EUROファイナルラウンド(ベスト16の決戦)の予想をしよう

EURO2016

EUROのグループリーグが、終了しました。グループリーグを振り返ると、3位抜けまでがグループリーグ突破可能というレギュレーションが、試合内容に大きく影響を与えた印象を持ちます。3位のチームの成績を眺めると、ポイント3で突破できるとはちょっと想像できませんでした。また、得失点差も大きなファクターになることは予想がついたことで、0-1の負けは良しとする雰囲気も、多くの試合から感じ取ることができました。0-1でも、守り続けるみたいな。最終戦における、両チームにとってこのまま終わることが両者の利益になる現象は、今までの大会でも観ることはできました。その点については、今までどおりだったとしても、今大会のグループリーグの勝たねばすべてが終わる試合の少なさは、ちょっと物足りなさを感じさせる事実に繋がっていたと思います。というわけで、ここからが本番です。負けたら終了です。今回は、ベスト16決戦のプレビューとなります。全試合は見ていませんが、全チームは見たので、当たるも八卦当たらぬも八卦のプレビューをやってみようと思います。

スイス対ポーランド

グループリーグの戦いを振り返ると、すべての試合において、スイスはボールを保持することに成功しています。一方で、レーヴが指導者としてのルーツを持つスイスは、4-4-2のゾーン・ディフェンスを得意としているだろう先入観がありました。しかし、今大会のスイスのボールを保持していないときの振る舞いは、決して褒められたものではありません。よって、ボールを保持する展開を増やすという選択は、間違っていないでしょう。ただし、小さいころから叩きこまれただろう4-4-2のゾーン・ディフェンスも、監督によっては機能しなくなるというのは、興味深い現象だなと思います。

グループリーグの戦いを振り返ると、ポーランドはボールを保持することにこだわりはありません。ボールを保持することができない、ということはないと思います。モンチンスキ、クリホビアクのセントラルハーフコンビは、大会屈指の力を持っています。まるで、目立っていませんけど。ただし、ボールを保持することよりも、ボールを保持しないほうが自分たちにとって得策と考えるならば、ボールを迷いなく放棄します。撤退守備に自信があるのでしょうし、レヴァンドフスキを起点とするカウンターにも自信を持っています。

そんな両者のぶつかり合いは、スイスがボールを保持し、ポーランドが守備で抗う形になる可能性が非常に高いです。ポーランドがボールを保持する展開(チャンピオンズ・リーグ・ファイナルのようにスコアが動かなければ)は、考えにくいです。ただし、考えにくいからこそ、やる価値はあると思います。スイスの守備力を考慮すれば、博打にはなりません。しかし、守備に自信のあるポーランドは、スイスの攻撃を正面から受け止めても、まるで問題がないと計算していることでしょう。

キーマンは、ジャカ。ポーランドの計算を狂わせるにはジャカの活躍が必須です。さらに、スイスはラッキーボーイが生まれないと、勝利には届きそうもありません。地力で勝るポーランドが、相手の長所を受け止めながらも最終的には勝利する。そんな予想にしておきます。

ウェールズ対北アイルランド

イングランドのプレミアリーグ最終節を行ったウェールズ。最大の特徴は、システムにあります。3バックによるボール保持は、相手のシステムとの噛み合わせを拒絶します。ただし、ボールをずっと保持する策はとりません。ベイルのカウンターを武器とするためにも、撤退守備もためらわずに行います。ボール保持からの攻撃の精度は高く、相手の守備を分断し、その穴をつく攻撃を仕切るジョー・アレン、ラムジーは、大会の注目選手といえるでしょう。そして、困ったときのベイル。フィニッシャー、キッカーとして、チームを救い続けています。レアル・マドリーでの好調が大会でも持続されているのは、ウェールズにとって良いニュースといえるでしょう。

北アイルランドは、何をしてくるかわかりません。3バックで必死に守ったり、4バックで正面衝突したりと、マイケル・オニールの手はちょっと読めません。有名な選手は少ないですが、必死に戦える選手が多いです。エバンス兄弟、マコリー、キャスカート、マッギン、ノーウッドと印象に残っている選手も多いです。ウクライナ戦での正面衝突を考えると、ウェールズを相手に正面衝突を画策しても不思議ではありません。両者の対決がダービーのような雰囲気になるのかはわかりませんが、プレミアリーグを続けないことを祈ります。

注目は、マイケル・オニールの策です。正面衝突か、3バックへの対策をどのように行なうか。4-4-2や4-3-3でぶつかれば、ジョー・アレンの前に好き勝手に暴れさせてしまうでしょう。撤退して耐えれば、ベイルにフリーキックのチャンスを与える機会はどうしても増えてしまいます。注目は開始10分で北アイルランドの思惑が何かを見極めることでしょうか。普通に考えれば、ウェールズの勝つ確率が高いです。その確率を北アイルランドがどれだけ減らせるか、注目です。

