ユベントス対スポルティング・リスボン ~幻影との戦いは自分とも相手とも~

2025/26欧州サッカー

はじめに

らいかーるとはどこのサポーターなんですか?と聞かれると、いつも困ってしまう。

サポーターという言葉に対する畏怖感もあり、ぼくはどこのサポーターでもない、と常に答えるようにしている。強いて言うならば、浦和レッズということになるんだろうけど、浦和レッズサポほとにチームに対して狂信的な忠誠心が僕には残念ながらない。

たぶん、サッカーの指導者にとってマイチームは目の前の選手たちであり、決してプロのチームではないのでないか説。

それはさておき、今の自分にとって気になっているチームがユべントスだ。お気に入りのモッタに率いられる前から、何だか気になるチームになっていた。ユルディズ、カンビアーゾ、テュラム弟と、好きな選手がいることも大きい。

そして、ナポリのスパレッティのサッカーが好きだった自分としては、スパレッティが就任したユベントスは気になってしょうがないのだ。同時期に欧州で暴れていたロジャー・シュミットはなぜか日本にいる。

幻影との戦い

スポルティング・リスボンといえば、アモリムである。日本代表にもコピーされている疑惑の強いアモリムのサッカーは【325】を基本としながら、相手を押し込んだときはセントラルハーフの片割れが攻撃参加する形を採用していた。

この試合のスポルティング・リスボンは【4231】をホームポジションとしながらも、スタンダードになっている可変式となっていた。ちなみにプレッシングの配置は【442】の雰囲気だった。

ボールを保持したときのスポルティング・リスボンのビルドアップはボックスビルドアップ。2CBと2CHがビルドアップを一手に担う。ボックスビルドアップの注意点は、2CHが様々な立ち位置を取ることで、優位性をチームにもたらすことが特徴だ。

左サイドバックのアラウホは大外中心。ほとんどウインガーのような振る舞いをみせた。代わりにPedro Gonçalvesは左サイドハーフというよりは、ほぼ中盤の選手のようで内側で器用なプレーをしていた。

右サイドバックのGeorgios Vagiannidisは、大外ではなく、8番のポジションを取ることが多く、クエンダは純粋なウインガーといったところだった。

つまり、【225】って感じ。トリンコンがフリーマン兼いろいろな仕事を肩代わりする感じ。相手を押し込んだ状態のアモリム時代から比較すると、最初から【3151】のような雰囲気を漂わせる新しいスポルティング・リスボンであった。

この戦術でたちが悪いのはフリーマンの交換にある。トリンコンが様々な立ち位置で優位性をもたらすだけならわかりやすいのだけど、ときにはトリンコンが左8番仕事を行い、Pedro Gonçalvesがフリーマン仕事をする。この役割にさらに中盤コンビも交わってくると、守備の基準点の設定は至難の業となる。

是非にハイライトを見てほしいのだが、スポルティング・リスボンの得点は近年のマンマークや5バックへ対する解答のような攻撃の形であった。ユベントスはスポルティング・リスボンのボール保持に苦戦する立ち上がりとなる。もちろん、殴り返す場面もあったので、立ち上がりがとんでもなく悪かったわけではないのだけど。

幻影は自分たちだけではなく

ユベントスのスタメンを眺めると、コープマイネルスが3バックの左にいた。アタランタで2列目をやっていた記憶があったので、自分の頭の中が混乱した。ちなみにボール保持では圧倒的なうまさで、ボール非保持でもそれなりにできていたのでびっくりした。

ユベントスのボール保持の配置は【325】。どちらかといえば、コープマイネルス側が攻撃参加多め。カルルもできる子だった印象があるが、コープマイネルスと比較すれば、誰が守備に残ったほうがいい?となれば、誰もがカルルの名前を上げるだろう。

ちなみに、コープマイネルスが守備に間に合わなかったとしても、世界で最もポリバレントなカンビアーゾがカバーしていたのが印象に残っている。試合中に左サイドバックと右ウイングを行き来する選手は他にサウールくらいしかいなそうだ。

ユベントスの特徴はウイングバックのマッケニーとカンビアーゾにある。守備のときは5バックや迎撃で相手のサイドバックまで走り抜ける運動量を要求されながら、ボール保持ではときには大外、基本的には内側ポジショニングと走り回っていた。

これもあれもユルディズとコンセイソン息子のためである。両者ともに大外にいるだけではなく、ハーフスペースも好んで使う傾向がある。ようするに時と場合によるのだ。時と場合に応じて、というよりは、彼らの雰囲気にあわせて走りまくる両ウイングバックコンビだった。

