サッカーの面白い戦術分析を心がけます

らいかーるとによるマッチレポが中心。サッカーの分析を通じて、サッカーの奥底に迫っていきましょう

【不変対変化】ポーランド対ポルトガル【レヴァンドフスキ対ペペ】

   

両チームのスタメンはこちら

myboard

結果はPKでポルトガルの勝ち。開始早々に先制したポーランドだったが、前半のうちに追いつかれる。様々な形を見せるポルトガルに対して、有効な策を見いだせなかったポーランドは、クリスチャーノ・ロナウドの決定力不足にも助けられ、延長戦を迎える。延長戦になっても、ポーランドに決定機と呼べるような場面はなく、試合はそのままに終了。そして、ポーランドの選手の中では気迫のこもったプレーをしていたクバがPKを外し、最後はまたもクアレスマが決めて、ポルトガルがベスト4まで勝ち残ってみせた。

ポーランドの3バックビルドアップへの解答

ポーランドのビルドアップは、セントラルハーフの列をおろして行われる。センターバックの間にポジショニングするのは、基本的にはクリホビアクだ。この形の変更によって、相手の守備の基準点を乱し、攻撃の起点(オープンな状況でボールを持てる選手)をつくる。そして、時間と空間を前線の選手に繋げていくというプランで、ポーランドはプレーしている。よって、ポーランドと対戦する相手は、このプランへの対策を考えなければならない。

ポルトガルのボールを保持していないときのシステムは4-3-3。ボールを保持しているときもジョアン・マリオのワントップ(実際はゼロトップのような役割)に変更はなかった。様々な奇策を用いるフェルナンド・サントス監督だが、4-3-1-2ではなく、4-3-3を選択したのは少し意外だった。

この試合のポルトガルの4-3-3の特徴は、インサイドハーフの役割になる。インサイドハーフは、基本的に相手のセントラルハーフを抑える。しかし、ポーランドのセントラルハーフは、列を下りてプレーすることが多い。この動きに対して、ポルトガルはどこまでもついていこうで対応した。よって、クリホビアクを追いかけたレナト・サンチェスが、最前線で目撃される現象が何度も起きていた。

大会を通じて、スタメンが続いているナニとクリスチャーノ・ロナウドで、相手の3バックを追いかけまわさせるという選択肢もあっただろう。しかし、疲労を考慮した、または、相手のサイドバックの攻撃参加を牽制する狙いもあったのだろう。クリスチャーノ・ロナウドとナニの役割は、ポーランドのサイドバックを観ることだった。もちろん、間に合わないときは、ジョアン・マリオがその役割を行なうこともあった。

よって、走れる選手が上下動をするように、チームのプランを組み立てるフェルナンド・サントス。走るのは、ジョアン・マリオ、レナト・サンチェス、アドリエン・シルバ。この3人が相手の3バックのマークにつく場面も見られた。ポーランドが最も嫌がった局面が、3バックに数的同数で迫られるだったろう。個人による打開が見られたが、ポーランドはこの状況へのチームでの打開策を見いだすことは延長戦になってもできなかった。もちろん、ポーランドも黙ってやられたわけではないが、ポルトガルはしっかりとポーランドの策を潰していった。

ペペとフォンテへの信頼

ビルドアップが効果的に行えないポーランドの策は、ライン間を使うポジショニング、サイドへのロングボール、レヴァンドフスキよ、後は頼んだであった。ライン間を使うポジショニングでチームを牽引したのはクバ、ときどきミリク。カウンターで最強感を漂わせたグロシツキは、細かい仕事が苦手のようだった。先制点のセドリックのミス以外の場面では、セドリックに封じ込まれてしまっていたグロシツキ。交代もやむなしだった。

