2019.10.2 チャンピオンズリーググループE 第2節 リヴァプール対ザルツブルグの雑感とプレビュー

マッチレポ1920

さて、明日の早朝に行われる生死をかけたまさに決闘となるザルツブルグ対リヴァプールの予習に前回の対戦を振り返る、なんて動機はあまりない。年内はリヴァプールの強さの秘訣とストーミングについての考察を続けていくつもりだ(・∀・)なお、明日のザルツブルグで行われる試合でザルツブルグがリヴァプールに勝てば、リヴァプールがチャンピオンズリーグから脱落するかもしれない、らしい。

-- せっかくなので、プレビューも兼ねましょう。というわけで、最初にこの試合の流れを振り返ってください。

この試合は「配置」が大きな意味を持つ試合となりました。最初はリヴァプールが[4-3-3]。ザルツブルグが[4-4-2]。リヴァプールがボールを保持する展開が多かったので、[4-3-3対4-4-2]の典型的な試合がピッチで行われていました。

-- 典型的な試合、について詳しく振り返ってください。

システム噛み合せ論で言うと、ファビーニョが浮きますよね。ファビーニョに対して誰を守備の基準点とするかをザルツブルグは決定する必要があります。1列目のツートップが縦関係になる形も見られましたが、基本的にはポジショニングで消す!という作戦が採用されていたような気がします。よって、ザルツブルグはサイドハーフが中央に絞る[4-4-2中央圧縮]に見えました。

しかし、リヴァプールはボールを保持することがうまくなってきていますし、中央圧縮で相手に与えるサイドエリアには今が旬のサイドバックコンビが控えています。この噛み合わせはちょっとザルツブルグからすると悪手となりました。中央のファビーニョにボールが入る→中央圧縮がさらに強くなる→サイドに展開される→ボールサイドに移動する→サイドチェンジされる→移動距離の増大みたいな形でザルツブルグは振り回される形となりました。

失点場面が象徴的でした。サイドチェンジからのサイドバックからウイングへのシンプルな縦縦循環と、サイドハーフの縦斬りに対するロバートソンの中への切込みドリブルでザルツブルグの守備はフルボッコにされていきました。もちろん、リヴァプールのボール保持の強さを称えるべきですが、ザルツブルグの[4-4-2中央圧縮]の失敗が目立った前半戦だったと思います。

-- 試合の流れを変えたのはザルツブルグの配置変更だったと思います。

そうですね。30分くらいだったと思いますが、南野がメモを持っていました。ザルツブルグが南野をトップ下とする[4-3-1-2]に変更します。アンカーシステムへのプレッシングの噛み合わせと考えると、最近は多く見られる形となってきました。どうしてもマインツ時代のトゥヘルを思い出してしまいますが。

-- [4-3-1-2]でもリヴァプールのサイドバックは空くと思いますが。

ザルツブルグにとって厄介だったのがファビーニョを経由するボール循環でした。ファビーニョが配置的に優位な位置にいてもボールが入らなければ、そこまで気にする必要はありません。しかし、ファビーニョにボールが入れば、スルーするわけにはいかない。なので、、ファビーニョにボールが入らないようにすれば、リヴァプールのボール循環のルートはセンターバックからサイドバックへ導かれます。

3センターでサイドバックへのプレッシングが間に合うか問題ですが、中央を経由するボール循環でなければ、次にサイドバックにボールが出るのがいつかを予測することは簡単なので、意外と間に合います。こうして、リヴァプールのボール保持に対して、守備の基準点をはっきりさせたザルツブルグが反撃の狼煙を上げる形となりました。

-- 後半に変貌した!という印象ですが、実際には前半の途中から変貌したと。

そうですね。前半のうちに一点を返すことができたことも非常に大きかったと思います。ヘンダーソンが珍しく軽率なミスでボールを奪われ、ショートカウンター炸裂でしたから。

リヴァプールサイドからすれば、それでもボールを保持して時間をつぶすことはできたと思うのですが、ザルツブルグのハイプレスの前にお付き合いをする形となりました。最近のリヴァプールはペースを落とすことが多いのですが、それはこの試合の反省からきているのかもしれません。

-- トップ下に入った南野についてはどうでしたか?

