マンチェスター・ユナイテッドのスタメンは、デ・ヘア、バレンシア、バイイー、ブリント、ルーク・ショー、フェライニ、ポグバ、リンガード、ムヒタリアン、ルーニー、イブラヒモビッチ。今季は本気出します!が結果に現れているマンチェスター・ユナイテッド。ヨーロッパリーグはあるけれど、チャンピオンズリーグはない。よって、プレミアリーグの結果が大きな意味を持ちそうだ。そして、ダービー。ダービーに勝てば、すべてが終わるだろうか。
マンチェスター・シティのスタメンは、ブラボ、サニャ、ストーンズ、オタメンディ、コラロフ、フェルナンジーニョ、デ・ブライネ、シルバ、ノリート、スターリング、イヘアナチョ。ペジェグリーニからグアルディオラとリーガを彷彿とさせる監督交代。こちらも本気のマンチェスター・シティ。夢はチャンピオンズリーグ制覇というよりも、よくわからない試合内容をよくわかるようにしたかったのかもしれない。アグエロの代役はイヘアナチョ。そして、バルセロナから引っ張ってきたブラボが突然のスタメンとなった。
結果は、マンチェスター・シティが2-1で勝利。オールド・トラフォードでマンチェスター・シティが勝ったという事実は大きい。
前進する⇔前進させない
マンチェスター・シティのビルドアップ隊は、ブラボ、ストーンズ、オタメンディ、フェルナンジーニョ、ときどきコラロフ。ブラボをビルドアップの逃げ場として使う約束事が、マンチェスター・シティのビルドアップを助けていた。ブラボへの信頼感は絶大のようで、ルーニーのプレッシングをうけても、何事もなかったかのようにフェルナンジーニョにボールを通した場面は、バルセロナのサッカーを見ているようだった。
マンチェスター・ユナイテッドの約束事は、ルーニーがフェルナンジーニョを観る。イブラヒモビッチがストーンズを集中的に観るというものだった。2人に追い掛け回させるというよりは、ストーンズからボールを展開させなければ良いという割り切りはあったかもしれない。よって、オタメンディの運ぶドリブルによる独走が何度も見られている。また、ビルドアップの出口が見つからないとき、縦に前進できないときは、コラロフの蹴っ飛ばしとサイドチェンジが準備されていた。高さ対策で起用されたコラロフだが、左利きで精度も高いことから、センターバックで起用されることもある。
マンチェスター・シティのビルドアップで興味深い動きは、ストーンズとフェルナンジーニョのポジションチェンジだろう。ストーンズとフェルナンジーニョ、オタメンディの3人は横並びか2-1の形を常に維持するように動いていた。オタメンディがドリブルで上がっていくと、しっかりとフェルナンジーニョとストーンズが、センターバックの位置に移動していた。プレッシング回避でセンターバックがポジションを上げてボールを受ける技術は相手にとってなかなかうざい技である。サンフレッチェ広島の千葉が得意としている。このストーンズの動きもそんな意図があったのだろうし、ストーンズを抑えに来るなら、フェルナンジーニョとポジションを変えてしまえばいいという解決策だったのかもしれない。
プレッシング回避以外にも、ルーニーを動かすという意図があっただろう。マンチェスター・ユナイテッドのボールを保持していないときのシステムは4-4-1-1。ルーニーがいなくなれば、いわゆる1.2列目の間を使いたい放題になる。しかし、ルーニーは動かなかった。誘われそうな場面もあったけれど、中央からは出来る限り動くなという指示がモウリーニョからあったのだろう。その理由はセントラルハーフを動かすからといえる。
ゴールを奪う⇔ゴールを奪わせない
ボールを前進させることに成功したマンチェスター・シティ。グアルディオラ以前から、マンチェスター・シティはシルバのチームだった。グアルディオラ以降も、その流れはさらに加速している。よって、マンチェスター・ユナイテッドはシルバを止める必要があった。もっと言えば、マンチェスター・シティのインサイドハーフコンビをどのように止めるかを準備しなければならなかった。
