【左右のサイドハーフの守備タスクの違い】フランス対ベルギー【タスクチェンジの重要性について】

2018 FIFA World Cup

さて、今回は色々な策を仕掛けてくることで一躍有名になったベルギーの最後の試合を振り返っていく。ベルギーの策をフランスがどのように抑えたのか注目だ。

ボールを保持しているときとボールを保持していないとき

 

フランスは左サイドにマテュイディを使っていることもあって、4-3-3と解釈することもできる。ベルギーの場合は、4-3-3で対抗する。ブラジル戦で見せたようなデ・ブライネの1トップではなく、デ・ブライネが左、アザールが右、ルカクが中央に配置されていた。その他では、ムニエが出場停止だったので、シャドゥリが右サイドバック、アンカーにデンベレが起用されていた。

ベルギーが4バックと3バックをボール保持非保持で使い分けている理由は、配置的な優位性を得たいからだろう。しかし、フランスも準備は万端だったようで、4-3-3(4-3-2-1)で迎え撃った。両者のプレッシングで共通していたことは、相手のビルドアップ隊(主にディフェンスライン)の選手を華麗にスルーして、ミドルゾーンからのプレッシングを行っていたことだろう。その理由は、相手を自陣におびき出すことによって、カウンターに活路を見出したかったからに違いない。フランスはムバッペ、ベルギーは前線のトライアングルと、カウンターマイスターが揃っていることもその理由になりそうである。

可変システム(ボール保持非保持でシステムが変化すること)のデメリットは、システムを変更するときの間だろう。そのわずかな時間が一瞬の隙となり、相手にチャンスを与えてしまうことはしばしば起きている。ただし、この試合でそのようなことはあまり起きなかった。この試合で試合の内容に最も影響を与えた局面は、ベルギーのボール保持に対するフランスのプレッシングの形であった。

フランスの左右で異なるプレッシングの方法

ベルギーの可変式で面白かったのは、右サイドの横幅隊はサイドバックのシャドゥリ。左サイドの横幅隊はウイングのアザールであった。アザールがポジショニングしていたエリアにはインサイドハーフのフェライニが移動してくる。サイドからの質的優位をベルギーは狙ったのだろう。シャドゥリからのクロスをフェライニがあわせるだったり、左サイドからはアザールがカット・インを繰り返したりすることで、ボール保持攻撃を優位にしようと企んでいたのではないかと予想する。

で、この試合では妙にシャドゥリがフリーでボールを受ける場面が多かった。シャドゥリとマッチアップするのはマテュイディ。高速のプレッシングを反復するために生まれてきたような選手である。また、リュカ・エルナンデスも後方に控えているので、かなり堅い守備をみせるフランスの左サイドであった。問題はなんでシャドゥリがこんなに目立ったか?という点に尽きる。

シャドゥリがボールを受ける機会が多かった理由は、フランスのサイドハーフの守備の形が異なっていたからだ。ムバッペはアザールへのパスラインを遮断する。グリーズマンはシャドゥリへのパスラインを遮断しない。パスラインが遮断されないので、ベルギーはシャドゥリにボールを集める。しかし、そちらのサイドはフランスの守備のストロングサイドであった。さらに、ボールを奪えば、グリーズマンをカウンターの起点にしながら、一気にムバッペでカウンターを加速させられるというおまけつきであった。それでもゴール前にフェライニを送る作戦であったが、それにはポグバで対応。よって、適当なクロスはすべて跳ね返されるという用意周到なフランスであった。

タスクチェンジの重要性について

サイドからの優位性を消されてしまったベルギー。しかし、ボールが入ったときのアザールは尋常でないパフォーマンスでチームを引っ張っていた。でも、ボールが来なければ、プレー機会はどうしても減ってしまう。よって、アザールが自由に動き始める。しかし、代わりに横幅隊の仕事をフェライニができるわけもない。そもそも、フェライニの仕事はゴール前に突撃することで、本当に意味での大外でクロスを待つのが仕事ではない。というわけで、アザールの自由化はあっさりと頓挫してしまう。

マテュイディの執拗なプレッシングに苦戦するシャドゥリ。だったら、シャドゥリ以外の選手をこのエリアに配置してみればいい。しかし、誰が横幅とるの?ということは準備されていなかったのだろう。デ・ブライネが移動するかな?と見ていたが、シャドゥリのタスクが変更されることはなかった。

ベルギーの策は選手の役割がどうしても固定されてしまっていた。相手の守備の基準点をずらす意味では、効果的でなかったとしても、3バックと4バックを推移するくらいのほうがいい。しかし、横幅はお前、ハーフスペースの入り口はお前、ハーフスペースの住人はお前と決めてしまうと、それぞれの質の問題を相手にクリアーされてしまうと、非常に苦しいのであった。

この試合で最も時間と空間を得られていたのが、ベルギーは3バックだった。よって、その位置に最もクリエイティブな選手を配置すると、何かが起こる可能性が高い。だからといって、デ・ブライネに3バックをやってもらうのはあれなので、流れの中でその位置にデ・ブライネが移動してプレーすることもある、という状態がベストになっている。眼の前の相手がころころ変わる、というのは、守備側からすると、非常にめんどくさい。

というわけで、ベルギーのタスクチェンジは選手交代をもって行われた。右サイドの横幅にメルテンス、シャドゥリはどんどん中へ、そしてハーフスペースの入り口にはデ・ブライネと、消されていた質的優位の復活を試みる。特にメルテンスのからの突破は非常に可能性を感じさせるものであった。アザールを中に送るためのカラスコの登場も悪くはなかったが、フェライニを下げたことで最終的に高さ不足で泣くことになるとは、予想していたのかどうか?というところである。

ただ、フランスの守備もかなりえぐかった。試合が終わったあとに、アザールたちが文句を言ったのもわからなくはない。ジルー、グリーズマンが相手のセントラルハーフに執拗にプレッシングをかけて、3バックを華麗にスルーしているところは本当にびびった。ああ、こんなに守るんだって。だからこそ、結果が出たのかもしれないけれど。ときには6バック以上になっていた気がする。

ひとりごと

グリーズマンとムバッペの守備の違いによって、アザールのプレー機会を削り、シャドゥリのプレー機会を増やすけれど、しっかりと止められますというフランスの守備は面白かった。まさにトラップディフェンス。わざとボールを誘導して、誘導した先は行き止まりみたいな。そのために、セントラルハーフを抑えるために守備に奔走したジルーがえぐい。たぶん、ジルーの役割によって、4-3-3か4-3-2-1と解釈が変わるのだろう。本当にどっちでもいいけど。

コメント

  1. 匿名 より:

    フランスのトラップディフェンスで一番エグいと思ったのは、グリーズマンがカウンターの起点になる事でした
    ジルーとグリーズマンが普通に中盤のカバー入ってたのもエグい

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