スポルティング・リスボンのボックスビルドアップに対して、コンセイソン息子とヴラホヴィッチの2トップで右肩上がりの変化でプレッシングを試みていたが、大苦戦。相手の位置に応じて立つ場所と人を入れ替えながらビルドアップの出口をつくり、攻撃を加速させていくスポルティング・リスボンが先制するのは論理的ではあった。

20分すぎからロカテッリは動き始める。もう無理じゃねと。コンセイソン息子とユルディズの守備の負担を減らしたいとか絵に描いた餅じゃない?と。もう、前から行くしかないよねというロカテッリの決意によって、スポルティング・リスボンは少し苦労するようになっていく。

本職でないコープマイネルスのほうが迎撃で生きていくんです感は強く、コープマイネルスよりは本職のカルルはそこまで相手についていくのはちょっと、みたいな仕草をしていた。そして、ロカテッリに怒られていた。

ホームで負けるわけにはいかないユベントスは、ガンガン行こうぜが炸裂する。コンセイソン息子とユルディズは守備の負担を軽減する価値を示し、いまいちブレイクしきれないヴラホヴィッチはシュートの雨嵐をスポルティング・リスボンにお見舞いする。特に単独でクロスにあわせきるヴラホヴィッチは鬼のようだった。

もともとボール保持は悪くなく、ボール非保持をロカテッリのアイディアを中心に改善傾向にあったこともあいまって、ユベントスの猛攻という展開へと変化していく。地味にカウンターや速攻も上手なのが良い。1.5倍速で動くコンセイソン息子と孤独にボールを運べてしまうユルディズのコンビは一見の価値がある。

ユルディズとテュラム弟のコンビネーションで抜け出し、テュラム弟のスルーパスのようなクロスにヴラホヴィッチがあわせて同点へ。攻守の切り替えも早くこのまま逆転まで行けそうな雰囲気のユヴェントスであった。

このあたりから試合は荒れ模様になるものの、最大火力を出すときのユベントスの形が印象に残っている。コープマイネルスだけでなく、カルルも攻撃参加をするのだ。3バックの両脇がいなくなるので、ガッティの孤独を両セントラルハーフが埋めていた。ボール保持のときに何枚を後ろに残すかには敏感なスパレッティ。

このユベントスの形は実はアモリムの最大火力を出すときに似ている。アモリムはウイングバックの役割を固定的にしていたけれど、両CBの後方支援は印象に残っている。今日の試合のユベントスのように。カルルとコープマイネルスの後方支援によるサイド攻撃の破壊力は異常であった。

そう、スポルティング・リスボンはアモリムの財産を残しながらマイナーチェンジをはかっていた。そうしてアモリム時代にサヨナラを告げたのだけど、アモリムの幻影を相手に見ることになる。そんな構図の試合であった。

後半になって、マンマークの雰囲気を強めるユベントス。セットプレーでは大外アタックを中心に構成され、ゴール期待値にのらないけれど、めっちゃチャンスをつくっていく。なるべくコンセイソン息子とユルディズを前に残したいユベントス。彼らは相手を背負うウイング仕草も嫌がらないので、やはりその価値はありそう。

スポルティング・リスボンのハイプレッシングに対しては、コープマイネルスとガッティで2バックをやったり、間にロカテッリを降ろしたりと様々な工夫でボール保持を安定させるユベントス。逆転する気満々であった。

ユルディズの対面の相手を変えたり、コープマイネルスサイドを狙い撃ちにする交代をするスポルティング・リスボンだったけれど、試合に大きな影響は与えることができず。ユベントスもカンビアーゾを右ウイングバックに移動させ、マッケニーが中盤へ移動するポリバレント采配を見せたけれど、ジェクロバはひたすらにファウルで倒されていた。

試合はそのままに終了。最後に懐かしのジョナサン・デイビッドの決定機ありとゴールに迫り続けるものの、ユベントスからすると、復興の雰囲気と痛い引き分けが共存するような試合となった。

ひとりごと

我らが守田は少しだけ試合に出ていた。

守田の代わりに試合に出ていたのが52番のJoão Simões。べらぼうにうまい。ボックスビルドアップで必要とされる中央にこだわらない立ち位置と二列目の選手との役割を交換することも巧みにこなしていた。ついでに左利き。2007年生まれなので、プレータイムを重ねれば、えぐい値段になりそうな気がする。

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