クロアチア対ポルトガル

代表チームの中で、クロアチアは完成度が非常に高いです。守備のラインの設定を自由自在に行い、カウンター、速攻、ボール保持からの定位置攻撃と、精度の高いプレーを再現性を持って行なうことができます。チャチッチ監督が不安要素と言われていましたが、今のところは特に問題ありません。スペイン戦で見せたように、ベンチメンバーも充実しています。チェコ戦のアクシデントにもめげず、むしろチームがまとまっているような印象さえ受けます。万能型ゆえに、どのような展開も嫌がることはないでしょう。よって、試合の内容を決定するのは、ポルトガルといえます。

3分のポルトガルは、ハンガリー戦で九死に一生を得ます。実は曲者揃いだったグループFを突破したポルトガルは、実はなかなか完成度の高いチームです。基本的にボールを保持することをプレーモデルとしています。システムは4-4-2の菱型と4-3-3を使い分けます。両者のシステムで言えることは、決まりきった選手が決まりきった役割をこなす、という形を取っていないことにあります。アンカーで起用されるウィリアム・カウバーリョでさえ、中央にポジショニングすることにこだわりません。4-4-2の菱型では、高い位置からのプレッシングを可能とし、ハンガリーに繋がせないこともできました。後は得点を決めるだけです。ナニが好調を意地し、クリスチャーノ・ロナウドがとうとう目を覚ましたとなれば、一気に評価を上げるきっかけになる試合になる可能性は高いです。

ポルトガルがどのようなシステムで試合に挑むのかは注目です。4-4-2の菱型でモドリッチを中心とするクロアチアのビルドアップを破壊し、自分たちがボールを保持する展開に持ち込めるかどうか。または、ポルトガルがまさかの撤退でクリスチャーノ・ロナウドとナニのカウンターにすべてを託すという可能性もなくはありません。ポルトガルの不安要素は、プレッシングを回避されてしまったときの守備にあります。残念そこはペペが戦術です。そういう意味では、マンジュキッチとペペのどつきあいが、この試合に何をもたらすかにも注目です。基本的にはポルトガルがボールを保持するとは予想されますが。

ベスト16のベストバウト案件です。見逃してはダメ。

フランス対アイルランド

開催国の結果は、大会の成功に重要とされています。しかし、非常に怪しい内容でフランスは結果を残してきました。グリーズマン、ポグバ、パイエの同時起用は成り立つのかなど、不安要素も残っています。ドイツの改善に比べると、うまくいっているんだかどうなのかは、非常に判断がつかないところです。そういう意味では、試合を重ねるごとに改善、成長していくしかないわけですが、相手は曲者のアイルランドとなります。デシャンがどのようなスタメンをどのように機能させるかが注目です。個人的にはグループリーグの3試合目も、前線に限ってはスタメン組の組み合わせを試したほうが良かったような気がしています。

イタリアに勝利して九死に一生を得たアイルランドです。2002年の印象が強いアイルランドですが、戦術的に非常に洗練されています。対戦順に恵まれた感もありますが、最後まで諦めない姿勢は、2002年のそれを思い出させるものでした。2002年のアイルランドらしい勢いと、2016年の洗練されたアイルランドの融合は、非常に厄介な存在になったと言えるでしょう。フーラハン、ブレイディ、そしてミラクル・オシェイに率いられたチームは、フランスを相手にしても自分たちの狙いを機能させる可能性が高いです。

この試合の注目は、どのような試合展開になるかです。ベルギー対アイルランドの試合のように、アイルランドが狙いを機能させているのだけど、気がついたらベルギーが勝っていたという試合になるかなと予想しています。フランスが自分たちのやりたいことを相手に押し付ける内容になれば、一気に優勝候補に躍り出ます。デシャンの修正か、アイルランドが積み上げてきたものが勝つか、非常に注目の試合です。

ドイツ対スロバキア

ベスト16の試合の中では、もっとも差がある対決だと予想しています。ハムシク無双で勝利した2戦目のように、スロバキアは何かを起こせないと、勝つのは非常に難しいと思います。イングランドを相手に守りきりましたが、守備での不安が残ります。相手はドイツです。恐らく、必死に守る展開が続くと思いますが、最後まで守り切れると計算するのは、非常に楽観的と言えるでしょう。だったら、どのように攻めるのかとなりますが、ハムシクの個人技の爆発待ちしか考えられません。残念そこにはノイアーがいますし、スロバキアがどのような策を取ってくるかは、非常に楽しみな一方で八方塞がり感が強いです。