モウリーニョの準備は、フェライニとポグバを動かして、マンチェスター・シティのインサイドハーフコンビを止めるだった。これまでのマンチェスター・ユナイテッドのセントラルハーフコンビは、センターから動かない守備をすることが多かった。だからこそ、普段とは違う役割をさせることで、相手の狙いを外そうとしたかったのかもしれない。いつもの試合だったら自由に行動できたシルバだが、どこまでもついてくるフェライニに苦しませられることになる。
しかし、グアルディオラもこの流れまでは読みきっていたようだった。マンチェスター・ユナイテッドのセントラルハーフがセンターから動くのならば、センターを使えばいい。よって、イヘアナチョがゼロトップのような動きでセンターに起点を作るプレーを連発させる。マンチェスター・ユナイテッドのセンターバックもこの動きに呼応するのだけれど、ボールを奪うほどの圧力をかけることはできなかった。
よって、マンチェスター・シティはイヘアナチョを起点としたあとは、サイドにボールを供給する。マンチェスター・ユナイテッドのセントラルハーフをセンターから動かしたマンチェスター・シティのインサイドハーフは、自動的にサイドよりのポジショニングとなっている。よって、ウイング、インサイドハーフ、サイドバックのトライアングルで、サイドから強襲する形ができていた。また、全く可能性のない攻撃になってしまっていたが、左サイドからファーサイドを狙ったアーリークロスが繰り返されていた。恐らく、ルーク・ショーの高さを狙い撃ちにしていたのだろう。
マンチェスター・シティはイヘアナチョを起点とすることで、マンチェスター・ユナイテッドの選手を中央に移動させる。移動させてからのサイド攻撃で、マンチェスター・ユナイテッドのゴールに迫ることができていた。ゴールまでの流れはポゼッションからの攻撃というわけではなかったが、耐え忍ぶ形は失点に繋がってもおかしくはない。必然は言いすぎだが、2得点を許す形と展開に、レアル・マドリーとバルセロナのクラシコ(モウリーニョとグアルディオラの初対決)を連想させたのは言うまでもない。
お前の思い通りにはさせない
マンチェスター・シティの2点目は36分に生まれた。試合の流れに影響が出始めたのは30分前後だった。動き始めたのはマンチェスター・ユナイテッド。ブラボをビルドアップの逃げ場とするマンチェスター・シティに対して、イブラヒモビッチが走り始める。ルーニーも走る。グアルディオラ対策としてあるあるの数的同数プレッシングに移行し始める。ハーフタイムを挟まない試合途中の変更は、いわゆる連動性にかけるものだった。その形がきっかけで2点目を決められる流れになったのだけど、試合の流れをどうにかするという意味では好手だったと思う。
徐々にブラボが焦るような場面を作らせると、シルバのいらないファウルからのセットプレーで1点を返すことに成功する。ブラボのキャッチミスを見逃さないイブラヒモビッチであった。
後半の頭から怒りの2枚替えのマンチェスター・ユナイテッド。システムを4-1-2-3に変更する。相手がボールを保持しているときは、ポグバを前に出して、イブラヒモビッチと追わせていた。マンチェスター・シティが3バックになったときのビルドアップ妨害策が、クロップのそれに似ていて少し面白かった。その状況はそんなに多くなかったけれど。3バックのビルドアップに対して、イブラヒモビッチが端の選手にマンツー。残りの2人をポグバが追いかけ回す。2対1だけど、2センターバック対1トップに比べると、幅が狭いから追えてしまうという現実だった。
前半のマンチェスター・ユナイテッドのボール保持は、マンチェスター・シティの攻撃的なプレッシングにたじたじとなった。デ・ブライネがシルバを前に出し手、4-4-2で迫ってくるマンチェスター・シティ。しかし、今度はエラーラがいる。よって、4-4-2でプレッシングに行くと、エレーラが浮いてしまう。エレーラを抑えながらプレッシングに行くと、ボールサイドでないセンターバックが空いてしまう。センターバックが空いてしまうと、ロングボールで一気にフェライニ、ポグバ、イブラヒモビッチに放り込まれる。なお、ルーニーは右サイドに移動していた。
