【育成】サッカー選手を化けさせる3つの条件【必要か十分か】
2016/07/13
化けるという言葉がある。化けるとは、予想をはるかに超えるレベルアップをする、という定義にしておく。最近ではFC東京の武藤が化けた、と表現しても問題ない選手になるだろう。大学サッカーにいた選手がJ1のスタメンに定着し、日本代表までたった一年で上り詰めたストーリーを耳にすることはあまりないからだ。
予想をはるかに越えるレベルアップは、だれだって成し遂げたい。ここで考えたいことは、化けるため、もっと言えば意図的に化けるためには何が必要なのかを一緒に考えていく。一緒と言っても吾輩ががたがたキーボードを打つだけなので、できればコメント欄に様々な人が多く登場してもらえれば、本当にありがたい。現状で、化けるための条件が3つある。身体の変化、メンタルの変化、脳みその変化だ。
■身体の変化
身体の変化と言えば、年齢につれて大きくなる身体を想像することができる。逆に身体が大きくならなかったことで、フェードアウトしていく選手を多く見かけることができる。栄養摂取などで手を打つことができるが、意図的に身体を大きくする、そして、飛躍的なレベルアップをする、というのは非現実的と言っていいだろう。もしも、フィジカルの弱い選手のフィジカルを意図的にかなり強くする方法が発明されれば、世界は大騒ぎになるに違いない。何事にも限界がある。
では、化けるための身体の変化とはなにか。その答えは、身体を自由自在に動かす能力を身につけることになる。グローバル化に伴い、世界中のトッププロの選手のプレーをすぐに見ることができる時代。フィジカルの専門家はそのプレーを見て考えた。彼らと我々とでは身体の使い方が違うと。我々の身体の使い方は間違っているのではないかと。では、世界のトップで活躍しているような選手の身体の使い方を我々も身につけるためにはどうしたらいいだろうか?というアプローチである。
ライフキネティック理論とジンガ、野洲ドリがそれらを鍛えるトレーニングとされている。前者は2つ以上の動作を同時に行うことで、ボールタッチ技術と脳みそを鍛えること。後者は日常生活であまり出番のない足に日常生活ではしない動きを強いることで、コーディネーションを鍛える。そして、足を自由自在に動かすことを目的としている。あくまで実戦で使うためのトレーニングではない。それらは世界の文脈から外れてしまうので、日本では通用するかも知れないが、世界ではまるで通用しない。
これらのトレーニングは反復練習を必要とする。それはドリルトレーニングであり、相手を必要としないトレーニングだ。判断のないトレーニングは悪だ派閥も日本では出てきているが、身体を自由自在に動かすためのトレーニング、それは人間の最大の武器である習慣を変更しようとするトレーニングなので、長い長い時間がかかるものとされている。これらのトレーニングによって、化けた選手は非常に多い。ただし、新しい理論であるため、まだまだ壮大な実験中といったところだろうか。なお、意識の高い保護者によって幼稚園からジンガトレーニングなどを課されているケースも存在する。そうやって計画的に育てられた選手たちがどのようになっていくかは未来が教えてくれるだろう。繰り返しになるが、まだまだ博打中な取り組みである。
ちなみに某フットサル日本代表だった監督に、この練習を見せたところ、激怒されたのは言うまでもない。想定内の全否定。
■脳みその変化
ドリルトレーニングに対して、グローバルトレーニング、インテグラルトレーニングが存在する。トレーニングはサッカーに限りなく近い状況で行われる必要があるんだ、というのがグローバルトレーニングたちの根っこにある発想だ。これらのトレーニングは危険な罠としても知られている。サッカーに近い状況がトレーニングで繰り返されるので、トレーニングをした気になりがちなのだ。しっかりと身につけさせたい技術、能力、知識を設定しなければ、ミニゲームを延々と行っている、ただし、ミニゲームに比べると、サッカーの要素が薄い、トレーニングになってしまうという罠がある。
では、これらのトレーニングをしっかりと設定して行った場合、選手はサッカーの試合で使う技術が身につく一方で、他にもっと大切なことが身につく。それが繰り返される現象から学べる経験と知らなかった知識だ。経験を自分のものとすることができれば、次に同じような状況に出会った時の判断スピードと正確性は増していくだろう。また、知らなかったこと、知らなかった技術を身につけることで、新しい武器を手に入れることも有るだろう。そういった経験と新たな知識が化けるための条件だ、というお話ではない。それはあくまでグローバルトレーニングとインテグラルトレーニングによって、鍛えられるもの、身につくものであるべきというお話だ。
