リヴァプール対アーセナル ~歪みと移動と脅しと~

2025/26欧州サッカー

はじめに

今週のお題はリヴァプール対アーセナル。最初にスタメンはこちら。

諸事情により、最初からサリバ→モスケラになっている。開始早々にサリバが交代をするとはびっくりしたぜ。個人的にアーセナルにはイサクを獲得してほしかった。レアル・ソシエダ感が増すので。チームソシエダをプレミアで実現することに浪漫はあるのか、ないのか。

久々の噛み合わせ論。ただし、配置というよりは「人対人」。怪我人が多数でているだろう理由で、ソボスライが右サイドバックになっている。アーセナルからしたら狙い目、リヴァプールからすると、どちらに優位性が転ぶのかは試合をやってみないとわからないエリア。サラーは言うまでもなくリヴァプールの最大の長所としてのエントリー。

渋い攻防

【442】のハイプレッシングといえば、アーセナルだった!!でも、マンマーク要素もあるのか?と眺めていると、リヴァプールも多彩な変化でプレッシング回避に取り組む。ついでにモスケラが戻ってきている。

グラーフェンベルフのサリーの頻度が多かったような。アリソンを交えたり、ソボスライが中盤に現れたりと多彩なビルドアップの幅を見せていたけれど、アーセナルのハードワークに苦しんでいたというのが、本音なのではないだろうか。

機会もそんなに多くなかったけれど、サラー対カラフィオーリはカラフィオーリが善戦。ロングボールの受け手としてのサラーが好きなのだけど、そんな場面も作らせなかった。ファン・ダイクからのサリーは一度くらいかな。記憶にあまりない。

リヴァプールで面白かった選手はヴィルツとソボスライ。ヴィルツは第三の中盤として幅広く横に動き回るお家芸を披露。ヴィルツの移動を見ながら自分の立ち位置を調整できるマカリスターとの相性がよくなれば、ビルドアップの出口はもっと作りやすくなるかもしれない。どちらかというと、奔放なヴィルツに現時点でそれなりにあわせられるマカリスターが凄いんだけど。

エキチケが競り勝てるわけでもないので、ロングボールをあまり行わずに、じっとアーセナルのプレッシングと向き合う胆力はさすが。クロップ時代ならもう少しシンプルに蹴っ飛ばした気もするけど、途中出場のモスケラも穴になりそうな気配がなく流石であった。その代わりに後ろの枚数を増やして危機管理を行う形は面白い。普通はロングボールを危機管理とするものなので。

渋い攻防の優劣になりそうな歪み

悪くもないけど、良くもないリヴァプールに対して、アーセナルのほうがどちらかといえば良い前半だった。結果論を言えば、前半の数多いコーナーキックでなんとかする計算だったのかもしれない。

サラーを前に残したいリヴァプールは、サラーを前に出すプレッシングをいつもどおりに選択。カラフィオーリを背中で消しているけど、カラフィオーリの巧みさもあり全然消せていなかった。

カラフィオーリをビルドアップの出口とする場面もどちらかといえば、前半の終盤から。それまではグラーフェンベルフが根性で走ってくるでどうにかしていた。ただし、これはリヴァプールの日常だった気がする。日常を思い出せば、コナテがマルチネリ、ソボスライがカラフィオーリを見ることも過去の試合であったけれど、今日は安全志向というか。

グラーフェンベルフがサリーをするならば、こっちはライスがサリーだぜ!といわんばかりに同じ配置をぶつけ合う両者。微妙に意味合いは異なるけど、似た者同士とも言える。スビメンディでないところがにくい。スビメンディを落としたら、ヴィルツがそのままついてきそうだもんね。

サラーを前に残したい希望による歪みがないアーセナルと、歪みがあるリヴァプールのプレッシングを比べると、それは歪みのないほうが機能するのは当然の理。でも、両者ともに相手にビルドアップを成功されてしまったでござる→さっと撤退守備の切り替えがべらぼうにはやいので、ハイプレッシング失敗が致命傷にならないところが渋い。

アーセナルにとっては良い意味で、リヴァプールにとっては悪い意味で誤算だったのがマドゥエケ。マドゥエケが速いのか、ケルケズの調子が悪いのかは不明。マドゥエケが優位性をチームにもたらし、たくさんのコーナーキックを得る。

ゴールキーパーの進路妨害をグレーに落とし込むことに成功したアーセナルのコーナーキックが炸裂!かと思いきや、今日はゴールキーパーの進路妨害をする雰囲気がなかった。もしかしたら、審判に注意されたのかもしれない。ガブリエルを懸命にマークするヴィルツが健気であった。ちなみに、後半のロスタイムのコーナーキックでキーパーの妨害をしていたので、前半の振る舞いの意味は監督のみぞ知るところなのだろう。

お互いの9番を比べると、お互いに9番を強調するような試合運びではなかった。そんな数少ない機会でもギケレシュはティンバーのシュートを導いていた。ああいうのが決まれば、より良いのだろう。