次に動くはグアルディオラ。さっさとイヘアナチョを下げてフェルナンドを投入する。この采配はボール保持という面から考えると、悪手だった。前半に見られたような3枚のポジションチェンジは行われなくなった。相手のシステム変更によって行う必要がなくなったという可能性もある。ただし、ストーンズがあきらかに前半の動きを要求しているのにしないみたいな場面が何度かあった。
ただし、フェルナンドは空中戦で存在感を示す。相手のパワープレーに対して最終ラインで高さ要員として確かに機能していた。フェルナンドの存在が、オタメンディとストーンズに躊躇のない空中戦やデュエルをすることを可能とした。特にイブラヒモビッチに挑み続けるオタメンディのプレーは、多くの人を勇気づけたに違いない。
残り30分の次点でサネを投入するマンチェスター・シティ。相手の数的同数プレッシングにあたふたする場面があったこともあって、カウンターに切り替えたようだった。デ・ブライネを頂点とするカウンター軍団は、何度もマンチェスター・ユナイテッドのゴールに迫る。試合展開としては、整理されているマンチェスター・シティの守備を上から殴り続けるマンチェスター・ユナイテッド。そして、整理されていないマンチェスター・ユナイテッドの守備に速攻をくらわせるマンチェスター・シティとなった。らしくないグアルディオラだが、今までのチームと比べると、撤退守備に適した選手がいるという事実は大きいのかもしれない。バイエルンにもそういう選手はいたが、起用されることはあまりなかった。
マーシャルをいれてスクランブルアタックをしかけるマンチェスター・ユナイテッドに対して、マンチェスター・シティは最後にサバレタを投入。5-4-1とうか、6バックのような守備で、マンチェスター・ユナイテッドの攻撃を食い止める。マンチェスター・ユナイテッドの攻撃の迫力は異常だったが、ブラボのミスがらみでのチャンスが多かった。もちろん、そのミスを狙ったといえるが、出番が多いのはカウンターを防ぎ続けたバイイーとデ・ヘアであった。3点目が決まらなかったことで、あと少しだったねマンチェスター・ユナイテッドという結果になったが、それがいいのかどうかはよくわからない。
ひとりごと
最初のモウリーニョ対グアルディオラの結果にならなくて、本当に良かった。
前半は4-4-2の守備でマンチェスター・ユナイテッドのボール保持を苦しめたグアルディオラ。その方法で逆に殴り返すモウリーニョという構図はなかなかおもしろかった。すぐにフェルナンドをいれて相手の高さの可能性を削りながら、トランジションの王様であるデ・ブライネのワントップも強烈だったけれど。
次回のダービーまでにチームが完成していないということは、ない監督たちなので、再戦が今から楽しみであります。そのときの両チームの状況もどうなっているか、非常に興味深い。
コメント
自分が想像していたより、随分早くグアルディオラのチームが出来上がっていってるな、という印象を持ったのですが、らいかーるとさんの印象はどうですか?
毎試合良くなっていってる感じがして、見ていて楽しいです。
最初の方に書かれていましたが、ストーンズがボランチの位置まで行って顔だして貰ったりするのが千葉も得意と書かれていましたが、現在日本で一番千葉がビルドアップが上手いCBだと思うんですがどう思いますか? またA代表入りのメリットとデメリットはありますか?
千葉のビルドアップ能力が日本で一番うまいかはわかりませんが、そうとうできるほうだと思います。
A代表は広大なスペースをセンターバックが頑張るシステムになってしまっています。広島では撤退&5バックがデフォルトなので、千葉が活躍できるかはわかりません。やってみないと。