マリオ・ゴメスの復活やキミッヒのサイドバック起用で問題を解決しつつあるドイツです。レーヴ監督時代が長いからか、チームをいじる必要性があったかのかもしれません。かつてのグアルディオラがバルセロナで行ったように。その変化がいまいちチームに馴染んでいないような気がすることが不安要素になっています。また、若手がまったく起用されません。必ずシュールレが登場します。面白い若手はいるのですが、いつ出てくるのだろうと楽しみにしていますが、なんとなく、出てこないまま大会が終了しそうです。

注目は、本命ドイツにハムシクが抗えるかどうか。

ハンガリー対ベルギー

世界を驚かせたハンガリーですが、戦術的に洗練されています。キラーイとナジを中心とするビルドアップを防ぐには、どのチームでも物量的に人数を必要とします。そして、ビルドアップから定位置攻撃では、ポジションチェンジをしても、バランスが崩れない厄介さを持っています。ビルドアップを防いだとしても、空中戦に強いサライを中心とする前線コンビが控えていますし、ジュジャークという個人で試合を壊せる選手もいます。まじかよ、という強さです。

イタリアからのレッスン後は、2勝のベルギー。しかし、試合内容はなんとも言えない形が続いています。トランジションゲームでは無類の強さを持ちますが、トランジションゲームに自ら持ち込むすべがないので、相手の振る舞いに自分たちのやるべきことが左右されすぎてしまうのが問題になっています。アイルランドはトランジションゲームに持ち込まれないように、自分たちの良さを発揮できるようにプランを練ってくるでしょう。そのプランに身を委ねるのか、時間に解決を任せるのか、自分たちのアクションで流れを引き寄せられるかが注目です。

注目は、時間。時間の経過とともに移ろう試合展開にベルギーがチャンスを見いだせるかという我慢の試合になりそう。

イタリア対スペイン

チャンピオンズ・リーグのユベントス対バイエルンを思い出させる試合です。しかも、決勝トーナメントの初戦で、というところがまたにくいですね。

コンテ式で速攻を機能させ、5-3-2でがっつり守備をする今大会のイタリア。イタリアらしい堅さと速攻で、一気に優勝候補に名乗り出ました。わかっているけど、止められないコンテ式は、ミシャ式と非常に似た構造を持っています。よって、サンフレッチェ広島や浦和レッズの試合を見慣れてる人には、なかなか面白いボールの動かし方に見えると思います。ただし、この試合では守って守備をする時間がどうしても長くなるでしょう。キーマンはスペインのサイドバックの空けたエリアを利用できるかどうか。懐かしのバルセロナ対策ですね。そして、ブスケツトランジションをどのように止めるかも、注目です。

クロアチアに不覚をとったせいで、ジャンプに載っているようなトーナメントに放り込まれたスペイン。4年前の激戦を思い出させるゲームとなります。スペインが圧倒的にボールを保持し、5-3-2をどのように崩すかを延々と眺めている試合となりそうです。キーになりそうなのは、2トップの脇、ウイングバックの前、ウイングバックとセンターバックの間、1.2列目のライン間、相手の裏やウイングバックとセンターバックの間を走り抜ける選手はだれか?スペインの仕組みは横幅をとるのがサイドバックのみになってしまうことが多いです。そうなると、どうしても、相手の空けるエリアを使えません。どこかで3-4-3をやらないかなと期待しています。

ベスト16のベストバウト案件です。見逃してはダメ。

イングランド対アイスランド

3分もあり得ると思われたイングランドですが、2位でグループを突破しています。しかし、内容や采配を見ていても、チームの狙いがうまくいっているのかいっていないのか、よくわかりません。2位抜けのせいで、死のトーナメントに放り込まれたことも決してポジティブではありません。誰を攻撃の軸とするのか、スパーズ方式で戦うのか、なぜレスターをやらないのか。相手が撤退しているのにヴァーディを出場させるのはなぜなのか。でも、点を決めると、論理を超えたような展開もありますが、正直いってよくわかりません。

33万人という数字が世界を騒がせたアイスランド。まさかのファイナルラウンド出場。4-4-2の守備は、さながらレスターのようです。背も高いので、撤退守備でも問題は起きません。また、ロングスローとハイボールによる奇襲、空中戦は、グループFの曲者たちを苦しめてきました。その強度は尋常ではありません。レジェンドのグジョンセンが今大会を自分のキャリアの中でどのように総括するか、とっても興味があります。誰か聞いてきてください。

注目は、アイスランドの4-4-2をどのようにイングランドが攻略するか。ドリブルでどうにかできそうな選手がイングランドにいるので、アイスランドの複数による対応がどこまで続くか。そして、プレミアリーグの選手に空中戦でアイスランドがどれだけ通用するかが試合をわける鍵となりそうです。

グループリーグのベストイレブン

ベストイレブングループリーグ

ではまた。

コメント

  1. NNS より:

    定位置攻撃を、もうちょっと分かりやすく教えていただきたいです。
    何となく、分かるんですが。

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