「さて」
「今宵はルヴァンカップの準々決勝を振り返っていく」
「川崎対セレッソと浦和対名古屋のどちらを見るか悩んだ結果、浦和対名古屋に決定した」
「早速だが、試合内容についてふれていく」
「序盤から強度ましましを選んだチームは名古屋だった」
「永井が岩尾にマンマーク、マテウスと重廣が外切りで浦和のセンターバックに襲いかかる構図になっていた」
「浦和が彩艶にバックパスをしたときも果敢にプレッシングをかける名古屋が目撃されている」
「浦和はビルドアップの出口を見つけようと企んだが、ほぼマンマークの迎撃体制の名古屋のハードワークの前に苦戦模様だった」
「最初のテーマは名古屋がなぜこのような戦い方を選んだか?について考えていきたい」
「ファーストレグの結果を受けて、埼スタで得点が必須であったこと」
「浦和に延々とボールをもたせたときのデメリットが大きいと考えたこと」
「デメリットはなにか」
「ボールを保持するチームの勝負は後半。後半をスコアレスで迎えたときに自分たちが優位な状況でないとハセケンは考えたんだろうな」
「フィジカル的な問題か、構造的な問題かは名古屋をずっと見ている人に答えてもらうとして」
「もらうとして」
「得点が必要な名古屋は浦和のペースで試合を進めたくなかった、相手陣地でボールを奪って得点が欲しかった」
「それゆえに相手陣地からのハードワークと」
「理屈は通っているな」
「実際に片道燃料の気配は強かったから後半に4枚交代したんだろうな」
「それはすでに2-0だったので、死なばもろともな気配だったのだろう」
「でも死ぬ気があるようには見えなかったけどな」
「それは先の話として、名古屋の片道燃料を覚悟したハードワークに対して」
「浦和がどのように振る舞ったのか」
「答えは愚直にビルドアップだった」
「ビルドアップの出口を見つけられなかったのにか」
「せやな」
「それも奇妙な話だな」
「ゴールキックも蹴らされる場面が多かったのだけど、繋げる場面は必ず繋いでいたぞ」
「その理屈はどこにあるんだろうな」
「彩艶のプレーが印象に残っていて」
「なるほど」
「最終的に永井のプレッシングを浴びながら彩艶が蹴っ飛ばすんだけど、ほとんど相手ボール、もしくはピッチの外にボールが出ていた」
「だめやないか」
「取られるよりはましやろ」
「それはそうだけどな」
「レアル・マドリーの試合を見ても思ったんだけど、それもキーパーまで戻すんかい!みたいな場面が多い。しかし、相手からすればプレッシングのスイッチをどうする問題と向き合わせ、全体の押し上げを強いられることになる」
「地味に疲れるやつだな」
「ビルドアップの出口が見つからない浦和は岩尾のサリー、小泉のヘルプ、さらに他の前線の選手も現れるなど工夫を重ねていくようになる」
「どれも解決の決定打にはならなかったが、名古屋からすると面倒極まりない」
「そして気がつけば彩艶が蹴っ飛ばす」
「で、相手陣地でボールを奪うのではなく、準備万端で待ち構える浦和の守備陣にマテウスが突撃していくことになる」
「浦和のビルドアップでやばい!というミスはショルツがやらかした場面くらいだろう」
「それも素早くチーム全体で止めることができていた」
「まとめようか」
「片道燃料のハードワークに対して、浦和はビルドアップの出口を効果的に見つけられなかったが、自陣でボールを奪われるリスクを冒すことなく何度も何度もビルドアップを試みることで時間を味方につけたのではないかと」
「しかし、給水タイムを終わると、途端に松尾に蹴りまくったからどこまでがチームのリスクとして許容されていたかは謎だ」
「ただし、得点場面を見返してみると、岩尾がドフリーな状態で裏抜けした松尾にボールを届けている」
「岩尾に対峙していた鬼の永井も流石に限界か」
「時間がたてばたつほどに、名古屋のハードワークに陰りが見えてきたことは事実だからな」
「そしてずっと怪しかった名古屋はコーナーキックからまたも失点してしまう」
「で、後半となるわけか」
「個人的な考えになるんだけど、ビルドアップの出口とはフリーマンを見つける、という意味合いが強い」
「急に何の話だ」