ライン間で活動しようとするポーランドに対して、ポルトガルはマンマーキングで対応。クバにはエリゼウ、ミリクにはウィリアム・カウバーリョが主に対応することで、ポジショニングで自由になる発想を潰した。ポルトガルの守り方は、全体的にマークをはめていく形で行われていた。この形の最大のデメリットは、センターバックと相手の前線が数的同数に近い状況になる可能性が高いということだ。もしも、相手がオールコートマンツーマンできたら、蹴っ飛ばすのが最善とされている。自分たちのゴールから最も遠い位置での一対一がローリスク、ハイリターンになるからだ。

ポーランドにはレヴァンドフスキがいる。しかし、ポルトガルにはペペがいる。この両者のぶつかりあいは、非常にハイレベルだった。ただし、ほとんどの場面で勝ったのはペペ。レヴァンドフスキもフィニッシュまでいける場面もあったが、今大会で異常な強さというか、レアル・マドリーでも充実のシーズンを過ごしているペペの無敵感は尋常ではない。また、前からボールを奪いに行くための高いディフェンスラインの設定を可能としているのがフォンテだ。リカルド・カルヴァーリョでは高いディフェンスラインは難しかったかもしれない。スタメンに定着したフォンテの迎撃守備も非常に目立っていた。

ポルトガルの守備で面白いところは、後方にスペース(センターバックやアンカー周りのエリアを相手に与えること)をびびっていなかった。本来はやってはいけない行為もウィリアム・カウバーリョやペペたちならどうにかしてくれるだろう。それよりも、前線から順番のマークを剥がされていくほうがめんどくさいと計算したのかもしれない。相手がロングボールを蹴ってきたら、あとは宜しく!という形は、延長戦になっても繰り返された。

このようにボール保持からの攻撃で、ポーランドが勝機を見いだすのはなかなか困難な状況となった。だったら、相手にボールを持たせてのカウンターと行きたいところだ。相手の守備が整っていない状態で仕掛ければ、ペペとの勝負を避けることもできるかもしれない。相手の守備が整っていない状態は、様々な要因によって発生する。セドリックのミスも、ある意味で守備が整っていない状態を作ったと言えるだろう。そういう意味でいえば、ポーランドの先制点はこれしかない状況がいきなり訪れたとも言える。しかし、相手のミスは待っていても起きるかどうかはわからない。

ポルトガルのボール保持と狙い

クロアチア戦でボールを放棄したポルトガルだったが、ボールを保持することは非常に長けている。ここでいうボール保持とは、単純にボールを保持するという現象を意味する。ボール保持からのフィニッシュまでが効果的に行われているという意味ではない。ただし、相手にボールを奪われて速攻をくらうようなヘマはしないという意味だ。

早々の失点によって目を覚ましたフランスのように、ポルトガルがテンションを上げることはなかった。淡々とボールを保持しながらポーランドのゴールに迫っていく。ポーランドのボールを保持していないときのシステムは、4-4-1-1。レヴァンドフスキはそこまで下がってこない。よって、ポルトガルはミリクの脇を攻撃の起点と計画してきた。

ポルトガルの狙いは、ライン間でボールを受けること。相手のセンターバック、サイドバック、サイドハーフ、セントラルハーフで囲まれた四角形に誰かがポジショニングする。この誰かがというのがポルトガルの特徴だ。決まった選手がポジショニングすることはない。サイドハーフ(クリスチャーノ・ロナウドたち)、インサイドハーフ(レナト・サンチェスたち)、ゼロトップ(ジョアン・マリオたち)と、様々な選手が役割を入れ替えながらプレーをする。

また、、ポーランドのセントラルハーフは、ポルトガルのインサイドハーフの動きにくいつく傾向があった。よって、インサイドハーフのオフ・ザ・ボールの動きで中央にパスライン、プレーエリアを作り、前線の選手をそのエリアに投入するポルトガルの攻撃は理にかなっていた。また、サイドバックとサイドハーフだけでサイド攻撃が構築されていないポルトガル。インサイドハーフもサイドに流れてくる。ポーランドは6バックになるほど、サイドハーフの守備意識が高い。一方で、6バックになってしまうと、サイドハーフが守るべきエリアが空いてしまう。ポルトガルはこの位置に3人目が登場し、クロスポイント、攻撃の起点として利用していた。

シュートまではつながらないけれど、ボールを奪えないポーランドはカウンターをすることができなかった。いつもなら攻撃参加をしてくるペペがおとなしかったのは、レヴァンドフスキ対策なのだろう。ポルトガルの同点ゴールは、セントラルハーフを動かしてできたエリアからレナト・サンチェスのミドルが炸裂という、自分たちの狙いを貫徹させた形となった。

ポルトガルの七変化

後半になると、ポルトガルのシステムが変化する。

myboard1

フェルナンド・サントスの真意は不明だ。誰か聞いてきて。ただし、この変化がポーランドのハーフタイムを無駄にしたのは言うまでもない。ポーランドのハーフタイムは、どのようにボールを運ぶかと、どのようにボールを奪うかに終始したはずだ。特に数的同数を組んでくる相手にボールをどのように運ぶかは指示を受けたいたかもしれない。しかし、後半のポルトガルは、ナニとクリスチャーノ・ロナウドを前に出してきた。クリホビアクを下ろせば、ボールを運べる状況となる。その代わりに、サイドハーフのジョアン・マリオとレナト・サンチェスは守備をサボらない。よって、ポーランドの攻撃を少し受け止めようという姿勢は、後半の試合内容に大きな影響を与えた。

ボールを保持するポーランドは、できればトランジションを利用したいのだが、今度はポルトガルが整理された守備でポーランドのボール保持に対抗する形となった。ポーランドからすれば、ナニとクリスチャーノ・ロナウドのカウンターの気をつけながら、ボール保持からの攻撃をする必要がある。実際にカウンターを受ける場面もあったが。クバが元気なこと以外は前半と変わらない形となった。むしろ、ポーランドのボール保持にも対抗しきったポルトガルのほうが試合を思い通りにすすめているかのような雰囲気を感じる展開となった。

74分、80分とポルトガルはモウリーニョ、クアレスマを投入。アドリエン・シルバがイエローをもらったらすぐの交代だったので、予定されていた交代だったかは不明だ。

myboard2

システムは4-2-3-1。モウチーニョとナニをインサイドハーフとして解釈すれば4-3-3となる。モウチーニョは相手の3バックへのプレッシングを行なう場面もあり、役割が不透明だった。この不透明感が相手にとって不気味であり、自分たちにとっては、ペペたちが解決できるからデメリットにならない状況があった。速攻を封じられたポーランドは、グロシツキが交代する。

モウチーニョを入れたことで、必殺のスルーパスが炸裂しそうなポルトガル。クリスチャーノ・ロナウドが裏抜けでビックチャンスを迎えるが、まさかの空振りに近いミスでノーゴール。その後もクリスチャーノ・ロナウドはクロスに合わせきれないなど、またも彼の日でない試合となってしまった。

延長戦になると、ウィリアム・カウバーリョとダニーロを交代する。モウチーニョを解き放つが、ポーランドも事故でも何でも良いからゴールに迫っていく。このような、なりふりかまってられないわ攻撃は、それはそれで脅威となる。ただし、最初からなりふりかまってられないわ攻撃をすると、ろくなことにはならないけれど。こうして、試合は0-0のまま終わる。両チームのキーパーの出番は少ない試合だったが、最後の大仕事をパトリシオがこなしたことで、ポルトガルが勝利した。

ひとりごと

万能系と思っていたポーランドだが、速攻とレヴァンドフスキを封じられて塩漬け状態となってしまった。万能系の弱点が何でもできるけれど、平均点が高かっただけだみたいな。ポルトガルは相手の良さを消すことを優先し、自分たちの良さはついてくるだろうみたいな。ステータスを攻撃に全振りするよりも、相手の良さを消してさあどうしようか?みたいな姿勢がここまで結果を出してきた要因だろう。グループリーグを振り返ると、攻撃に全振りまではいかないけれど、守備はまあペペいるし、みたいなところもあったが。あの手この手のフェルナンド・サントスは、なかなかの名将のようだ。

 - EURO2016