【ほころびを見逃さない絶対王者】アヤックス対レアル・マドリー

さて、今回はチャンピオンズ・リーグのアヤックス対レアル・マドリー。

かつては育成大国と呼ばれていたオランダ。しかし、近年は大きな大会で結果を残していない。しかし、着々と未来を担う若手が育ってきているのだ!ということを証明するかのように、アヤックスが復活してきている。デ・ヨングはバルセロナへの移籍が決定。デ・リフトの移籍も時間の問題だろう。

対するは、絶対王者ことレアル・マドリー。最強のモチベーションマシーンと呼ばれたクリスチャーノ・ロナウドを失い、さらに監督の更迭と、迷走感の漂うシーズンとなったが、チャンピオンズ・リーグはしっかりと生き残っている。まさに、レアル・マドリーらしいエピソードだ。

最初にスタメンはこちら

ヴァランとマルセロがいないレアル・マドリーに対して、アヤックスは何もわからない。わかっていることは、デ・ヨングとデ・リフトがスタメンにいてよかった程度だ。ただし、以前に見たときにアヤックスは[ 4-3-3 ]だったような記憶がある。はてさてと試合を眺めていると、その理由はあっさりとわかるようになった。

アヤックスのマンマーク戦術

キック・オフからボールを繋ぐ気満々のレアル・マドリー。オランダでの試合だったが、その姿勢にゆらぎはないようだった。さすがの絶対王者。レアル・マドリーは絶対に繋いでくるだろうと、アヤックスは予想していたのかもしれない。そんなレアル・マドリーに対して、アヤックスは、クルトワまでプレッシングに行くような果敢な姿勢を見せた。

アヤックスの果敢なプレッシングの成功不成功を決めるのは、レアル・マドリーのビルドアップ隊のキーマンを抑えられるかどうかにかかっている。レアル・マドリーのビルドアップ隊のキーマンは、モドリッチとクロースだ。このコンビは個人で相手をはがせるし、移動によって、相手から自由にある術を持つ世界屈指のめんどくさいコンビだ。

モドリッチとクロースに対するアヤックスの答えは、レアル・マドリーの3センターに3センターをマンマークでぶつけるだった。モドリッチとクロースの移動に対して、マンマークでその良さを消す作戦とも言えるだろう。

さらに、タディッチの振る舞いが興味深かった。セルヒオ・ラモスにはプレッシングを早々にかける。セルヒオ・ラモスがナチョにパスをしたら、セルヒオ・ラモスへのパスラインを消しながらナチョにプレッシングをかける。ボールを持たされたナチョ。しかし、頼みのモドリッチはデ・ヨングとばちばちにやりあっている構図となっていた。

アヤックスの偏った攻撃の理由

ナチョがいるサイドからの攻撃が目立つようになっていくレアル・マドリー。アヤックスの策略に乗った格好となった。ナチョとセルヒオ・ラモスのビルドアップ能力を計算していた節もアヤックスにはあったと思うけれど、本当の狙いは別にあった。その狙いとは、ナチョサイドでボールを奪って、ナチョサイドから攻撃を仕掛ける、というものだった。

ナチョの選択肢がないわけで、レアル・マドリーはこのエリアでボールを失う場面が多かった。そして、アヤックスはこのエリアに人を集めてナチョを狙い撃ちにした。特にワントップのタディッチはセルヒオ・ラモスがいる方角にはほとんど近寄らずに、ずっとナチョに寄り添う形で試合を進めていった。そして、逆サイドのハキムもこのエリアに登場し、代わりにファンデベーグがファーサイドで待つ!というバランス感覚を披露していた。

レアル・マドリーのプレッシングの枚数が足りない問題、というよりは、枚数が安定しない問題はこの試合でも散見されていた。そのエリアにさらに人数を集めて突撃のアヤックスの作戦にたじたじとなりつつも、最後はセルヒオ・ラモスとクルトワで防いでいくお家芸を見せていたレアル・マドリー。負け試合でも、結果は負けないレアル・マドリーを支えているキーパーとディフェンダーは本当にえぐい。

ただし、前半を振り返ると、ボールを奪ってからのカウンター、自陣からのビルドアップ、自陣からの速攻(タディッチが的になれるとは知らなかった)、レアル・マドリーのビルドアップに対する守備と準備万端感を見せるアヤックスだった。よって、アヤックスのペースで試合は進んでいった。

しかし、ちょっとしたところに綻びを見つけることができるのもレアル・マドリーの強さなんだろう。

アヤックスの綻び

繰り返しになるが、前半は基本的にアヤックスのペースだった。しかし、アヤックスのプレッシングの配置に妙な変化が訪れ始める。きっかけは10分にセルヒオ・ラモスが急に行ったロングボールと、クロースによる運ぶドリブル、というよりは突破のドリブルからのヴィニシウス強襲の場面くらいからであった。

クロースの執拗な列を下りる動きに対して、シェーネはついていくか迷うようになる。なお、隣のデ・ヨングはモドリッチにどこまでもついていく場面が多かった。シェーネに言い訳を許すとすれば、ハキムがクロースの対応を引き受けた場面があったことだろう。マンマークといえど、あそこまで下りていくクロースについていくのはちょっときついみたいな。

この受け渡しだけだったら特に問題はないのだが、ハキムはなぜかセルヒオ・ラモスにもプレッシングをかけるようになった。たぶん、距離が近いからだろう。となると、クロースが空くようになる。このハキムの判断がチームにとっていい場面もあれば、ヴィニシウスの強襲に繋がる場面もあった。

ベイルよりもドリブルで仕掛けるヴィニシウスみたいな場面が多かったことは、こんなアヤックスのプレッシングの役割分担と配置にあった。ただし、レアル・マドリーの仕組みに、左で作って右でという意識もあったからかもしれないけれど。

トランジション合戦の結末

後半になると、最初に試合の主導権を握ったのはレアル・マドリーだった。前半に見つけたアヤックスのプレッシングの綻びをハーフタイムに共有することに成功。つまり、セルヒオ・ラモス、クロース、レギオンの誰かが空くという仕組みを利用して、レアル・マドリーはボールを保持することに成功したからだ。

特にレギオン、クロースがオープンな状態になることが多かった。レギオンは果敢な運ぶドリブルで、クロースは得意のサイドチェンジでピッチを広く使うことで、相手を動かそうと画策した。なお、スペースを求めてモドリッチまで左サイドに移動してくることもあった。

そんな左サイドからの仕掛けでレアル・マドリーが先制する。レギオンのパスに抜け出したヴィニシウスが個人技でエリア内に持ち込んで、最後はベンゼマが決める。ヴィニシウスは試合に出場し続ければ、怪物になりそうな予感。守備をサボらないところが好感を持てる。

さて、リードを許してしまったアヤックスは、最悪でも同点に追いつきたい。しかし、狙っていた左サイドからの攻撃はベイル→ルーカス・バスケスで颯爽と蓋をされてしまった。

さらに、めんどくさかったのがベンゼマのプレッシングだった。ベンゼマは走る走る。オナナまで走る。アヤックスのキーパーであるオナナはロングキックはできるけれど、ビルドアップは怪しい雰囲気だった。よって、ベンゼマのプレッシングでアヤックスにボールを蹴らせることができれば、ベンゼマのプレッシングは無駄にならない。ゆえに走るベンゼマ。こうして、アヤックスは計算されたボール保持からの攻撃をなかなか行うことができなかった。

よって、試合は殴り合いとなる。得点が欲しいアヤックス。それを臨んだかのようなレアル・マドリー。アヤックスの面々は個々のスキルも高いので、決定機に何度もたどり着きそうな雰囲気のある攻撃をすることはできていた。しかし、残念そこはセルヒオ・ラモス。周りに時間とスペースを与えられそうなデ・ヨングはいつまでもモドリッチとタイマン。

そんな試合を動かしたのはカウンター。アヤックスはレアル・マドリーのビルドアップを奪い取って、カウンターで同点ゴールを決める。レアル・マドリーの陣地でボールを奪ってからのカウンターだったので、ショートカウンターということにしておく。きっかけはルーカス・バスケス。そのルーカス・バスケスは失敗を取り返そうと躍起になっていった。

そして、試合を決めたのもカウンター。レアル・マドリーは自陣でボールを奪ってからのサイドチェンジ。よって、ロングカウンターになるのかどうか。カルバハルがファーサイドにクロスを通して、アセンシオが押し込んで勝ち越し。

オナナがクロスに触れていればという場面だった。オナナにとっては、辛い日になったに違いない。最後にアヤックスの攻撃にさらされるが、クルトワとカバーリングのセルヒオ・ラモスでしのぎきり、レアル・マドリーが勝利した。

独り言

相手に希望を与えるけど、次に試合をしたらまた勝てないの象徴でもあるレアル・マドリー。今日もそんな試合をやってのけた。同点に追いつかれたときは、引き分けが妥当かなという試合内容だったかもしれないが、勝ちきってしまうところはえぐい。もはや、説明がつくところではない。ただ、前半にアヤックスの綻びを見つけて、後半に最大化したところは流石だった。全くの非論理的ではないというところに、強さの秘訣はありそうだ。

デ・ヨングとモドリッチのタイマンはなかなか凄まじかった。両者ともに試合から消えている感があったけれど、見ごたえのある攻防だった。

セカンドレグはカバーリングのセルヒオ・ラモスがいないので、アヤックスはチャンスかも知れない。でも。ヴァランとマルセロが帰ってきたら万事休す。

コメント

  1. ladder より:

    2週間で天国から地獄へ。
    直前の試合で宿敵に丸裸にされた弱点をアヤックスのようなクラブが見逃してくれるはずもなく。
    2ndレグを軽視したラモスは正に奢る平家だった。

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