「フリーマンとはフリーな選手を意味している」
「それはそうだな」
「なので、フリーな選手を作らなければいけない。そして、フリーな選手にひょいとボールを届ける必要がある」
「これは二人称のビルドアップと呼んでいたんだろう?」
「出し手と受け手の関係性でどうにかできるからな」
「浦和はこの傾向が強い。そのために可変式も使うし、前線の選手を下ろすこともあるあるだ」
「後半はさらに変幻自在感があったもんな」
「小泉の立ち位置も面白いし、松尾のCF仕事をこなしたかと思ったら味方の立ち位置を利用したライン間でボールを受ける動きも面白かった」
「それでいて何気に浦和はドリブラーが多いからな」
「時間とスペースが少しでもどうにかしちゃう的な要素はある」
「その能力を突破よりも運ぶ、守るに使っている感は強いけれど」
「で、次に名古屋のビルドアップをみていくと」
「こちらはシステムの噛み合わせの差異と選手の個性を利用している感が強い」
「セントラルハーフがサイドに流れて前線にパスラインを作る、なんてのは練習しているんだろうな」
「選手の個性で特にすごいなと感じたのが仙頭だった」
「何が良かったんや」
「そもそものチャンスメイク能力の非凡さは言うまでもなかったんだけど、相馬の位置を前にしたやろ」
「サイドの選手は高い位置でボールを受けて、ゴールに向けて仕掛ける局面と低い位置でボールを受けてゲームメイクすることが求められる時代になっている」
「前半の相馬は低い位置ばかりだったからな」
「しかし、後半の相馬は仙頭の導きによってゴール前に侵入する場面がめっちゃ増えていた」
「個性の組み合わせによる再現性と言えるし、相互作用ともいえるが、選手が変われば再現することは難しくなる」
「特にマテウスについてはモドリッチとバルベルデの関係性の話をしたくなる」
「どんな話や」
「モドリッチは多種多様な立ち位置をする。サイドバックの位置にいたり、アンカーの横にいたり、ハーフスペースにいたり」
「そんなモドリッチの立ち位置を見て、バルベルデは自分の立ち位置を設定する」
「だから、モドリッチの自由奔放さでチームのバランスが壊れない」
「そこまでの器用さはロドリゴにはまだないと」
「バルベルデ、意外に速いしな」
「守備でも戻りに戻るからカルバハルの迎撃を助けることもできるし」
「問題は自由なマテウスにとってのバルベルデはいるのかどうか」
「話を試合に戻すと」
「この試合で常に正しいプレーをしていた永井が岩尾番をしている場合でないことに気がつく」
「2-0で負けているからな」
「しかし、後方がついてこない」
「松尾たちの裏抜けを警戒した可能性もあるが、ここは死なばもろともの4枚替えだったから行かなければ行けないとこだったと思うんだけどな」
「となると、プレッシングはばらばらになる。さらに浦和はビルドアップの出口を見つける気満々だったので、ここからは浦和の時間帯となる」
「で、この試合の大オチがなかなかえぐかった」
「浦和の523やろ」
「話を戻すと、名古屋は選手の個性とシステムの噛み合わせの差異を利用していると書いた」
「浦和は3バックの中央からサイドにボールが出るとプレッシングを開始していたが、ハマりにハマっていたかというとそんなこともなかった」
「だから、差異をなくすための523というわけか」
「つまり、前半に名古屋が行ったビルドアップの前提である数的優位をなくす作戦を浦和がそのままひっくり返して実行したわけか」
「えぐいやろ」
「初戦、そしてリーグ戦のぶん!といったところか」
「噛み合わせの差異がなくなったことで、名古屋のビルドアップはさらに不安定感をまして、そのミスから失点するのだからよくできたストーリーである」
「3-0になって試合は完全に終了となった」
「というわけで、タイトルを獲得する!チャンスを浦和が獲得したこととなった」
「名古屋は残留争いのみと考えると切ないな」
「さすがに残留はかたいと思うけどな」
「それは浦和も同じだな」
「それではお後がよろしいようで」
「ではまた」
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