じゃ、なんやねんと。その答えはサッカーを理解することだ。経験や知識を習得していく上で、サッカーそのものを理解することである。サッカーそのものを理解すると何が起きるか。次にどのような事が起こるか高い精度で予測できる。また、自分たちがどのように動くべきかを正確に捉えることができる。サッカーはカオスなスポーツである。しかし、イタリア人指導者から言わせれば、50年以上も前から変わらないセオリーのほうが多い。サッカーがフラクタルであるならば、その普遍のセオリーは相似で目の前に現れる。では、そのセオリーを頭で理解していけば、どのような選手ができあがるか?というお話。間違いなく飛躍的なレベルアップが可能となる。いわゆる、ピッチ上の監督という表現にあるのかもしれない。
そのためのトレーニングはしっかりと設定されたグローバルトレーニングとインテグラルトレーニングだ。それらのトレーニングを通じて、自分の経験値を増やし、知らないことをセオリーとして身につけていくことで、サッカーを理解できるようになっていくだろう。もしも、サッカーを理解できるようになれば、サッカーをより楽しめるようになるので、必然的にレベルアップのスピードは増していく。あ、もちろん、ゾーン・ディフェンスを正しく理解でき、実行するのも知識となる。アナーキーな自由でなく、セオリーの有るなかでの自由を理解できるようになれば、ほったらかしでもレベルアップしていく。
■メンタルの変化
メンタルという言葉は好きでないので、より具体的な現象を提示していく。例えば、チーム内の序列の変化。エースの離脱で新しいエースになったでござる。チームの最上級学年になったでござるとか。それらによって、今までよりも向上心を持って取り組めるようになることで、様々な要因がからみ合って化けるに繋がるのだが、そもそも最初から向上心を持っていろよ、という話でもある。
エースの離脱や学年が変わるなどはなかなか自分から起こせるアクションではない。前者はエースの離脱を願う、という暗黒面に落ちる可能性もあるし、最上級生になるにはどうしても時間がかかる。
では、手っ取り早い方法はないのか、と考えると、出てきたのが自信である。自信を身につけた選手は一気に化ける。ブッフォンのデビュー戦、昨年の武藤のJ1での活躍からの代表定着。長友のシンデレラ・ストーリーも試合に出ることで自信を身につけたのだろう。
では、試合に出られれば、自信が身につくのだろうか。おそらく、結果が大切になってくる。もちろん、チームとしての結果も必要条件だが、個人として、自分の最大限の能力を発揮し、それが目に見える現象として現れたかどうか。誰か武藤と長友に話を聞いてきてください。往々にして、日本代表の試合を経験すると、化ける選手が多い気がしている。
育成年代でも答えは一緒。まずは試合に出ることが大事。化けるためには生きるか死ぬかの舞台で結果を残すことが一番。それが自分を信じることに繋がっていく。
■独り言
これらの要因は密接に絡み合っている。試合に出て結果を出すためにはサッカーを理解していなければならないだろうし、身体が自由自在に動かせたほうがいいだろう。大切なことは自分の子供がどのようなトレーニングを受けているか、またはチームがどのようなアプローチをしているかということだ。アナーキーな世界から生まれる天才は残念ながら日本からは生まれてこない。それは歴史が証明している。足元ばかり鍛えて頭を鍛えなかったから苦労している選手も多い。また、サッカーを理解しているけれど、フィジカルがついてこなかったことで脱落した選手も多々いるだろう。
つまり、選手によって必要とするアプローチは異なる。また、どの年代でどのアプローチを受けるべきかという答えも出ていない。というわけで、壮大な実験中である。なお、吾輩の経験則からいうと、身体による変化から成功体験をつみやすくなって化けたぽっちゃり系。サッカーを理解することによってフィジカルの差を埋めることに成功し、日本でもトップまでのびりつめたちびっ子、エースの離脱によって、芽生えた向上心から一気にゴボウ抜きを見せた選手などがたくさん存在します。
というわけで、みんなも化けられるように頑張ってください。