歪みを修正するリヴァプール

初手からマドゥエケにロングボールを放り込むアーセナル。憎らしいほどこの試合の勝負ポイントがわかっているのだろう。マドゥエケがゴールに絡む仕事をできなかったとしても、コーナーキック獲得で攻撃成功になるところがずるい。実際に54分の段階でコーナーキックの本数はアーセナルが6、リヴァプールが0だったんだぜ。

後半は両チームともに序盤はゴールキックを蹴っ飛ばす安全策だった。アーセナルはマドゥエケ、リヴァプールはガクポに放り込む設計となっていた。この勝負どころもどちらかといえば、マドゥエケのほうが優位性を引っ張ってこられそうだったが、そのためにボール保持を少し捨てることがチームの利益に繋がるか?というとなんとも言えない。

で、ようやく図の話を始める

前半はアーセナルのほうが良かった理由が、リヴァプールのプレッシングの歪みにあると書いた。ならば、歪みを修正すれば五分五分の展開になるかもしれない。というわけで、日常に戻すリヴァプール。走る走るソボスライ。カバーに奔走するコナテとグラーフェンベルフ。この変更でアーセナルはわかりやすいビルドアップの出口を失い、だったら、マドゥエケで勝負で良くない?という提案が加速していく。

ヴィルツの移動がまじでめんどくさい

面白いなと思った攻防が最初に注目したソボスライとマルティネリ。相手が3バックに変化するなら、3トップをぶつければいいじゃないとマリー・アントワネット。でも、その場合はソボスライがフリーになってしまう。さらに、ソボスライにカラフィオーリをぶつけるとサラーの対応を誰がやるんだ問題が出てくる。

ロングボールを蹴ることができるソボスライと、ロングボールを受けられるサラーを、多少はフリーにできるかどうか?という問いかけ、という名の提案、という名の脅し。答えはノーに決まっている。この試合でもフリーのソボスライはレーザービームのようなサイドチェンジを放ち、内側エリアでは餅は餅屋であることを証明。さらに、ボールが渡ればサラーが怖いことは百も承知であった。なお、そのためかマルティネリは守備に奔走する場面が目立っていた。

3バックに3トップは無理よ!となると、メリーノを出すしかない。しかし、メリーノ周りでは活発な移動を繰り返す選手がいた。ヴィルツである。ヴィルツと対戦経験のある板倉曰く、「まじでどこまでも移動していくので捕まえきれません」らしい。

この試合でもトップ下というよりは、ボールを引き出す動きが多かったヴィルツ。得意の左サイド内側にこだわることなくあらゆる場所に神出鬼没。さらに、レーンも何度も横断するので、まじでたちが悪い。アーセナルがどこまでもマンマークで!なら話は違ったかもしれないが、それでも本当にめんどくさい選手。相手からすれば。

で、もうほっておけばいいじゃん!と言いたくなる。でも、フリーでボールを受けたらどうなるかは保証できないボールプレーヤー。というわけで、無視はできないヴィルツ。で、ヴィルツが動けば相手が動く。相手が来なければパスをすればいい。全員が注目するヴィルツは相手の背中に隠れ、「ねえ、どっちが僕のマークをするの?」クイズを出すことも得意としている。

このヴィルツの動きに翻弄されるアーセナルの面々。特に背中に隠れられたときのメリーノは2トップに変化していいのか迷う場面もあった。ライスがマークを受け渡したと思ったら、その瞬間にボールがヴィルツに入ることもあった。いっそのことマドゥエケを前に出してガクポサイドに攻撃を誘導したほうがましだったのではないかと机上の空論を言いたくなる展開であった。

だんだんとヴィルツの動きに翻弄されるアーセナル。プレッシングの強度も落とされる格好となり、リヴァプールが段々とアーセナルを押し込むようになっていく。60分にマカリスターと交代して、カーティス・ジョーンズ。カーティス・ジョーンズも移動が巧みな選手であり、ヴィルツが降りてきたら前に出ていくこともできる。

70分にエゼとウーデゴールを登場させるアーセナル。様々な習性を狙うが、自由なヴィルツを止めることはできなかった。ヴィルツが受ける→ヴィルツが空けたエリアで誰かが受けるの連続技を塞ぐにはどうしたらよかったのか。

ちなみにソボスライのスーパーフリーキックのきっかけとなったファウル。ヴィルツの動きにスビメンディがつられて空いたエリアで受けたカーティス・ジョーンズという流れでした。この流れを止めないと、流れはこなそうなアーセナル。ボールを取り上げちゃえば良いんだけど、今日はそういうことを目指した日ではありませんでしたとさ、みたいな試合でした。

ひとりごと

チャンピオンズリーグのファイナルくらいの試合だった。雰囲気が。安全志向感が。なんとなくアルテタはグアルディオラとは違う方向性になっていきそうな予感。でも、それで全然いいと思うけども。今日が決戦仕様だっただけかもしれないし。

と考えると、リヴァプールのいつも通り感は何だが凄みを感じた。いつも通りかどうかを判定するほど試合は見てないけれどさ。

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