南野について語る前に、ザルツブルグがストーミングと言われる所以を少し。前半のザルツブルグは前からプレッシングを行いました。ほとんどボールを奪えまっせんでしたが。で、自陣でボールを回復すると、ためらわずに裏にボールを蹴っ飛ばしていました。ファン・ヒチャンとかめっちゃ走りまくるのですが、ファン・ダイクたちに勝てるか!というと、まあ勝てません。

しかし、南野が登場すると状況が変わります。ヘンク戦でも見られたのですが、ツートップにトップ下が加わると、裏を狙う選手、セカンドボールを狙う選手、ライン間でボールを受けようとする選手と役割を入れ替えることが可能となります。特にファン・ヒチャンは大外レーンまで移動することも増えるので、そうなると、相手の守備の基準点にも影響を与えるようになります。センターバックが外についていけば、二列目から南野が飛び出して来ますから。

2試合しか見てませんが、ザルツブルグのロングボールによる速攻は、ツートップとトップ下がいるほうが機能する印象です。本当は4-2-2-2でやりたいのでしょうが、その場合はトランジションで大外レーンにボールを運ばれたときのリスクが半端でないことを証明した前半戦だったので。

-- 同点に追いつきましたが、最後にサラーが決めました。リヴァプールの対抗についてどう感じましたか?

個人的にラファエル・ベニテス采配と呼んでいる采配があります。レアル・マドリー時代のラファエル・ベニテスが終盤に行っていた交代策なのですが、サイドハーフに守備をする選手を入れる。この試合ではオリギ、ミルナーが登場することで、リヴァプールの配置は[4-2-3-1]へと変化しました。フィルミーノとサラーをツートップと表現しても違和感はありません。どっちでも良いと思います。さっさと勝ち越しゴールを決めたことは幸運だったと思いますが、どのみち時間の問題になった変更だったのではないかと。

この配置の変化の興味深い点は、守備の基準点をファビーニョに揃えたザルツブルグの変更に対しても牽制しているところにあります。確か昨年のマンチェスター・シティ戦でも行ったような。守備の基準点を乱されたことや時間の経過による疲労からリヴァプールは徐々に試合をボール保持によってコントロールできるようになります。なので、非常に良い配置の変更でした。

-- 明日の試合の注目点についてお願いします。

リヴァプールが[4-2-3-1]か[4-3-3]を選択するかが興味深いです。ただし、[4-3-3]のリヴァプールでも、選手交代なしで[4-2-3-1]に変化することはできるとは思います。インサイドハーフの動きを見ていると、マネサイドはアンカーのように振る舞い、サラーサイドはラキティッチのように振る舞うことが多いですから。ただ、ヘンダーソンを左サイドハーフにすることに違和感はあるでしょうし、マネを右サイドに動かすというのも配置を行き来することを考えると億劫といいますか。リヴァプールが進化するとすれば、このあたりの変化を相手を見てシームレスに行うことなのかなとは感じました。ただ、そのような流れを最近は感じてはいないようで、ララーナのトップ下をやることもあるので、ちょっとなんとも言えません。

-- 試合のプレビューが終わったところで、リヴァプールの強さの秘訣とストーミングについてお願いします。

チャンピオンズリーグのリヴァプールが本当の姿だとしたほうがいいのかな?とは思いました。ナポリ戦もそうでしたが、勝負所の集中力の違い、スピードの緩急がえぐい気がします。プレミアリーグではちょっとおとなしいというか。

ザルツブルクの配置に対して、固定的な配置をとらなかったこともリヴァプールのボール保持の特徴でした。インサイドハーフ落としをやったりやらなかったり、大外レーンにいる選手を変更したりと、よく言えば変幻自在です。だからといって、チームの配置バランスが壊れることないので、うまく周りを見てコンセプトどおりにプレーできているのだと思います。

ただ、その変幻自在感が時には良い方にでないのが、後半の展開なのかなと。それでも論理的に勝ち切るのだからえぐいですけどね。ただ、オリギをいれたほうが守備的になる、というのはちょっとおもしろい現象だとは思います。でも、このときに相手がボールを保持してくるチームだと、1列目の守備が怪しいのですが、ザルツブルグなら蹴っ飛ばしてくれるから見えにくくなるという計算はあったでしょうし。

ストーミングについては、ザルツブルグがやっぱりわかりやすいです。ボール保持者への絶え間ないプレッシング、ボールを奪ったら相手陣地へ一直線、4-2-2-2でボールサイドに密集、ボールもすぐに奪い返したい、バックパスはだめだ!みたいな。

一方で守備の基準点が定まっていないプレッシングは前半にフルボッコにされたように、配置が超重要な気がします。この試合でも配置を整えてから一気に流れを掴みましたし。また、裏に蹴るボールに対しても、ムバッペみたいな選手がいれば話は別ですが、そうでない場合は、裏への飛び出しに対するコンビネーションもなければ、ちょっと厳しいかなと。というわけで、次は他のストーミングのチームを見てみようと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました