UEFAチャンピオンズリーグ 2012-13 決勝 バイエルン対ドルトムント

 チャンピオンズリーグファイナルである。

 バイエルンのスタメンは、順当である。今季の躍進の鍵でもあったクロースが怪我のため離脱。そのまま調子のいいロッベンがスタメンに定着したようである。国内ではドルトムントに、CLでは何度も準優勝で切なくやるせない思いを抱え続けてきたバイエルン。負けたことが財産になり、這い上がって手に入れた献身性で優勝を狙う。

 ドルトムントのスタメンは、怪我のためゲッツェが離脱。代役はグロスクロイツが務める。国内で栄華を極めたドルトムントだが、欧州の舞台では結果を残すことができていない。内弁慶ではないことを証明するためには、欧州で結果を残すしか無い。そして、この位置まで上り詰めた。結果の証明のゴールまで後少しである。

■4-4-2の攻撃的な守備

 前半戦はドルトムントが自分たちのプラン通りに試合を展開していく流れとなった。ドルトムントは高い位置から4-4-2のゾーンプレッシングを仕掛けていくことで、バイエルンのビルドアップを阻害することに成功した。ボールを持たされたバイエルンは様々な手法でドルトムントの守備に対抗していくが、再現性をもった攻略法をなかなか見つけることができなかった。

 ドルトムントは、ロイス、レバンドフスキのFWコンビがバイエルンのCBに、ベンダー、ギュンドアンのMFコンビがバイエルンのシュバインシュタイガー、ハビ・マルティネスを執拗にマークすることによって、バイエルンの攻撃を前進させないことに成功した。

 序盤からシュバインシュタイガーがCBの間に落ちて、バイエルンのCBが執拗なプレスをくらわないようにポジショニングしていた。しかしシュバインシュタイガーのポジショニングに連動して、SBが高いポジショニングを取るようなリスクをバイエルンは許容しなかった。よって、シュバインシュタイガーの行動は、ボールを奪われるリスクを軽減することには成功したが、効果的にボールを運べるようになったかというとそんなことはなかった。

 システムのかみ合わせで見ると、ミュラーがフリーである。なので、バイエルンはミュラーにボールをつけたかったのだが、前述のようにDHを経由できなかったバイエルンの攻撃なので、前線にボールを届けるにはロングボールしかなかった。また、フリーになりそうなミュラーに対して、ドルトムントはFWからDFをコンパクトに保つことによるスペース圧縮で対応していた。

 正面衝突からのビルドアップは得策でないと考えたバイエルンは、ダンテとボアテングが交代交代でボールを蹴るけれど、マンジュキッチがなかなか競り勝てずロングボール争いでも後手を踏む形となった。ハビ・マルティネスをセカンドボール回収隊として前線に派遣するにはシュバインシュタイガーのポジショニングをどこにしたらいいの?後方から中盤に戻したら、CBがプレスを食らうよという問題もあったので、非常にめんどくさい状況のバイエルンであった。

 なので、まあロングボール攻撃が少ない可能性だとしても、中盤でボールを失うよりはましだし、セカンドボールを拾われても後方に枚数が揃っていれば、どうにでもなるだろうと考えたバイエルン。というわけで、前半はドルトムントのペースで過ごすことを決める。其の中でも、色々な攻撃を仕掛けることで、今日の情報をピッチから集める様子。

 という状況だったので、ドルトムントが決定機を掴んでいく。セットプレー、ショートカウンター、ロングカウンターと多様な攻撃の中心は、レバンドフスキとロイス。特に、ロイスの仕掛けはファウルで止めるしか無いというバイエルンの守備陣であった。しかし、ノイアーがスーパーなセーブでチームを支え続ける。

 時間がたてば、ドルトムントの足も止まるよということで、バイエルンは後方の選手が徐々に時間を得るようになる。ドルトムントのプレスが届くまでに時間がかかるようになったので。また、バイエルンのこれしかないというロングボールの前に、ドルトムントのDF陣がDFラインを下げ始める。そうなると、ドルトムントのMFも下がる。

 よって、低い位置にいるバイエルンのSBが徐々に自由になる時間を得ていく。バイエルンのSBから縦パスが徐々に入るようになり、バイエルンも決定機やセットプレーを得るようになっていく。さらに、DFラインの裏へのロングボールによって、ロッベンがヴァイデンフェラーと一対一の場面を作るなど、攻略の雰囲気を感じさせながら、前半は終了した。

■クロースの不在

 今季のバイエルンの特徴として、クロースがスタメンに定着し、ロッベンがベンチへというものがあった。トップ下のクロースはシュバインシュタイガー、ハビ・マルティネスと自在にポジショニングを変化させることで、ボールを前進させる重要な役割をしていた。

 この試合ではミュラーがトップ下である。しかし、クロースのような動きはできない。もしもこの試合にクロースが出場していれば、ボールを保持している時のバイエルンの精度はより上がったに違いない。ただし、トラジッション対決になれば、ドルトムントも力を発揮した可能性が高いので、何ともいえないところだが、

■ロッベリー

 最小限のリスクで前半をしのいだバイエルン。後半はドルトムントが自陣に撤退する時間が長くなった。ロングボール対策もあるだろうし、体力的な問題もあるのだろう。よって、バイエルンはダンテ、ボアテングが自由に振る舞えるようになっていく。

 ただし、ドルトムントはロイスを中心とするロングカウンターも得意としているので、自陣に撤退したからゲームオーバーとはならない。守備を固めるときのドルトムントは4-4-1-1でロイスがシュバインシュタイガー周辺を守備するのが特徴となっている。ときどきサボっていたのか、攻撃で前に残る場面があったけれども。

 前半のボールが前進しない問題が解決されたバイエルン。ドルトムントのゴールに迫っていく。ラーム、アラバも高いポジショニングを取るようになり、攻撃に迫力が出て行く。そして、ミュラーとロッベンがポジションを入れ替える場面やマンジュキッチがサイドに流れたりと、お得意の流動的なアタックが出るようになる。

 ドルトムントはカウンターからチャンスを掴みたいが、レバンドフスキとロイスが時間を稼げない場面が多く、攻撃の機会を摘み取られる場面がしばしば。ドルトムントのきついところはベンチを眺めても流れを替えられそうな選手がいない。ヌリ・サヒンはできそうだけど、ベンダーとギュンドアンはなかなか交代できない。

 というわけで、バイエルンのチャンスが連続する。これを止めまくるはヴァイデンフェラー。ミドルも一対一も防ぎまくるのは異常。しかし、ノイアーからパスを速攻に繋げた懐かしのロッベリーコンビに左サイドを破壊され、最後はマンジュキッチが押し込んでバイエルンが先制に成功する。

 しかし、ドルトムントもPKをギュンドアンが決めて同点に追いつく。このころからロイスはほぼ試合から消えていた。その後の決定機もヴァイデンフェラーがとにかく止めるが、最後はこの試合を象徴するようなロングボール。ピスチェクがリベリに競り負け、ロッベンが快速でボールを受けると、ヴァイデンフェラーとの一対一を制して、勝ち越しに成功する。

 ドルトムントは2枚を同時に交代するが、時すでに遅し。あの流れでは打てる采配も特になかった。ゲッツェがいればと思っただろうけど、致し方ないところだろう。

独り言

 というわけで、ドイツ対決はバイエルン・ミュンヘンの勝利で終わりました。ドルトムントは前半に訪れた攻撃機会を何とかものにしたかったのだけれど、そこで立ちはだかったノイアーが巧み。そして、チーム全体で無理をしないと判断した前半戦の過ごし方も良かったかと。

 ここにグアルディオラが加わって、前半のドルトムントの守備を破壊できるようになれば、鬼に金棒である。どのようになるか来季が楽しみである。放送があるのかわからんけどね。

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