動した意味をもたらしていた。この変化の大きな意味は、エリクセンをインサイドハーフのようにすることで、相手のインサイドハーフに守備の基準点を用意したことだろう。ビルドアップ隊の枚数を増やしたと言ってもいい。ただし、がんがん前からプレッシングをかけ、後ろから人がわいてくるリヴァプールのプレッシングにとって、あまり意味をなさなかった。

4バックにすることで、ケイン、エリクセン、ソン・フンミン、アリを同時起用できるスパーズ。この4人起用の弱点はサイドハーフが守備に下がるか問題にある。ソン・フンミンを前に出したのは彼の攻撃性能を活かすためであり、守備でのポジショニングの悪さをごまかすためでもあった。スパーズにとって厄介だったのは、ダイナゴルランなど幅広い動きをするマネを止めるのがデイビスになってしまったことだろう。さらに、その前にいたのがソン・フンミンで守備に帰ってこないとなると、よりどうしようもなくなる。それならば、デンベレがサポートしやすくした方がいいというのも悪くはない手だが、スパーズの守備の役割が曖昧になってしまった策にもなってしまった。

ポチェッティーノの策がはまらなかったスパーズ。そんな要素もあって、2点をいれたリヴァプールは撤退守備の雰囲気を感じさせながらも、ボールポゼッションや奪ってからのカウンターと多彩な手を見せるようになっていく。ワイナルドゥムとララーナのインサイドハーフコンビが一番ハマるのだろう。前線の選手のポジショニングに合わせて行動できる2人はかなり優秀だと思う。そして、それを支えるヘンダーソンは、いつのまにか世界屈指のアンカーになっている。そして、試合はそのままに終了。ミニョレで大丈夫か!という不安のある試合だったかもしれないが、ミニョレを焦らせるような場面すら数えるくらいしかなかった試合となった。

3バックか、4バックか。再び

相手のプレッシングの枚数やプレッシング開始位置に応じて、ビルドアップ隊はどのように振る舞うべきか決定される。3バックへの変化でも述べたように、アンカー落としやサイドバックの片方残しという方法もある。これらの方法のメリットは、試合中に3バックと4バックを行ったり来たりすることができることだろう。つまり、相手の状況に応じて、後方の枚数を変化させられることは大きい。だからといって、ミシャ式のように3バックから4バックへ変化することも手かもしれない。ちょっと手間がかかるけれど。

スパーズは3バックも4バックも使いこなすことができる。しかし、ポジショニングの変化というよりは、選手交代や最初の準備があくまで優先されるケースが多い。例えば、この試合だったら、選手交代なしで急に3バックになる変化ができるかどうか。リヴァプールのプレッシングを狂わせるためにはそれだけの準備が必要となってくるだろう。また、チャンピオンズ・リーグのベスト8以上のチームは、平気でビルドアップのスタイルをハーフタイムや選手交代なしで行えるケースが多い。または、困ったときのロングボールで状況を打破できるだろう。

そういう意味では、リヴァプールの優位性がもっとも低そうなディフェンスラインのプレー機会が増えるようなサッカーをすべきだったかもしれない。ただし、ルーカス・レイヴァは本職のセンターバックのようなプレーを見せていたけれど。リヴァプールのプレッシングと正面衝突して倒せば、確かに大きい。しかし、相手の強いところを避け、弱いところを徹底的につくようなサッカーでも良かったのかなと思わせるようなスパーズの試合となってしまった。

ひとりごと

いろいろと避けたつもりが、リヴァプールにとって都合のいい戦い方をしてしまったようなスパーズ。欧州での戦いを上手く消化し、リハビリにできるかどうか。FAカップも勝ち残っているので、超過密日程をどのようにこなしていくかが鍵となるだろう。

リーグ戦しか残っていないリヴァプール。チェルシー以外が団子レースになっているプレミアリーグのチャンピオンズ・リーグ圏争い。カップ戦、欧州での戦いがないリヴァプールが有利な立場と言える。久々の勝利を得て、団子レースを制することができるか。それともチェルシーまで届くか。有利な立場をうまく消化できずに、落ちていくのか。クロップの戦術は非常に疲れがたまる印象が強いので、終盤戦が鍵となってきそうだ。

コメント

  1. りお より:

    はじめまして、いつも楽しく読ませていただいてます。
    アンカーのヘンダーソンですが、どういった部分を見て世界屈指のアンカーになったと思ったのでしょうか?

    • らいかーると より:

      攻守におけるポジショニングとボールを持ったときの判断!!!!!!!!!!!

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